正式タイトル「そうだったのか!チワ上彰の学べぬニュース解説・うしじまいい肉さん台湾エロコス事件」

 さて、今回の事件に関して様々な情報(デマ含む)が飛び交う中、ちょっと誰かが流れをまとめて、分かり易く資料として残しておいた方が良いかな?という事で出ばって参りました。一応は十数年続けてコスプレの世界を見てる者ですので、ま、そういった視点だから語れる事も、いっぱいあると思いますので。
 10000文字くらいの長いお話なんですけど、これは聞いて頂きたいな、と。
(一部で池上彰先生っぽい語調を心がけるのは、そうでもしないと頭痛がするレベルなので)

 僕自身、「ファン活動としてのコスプレと、裸を飾るためのコスプレは趣旨が異なる。同一線上に置かないでほしい」という考え方ですし、経緯の上からも、必ずしもフラットな視点では書けない事を、最初に断っておかなくてはなりません。信者/アンチの二元論は嫌なんですけど。その辺は差し引いて読んで下さい。
 決して国際政治学者でもなく、評論家でもありません。リンク先の情報などから確度の高いものを総合して、データに基づいて推測を加えるだけの解説者です。
 なお「事件」と表現しましたが誰かしらが立件された訳では無いです。(文末に警察の動きを追記)
 ありがちな誤解ですが、うしじまさんは乳首や性器の露出はしていません。コミケ準備会にサークル参加を拒否されている理由はそれとは別です。
(コミケでは企業ブースでROMを委託販売していた事が知れて、それでも準備会からの再三の警告を無視して販売を続けた為に、以後コミケへのサークル参加を断られている状態…にも関わらず、他サークルへの委託の形で敢行しようとした事もあります。C81カタログ420pのモロー漫画で、イワエモンのセリフ内に暗に出てきた事例)

[追記] うしじまさんは自分の名前でエゴサーチ→批判者を発見→悪態ついて晒しRT&ブロック→自分のシンパを批判者に向け突撃させる、っていうパターンを本当に繰り返しているので、特にツイッター上で批判すると、変な言動の人が突撃してくる事があります。
 それを避けたい人は、批判ツイートする際には彼女の名前の部分を消したり伏せ字にしていただくのがよろしいかと。この記事のタイトルも彼女の名前を消してからツイートしていただけば、エゴサーチには引っかからないと思います。

 


[この騒動に関する情報ページ]
  (↑実際の映像などもあり)
・ Togetterまとめ 
  (↑色んな人の発言集) 
  (↑イベント公式サイト発表を元にした現地のネット記事の訳文)

[一年前の同イベントの取材記事]
(>日本のコスプレROMサークルと違って、18禁のコスプレROMを販売するサークルはありません。法律で禁止されているというわけではありませんが、サークルを主催するコスプレイヤー同士が決めた自発的なルールがあるからです)

[別の台湾イベント「GJ6」のレポ]
(Cure管理人の乾たつみさんによる近似のイベントの日記。コスプレイヤーが日台合同でステージを行うという事で、多くの観客が集まったレポート。友好関係が伺える資料です)

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【1時限目:いったい台湾で何が起こったの?】

 皆さんご存じの様に日本のマンガやアニメが台湾にも輸出されておりまして、これが人気な訳です。
 台湾に行けば、日本のアニメのDVD、玩具、それにコスプレ雑誌なんかも翻訳されて出版されてる事、ご存知でしょうか?
 当然ながらそのファンが集まって、同人イベントなど行われている訳ですね~。
 それが最近は日本からの参加者も多くなってきてですね、もちろん喜ばしい事なんですけれど。

 例えば有名な自宅警備隊NEETから派生した、「台湾自宅警備隊」が結成されたりですとか。
(「台湾支部」という表現は台湾を下に見ている様だから使わない、と日本の自宅警備隊長いわく)
 また過去には、別団体のイベントの「GJ」が、コスプレサイトCureとコラボして、日台共同でコスプレのステージショーを行ったりしています。
 こういった経緯があるので、日本人や日本文化に対して良いイメージを持ってくれて、友好的な関係が続いていたんですね~。

