8/4世界コスプレサミット2012チャンピオンシップは、TV愛知による初のゴールデンタイム生中継の中、過去最多20カ国が登場、そのトリを飾った「薄桜鬼」日本代表チーム“士魂”が、審査員得点での暫定4位から観客判定による高ポイントで逆転し、ついに優勝を飾る…という、超ドラマチックな展開で幕を閉じました。


 しかしながら。
 実は多くのコスプレイヤーにとっては、“世界コスプレサミット”の醍醐味とは、自分達の世界チャンピオンが決まるイベント…では、ないんです。
 だってチャンピオンシップの観客席に、コスプレイヤーは半分もいなかったでしょ?
 ハッキリ言っちゃうと、“コスプレ”に世界一も何も決められません。コスサミはあくまでTV局主導の、コスプレでの“パフォーマンス”を競う大会ですもの。
 出場してる人達だって大概は、この大会の優勝者がコスプレ世界一だなんて、思ってません。
 ステージに上がってパフォーマンスを披露したいレイヤーなんてどうしたって少数派ですし、そりゃ別世界の話で。
(僕達はその別世界を覗いてみたくて今年、予選まで出場してみたんですけどね)


 じゃあ、レイヤーにとってのコスサミって、何…?
 言うなれば、普段と違うオアシス21の広い芝生や、名古屋市内のあちこち、大須商店街の中でコスプレして遊べる、街全体を使ったオープンなコスプレイベント…なんです。
 mixiのコミュだって、チャンピオンシップの優勝が何処とか、マトモに話題になった事がありません。今年のパレードの集合場所や、参加券はいつ販売開始か、どんな衣装で参加するか…って話題の方で盛り上がります。
 やっぱり趣味や道楽でやってるコスプレに世界一なんて決められないって事、みんな思ってるし、コスプレイヤーのサガとして、自分が“参加”できる空間じゃなきゃ、興味を持てませんもの。
 チャンピオンシップよりもコスプレパレードの方に興味が行くのが、当たり前っちゃ、当たり前で。

 そんなわけで毎年恒例、世界コスプレサミットを飾るもう一つの公式イベント・コスプレパレードですが、今年は少し、いつもと様子が違った様です…?
 だって、7/29に一宮で、8/5に大須で、結果的に一週間で二回もパレードやっちゃったんですから!
 主催のコスサミ実行委員会としては当初より、恒例の大規模コスプレパレードをチャンピオンシップ前週の7/29一宮七夕祭り内にスライドし、8/5大須商店街は大規模なパレードではなく“大須コスプレカーニバル&優勝国パレード”と位置づけていたものの、直前になって大須でも大規模なパレードを行う事になり、混乱の中、結局は過去最大級のパレードが大須でも行われました。
 今回は、そこに至るまでにどんな動きがあったのか、ちょっと、公表されてる事実を元に、レポを交えつつまとめてみます。

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■ コスプレパレードって何なのさ? ■

 まず、世界コスプレサミットのプログラムとしてのコスプレパレードについて少々説明を。
 TV愛知がコスサミを開始したのが2003年。初期は世界一を競う形ではなく、本当に少数の国の代表が来て交流会や講義を行う、まさにサミットでした。
(世界一を競うチャンピオンシップは愛知万博に併せて2005年から開催され、これが盛り上がって以降、コスサミ = コスプレパフォーマンスの世界一決定戦、のイメージが定着します)
 大須コスプレパレードは2004年から。大須観音から大須商店街を使い、100名以上のコスプレイヤーがパレードを行うのです。年度によっては大須夏祭りの中に組み込まれたり、別の日程になっていたりしますが、この日一日、大須商店街は…近年は発展して名古屋市全体は、コスプレイヤーだらけになります。

 コスプレパレードの魅力って何でしょう?
 チャンピオンシップの様な立派なステージに立つには、何カ月もかけた練習や選考が必要ですし、多くのレイヤーはそこまでの労力なんてかけられません。
 でもパレードなら…沿道の一般人の前で、自慢の衣装やポージングを披露したり、キャラ名で呼んでもらえたり、レイヤー達にとってちょっとばかし自尊心をくすぐってくれる、楽しい空間なのです。
 僕は2008年に大須パレードに遠征してから本格的にコスサミ関連を調べて、その後でチャンピオンシップのステージパフォーマンスにも興味持ちましたから。

