【新春特別企画】「コンプレックス・エイジ」作者・佐久間結衣先生インタビュー-コスプレイヤーズアーカイブ

 なかなかコスプレイヤー視点で突っ込んだ質問と、それに回答いただいたと思います。
 ありがたやありがたや。
 で、やっぱり「作者の実体験」説ってのは違ってて、他のインタビューでも発言してたと思うんですけど、佐久間さんはコスプレイヤーへの取材を基に描いてらっしゃるのであります。

 このインタビューの質問文、カイブニュースとの縁がありまして、僕も一部つくりました。どれが該当するか何となく分かる?
 ホラ、原作者や声優さんに自分のコスプレを褒められたりツッコミ入れてもらうと嬉しいじゃん!質問にお答えいただくのも似た心境ですよ!プチ自慢。


CIMG9143
冬コミでの講談社ブースにて、複製原画風のカードを配ってらしたモデルさん。

 さて年末年始を挟んで、メンヘラ女による匿名掲示板を使った中傷という熱いテーマをぶつけて来たコンプレックス・エイジ、3週まとめて振り返ります…。
 もう新展開の今週号出ちゃってるけど、ここまででまとめるのがキリが良いので。

× × × × × 

【30話】
 憧れの渚を独占したいりうは、未熟なくせに渚から可愛がられている綾の存在を許せない。
 匿名サイトで誹謗中傷をくり返し、それを親切を装って綾本人に知らせた挙げ句、しばらくコスプレから遠ざかってみる事を奨める。精神的に追いつめられる綾。

◆「やっぱりあんな子、凪さんに相応しくない」
 りうの性格に関して「クレイジーサイコレズ」という感想があったので。まんまですが。
クレイジーサイコレズ-pixiv百科
 
 渚(をコスネームで凪と呼んでる)へ抱いていた感情と独占欲が、強い憧れなのか、それとも恋愛感情なのかは明言されていないので、りうの性嗜好は分かりませんが。店に頼んで、渚へのメッセージ付きチョコケーキ用意してる(32話)くらいだから…。
 具体的な統計などは無いけど、レイヤーズアーカイブの同性愛・両性愛同盟が2900人超。メンタルヘルス同盟が1100人超。総数20万人SNSのコミュニティ機能としては多いのか少ないのか。いやしかし、メンヘラより同性愛の人数が倍以上か!
(メンヘラがデフォの世界なのであえてコミュニティには参加しないのかもしれないが)
  圧倒的に女性オタクによって構成された趣味の世界なので、現実の男性には壁を感じてたり、同性で抱き合ったり顔を寄せ合う身体接触も多いので、そういった嗜好に目覚める人が一定数いてもおかしくは無いけれども、中二病をこじらせているだけの性倒錯は「なんちゃってビアン」などと形容されるのです。

 SNSのプロフィールに書く際、どうとでも解釈できるがカッコイイ言い方をすると、
「基本セクマイ。ビアン寄りバイ」
訳:
「私はセクシャルマイノリティ(性的少数派)で、どちらかと言えば女性同士での関係に興味を持っている、バイセクシャルです(あくまで自称)」
 くり返すが、りう自身の嗜好は明言されていない。

◆コスプレ博inTFT
 志保が参加したTFTの入口のパネル、ついに実在のイベント名出しちゃったよ!
 湾岸地区の会場で「コスプレ博」を主催する勇者屋さんは、昨年のプラザ平成でのイベント開催時に劇中の入口パネルを再現して置いておくなど本作の愛読者なのですが、今回は逆に劇中にそのイベント名が初登場。

◆「コミケがない時のTFTは人が少ないなー」
 TFTで最大規模は、夏冬コミックマーケットやGWスーパーコミックシティにいわば便乗開催する「となりでコスプレ博」なので、それと比べたら平時(?)は少なくなるけど、さすがにこんなガラガラにはならない…んじゃないかな…。
 TFTはある種の独特な雰囲気で、ガチなカメラマンが多い。窓が大きく大理石が光を反射するので、室内でも肌色がやわらかく綺麗に出やすい。
 志保は「TFT」と呼んでますが、このようにイベント名でも主催名でもなく、会場名だけで認識してしまうのはコスプレイヤーの通例かつ悪癖だと思っている。撮影メインの発想だと「重要なのはロケーションで、主催団体は何処でも同じ」になってしまいがちなんだけど。
(コミケやゲームショウみたいにコス撮影以外がメインのケースや、コスプレサミットのように広範囲に渡るケースだと、ちゃんとイベント名で呼ばれる)