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 さて今回の騒動となったイベントは、2/4,5に開催された、ファンシーフロンティア19=「FF19」

 台湾大学の体育館を使って行われる、大きな規模の同人誌即売会イベントです。
 日本からこれに参加するのは、一般だけではありません。サークルとして参加する例も増えて来ています。
 が、海を越えて参加するサークルの中に、日本国内と同様、男性向けのエロコスROMを販売するケースが出てきました。
 台湾にも日本と同じ様にコスプレROMサークルは少しあるんですけど、日本の様なエロコス=ポルノ表現(後述します)は無かったんです。台湾のコスプレROMサークル同士で話し合って決めた約束があったので、エロはやらない、という風に決めていたそうです。
 そんな台湾のイベントへ最近、日本からエロ系のコスプレROMを持ち込んで売るサークルが現れた訳ですから、やっぱり目立ちますし、買っていく人が多く居た訳です。

 そんな中に、日本でもトラブル含みの“うしじまいい肉”さんがいました。
 エロコスROMのサークルではよく本人がエロコスをして売り子するんですけど、その衣装がだんだん(?)過激化しまして、今回、吾妻ひでおキャラの猫山美亜…ミャアちゃんですね。ベスト集「21世紀のための吾妻ひでお」(リンク先に写真あり)の表紙で披露したコスプレだったんです。
 上半身がセーラー服、下半身がパンツ一丁だけっていう衣装で売り子をしていた訳です。
(表紙モデルに彼女をキャスティングしたのは吾妻ひでお先生ではなく、このベスト集を監修した山本直樹さんだそうです)
訂正:最初、「ストライクウィッチーズ」のコスプレだと思ってそう書いていましたが、コメント欄でご指摘いただきました。すみませんでした)


 ところがこれを、地元TV局が撮影していて、トラブルになった訳です。
 スタッフからの注意で本人はその後スカートを履いたそうですが、撮られた映像が、台湾のニュース番組で放送されてしまいました。
 で、大きな問題になってしまいまして、イベントは土日2日間あるんですけど、2日目はマスコミが会場へ詰めかけて、会場側からもクレームが入ったらしくてですね、混乱を避ける為に2日目はうしじまさんと、一緒に参加していた他のレイヤーさん達も入場を断られてしまった。

 次回以降、このイベントが会場を貸して貰えるのかという騒ぎにまでなってしまった訳ですね。

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【2時限目:そうだったのか!台湾の歴史とマスコミの関係】

 元々、台湾はポルノ表現に対しての規制が、日本に比べて非常に厳しいんですねー。一般書店ではポルノ雑誌などは売られていません。
 それは国によって倫理観が違うのが当然なので、日本がむしろ自由なんですけど。
 
 TV局からの撮影に関しては、本人は「盗撮だ」と言ってらっしゃいますが…これはですね、ちょっとやっぱり、認識が違うんです。
 日本でコスプレイベントだと、必ず被写体の許可を取ってから撮影、というのが約束ですよね。コミケ会場でも、取材に来たカメラがインタビューをする時なんかは、必ず許可を取りますね。どうしてもそこを基準に考えてしまいがちなんですけど。
 でも、例えばこれが事件や事故の報道だったら…?疑わしい人物が「撮るな!」と言ってもカメラが撮り続けている事って、日本でもありますよね。台湾マスコミは特にその傾向が強い様です。

 で、ここはやっぱり、台湾の歴史が関係してるんです。

 台湾の正式名は中華民国(国連非加盟)と言いまして、その昔は中国の主権を、毛沢東さんの中華人民共和国と争って負けてしまいまして、言ってみれば分裂する形で出来てるんですけど。蒋介石・蒋経国さん親子が2代に渡って、ずっと独裁政権を取っていた訳ですね。
 独裁政権ってのはどうしても、締め付けが厳しくなるでしょ?
 1949~1987年まで長い間“戒厳令”が敷かれていたんですね。自由に政党を作ったり、政府の批判に繋がる様な報道というのが、難しかったんです。
 それでも、政府に隠れて非合法につくられたケーブルテレビ局が沢山ありました。