(名古屋では歴史的にコスプレイベント用に公共施設が借り難く、ホール系のイベントで“一般人と隔離する”形で存続を図っていました。そのため、経緯を知らないTV愛知がマスコミのチカラでコスプレサミットを広めるまで、東京や大阪のようにテーマパークや公園などのオープンな空間でのコスプレイベントが育てられなかったという経緯があります)

 そして、パレードはこれを開催する地元にもメリットがあります。
 “コスプレする人”だけでなく、“コスプレを見る人”が来るからです。
 例えばサンバダンサーや大道芸人を数百人集めるのはお金がかかりますが、レイヤーにはギャラが発生しません。一定の更衣室と魅力的な撮影ロケーションや 遊ぶ場所が提供できれば、友達を誘ってやってきて、それが数百人単位…見物客を含めたら数千人ともなれば、交通機関や飲食店や土産屋が、どれだけの恩恵を受けるのか…。
 わかりますよね?

 そんな訳で大須商店街の夏の名物、大須コスプレパレードは、世界コスプレサミットの公式プログラムの一環として、成長を続けます。

 しかし良い事ばかりでもありません。
 毎年毎年、本選のチャンピオンシップ同様…いやそれ以上のペースで増加し続けるパレード参加者と見物人は、必然的にパレードの列を長大にしてしまい、運営にかかる労力やトラブルも増大していきます。
 またコスサミ関連全体に言える事ですが、元がコスプレイベンターではなくTV局スタッフや商店街の有志による運営なので、コスプレイベントでの常識やノウハウが通用しません。毎年、現場は軽いパニック状態です。
 コスサミ実行委員会は2010年からパレード参加には有料チケットを発行して人数を制限しようとしていたのですが、実際に現場で運営している商店街スタッフにとっては、どのレイヤーもせっかく来てくれたお客さんです。参加チケットを持たないレイヤーにもパレード参加させてしまうので、毎回毎回、パレード列が予定よりも膨張を重ねました。
 大須商店街は構造上、往復で車道を横切らなければなりませんから、警察による交通規制の時間も予定より延びてしまいます。
 
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■ 2012年…割れたコスプレパレード ■

 コスプレサミット実行委員会は今年、早い段階で「今年のパレードは大須を飛び出して、一宮七夕祭りとコラボ」を謳いました。
 名古屋市のお隣、“繊維の町”一宮市は海外産の低価格攻勢により凋落傾向にある中、コスプレ衣装制作や生地提供によって経済を活性化させる“コスチュームタウン構想”を打ち出し、その開始を告げる大デモンストレーションが、コスプレサミットとのコラボによる20カ国の代表招聘、そして名物のコスプレパレードを誘致する事でした。

 元々、一宮七夕祭りは期間中に100万人を動員する大規模なお祭りですから、そこにコスプレパレードを誘致すれば、アピールはバツグンでしょう。
 パレード参加チケットは先着300名+α。昨年の大須パレードが600名でしたから少なめですが、初回なので安全係数をとったかもしれません。
 7/29当日は地元のスタッフ約60人体制による警備や、エアコンつきの広い更衣室、各国代表が登壇したステージでの一宮市長&商工会議会長からの挨拶、そして記念品まで贈呈といった“おもてなし”は、更衣室でのアンケート調査やマスコミ向けへのアピールとセット。
 なにせTV愛知のライバル局・中京テレビまでニュース取材に来ていましたから!
 大プロモーション成功であります。

 通常、レイヤーは口コミを重視するので、全くの新規イベントが一発目でこれだけを動員して成功できるのは特異です。やはり「世界コスプレサミットとコラボ」という広告効果は大きかったようです。

 「劣勢を強いられた地方工業都市が、コスプレを機に反攻の狼煙を上げた!」とか書くと格好いいですね。

世界コスプレサミット2012 公式サイト テレビ愛知 » 一宮七夕コスプレパレード with WCS (公式)
130万人のド肝を抜く! 愛知県一宮市の「コスプレ町おこし」 - ニュースウォーカー
コスプレイヤーが繊維の街を復活させる! 世界コスプレサミット「一宮七夕コスプレパレード」- RBB TODAY
一宮七夕コスプレパレード with WCS(全体編)- 名古屋オタ情報局
コスプレイヤーが繊維の街を復活させる  コスプレサミット「一宮七夕コスプレパレード」 - アニメ!アニメ!

