一カ月以上も空いちゃいましたが、忘れてないよ!
 親バレ編という究極のサイコホラー展開を経て、ハートフルでヒューマニズムドラマの片鱗を見せた山場が続いてたので、区切りの良い所で…って考えてたら遅くなりまして。


【13話】

 親バレ回です。究極のサイコホラーです。
 ハッキリ言って、同じ家で暮らしている以上、ここを読むアナタも親バレは不可避です。あきらめてください。
 母の佐和子が「ずいぶん前から知っていた」とある様に、親御さんはフツー気づいてます。
 アナタは隠してるつもりでも、カーペットに絡まったカラフルな抜け毛、年頃の娘に似つかわしくない接着剤の匂い、部屋に並んだ首だけのマネキンなどで、何となく気づいています!話し出すキッカケが無いだけです!!
 レイヤー以外の人に説明すると、日本のコスプレ文化って世界的に見てもクローズド(僕はガラパゴス化と言ってますが)なので、「ひっそり楽しむもの」「あまり大っぴらにできない」って人が多いのです。
 それは、オープンにする事で「自分の好きなものを否定される」のを恐れているからだと思いますが。


>グラビア「コスプレ写真が出来るまで」
 材料集めと制作と撮影で、計87時間12分。多いと取るか少ないと取るか?
 過去に同じような構造の服を使った経験があれば、もっとずっと短くなるだろうし、裏地までこだわる構造だったりすれば時間は伸びるので、単純にコスプレ衣装の労力を時間で表現するのは難しい。
 ってゆーか衣装って、こーやって作るんですね…!着ぐるみレイヤー的には新鮮でした。
 実際にはレイヤー界隈には「まだ布」という言葉があり、上級者になると前日まで「まだ布」だった物体を、レッドブル飲みながら徹夜で一着の衣装に仕立てるというスキルを持つ。
 目のクマ?フォトショで消すんだよ!

 この企画ページで衣装製作とモデルを担当したSetsuraさん、このグラビアでは顔はハッキリ写ってないけどCureとアーカイブに登録してらっしゃり、そしてウルルコスを夏コミで披露していた!
(正確には、ウルルのコスプレをした渚のコスプレ…なのか?)

>「あなた今年いくつになったの?(略)なのにこんな子供みたいな恰好で恥ずかしいったらありゃしない」
 グサッ。
 この3Pくらい続く、一連の母からの説教シーン、同じ様な事を言われた経験を持つ人も多いのでは…。


【14話】

 渚とキャッチボールを始めた父・将は、渚の母であり自身の妻・佐和子が、ゴスロリ趣味をやめた頃の昔話を語り出します。
 この回は全編が回想シーン。

>ゴスロリブーム
 正確にはゴシック・アンド・ロリータ。
 少女性の高いフリフリな服装を好むロリータファッションは1980年代から日本でも存在したが(ピンクハウスなどなど…)、そこに暗色を基調としたダークな幻想性を融合させた日本独自のファッションスタイルがゴスロリである。
 暗黒やドクロや処刑具等のモチーフを取り入れる事が多く、それ以外は現在では白ロリ・甘ロリなどと呼称されて区別される場合が多い。
 分かり易く言うと、「下妻物語」の深田恭子は甘ロリで、「きせかえユカちゃん」のゴスロリさんや「トッキュウジャー」のグリッタ嬢はゴスロリである。

 1990年代後半のビジュアル系バンドブーム(主犯:マリスミゼル)の頃に爆発的に増殖し、2000年代に入った頃、休日の原宿はパンクとゴスロリが競い合うように闊歩し、そこかしこに鎌持ったりシルクハット被ったり全身シルバーアクセやチェーン巻いた少女たちで溢れ、ストリート系ファッション誌がそれを取り上げた事で(主犯:KERA)さらに増加をくり返していった。
 2010年代より、国策のクールジャパン戦略に沿った文化輸出(主犯:経産省)、ポップカルチャー外交に沿った文化交流(主犯:外務省)の一環にまで発展する。
 ってか、きっとゴスロリはもっと詳しい人がいっぱいいるだろうから迂闊に踏み込んで書かないようにしようっと。

