ハイ、ルポライター気取り。コラムニスト気取り。
 ちなみに夏コミ流行語大賞は「ローアングラー」に贈ろう!

 最初に言う。
 ちゃんとしたコスプレ写真が見たいなら、RinRin王国さんのリンク集を見た方がよっぽど良い!
http://www.pluto.dti.ne.jp/rinou/

 2014年8/15-17日に行われたコミックマーケット86において、コスプレ関連の出来事を雑感として7000字ほど書き留めるのである。
 「書いて残す」が当ブログのテーマだもの。
 語調がバラバラだったりするけど、それは各所リアルタイムで生の感情を書いているからなのである。
 認識違いもあるかもしれないので、気づいた事などあればご指摘お願いします。

× × × × × × × × 


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 鳥取城のマスコットキャラクター(を降ろされた飢餓キャラの)かつ江さん。カエル付き。
 なぜそれをやった…。

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 まんが日本昔ばなし・竜の子太郎
 なぜそれをやった…。

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 楽天カードマン
 なぜそれをやった…。

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 妖怪ウォッチ。そのもののコスプレ。
 なぜそれを(略)

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 ドラえもん?モノクマ?名前は考えていないそう。
 だからなぜ(略)

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 コップのフチ子さん
 よく見るとレオタードとタイツでちゃんと露出対策してあるのよね!
 画面奥かずはさんは前回、ふなっしー着ぐるみから擬人化少女が飛び出すというネタでした。

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 岸田メル先生(分身)さん、何やってるんスか…?


 コスプレエリアは、西駐車場がカタログでは3日目も使えるように書いてありましたが、やっぱり3日目は使用不可で、その代わり急遽、ビッグサイト西側の埠頭公園をコスプレエリアとして開放。なんとなく混乱が見られますね。

■ 艦娘×アイドル×自転車×排球

 艦隊これくしょんが初の独立ジャンル化したコミケ。
 ブームは昨夏からでしたけど、サーバーの都合で新規登録者が増えにくい状況だったので、末端までプレイヤーが増えるまでは時間かかりましたね。
 コスプレの数も多くて、島風の紐パンTバックの処理とか人によって工夫が見えましたねー。
 でも気になるのが手に持った弓とか傘とかの小道具が、人によってはちょうど目の高さになるんですよね。移動中は袋に入れるとかするべきだし、カタログや登録証の注意事項にもそう書いてあるんですけど、後述の通りそれを指導される訳じゃ無いので。

 コスプレイヤーズアーカイブの参加表明の数だと、艦これの向こうを張るのがラブライブですね。衣装のバリエーションが豊富だからパッと見じゃ気付かないケースも多いけど、実際の作品単位では艦これを上回ってたのかも。

 あと弱虫ペダルハイキューも多く見かけましたけど、女性向け作品のレイヤーって(つまり男装レイヤーね)、コスプレして自分の好きなキャラの本を買いに行っちゃうのでコスプレエリアへは行かないし、行ってもカメラマンからは食指の動かない衣装なので(世のカメラマン男性は、女性の男装姿に、あまり興味が無いのである…)、まとめサイトにもカメラマンのHPにも載らないので、実際の数に対して認識されにくいんですよね。

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 auの人間wi-fi部隊が、弱虫ペダルのコスプレで実戦投入された件。ウィッグの上にメットを被るという本格的なコスプレであった。
 もちろん完成度で言えば他のコスプレイヤーの方が遥かに高いのだけど、とにかくau社員の皆さんが、楽しそうだったのが印象的。
 普段と違う仕事でコスプレする人達で、こうも堂々としてるケースは珍しい。コンパニオン的な作り笑顔じゃなくって、本当に楽しそうだった。
 話題性においてはソフトバンクの忍者コスプレなど足元にも及ばず、au一人勝ちだったのではないかなー。

■ 思考せり、ローアングラー狂想曲…

 まとめサイトなどでも話題になっていた、地面スレスレや死角からスカート内を撮影する“ローアングラー”問題、かねてより言われていたけど、今回は爆発的な規模で表出。
 今までコスプレ界隈の人にだけ通じる言葉だったのが、今は誰でも知ってる言葉になっちゃったでしょ?
 特に初日、露出過多の衣装を着た(着てない)モデルがコミケのコスプレエリアで宣伝活動…という光景もいつもより多めに見かけましたな。二日目はコスホリと被ったのと、三日目はコスプレROMサークルの配置日なので、特に初日に集中したかも。
 公共スペースに露出過多の衣装でカメラマンを煽ってしまう事実上の痴女も、周囲に汁男優の如く群がる男たちも、彼らだけで終わっていたら生態系の完結ですが(公所良俗的にはどアウトですが)、そうも行きません。
 勘違いしたカメラマンが、エロ方面ではない制服系の女性レイヤーのスカート内まで勝手に撮ろうとするので、これは「盗撮」と言います。犯罪です。