 25年前、蒋経国さんが亡くなってから李登輝さんの時代に民主化されたんですけど、この後、自主的に作られたケーブルテレビ局に正式に許可が降りていったので、テレビ局の数が非常に多いんです。
 そして規制された時代の反動で、「報道の自由」が非常に重んじられる様になりまして、ただでさえ数の多いテレビ局が、熾烈な視聴率競争の為に「報道の自由」を免罪符にしてネタを集める…という様な事がまかり通っている訳ですね。
 昔、アニメージュの対談コーナーで岡田斗司夫さんが「だから台湾で日本の番組が放送されたからって、点を面の様に大袈裟に言ってるだけじゃないのか。TV局の数が多いんだから」なんて言ってましたけど、そうです。
 日本でも報道被害ですとか個人情報ですとか、ここ10年くらいで問題視されてますけど、そういった意識は台湾にはまだ強くないんですね。
 だから「撮るな」って言っても、報道として撮っちゃうんです。
(おぉ、本当の池上彰先生の解説みたいだ!)

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 では主催の意向はどうだったの?と言いますと。
 マスコミを遠ざけて隠すのではなく、むしろオープンにする事で、共生しようとしていた向きがあります。
 日本でも最大規模のコミケでは、なるべく隠さずにコミケを伝えてもらおうとしていますけど、同じです。隠してアングラなイメージが着くより、オープンにして良いイメージで知ってもらおうという方法論だった訳です。
 だから会場内にマスコミのカメラが入っている状態は、それほどおかしな状態ではなかったんです。

 そんな台湾マスコミがいる前で、下半身パンツ姿で写真集ROMを売っていたので、日本人の感覚に例え直すなら、残念ながらそれはいかがわしい裏ビデオ販売ですとか、それくらいの悪いイメージで見えてしまったのかもしれません。格好のネタです。

 日本だったら、例えばコミケなら公式の更衣室を利用してスタッフのチェックを受ける事がルールなんですけど、台湾のイベントはずっと家からコスプレで来場が通例でしたし、最近ようやく更衣室が作られたものの、そういった露出度のチェックも無かったそうです。
(なお、スタッフは事前に彼女に警告していたけど止められなかった、とも発言しています)

 ニュース映像を見ると分かりますが、彼女の「撮らないでください」を無視して撮っている半面、パンツにモザイクをかけています。この辺、報道の自由には寛容だけど、ポルノには悲寛容なお国柄が伺えますね。

 ちなみに彼女の当日の姿がネットで出回っていますが、ハッキリ言って、水着だから平気とか言うレベルではないです。下半身はほぼパンツです。個人の撮影会ならともかく、日本でも通常のコスプレイベントではアウトです。
 エロコスROMサークル中心即売会のコスホリック等では、イベント会場自体を年齢確認による18歳未満立入禁止にしてるからセーフですけれども。全年齢のイベントでやったら、アウトです。
 そんな格好で、文化の異なる台湾のイベントに参加してしまったら、残念ながらこうなっちゃいます。その後スタッフに注意されてスカートを履いても、遅かったんですね。

 この会場、実は台湾大学の体育館という、非常に公共性の高い施設を使っていましたから、ニュースでパンツ姿が放送されてマスコミが詰めかけ、会場のイメージが下がる事は、そりゃ困ってしまう、最悪の場合、そんな事するならこの会場はイベントには貸せないぞ、となります。
(まだ決まった訳では無く、今後の交渉次第でしょうけど)
(この辺、mixi経由でFF主催側の人から幾つか教えて頂きましたが、まだ公開は控えてほしいと言われてるので控えます)

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【3時限目:エロコスって普通のコスプレイヤーとは違うの?】