・ゴスロリ年表
http://www15.atwiki.jp/hisuzusia/pages/325.html

 コスプレとゴスロリとは一見して親和性が非常に高く見え、よく混同されるが、ゴスロリはあくまでファッションであり、生活の延長で着るもの。コスプレはホビーであり、非日常の空間で着るもの…という感覚の違いがあるため、一緒にすると怒る人もいる。昔の佐和子もそれ。
 「公共の場所でのコスプレはマナー違反か?」という論争には、しばしば「ゴスロリやパンクの服装で出歩く人がいても特に迷惑ではない」という論説が加わり、「コスプレとゴスロリは違う」「端から見たら一緒だ」というような炎上パターンがくり返されてきた。

 実際は読切り版の舞台は(執筆時の想定では)おそらく現代であり、つまり“90年代後半のブーム初期からずっとゴスロリを続けて来て34歳になってしまった女性が、ついに好きな事への見切りをつける”物語だった。
 その後、この連載版の開始に併せて、読切り版が実は母・佐和子の物語だった…という事になったので、時代考証が26年程ズレてしまうのであった。当然ながら80年代後半にゴスロリ文化はまだ無い。劇中には登場しているスマホもDVDもまだまだ無い。(そこは仕方無いけどさ)
 なお読切り版はWEB掲載時から単行本収録時への大きな変更点として、「プリキュアみたい」というセリフが「魔女っ子アニメみたい」になっている。

>ブラウン管テレビ
 回想シーンに登場。
 正面から見ると中央が膨らんでおり、奥行きと厚みがある。
 ハイビジョン対応型も存在したが、2000年代以降、薄型の液晶テレビに取って代わられ、急速にその姿を消してゆく。
 ブラウン管テレビの製造時期はまだアナログ放送用チューナーしか無かったため、僅かに現役だった物も、2011年の地上波デジタル移行に伴い現役を去った。
 だがケーブルテレビに加入している世帯では地デジチューナーを内蔵していないテレビでも映るので、探せばまだ使っている人もいるだろう。
 昭和末期、このテレビの厚みを利用して上にはビデオデッキや、シャケをくわえた木彫りの熊を置く事が、「一億総中流時代」の日本の家庭のスタンダードとされた。


>VHSビデオテープ
 1970-80年代中期まで熾烈を極めたビデオ規格戦争…。
 ソニーが開発したベータ形式に比べて、日本ビクターが開発したVHS形式は画質では劣っていたものの、量産しやすく、多数のハード及びソフトメーカーを陣営に引き入れる等の戦略が功を奏し、ビデオ規格のスタンダードとなる。
 80年代前半までは家庭用ビデオデッキが高額であり、その所有はオタクの憧れであった。
 たまーにデッキ内のリールがテープを噛んでしまい、イジェクトボタンを押してもカセットが出て来なくなる事故があり、レンタル屋で借りたビデオだったりすると心臓が止まりそうになる。とりあえずドライバーで本体のネジを外して分解してだな…。


【15話】

 前回から続く父と娘の会話、夫婦の回想シーンですが、趣味を捨ててから何かが欠けたようになっている妻に対して「洋服に心を捧げた時間よりも長く寄り添っていけるように」と決心し、その後、渚が生まれて毎日が慌ただしく過ぎていった…という父・将の語りから、もう一度、母と向き合う事を決めた渚…。
 コスプレ的に解説するような事は何も無し!