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 しかしながら…名古屋市の大須商店街だって、自分達が育ててきたイベントだ、との自負があるでしょう。
 夏の名物となっていたコスプレパレードを一宮商店街へアッサリ譲り、大須では優勝国だけの代表パレードやステージ…では、何とも寂しくなってしまいます。
(毎年、運営上の不備が連発してた件はさておき)

 「今年のパレードは一宮」というアナウンスはHP上でもありましたが、参加者の全てが公式サイトをチェックしている訳では無く、大須のパレードへの参加が毎年恒例となっているレイヤーも多かったのです。
 mixiコミュでも「今年は大須でパレードはあるのか」という話題が噴き上がり、大須商店街の方への問い合わせが相次ぎました。

 繊維の街復活のためにコスプレを誘致したい一宮市商工会議所。
 簡単に止めたくはない大須商店街。
 どちらも切れないコスサミ実行委員会。
 そしてどちらにしろ警備しなきゃいけない愛知県警…色んな人達の理想や都合や思惑があったと思います。
 かくて直前になって、コスサミのHPでは(8/5大須では)「一般コスプレイヤー向けのパレード参加券は発売いたしませんが、代表コスプレイヤーパレードに続く形で歩かれる場合は、大須商店街スタッフの指示に従って下さい。」という曖昧な形で発表しました。
 この辺、本当に残り一ヶ月辺りでの直前の決定だったので、地元の皆さんから伝わってくる喧々諤々の情報には…「おつかれさまでした」と言いたくなります。
 
 最初は大須では今年やらないつもりでコスサミ実行委員会では参加チケットは発行していませんでしたから、事前に人数は把握できず。結果としてフタを開けてみた所、当日に大須観音に集まったパレード参加者は約1000人。もう、前週の一宮パレードをアッサリ越えています。
 実際に現場で見た所、出発前のパレード待機列が集合場所の大須観音の境内からハミ出てしまっていたので、コスサミ史上…いや日本のコスプレ史上、過去最大規模のパレードであったことは間違いありません。
 前日にチャンピオンシップが初めてTV愛知でゴールデンタイム生中継され、日本代表が優勝したお祝いムードもあったのかもしれません。一夜にして新スターになった“士魂”の二人を見てみたいという人も多かったかもしれません。もっと単純に、今年は券の購入なしで参加できる事から、ドッと押し寄せてしまった感もありますけど。
 大須商店街のHPでは12:00~12:45となっていたスケジュールが、終了予定時刻の頃になってもまだパレード最後尾が大須観音の境内からスタートできずにいました。
 これ、明らかにオーバーキャパシティです。来年は開催できるんでしょうか…。

 そんなこんなで混乱の中、コスプレサミットの期間中、名物のハズのコスプレパレードが一宮と大須で二回も開催されてしまうという、傍から見たら不思議な事態になってしまいました。
(後者は建前上、優勝国パレードの後ろに他レイヤーが勝手に着いて回ってる扱いなのですが…1000人も?)
(一宮パレードには大須商店街Tシャツを着たスタッフが手伝いに来ていたので、別に人的にいがみ合ってる訳ではないので)

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 大須観音境内に設置された賽銭箱。
 ってゆーか、ミミック。(筆者)
 「ブログ読んでます」ってホントに声掛けられたよ!

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 忍者戦士 飛影!
 トビカゲですよ!ヒエイじゃなくて。以前コス雑誌で拝見して、一度ナマで見たかったんだよ!

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 コードギアスのゼロだらけです。

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 ジブリキャラ集合。境内が似合うなー。

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 夏祭りのステージ。仮面ライダーFirst1号2号はインドネシア代表。
 前夜のチャンピオンシップでは「パトレイバー」でイングラムvsグリフォンの死闘を再現し、着ぐるみでのバク転や側転を披露、初参加国ながら3位をゲット。
 ロボや特撮レイヤーに詳しく、話したら、僕の事も知っててくれた(笑)
 すぐ後ろの男女はシンガポール代表。
 「アクエリオン」でLED発光ギミックを仕込んだ巨大なソーラーアクエリオンを登場させ、2位。


世界コスプレサミット2012 公式サイト|テレビ愛知 » 大須コスプレカーニバル (公式)
世界コスプレサミット2012フォトレポート -コスプレイヤーズアーカイブ特設ページ

これも街おこし:ミクも美人ガンダムもせんとくんも登場 街全体がコスプレ会場の大須夏まつり -ねとらぼ
 ↑この記事の4ページ目、大須商店街連盟の廣田尚彦常任理事のコメント(>こちらへ)、非常に興味深い!