 ここが分かってないと「え?たかがコスプレでそんな騒がなくても」「最近のコスプレってそんなに過激なのか」ってなっちゃうんですけど、これもちょっと説明が必要ですね。
 端的に言うと、うしじまさんのやっているのは狭義では「エロコス」(露出系コス、とか呼び方は他にもあり)とされるもので、言葉の通り、コスプレを使ったポルノです。
 “着る”コスプレに対して、“脱ぐ”コスプレです。
 これとアニメファンの行ってるコスプレが混同されるから、話が伝わりにくくなってしまうんです。

 元々、70年代の創世記からコミケではアニメファンが仮装して来場する例がありまして、80年代にアニメ誌がこれをコスチュームプレイ=「コスプレ」という言葉で定義し、定着します。
 またこの時期、警察からの「風紀を乱す」という指導で、コスプレのままでの来場禁止・更衣室の設立に繋がって行きます。これは現在まで日本国内のあらゆる同人誌・コスプレイベントに共通するルールですね。

 これとは別に、風俗用語として使われたのも「コスプレ」という言葉でした。
 まぁ、風営法の規制を逃れるため、あくまで限られた人達の集会ですよという形にして、会員制イメージクラブが増えてきた事にも関連するんですけど。
 ナースとか女子高生とかバニーガールとか、シュチュエーション毎の性的なプレイを楽しむ意味ですね。

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 前者のコミケなどでアニメのコスプレをしてた人は、オタクの間では“コスプレさん”とか呼ばれてたんですけどね。
 90年代前半、RPGや格闘ゲームやセーラームーンの人気で、一気にコスプレをする人の数が増えるんですけども。
 これを風俗用語としてのコスプレをする人と区別する為、「コスプレイヤー」略して「レイヤー」という言葉が作られました。
 何だかカッコイイ様な呼び方でしょ?

 だから、「コスプレイヤー」を名乗る人は多くの場合、風俗的な意味で見られる事を嫌ってるんです。
 露出度の高い衣装を着ていても、それはキャラクターへの愛情表現でしたから。子供も来場するコミケや大型イベントでは、更衣室の使用と露出度のチャックが行われ、肌色のボディタイツ着用が求められます。痴女や露出狂じゃないんですから。
 
 ところがところが。
 ここ数年はデジカメ・パソコン・ネットの発達により、自主制作レベルポルノ表現を含む写真集ROMを作って、宣伝して、売られる時代になってしまいました。
 その中には、アニメ系のコスプレでのポルノ写真集もあった訳です。
 便宜上は(男性向の)「コスプレROM」と呼ばれてますが、実際にはコスチュームの面積は非常に小さく、モデルのお尻やパンツ姿を売りにした「同人ポルノ」とでも言うべき存在でした。
 ましてや、うしじまさんはウィッグも着けないので、脱いで行く内に何のキャラでもなく、ただ本人の裸そのものになっていきますから。キャラへのファン意識や愛情表現では定義できないコスプレ(?)だったんですね。

 純粋なアニメファン層のコスプレイヤーから見たら「これはポルノではないか、趣旨が違うだろう」「作品への愛情が無いではないか」「一緒にされたくない」となるので、同じ「コスプレイヤー」という括りで見られるのを嫌がっている訳です。
(でもエロゲーやクイブレに絞ってコスしてる人が半裸なのはその人なりの再現やキャラ愛ですし、また同人誌同様に、ファンによる愛情表現としてのエロパロっていうのもありますから、必ずしも厳密に二分化されてるわけじゃ無いです。あくまで傾向としてです)

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 ちなみに比率的には、今年1月に発表された国内の大手コスプレSNS(コスプレイヤーズアーカイブ)のデータでは、コスプレイヤーとしての登録が21万人
 まぁ、SNSに登録してない人もいますし引退状態な人もいますから完全な数字じゃないですけど、差し引いても十数万人規模では国内に存在しそうです。
 これに対して、即売会などでエロコスROMを売ってるサークルが100~200程度なので(メーカー品のAVで女優にコスプレさせてるのは全く別の話)、実体として「コスプレイヤー全体の中で、エロコスでROMを出してる人は、0.1%~0.数%程度」というのは言えそうですね。