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【31話】
 ショックから学校もバイトも休んでアパートに引きこもる綾。
 匿名サイトでの中傷を知り、心配した志保は、綾を部屋の前で待ち続ける…。
 中傷が無名の綾を標的としている事と、それが先日の撮影会の後に始まっている事に気づいた。
 じゃあ、犯人は…?
 渚は、りうをレストランへ呼び出す。

nyao猫のロゴ
   のマーク


 志保が綾の部屋の前で、寒さに耐えながら帰りを待っているシーン、よく見るとカイロに描かれているマークがこの、猫らしきキャラ。頭巾つき。
 この猫、千田君の勤務先のNYAO!など色んな所で出てくる。そういえば綾と志保の通学先も「黒根子大学」なのだった。
 無駄に真面目に解釈すると、ITから日用品etc…この世界の経済を牛耳っている巨大グループ企業のマークなのかもしれない。いや、元はNYAO!のアプリのキャラで、ファッション雑貨やカイロとコラボして商品展開してるのだろうか。本作のラスボスな可能性もある。

 6話で葉山の巨乳を本物だと看破して以降、あんまり活躍の無かった志保ですが、綾との青臭い友情を描いた印象的なシーンでした。

◆コスPHOTO
 志保の回想シーンで机の上にさりげなく置かれている雑誌。
 ホビージャパン社が2014年、この「コスPHOTO」と「コスPHOTOビギナーズ」を出版し、さらに「コスプレJAPAN」なる雑誌の創刊へと続いたが、同社のコスプレ出版物はこの3冊で現在止まっている。
 なお「コスプレJAPAN」には本作の佐久間先生インタビューが1Pほど掲載されているのでチェキ。紹介し忘れてたけど。
 個人的感想としては、第2弾の「コスPHOTOビギナーズ」表紙の左側のモデル、下瞼とつけまつ毛の隙間が見えていて、ここをまず修正したれや!と思った。
 PHOTOと言いつつ、モチロン画像加工にもページ割いてますよ?
 加工までがコスプレですから。


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【32話】
 渚・綾・志保に問いつめられ、自分へ疑いが向けられた事へ涙を見せて否定する、りう。
 開き直るように「人に評価をされて当たり前じゃない」という価値観を持ち出した彼女の考えに賛同した渚は、しかし「論点がズレてる」と制した。
 「これは単なる誹謗中傷」「わたしは許さない」と言い切る渚。
 「何で渚さんはそんな出来損ないを守ろうとするの…?」「何でアタシじゃダメなの?」りうは追い詰められ、今度は本当の涙を流すが。

◆「つまんねぇの」
 いい表情だ…りう!
 見破られた瞬間にプチッと豹変するのは、ホラ!ダンガンロンパ的な!
 りうが論点を逸らした時点で、おそらく渚は「誰がやったかなんて正直どうでもいいわ」とか言いつつ確信してましたね。

◆「ババアのくせにいつまで幼女のカッコなんかしてんの?」
 とりあえず年齢っていう絶対値を使って相手をおとしめる!捨て台詞としては最高!
 先週、このコマの画像が色んな人によってツイッターに拡散されていたが、当然ながら26歳がコスプレする事を否定しているのではなく、そういった悪態をつかれてもコスプレし続ける主人公の物語である。

◆ ω
 りうの口。
 上唇を突き出したアヒル口を意識してるのだろうが、上記の捨て台詞を吐く際にもこの形のままだったので、大したもの。
 絵文字としては「オメガ」を小文字に変換。
 特にコスプレイヤーを含む自分大好きメンヘラ女子が、可愛さアピール全開でスマホ自画撮りする場合においては、この口をする事が国際条約で定められている。


「アヤちゃんが従う必要なんてないんだからね」
 「ごめんね 形は違ってもわたしもりうさんと同じなの…」

 りうの姿に以前の自分を重ねた渚。
 今まで自分の完コス主義を他人にまで押し付けて傷つけてきた事への感慨が溢れます。
 「嫌われるのは慣れっこなんだから」ってシメも、渚自身が自分の尖り方を自覚してるんだろうなー…。
 彼女のコスプレ観にまったく共感は出来ないけどもね。
 生き方としては少しカッコイイ。