【16話】

 「コスプレなんてやめなさい」と怒っていた母に、改めて渚が話しかけた所から、母娘で一緒に料理しながら会話する展開へ。
(この料理シーンは、ゴスロリ趣味を捨ててからの佐和子が、毎日ちゃんと料理をするようになった…という14話が伏線で、趣味を捨ててフツーの主婦として生きた事への象徴なんでしょうね…)

>妄撮とのコラボ表紙
 コンプレックスエイジにお色気要素なんて要らねェッスよッ!!
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>「いつから知ってたの?」
 娘が高2の頃にコスプレを始めてすぐに気づいていながら、ずっと知らないフリをしていた母でした。親御さんは気づくのよ…。

>「もうお母さん、やめろとは言わない。けど、好きならちゃんと向き合いなさい」
 ついに折れた母。親に言われてじゃなくって、自分で考えて、いつまで続けるのか決めなさい…という意味だと思われる。

>「大好きだったから、自分の理想と現実が離れて行くのが許せなかった」
 昨年WEB公開された読切り版への感想で最も多かったのが、「ゴスロリが好きなら年齢関係無く続ければいいじゃん」的なものでしたが…。
 違うんですよ。着る事自体が目的じゃないんです。
 ゴスロリ服を着て、お姫様になるのが理想であり、目的なんです。
 だから、自分より若くて似合う子へからの突き上げや、真っ暗な部屋で鏡に映った自分の顔が、耐えられなかった訳ですよ。

>「レイヤーって何?」
 何度も出て来てるけど、「コスプレイヤー」の略語。もっと言うと「コスチュームプレイヤー」の略語。
 アニメ漫画ファンによる仮装趣味に「コスチュームプレイ」、略して「コスプレ」という名称を与えたのは1970年代末のコミックマーケットが発祥とされます。メディアでは秋田書店の月刊マイアニメ(86年休刊)が1983年から「コスチューム・プレー大作戦」という連載ページを始めます。この時の誌面で客観的にコスプレ愛好家を指して「コスチューム・プレーヤー」という表記が出てきます。
 が、当時まだ「コスプレイヤー」「レイヤー」というおなじみの略語は出てきません。コミケカタログでも80年代は「コスプレの人たち」「コスプレさん」などと書かれています。

 コスプレ愛好家を、「コスチュームプレイヤー」→「コスプレイヤー」→「レイヤー」とする略称パターンがオタク層の大部分に定着するのは、90年代に入って以降だと思われます。
 これは次世代機戦争による格闘ゲームやRPGブームで急激にコスプレ人口が増加していった時期なのですが…。
 同時期、風営法の改正等で街頭での呼び込みが難しくなっていった風俗店が、新規客よりもリピーター確保のために始めた衣装サービスのバリエーション化も「コスチュームプレイ」と呼ばれ(○○プレイ、という呼称は風俗での定番)、違う意味でありながら混同されるケースが非常に多かったので、ファン活動としてのコスプレ/風俗的サービスとしてのコスプレ、それぞれの愛好家を区別するために、前者の方が自らを「コスプレイヤー」「レイヤー」と、ちょっとカッコつけて表現するのが定着した…ってのが大きいんじゃないでしょうかねぇ?
 もはや民俗学とか考古学の世界ですな。この辺はもっとちゃんと資料集めて研究したいなァ。
 コミケットカタログにおいては「コスチュームプレイヤー」表記だったのが、1995年夏コミから「コスプレイヤー」という略語が混じるようになります。
(マンレポだとそれ以前から「コスプレイヤー」表記が入っていましたが)

 渚が生まれたのは1988年頃なので、それ以前にゴスロリをやめていて現在では60歳を超えているであろう母・佐和子が「レイヤー」という言葉を聞いても、「コスプレイヤー」の略語だとは気づかないでしょう。