 しかしこの、コスプレイヤー総数に対する比率的には1/1000に過ぎないエロコス方面の人達は、体の露出プラス、メディア露出も積極的な傾向がありました。
 元々、アニメファンのコスプレイヤーはファン同士での交流が目的なので、不特定多数に公開されるのを嫌がります。メディア不信がありますから。
 逆に後者のエロコス系は「有名になる」「ROMを売る」という大目的がある場合が多いので、どんどん積極的にメディアに露出して、まるでこちらが主流であるかの様な情報が流布されて行く訳です。
(アニメ系の中にも「有名になりたい」「ROM売りたい」人もいますよ、と書いておこう)
(ちなみに最近ではTVのワイドショーなどは、エロ系よりも着ぐるみ系・ネタ系の方がよく取り上げられるのでマシ)

 結果として「コスプレ」「コスプレイヤー」への偏ったイメージに繋がってしまってる訳です。



 ↑改めて見ても、こりゃちょっとヒドイ記事ですが…。
 「素人の女の子が、何を思ったか自分でエロい写真を撮って売っているというところに魅力があるわけですよ」だの「素人の痴態はたまりませんね」なんて、コスプレ=エロの図式で見てくださいとでも言わんばかり、トンデモナイ事を語っちゃってますし。
 ライターの方もコスプレの常識なんて知りませんから、「カリスマコスプレイヤー」だの「日本のコスプレ界の頂点」だの、それが真理であるかの様に持ち上げまくってます。とにかく、コスプレの事を知らない人達を上手く扇動して、名前と顔(尻?)が広められていった訳ですね。

 ちなみに2番目に貼った「プロフェッショナルな~」はライブドアの「あにげマ!」でも配信しているんですけど、こぼれ話。
 同じライブドアの運営するコスプレサイトCureは、ツイッターであにげマの記事を紹介するんですけど、この記事はタイトルに「コスプレ」と入ってるにも拘らず、Cureから紹介されなかったんです。
 この例からも、アニメファンによるコスプレイヤーの層は、彼女を同じコスプレイヤーとしては見ていない、というのが伺えますね。

 …あ、コスプレしない人にとっては意外かもしれませんけど、うしじまさんはコスプレSNS・コスプレ専門雑誌・コスプレイベントの類で有名になった訳では無いんです。こちら方面ではほぼ無名なんです。(だから、こちら側の常識が通じない)
 彼女はあくまでエロサイトへの画像投稿によって有名になった…という経緯がありますから。アニメファンによるコスプレイヤーからは、知名度はそんなに高くなかったんです。最近までは。

 なお、こういったエロコス系のレイヤーが多く参加するイベントが、ワンダーフェスティバル=「ワンフェス」
 コスプレの規制が緩くて露出がほぼ自己判断にゆだねられていますし、イベントの特性上、男性カメラマンの数が非常に多いので、ROMのプロモーションの場としても、有効だからです。

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Neue Liebe Kummer 台湾でのトラブルのこと (牛島えっさいさんのブログ)
 
 十数年に渡ってコミケ準備会で更衣室担当統括(事実上のコスプレ対応部署)を勤められ、コミケ以外にコスプレ可の大型イベントが存在しなかった時代に、何度も準備会内で沸き起こる「コスプレ不要論」を抑えていてくれた…つまり、コミケでのコスプレ存続に尽力された牛島えっさいさんのブログです。
 そう、コスプレイヤーの間で「うしじま」といえば牛島えっさいさんの意味だったんですね。ちょっと前までは。
 もしコミケでルールを熟読するタイプの人だったなら、「うしじま」は名乗らなかったかもしれません。だって評論系同人誌サークルの人が、(パロディ以外で)ペンネームに「米澤」「筆谷」とは名乗らないですよね?恐れ多くて。

 短いながら重いメッセージですので、えっさいさんの言葉を読んでみて頂きたい。
 長い間、日本のコスプレのために多大な貢献をしてきたえっさいさんに、ここまで発言させてしまった意味、分かってもらえるのだろうか…。