 撮られたくないレイヤー側の自衛も大事ですが、仮にスカート内にスパッツ履いてようがブルマを履いてようが、もはやスカートの中身を撮る行為そのものに快楽を感じているタイプの人には意味がありませんし、対策はしていてもスカートの中を撮ろうとする人が出た時点でレイヤー側はすごく嫌ですよね。
 
 実はこの問題の背景には、準備会が昨年より打ち出した「コスプレの規制緩和、しかし自己責任。スタッフは不介入」という路線があります。その負の面が出過ぎていると感じてます。
 元をたどれば2011年夏のc80より、「物ではなく行動を規制する」方針にシフトして、それまで30cm以内だった小道具を長さ2m幅1m以内まで可とし、露出対策も「胸は1/3まで」「ストッキングやタイツ着用のすすめ」はしているものの禁止事項にはなっていません。
 そして昨夏2013年のc84から、これまでずっと更衣室前で露出度や安全対策のチェックと指導を行っていた“コスプレ相談所”も、ついに無くなりました。
 実質、誰が何をやっても、御咎めなしの状況になってしまったのです。

 かつて、わざとパンチラを披露してカメラマンを焚きつけようとするレイヤーが現れれば、すぐにスタッフが見つけて注意しましたが、こういった指導は、もうありません。
 かつて、撮影エリアであっても死角からスカートの中を盗撮しようものなら、すぐさま精鋭スタッフ集団が駆けつけて詰め所に連行されて行くという捕り物シーンが名物でしたが、これもありません。
 かつて、撮影時に囲みが大きくなってしまってレイヤーが身動きできない状況では、スタッフがカウントを取って一旦終了させましたが、この光景も撮影エリア閉鎖時刻を除き、もうありません。
 かつて、カメラマンには撮影エリア入口で注意点などを記したビラを配ってルールとマナーを呼びかけていましたが、これもありません。

 現在、現場のスタッフはこれらの重要な権限を失ってしまいました。(というか、拡大した規模に対して人員そのものが足りてない…)
 ざっくり言うと、コスプレを規制緩和して撮影エリアも広げた事と引き換えに、大概のトラブルにはスタッフは介入しなくなった(できなくなった)訳ですよ。放任とも言うかな。現場には忸怩たる思いがあると思います。
 コミケ準備会はコスプレを、ちゃんとした“表現”として認めてくれてて、規制緩和も放任も、広義ではその為の実験や通過点だと思います。
 でも自由度は上がったけれども、ほぼ全てのリスク管理をレイヤーとカメラマンの自衛と自制に委ねるのは、いくら何でも、無理です。
 お客様扱いしてサービスしろと言ってるのでは無いです。でも参加者の自衛の範囲を超えた部分に関しては、レイヤー個人では対応できるものではありません。
 拒否しても撮る・死角からスカートの中を盗撮する様な相手に、個人で対応は…難しいですよね。
(この辺は準備会の内部事情にも関する事なので一方的に言えないのだけれど、実際に現場を見てたら危機感を募らせるのは当然の状況なので…)
 
 次は、ローアングラー、もっと増えますよ?
 痴態を晒してプロモーション活動しちゃう人も、もっと増えますよ?
 だってコミケはそーゆー場だって既に認識されてますから。
 パンツ見せても盗撮しても罰は受けないって事、知られてしまってますから。
 そしてまた、関係ない誰かが巻き込まれます。

ローアングラー/ 同人用語の基礎知識 
コスプレイヤーズアーカイブアンケート-コミケのローアングル撮影問題、あなたは一番の原因はどこにあると思う? 