× × × × × 

 渚の揺るぎない価値観が見えた回でした。
 彼女の完璧主義は「評価を求めてる以上、何も批判されても構わないし、自分でも批判する」って前提なんだけど、「匿名での誹謗中傷は許さん」という立場ですね。
 そう考えると、第1話で初対面りうに「何ソレ」って言っちゃうのも、葉山に面と向かって「わかってるじゃないですかみっともないって」って言っちゃうのも、彼女なりに嫌われる覚悟で伝えてるんですね。

 でも、そんな渚に近づきたくて、渚を自分だけのものにしたいりうとは結局、まったく話が噛み合ってないんですよね。
 渚は「文句があるなら匿名ではなく、嫌われる覚悟で本人と向き合え」って言ってるんだけど、りうには通じてないんですね。結果として、渚は(完璧な)りうではなく(出来損ないの)綾を護ったのだから。
 自分のものにできないなら、いらない。「ババアのくせにいつまで幼女のカッコなんかしてるの?」って捨て台詞は、問いかけに対して、何の答えにもなってないんです。りう、犯人が自分だったかは最後まで認めずに去りました。本名すら明かしてませんね。

 何かもう、この二人の完コス派レイヤーによる怒濤の会話シーン、悟空とベジータとの死闘を見上げてるクリリンの心境ですよ!戦闘能力が高過ぎて割り込めねーよ。もう。
 単行本だと4巻辺りに収録されると思うので、この会話シーン、じっくり読み返して!!

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 ほぼ4回に渡って描かれたこれら匿名サイトでの中傷問題ってのは、ネット上に容姿を晒しているコスプレイヤー層にとっては割と普遍的なテーマであるらしく、数少ない他のコスプレ漫画でも扱われております。

男装少女×コスプレジェニック-yahooブックス
  この漫画、乙女ゲームにハマった長身女子高生が男装コスプレを始めて、イベントで見かけた有名イケメンレイヤーの正体が実は同級生のちょっと近寄りがたい先輩男子で、さらに主人公の子供の頃の初恋の相手だった…という、(こざかしい)少女マンガ展開で、まー監修のAcos(アニメイト)とCureがどんだけ女性ばっかりメイン客層として考えてるかよーく分かるよッ!
 ヌルイながら、こっちでも主人公に嫉妬する少女が別アカウントでイヤガラセメールを送りつけてきたり、イベント会場シーンで誰々を匿名掲示板で叩いてやろうと噂してるレイヤー女子が描かれます。
 
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 ホラ。
 元々コスプレ界隈って、「インフレ気味に褒め合う」って文化(?)があるじゃん…?
 逆に言うと、批判が割とタブーなんですよ。
 漫画やイラストだと、作品への批判≠作者への批判なんですけど、コスプレってどうしても作品への批判=本人への批判みたいに、一緒くたになってしまいがちなので。

 「この画が下手」って言われるのと、「このコスプレがブサイク」って言われるのは、精神的ダメージに差があるのは理解いただけるかな?直接自分の容姿に関わる事を否定される訳よ。
 思ってても言っちゃったら角が立つし、敵に回したら自分が悪い噂を流されるかもしんないでしょ。
 だから堂々と言えない分、匿名の世界で陰湿化する傾向がね…。

  それがしゃらくせえと思ってたので、僕は一応の文責や根拠を示す形でブログ書いたりしていた所(個人のコスプレに対しては殆ど批判は書いてないんだけど)、当然ながら「評論家気取り」「ルポライター気取り」とも言われるようになったので、じゃあ私も、渚を見習って堂々と言います!
 『嫌われるのは慣れっこなんだから』
(※あそび尽くす覚悟を持ちなさい)

 そんな駄チワワさんが昨秋から連載始めたコスプレイヤーズアーカイブ内の「駄犬の切り貼り実験ノート」、こっちもよろしく!


 りう、発売中の33話にも2Pほど登場してるんですが、怖いキャラのまんまだったので、さらに再登場しそうな予感。
 んで単行本3巻は2/23発売っと…。 



単行本は2巻まで。コスモ前号にはウルル型紙付属。