※あらかじめ言っておきますが嘘です。

 国内のあけおめ生産量・消費量は共に、ミレニアムを迎えた2000年をピークに減少傾向が続き、2013年は東日本大震災の影響を受けた2012年に比べると微増であるものの、本質的な回復には至っていない。
 特に20~30代の若年層でのあけおめ離れが顕著だ。
 生活様式や価値観の変化が指摘される中、それだけではとても片づけられない、若者のあけおめ離れの本質に迫った。

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 愛知県豊橋市、個人経営の町工場が立ち並ぶ一角…。
 あけおめに付随する、ことよろ関連の部品製造を請け負う工場を訪ねた。
 既に大手あけおめメーカーは生産拠点を海外へ移転しつつあり、それに伴い、ことよろ工場の空洞化も進んでいる。
 取材先の工場では最盛期には20人の従業員を抱えていたが、売上は最盛期の4分の1まで落ち込み、現在は6人。繁忙期のみ派遣社員を雇ってつじつまを合わせている。それに伴い、昇給もボーナスも消えた。

 「今はとにかく厳しい。その月ごとを綱渡りでやっていくのが精一杯で、とても来年の事など考えられない」
 40代に入ったばかりの経営者の男性は語った。
 「でも、ウチだけじゃない。謹賀新年や賀正を請け負っていた工場は町内にも幾つかあったが、この5年くらいで全部潰れてしまった。生き残ってる所も、あけおめやことよろ製造に関わりながら、若い従業員にはとてもそれ自体を購入できるだけの給料を払えていない」
 矛盾を感じつつも、しかし零細工場の立場では価格交渉すらままならない。
 仮に中国の工場で人件費が高騰しても、次はインドネシアへの大規模工場計画が持ち上がる。発展途上国との人件費合戦は、とても対抗できるものではない。

 「正直、学生の頃はあけおめに憧れもあったけど、今の収入では所有は無理。友達も誰もあけおめとか、ことよろなんて使ってない。金が無いから」
 従業員の20代男性は達観したようにそう語った。

 安い海外の工場と競うため、あけおけ関連部品を少量多品種・短納期・低価格で製造する。
 そのシワ寄せは末端の工場、そしてとりわけ若い従業員に行く。彼らにあけおめを購入し、高い税金や保険料などの維持費を負担する事は難しい。
 そこに問題の本質があった。

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 あけおめ産業に関わる企業が人件費を抑えるために経済が縮小し、若者のあけおめ離れを加速させる負のスパイラル。
 しかし改善への見通しは暗いままだ。
  経団連の米倉会長は年頭、「グローバル社会においては、社員に給料を払う事は罪悪である。国際競争力を維持するためには、サービス残業を推奨し、労災は自 己責任。しかし不況は政治の責任。新政権にも引き続きこれらの施策を、より強く求めていく」という趣旨のポエムを、魔法のiらんど日記に投稿しており、警 視庁では余罪を追及する方針。

 国内の底辺で挙がる悲痛な声に耳を傾ける大人は、経営者にも政治家にもいないという現状。
 若者のあけおめ離れの背景には、単純に生活様式や価値観の変化では片づけられない、若者の雇用と労働環境に関わる根本的な問題がある。


     <東京日経スポーツより転載>