■ サークルとしての「コスプレ」ジャンル

 コスホリックが完全に、コミケでは受け入れられないエロコス系サークルの受け皿として機能している感。
 全年齢の男女が行き交いゾーニングもされていないオープン環境のコミケと、年齢制限によるゾーニングを徹底させたクローズドなコスホリでは、販売できるものの基準に差が出る(コンビニと専門店では扱えるエロ本のレベルが違うでしょ)…という事がとっくに(なんとなく)周知されている状態なのかな。
 棲み分けと言う形での共存があるなら、これがその形。
 そんな中にあって、ここ何回かコスホリのみ参加していたエロコス系サークルが、コミケに“戻って来た”姿もあった。

 でももう昔のような、いわゆるモロ出しチキンレースの時期は過ぎて、両イベントを掛け持ちで参加したサークルも、コミケとコスホリでは別の作品を用意したり、元々の性的表現は軽度だったり、露出度以外のフェチズムを追求する様なサークルであった。 
(おかげで久しぶりに買えたエロコス系のサークルもありまして…)
 昨年後半、警察の取締り基準がふいに厳しくなったため、それに併せて(2010-11年頃に問題となった)ワイセツ図画問題の再燃や販売停止祭りが懸念されたものの、実際にはそこまで大変な事にはならなかった様子。
 彼女たちだってバカじゃないもの。決してイベントを潰したい訳じゃ無いもの。
(決して、エロコスというジャンル自体が悪者にはされるべきではないよ。エロは人間の根源的欲求だから。問題を起こしてるのは常に、ジャンルではなく、“人
だから)
(歩き回っても全部チェックできた訳じゃ無いから、エロコス系も、もっと詳しい人には別の見方があると思う)
 
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 準備会は実写メディア専門のスタッフを複数用意して対応。

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 そして特に最近増えたのが、おそらくは多くの人間が「コスプレROM」というものに抱いているイメージとは真逆の、女性レイヤーによる男装コスプレBL写真集
 直接的な性行為の描写はあんまり無いのです。刀を合わせ、睨み合い、ボールを追い、汗を飛ばし、血をぬぐい、肩を組む様な、描写としてはその位のが多いけど、確かにBLなのであった。
 人気サークルになると、売り子してる男装レイヤー(♀)が、行列した女性ファンからサインをねだられる姿もあった。何となく宝塚なノリだね。
 この流れ自体は前からあったけど、昨年辺りから特に目立って大きくなった気がする。それだけROM写真集という形態が普及したのではないかな。
 カタログの880-882p、JとKの間辺りをご覧あれ。コスプレROMサークルのサークルカットが他は全体的に肌色で白っぽいのに対し、BL系コスプレROMサークルの部分は甲冑や学ランや血糊で黒っぽいのである。それだけキャラクターやシュチュエーションにこだわる傾向。

 コスプレROMに女性向けの需要が高まってるのは事実で、他にも、肉体を生かした男性レイヤーによるFree!や薄桜鬼やハイキューのコスプレROMもあった。まだ総数は少ないけど、男性レイヤーも自分を積極的に“商品化”する時代が幕を開けたのかもしれない。

 他にも男性レイヤーによる女装コスプレROM女性レイヤーによる男装した上で女装した男の娘ROM(ややこしい)などなど、性超越か、性倒錯か、この人は男か女か、ザッと見ていても面白かった。
 
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 また、便宜上はコスROMサークルと呼ばれるものの、このジャンル全体として、紙ベースへの回帰も起こってるかな?と。
 いや、回帰じゃないのか…?
 同人誌と違って、元々ROMベースが当然だったこのジャンルにおいては、逆に紙ベースで(ページ物の写真集を)発行する事がさらに上のステータスの様にされている節は有ってですね。
 やっぱりROMは大量の画像を入れられる利点が有るものの、ゆっくりじっくり読むには、紙ベースでページをめくって楽しむアナログな写真集形式が望まれたのだろう。背景には本文フルカラー本を安価で対応する印刷会社の登場が有る。

 究極的な存在感を示したのが、ののみー氏(♂)による艦これ長門コスプレ写真集は、背景CG+コスプレ要素に数々の鬼才が集結した、全ページフルカラーでA3サイズという大迫力の超大型本であった。単独サークルではなく各所に委託での販売。
 80年代コミケで隆盛した星矢やトルーパーでは通常のA5・B5サイズを超えて、A4サイズ大型本が頻繁に登場したとされ、現在でもA4サイズでの写真集やイラスト集などは見かけるが…A3というさらに倍のサイズ!見開きページに至ってはA2サイズ…。
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 もうコミケカタログすら並べると手帳くらいに見えるレベルで、本棚に入らない!という声とともに、伝説となった。
 サイト http://nonomy.co.uk/aa-0003/