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【4時限目: まとめ…られません】
 
 さて、これらの事象を踏まえた上で、aniarc動漫新聞の日本語訳(pdf)をもう一度読んでいただきたい。
 今回の話が、ようやくクライマックスに入ります。

 主催側は彼女を「日本の有名コスプレイヤー」としてしか認識していなかった事が伺えますね。サークル参加は初めてではないけど、ROMの内容も販売前にチェックしていない。
 実際は、彼女のROMはエロコス=“コスプレを使った同人ポルノ”だった訳です。
 ところが最初の方で挙げたとおり、台湾ではサークル同士の取り決めでエロコスが自制されているので、そもそもコスプレを使ったポルノ表現というものの存在が、具体的には想定されていなかった訳です。(あるいは黙認?)
 まして元々が日本人に対するイメージもこれまで良かったので、まさか「日本の有名コスプレイヤー」だと思っていた人が、現地の基準を超えるポルノを持ち込む・ポルノ的な衣装を着るとは、あんまり考えなかったのでしょう。
 事前にうしじまさん達は現地の人達とネットを通じてアドバイスも受けていたそうですが、当日はそれが無視される形になってしまいました。ROMには「18禁」シールも貼られませんでした。
 そして運営側も彼女の振る舞いを強制的に止めるには至らなかった…と。 

 そこへ、自制しない台湾マスコミがやってきてニュースで流して、飛びついてきたので、もう看過できなくなってしまった…と。
 もし会場側との間にトラブルを起こして使用を拒否される様な事態になれば、それはどこの世界でも、イベント自体の存続に繋がるアキレス腱ですから。
 振り返れば日本のコミケでも、91年には幕張メッセから会場使用を一方的に拒否される事態が発生(→参考記事)していますからね。

 これは不幸な偶然などでは無いです。起こるべくして起きた、と見えます。

 どうしても、今までに無いパターンのトラブルですから、主催側も対応が後手で、場当たり的になってしまってますね。
 「ルールが無いのがいけないんだ」という感想もあるんですけど、問題が起こる前から厳密なルールを設定する事はありませんから。ましてや台湾の同人イベント自体、まだ手探りの状態です。日本のコミケで言えば80年代中盤の時期でしょうか。
 本当はルールなんて無くても回っていく状態が、一番良いんです。誰か一人の不始末の為に、ルールによる規制が増えていく…悲しい事ですが。

 勿論、台湾マスコミの姿勢も問われるべき部分があります。しかしそれは、台湾の人達がやらないと意味がありません。 
 また、最大の問題は本人自身が、台湾のポルノ規制やイベントの事情といったものを、いつもの事ながら軽視していた事です。

[これに関連した、ご本人の発言より]
> FFで水着姿だったのは正味15分くらいだし、スタッフに1回注意されてすぐにスカートはいて、その後ずっと履いたままだったし全然悪いと思ってないっすね~
http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/166592584020537344
> さっきの中国語の日本語版 2012年の目標  2012年は以下の目標を基軸に活動に勤しんで参ります。 まず、twitterで「うしじま」で検索、ネガティブな意見発信者の発見、ブロック、までの流れをよりエレガンスに洗練させることで、快適な環境を作ることをお約束いたします。
http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/166592620167049216
> また、コスプレ界隈にモラルハザードを引き起こしたい所存でございます。 こちらは具体的な案はまだございませんが、「礼儀としてのパンツ見せ」「カジュアル感覚で野外露出」の推奨から進めさせていただきます。 今後とも、より一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。 
http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/166906827756412928
> 次回FFに参加する時は台湾イベント基準に合せた服を着て頒布物には18禁をつけます!!!
http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/167272960007221248
> そして、その中で限界を探していきます!!!
http://twitter.com/#!/PredatorRat/status/167272960007221248
> 私の信念は街を歩いてる女の人が今よりももっとより下品な恰好になったりパンツが見えてもさほど気にしない世界を目指すことで、もめごと起こすことじゃないですよ。ここテストに出るから。 
_____(引用終了)