「コスプレ」という単語の起源について - Togetterまとめ

 さて、カミングアウトの上、堂々と綾(アヤ)を自宅に呼んで、衣装制作を教える事にした渚ですが… つづく。


■付録:親バレ対策を考える

 無理です!
 以上。

 …あぁ、時間稼ぎでも良いから対策したいって?
 んー…じゃあねー…
 中古でも小さくても良いから、ミシンは自分用の物を買いましょう。
 何かあった時にすぐ片付けられて床を汚さずに済むよう、ゴザや簡易カーペットみたいなのを敷いて、道具類はすぐ箱に詰めてフタを出来るようにしておきましょう。
 窓際に頭部マネキンとウィッグ並べるのは一発でバレます。
 部屋の出入口には足拭きマットを置いて、ウィッグの抜け毛やハギレが足にくっついて居間や風呂場へ運ばれないように。
 出来れば自宅内では作業しないで済むのが一番です。
 友人宅で縫製するとか、購入派の場合は買った衣装を友達の家に預けておく…という手もあります。

 それでも、永遠に隠し通す事は不可能です…。
 何かを隠しているという行為自体が、親御さんには何となく伝わってしまうからです!
 親御さんの願いは、特に娘に対しては、人並みの幸せを…つまり結婚して家庭を持ってほしい、趣味に時間を使って手遅れになってほしくない…というのが本音ですよね。
 たぶん40代後半以上ならバブル世代なので日本がまだ長期安定・上昇傾向の中で生きて来たので、人それぞれにある筈の幸福観というものを、どうしても、型に当てはめて考えてしまいがちです。
 だから娘が20代も後半になってもまだ趣味に人生の大部分を注いでいたら、どうしても不安になってしまうのが親心だと思います。それは仕方無いです。

 ましてコスプレって、演劇とか音楽とかダンスとかと違って、そのものは職業(生業)にはならないですし。

 理解ある家庭も、無関心な家庭もあるでしょう。でも、コスプレに対して嫌悪感を持つ家庭だってある筈です。
 だって親御さんの世代(特にお父さん)にとって「コスプレ」という言葉は、スポーツ新聞や週刊誌で見かける風俗用語なのです。娘がそんないかがわしい趣味を持っていると誤解されたら…?
 むしろ自分から機会を見つけて「実はこういう趣味があって、漫画好きな友達も出来て~」みたいに先回りして健全さをアピールしておく事で、情報戦におけるイニシアチブを握れる可能性もあります。
 隠し続けていきなりバレて「コスプレ?いかがわしい事でもしているのか!」となってしまうよりかは、悪いイメージを付けないように、あるいは悪いイメージから転換できるように戦略を練るべきだと思います。
 現在ではコスプレが新聞やニュースで、趣味の一つとして取り上げられる事が多くなったので、それらの情報を入れて慣らして、耐性を着けさせておくのが良いと思います。「あ、こーゆーの、クラスの友達にも文化祭でやってる人たちが居て…」みたいにさりげなく話を振って、反応を調べてみるのも良いのでは。
 理解はできなくても、世の中にはアニメ漫画の格好して楽しむという趣味の世界が存在する事くらいは、分かってもらえるでしょう。
 いきなり全部カミングアウトするよりかは段階を踏んだ方が、軟着陸できます。

※ これらを実行して、こじれても自己責任ですからね?

 結局、職場バレの回でも言いましたけど、コミュニケーションの問題なんですよね…。
 あ、でも最近は、親がコスプレ趣味で、子供には秘密にしてる…って家庭もあり得るのか!?

 私?
 子供の頃から、買ってもらえないロボットや変身玩具は自分で紙工作して作ってたからなぁ…。
 そのサイズがだんだん大きくなっていって、ダンボールのロボットを積み上げて運び出すようになったので、家族へ明確にカミングアウトした訳では無いのですが。
 ある年のコミケから帰宅後に、何か夕方のニュースを見ていたらしき母親が一言、「お前が何をしに行ってるかはよーく分かった」とだけ言われた時の光景は、今でも鮮明に覚えておりますが…。

 …。
 こんなに読者の心を折ってくるコスプレ漫画は無ーよ。
 でも、読んじゃうんだよ!
 コミックス2巻は11/21発売決定ですって!
 「楽しめ。血を流しながら」


 そして、17話のボカロ編へと続くのであった…
 

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