>「やはり10年間の積み重ねによる受け入れ側とコスプレイヤーとのお互いの信頼関係によるものが大きいです。だから大須の様子を見て自分たちの街も、といきなりコスプレで街おこしをやっても失敗することになるでしょう。コスプレイヤーも自分たちを受け入れてくれる大須の街を大事にしたい、という気持ちで節度を守っている、これが私たちにとって大きな財産となっているからです。

 このメッセージが何処を、何を念頭に置いているものかは…ここまで読んでくれた皆さんなら、もうお分かりですよね!
(重ねて言いますがコスサミ関連は元がコスプレイベンターによる運営ではないので、レイヤーを呼び込みながら更衣室は用意してないって件については、ブン投げ過ぎだろうって気がしますが…)

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■ ますます大きくなるよ、世界コスプレサミット関連イベント ■

 さて、そんなパレードやステージ企画の近くで、まだちょっと不慣れな様子で「鋼の錬金術師」のアメストリス軍服のコスプレをした眼光鋭い男性に、気がついた方はいたでしょうか…。
 実はこの人、世界コスプレサミットの立ち上げに関わっていた元TV愛知ディレクターで、おそらく今後の(今後も)キーマンとなるであろう方。

株式会社WCS(世界コスプレサミット運営事務局)代表者メッセージ

 これまでコスサミ運営の体制は何度か変わっており、初期はTV愛知スタッフが社会人サークル的に運営していたのですが、2009年からは外部の人間を入れた実行委員会形式になっていました。
 そして今年7月、その中核を担う(?)存在として、初代ディレクターの小栗徳丸さんが新会社、その名もズバリ“株式会社WCS”を発足させたそうです。
 ひょっとして、これからは年間を通して、各所でコスサミ関連の催しが行われていくのでしょうか…?
 参考までに、2012世界コスプレサミット実行委員会は、外務省・中部国際空港・名古屋市・名古屋観光コンベンションビューロー・大須商店街連盟・テレビ愛知・WCS…だったそうです。一宮商工会議所はまだ入ってませんね。来年はもっと増えるのかしら?

 ちなみに小栗さん、今年4月に行われたロシア代表決定選での挨拶が、朝日新聞モスクワ支局の関根和弘記者によって日本国内にも紹介されてます。
 コスサミの成り立ちなどについても触れてるので、読んでみては。→

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 さて、各地の自治体はお祭りにコスプレイヤーを誘致したがり、この需要で地域経済を活性化させようとする人がいて、それらを間に入ってコーディネイトする人がいて、外務省やら国交省まで後援して、マスコミはその騒ぎを追っかけて…これらの上に(下に?)乗っかってる多くの若いコスプレイヤーが、果たして、そんな足元や水面下の出来事に関心を持っているのかは不明ですが。
 僕は今年度の日本予選に出場して、んでチャンピオンシップまで通して見てると、コスプレイベントって言うより芸能界だよなぁ…などと思っておりましたが。それだけでもないですね。

 どれくらいの人が気づいてるのかな。
 世界コスプレサミットって、最初からコスプレイベンターによる企画ではなく、そしてもうTV局の公開収録のレベルでもなく、実は“経済振興”“ソフト外交”みたいなレベルに達してるんですよね…。

 もう、コスプレイヤーもコスプレイベントも、閉ざされた楽園ではなくなったんですね。
 外部から開拓され始めた、未開の島。
 誰かが、外側からの尺度で、“価値”を選別し始めている。

 とりあえず僕は一レイヤーとして、調べられる限り情報を拾っては記していくので、後の世に残したいですけど。

 肝心の8/4チャンピオンシップのレポはまた後日。
 今年は予選落ちチームには関係者席すら用意されなかったので、自腹で観客席のチケットを買って観覧していたあの日、オアシス21の会場で言われましたよ。
 「コスプレ界の週刊実話が、ついに本丸へ切り込んできた(笑)

 んー、何の事かなー???


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