 …反省の色は…発言しないまでも内心にそれがあれば良いのですが。さて、どうなんでしょう?
 多分これじゃ、また同じ様な事をやるかもしれません。別の場所で。別のイベントで。(あくまで予感)
 言っておきますが、彼女の衣装は「日本なら大丈夫」ではなく「日本でも全年齢イベントではアウト」のレベルです。
 また、彼女のROMでは性器こそ露出しませんが、明らかに無許可で公共の場所を使って、ゲリラ的に尻やパンツの露出写真を撮ってますからね。公然ワイセツ罪で警察が動いてもおかしくないレベルの写真も含まれています。
 作りたいものを作る。売りたい物を売る。創作の基本ですし、そのリスクを自分一人で負って頂けるなら、それも“信念”として構いません。
 が、彼女のやり方ってそうじゃないんですね。

 「炎上マーケティング」という言葉があります。
 ポルノの世界では特にこれが非常に有効です。スキャンダルやトラブルも箔になってしまう。(消費者視点の話です。現場レベルでは違います)
 ポルノとして選ばれる基準は、エロいか否か、だけですから。とにかく目立った方が勝ち。小向美奈子さんなんかコレですね。
 主催者・会場・マスコミ、そして倫理観…色んなものの上でバランスをとって、大勢の集まるイベントは成り立ってるんですけど、大勢に迷惑をかけても、それによって名前を広め、トラブルを武勇伝の様に語る…という傾向が、これまでも彼女にはあった事は否めません。

 自分の名前でツイッターを検索して、批判していた人達に悪態をついてブロック、そして批判者に対してファンを突撃させる…ってのも、繰り返していますけど。
 ブロックされた中にはコミケで表現規制と戦っていた人や有名なイベンターもいて、それはキチンと話し合えば、後々どこかで味方になってくれたかもしれない人達なのですけどね…。
 彼女はコスプレイベントの中で育った人ではないですから、こうなってしまうのかもしれません。

 興味深いのは、今まで彼女を持ち上げて来た著名人やアーティストの層が、(意地悪な言い方ですが)ダンマリしてしまっている事。今擁護してるのは、本当に熱心なファン層に限られてますね。
 「新しいコスプレだ」「アートだ」「サブカルだ」ともてはやして来た人達は、しかし別のものが見えてしまったのかもしれません。
 そう、彼女が賞賛していた、“現代アート集団”カオス★ラウンジ騒動の時と近い現象です。

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[一緒に参加していた、ぷでさんの発言]
http://twitter.com/#!/pudemeri/status/167652568573546496
> 先程台湾から帰宅しました。今回のffの件でたくさんの方にご迷惑、ご心配をお掛けし申し訳ございませんでした。台湾の皆様にはすごく支えていただき、感謝してもしきれません。ありがとうございました。 
http://twitter.com/#!/pudemeri/status/167662845587226624
> 大好きな大好きな、台湾でこんな事になってしまいとても辛いです。うしじまさんを止めようとしたけれど無理でした。今回の参加者の中で一番うしじまさんに近い位置にいたのに止める事が出来ずにごめんなさい。自分の非力さに腹が立ちます。 
http://twitter.com/#!/pudemeri/status/167663691435753472
> 今回の件で私達日本のレイヤーはたくさんの人と話し合い、謝罪をしましたが本人はweb上で挑発としか思えない行動を繰り返し、謝罪する気持ちがないと発言しています。これじゃあ台湾人のみなさんがしてくれている努力が水の泡です。 
http://twitter.com/#!/pudemeri/status/167665656660107264
> 5日の夜にうしじまさんへ「起きてしまった事は仕方ないから、これからよい方向にしていこう、お願いします」 と真剣に頼みましたが、伝わらなかったみたいです。 あのとき、どういえばうしじまさんに伝わったのか今でも考えています。 
http://twitter.com/#!/pudemeri/status/167669642070982658
> お世話になった台湾の方や、連帯責任で参加できなくなったレイヤーさんたち、 ほかにも、たくさんの方に迷惑が掛かったと思います。 それを償う行動をしてほしい。 うしじまさんは力のある方です。 謝罪は難しいのかも知れないけど、うしじまさんの出来ることがあると思います。 
 (この後、うしじまさんとのやり取りが続く)