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 もう一つ重要。
 サークル申込書に付いてくる、コミケットプレス40号に掲載された「注目する作家」アンケート結果。
 このアンケートはサークル申込書の裏に記入するもので、準備会がちゃんとした統計結果を発表するのは実に16年ぶりとの事。当然ながら独立ジャンル化してまだ2年の「コスプレ」は今回が初の統計対象である。
(そもそも16年前はウィンドウズ95の時代で、自家用パソコンで写真集を編集したりできない。デジカメだって全く普及していない)
 注意点として、まずコミケ参加者全体ではなくサークル参加者のみ(落選含む)へのアンケートである事と、女性よりも男性の方がアンケートに回答する率が高いので、必ずしも全コミケ参加者の創意を反映している訳では無い…けれども。

 コード231コスプレにおいて「注目する作家」に挙がったのは、サークル“SleepyRabbit”の柚コトキさんであった。
 サイト http://fotologue.jp/sleepyrabbit/ 
 ブログ http://sleepykotoki.jugem.jp/ 

 ジャンル外の方に分かり易く言うと、コスプレ水中撮影のパイオニア。
 現在では他にも挑戦者が増えているが、本格的にそれを行った先駆者で、ご本人は「いつか宇宙で撮影する際の予行練習のつもりだった」とつぶやいているけれども。
 このサークル、写真全体におけるモデルの面積が相対的には小さい。水の流れや、異国の街の情景の中にフッと入りこんでる様な、シュチュエーション写真なのです。
 傾向的にはどうしても肌色面積の多くなりがちな「コスプレ」ジャンルなのだけど、その中にあって、全体的なアート性とインパクトで他サークルからも一目置かれた存在という事になるでしょう。
 「コスプレ」ジャンルの多様性の一角を、突き抜けたクオリティで見せてくれたと思うし、この統計結果は一つの記念碑です。

 もちろんコミケは表現物の価値に優劣をつける事はせず、有名/無名、売れる/売れないによって価値判断される場ではないので、他のサークルにも価値の優劣は無いのだ。自分なりの表現を見つけて突き進めば良いと思う。
 「我が道をいく」者が強いのだから。

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 他にも、SFチックなシーンなセットを組んだり、ジオラマだったり、緊縛テクニックを写真で紹介したり、いつの間にかカオスとなっている「コスプレ」ジャンル。
 かつて80年代まで原作の絵柄を模倣する事を競っていたアニパロ同人誌は、キャプテン翼ブームの爆発を経て、自分なりのアレンジした絵柄で表現する方向へシフトして行ったと言います。同じです。
 純粋な再現性ではなく、もっと自由でブッ飛んだ発想で競う時代が幕を開けているのだと実感。


 こういった新手の切り口が次々と登場してくるのは、取りも直さず、「コスプレ」ジャンルの勢いや、熱の現れだと思う
 コミケにおいてジャンル自体がまだ若く、同人誌とは異なる系統から出現しているのでベテランも殆ど居ない。危なっかしさやトラブルも多いけれど、表現として非常に面白いよ。
 もちろん巷で言われる様に、軽度の描写も含めてエロ要素を多く内包していて、それも一大勢力でありウェイトを占めているのだけれども。それだけではない。
 「コスプレ」という言葉で見えにくくなってしまっているけども、実際は実写やCGや立体造型物、あれこれ駆使した表現技法を総称したジャンルであり、アニパロもエロもBLもメカミリタリーも旅行記もアクセサリーもグッズも、色んな要素が混在しているから。
 ちょっと一回、歩き回ってみては如何でしょう?

「エロだって多いけど、エロだけじゃない!見てくれ。もっと沢山の、色んな表現が有るんだ!」
 …これ、この30年位、同人誌方面の人達が叫び続けていた事と一緒ですよねっ!?

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 と、ここで終わってしまうとキレイすぎるので、自分なりに体を張った「ローアングルOKと叫びながらカメラマンにぱんつを見せる箱ミク」写真を晒して、読後感を台無しにしておこうと思う。
 僕自身はあくまで、今現在コミケ内で起こっている事象の風刺漫画のつもりである、と言い張る。

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[あまり関連してない関連記事]
コミケの中の「コスプレ」小史.コミケとコスプレの分化編
(2011年の記事) 
資料: 91年,コミケ幕張メッセ追放事件