× × × × ×

 今後、台湾のイベントでは次回以降、規制やチェック制度が出来るかもしれませんし、イベント自体が世間の好奇の目に晒されるでしょう。
 申し訳ない…。
 彼女が肩書として、商業的記号として「コスプレイヤー」を名乗ってしまってる以上、日本でも台湾でも、オタクの間でのコスプレイヤーへの心証も悪化するでしょうし。
 それすらも踏み越えて前に進む逞しさが、きっと同人の世界にはあるのでしょうが。
 日本でも台湾でも。

× × × × ×

 最後にお願いをば。
 個人の主張が多くなります。ご容赦を。

 エロコスが表現かと問われれば、それも間違いなく!表現の一つだと思います。
 しかし、ファン活動のコスプレと、必ずしも同一線上には捉えないで下さい。

 うしじまさんはコスプレの世界の人ではないと思います。だから同人誌やコスプレイベントの常識では動いていません。
 いわばコスプレを使った同人ポルノですから。

 その言動を「カリスマコスプレイヤー」とか、コスプレのスタンダードの様には、絶対に捉えないで頂きたいのです。
 現状、トラブルを起こしたストリッパーが、“カリスマダンサー”として喧伝されている様なものです。

 今回の件はコスプレが悪い訳では無いんです。
 そしてまた、エロコス自体が悪い訳でも無いんです。規範意識を持って活動してる人だって大勢います。

 問題はジャンルではなく、“人”によって起こされている事を、どうか分かって下さい。

× × × × ×

 さて、「そうだったのか!学べぬニュース解説」、今回はここまで。

× × × × ×

[2.11追記1]
【台湾】パトカーの前でパンツ丸出し撮影した”うしじまいい肉”に台湾警察が激怒しているようです 中国的爆発日記 
臺北市政府 ─ 「五十隻馬」褻瀆警車,警方展開究責行動,捍衛警察形象  台北市の広報ページ
 FFに入場を断られた後、うしじまさんが何をやっていたかというと…。
 台北市内のあちこち、駅のホームや路上で、露出写真を撮っていたそうです。(マーキングじゃないんだから…)
 その中にはパトカーを背景にしたパンチラ写真があり、それがネットに公開された事で、台北市中正第一警支局が、公務のイメージを傷つけるものとして調査を始めたとの事。
 彼女の入場を断った事が、逆に事態を最悪にした気がします。

[2.17追記2]
 この記事の感想をあちこち検索して読んでますが、記事中、エロコスに対してのキツい表現や、敵視してる様に受け取られる箇所があったと思います。
 これは申し訳ない。
 書いてる人自身が「コスプレの趣旨が違うよ」という考え方なのですが、でも、このジャンルごと排除したいとかは“全く”思わないんだよ!!
(コレ過去にも何度か言ってるんですけど、読みに来た人は過去記事までは読まないものね…)
 周りにはエロROM出してる人もいますし、コミケの度にエロ/非エロともコスプレROMはほぼ全サークル回っています。いちユーザーとして継続して購入してるサークルもあります。
 この二つの間にグラデーションの様に様々な人達があって、「ファン視点で好きなキャラのエロパロを表現したい」という人も中にはいますし、必ずしもパッキリ二分化できない事も分かっています。あくまで概ねの傾向です。
 だから、問題はジャンルではなく“人”が起こしてる…って最後の方に書いたのも、そういう事です。なればこそ、 
 規制が入る前に、自制を。
 棲み分けしながら共存を。
 これが壊れた時に何が起こるのかは、もう、充分に分かったと思います。

[追記3] 
 懸念されたFFはどうやら存続に成功し、7月の開催では日本から漫画家の岸田メル先生らがゲストで登場するなど、災い転じて、別の形での日本側との交流に発展しました。


[参考になるかもしれない記事]
コミケの中の「コスプレ」小史.コミケとコスプレの分化編 
資料: 91年,コミケ幕張メッセ追放事件 


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