3/1にリブロ池袋本店で、単行本3巻購入者にサイン会ですって!
 しかもこの告知する講談社コミックプラスのツイッターや公式サイトでも、「コスプレ残酷物語」って書いてますからね。ストレート過ぎるだろ!


 「描写が細か過ぎてコスプレイヤー以外の一般的モーニング読者層に今イチ伝わってなさそうで勿体ないから、レイヤー視点から勝手に解説」シリーズ、今年も続くよ。3週まとめて。

× × × × × 

【33話】
 葉山の再上京を祝う女子会の席で、なぜ自分を助けてくれるのか不思議がる綾に、「コスプレ始めたばっかの頃の渚にソックリだからよ」と教える公子。
 盛り上がる一同に、公子はさらに伝えた。
 「私ね…結婚する」


◆東京ドームシティ
 公子が立ち寄ってるのは「後楽園ゆうえんちで僕と握手!」でおなじみ。関東コスプレイヤーの聖地の一つ。
 97年に「後楽園ゆうえんちハロウィンフェスタ」を開催し、この遊園地やテーマパークを使ったコスプレイベントのパターンが全国に広まり、新たな集客パターンとなった。
 01年にリニューアルされ、遊園地を含むこの一帯を東京ドームシティ略して「TDC」と呼称しますが、この略称はコスプレイヤー以外にはほぼ通用しません。よくディズニーシー=「TDS」と混同されます。
 なので、学校や職場で「◯◯さん、TDCって行った事ある?」みたいにサラッと聞いてみて、ディズニーシーに間違わず東京ドームシティに関する内容を答えられたら、その人はつまり…。

 TDCに入っているコスイベ主催団体は二系統あり、「TDCコスプレフェスタ」はコスプレチッタやヘブンなどコミケ準備会系のスタッフが多い。「レイヤーズパラダイス」は老舗の勇者屋・C-NET系スタッフが多い。これらはクローク運用などで違いがあるが、ルールはほぼ同じ。
(昔は「コスプレエキスポ」とかもありましたね…)
 時期によるがだいたい2000円強の参加費を払うと、乗り物乗り放題、クロークあり、ダンパあり、撮影スポット多数、21時まで開催…という事で丸一日遊べてしまうので、初心者~ベテランまで愛好者多数。
 と言っても11年の落下事故以来、コースター系が撤去されてしまったので、乗り物が少なくなっているのだが。
(隣接するラクーアには他に大型マシンがあるが、乗り放題の対象では無い)

 最盛期は3500枚の前売券が土日両方完売し、当日券も争奪戦になっていたものの、しかし近年はルール改定が行われ、ヒーローショウの行われる時間帯は特撮コスでGロッソ付近に近づかない事や、女装や軍装の集団化は避けるなどの枷がはめられた事から参加者減少に転じ、往事の勢いを失った。現在は土日ではなく単日開催パターンが多い。

 さて劇中の描写に関してですが。
 旧後楽園ゆうえんちやとしまえんとの大きな違いは、フリーゲート式(03年から)である事。
 つまり入園料を払わなくても敷地内には入る事が出来、いつでも食事やショッピング、ヒーローショウ観戦など、また場合によっては1円も使わずグルグルと歩き回るだけでも時間が潰せてしまうのである。
 公子がカメコしに寄っていたのも、非常に有効な時間つぶし。
(本格的に撮影メインの人は、コスプレイヤー同様に有料登録が必要なので、公子はしていたかもしんない)

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 りう(メンヘラ編参照)に公子が偶然呼び止められた場所は、中央の大階段~噴水付近。
 この階段は左右に分かれ、向かって右側はコスプレ可、左側は不可で、よくみると劇中の背景では左側だけ一般人ぽいカップルの影が描かれている芸コマ。

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 ここを書いてる人の青春も、かなり大部分がTDCに埋まっている。

 あのりうが最後の一匹とは思えない。
 このまま水爆実験が続けば、第二、第三のりうが…(怪獣か)

◆「結婚」
 都市伝説である。

× × × × × 

【34話】
 10年来の親友・公子が結婚を機に「コスプレやめようと」思っている…。
 その告白に、寝たフリをしてやりすごしてしまう渚。しかし思い出すのは、高校時代の公子との出会いから、コスプレを始めた頃の記憶だった。

◆セーラー服
 「純潔」の象徴である。
 「セーラー服と機関銃」の薬師丸ひろ子や「スケバン刑事」の斉藤由貴が学校以外のシーンでもずっとセーラー服だったのは、そーゆー事である!(うるさい)
 90年代以降はセーラー服=古くさいイメージとなり、ブレザーへの憧れが強まって、減少の一途を辿る。
 しかし近年では逆に、希少となったセーラー服への憧れも復活しつつあるとも言われている。
 時代は常に振り子の如く揺れ動きます。

 なお外国人から見ると日本の中高生の制服文化は独特であり、セーラーもブレザーも日本製ポップカルチャーを表す「kawaii」の一個の象徴になっている。

 09年に出版された「制服概論」(酒井順子/文春文庫)によると、99年時点で都内私立高校ではブレザー80%/セーラー服18%らしい。渚の通った「武安高校」は何となく公立っぽいので、公立だともうちょっとセーラー率高いかも。

セーラー服 vs ブレザー その戦いの行方 マスコミ編集学科 総合出版コース-TVAマスコミ・映像学科

◆「ずぅっと毎日同じ。退屈だなぁ」
 私、高校時代に体育祭用に作ったコンバトラーVの着ぐるみを使える場所として先輩に教えられた事で、いきなりコスプレ方面からコミケに参加し始めるんですけどね。その後しばらく続けてから休止して、ブランクありまして。
 んでコスプレ復帰する時に…まったく…同じ事…思ってた…社会人だったけど…。
 み、みんな、退屈な日常生活から、次元の向こう側に行きたいんだよッ!

◆ナースDEミラクル
 二人の縁を繋いだ愛読漫画は、どことなくOVA「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」やTVアニメ「ナースエンジェルりりかSOS」を思い出すキャラであった。放送は18時台でしたが。

◆写メ
 2000年にJフォン(後のボーダフォン→ソフトバンクモバイル)が発売したシャープ製カメラ付き携帯電話がその発端。当初はあまり注目されなかったが、翌01年この機能を「写メール」というキャッチコピーで藤原紀香と酒井若菜を使ってCMした所、またたく間に大ヒット。
 以降、ドコモのiショットやauのフォトメールなどの類似サービスが展開されるが、略称としては現在まで「写メ」が普及し、一般用語になっている。
 余談だが同時期、PHS派ではDDIポケット(後のウィルコム→ワイモバイル)がエッジ用の外付けカメラのTrevaを発売していたものの、内蔵カメラ型への転換は携帯電話に比べて遅く、性能も低かった。PHS本体は他にもドコモとアステルが展開していたが、写メ路線は開拓せずに去った。

 こういった00年代前半~中盤、インターネット機能+カメラ付き携帯電話の普及と、Cureを筆頭としたコスプレSNSの上昇、コスプレイヤーの増加は密接な関係がある。
 なぜなら全国のコスプレイヤー同士、あるいはコスプレに興味を持ったオタクが、地域やイベント会場に限らず、お互いのコスプレを「見せ合える」環境が整っていったのである!
 Cureが運営スタッフごとライブドアに買収され、その事業の一環となってサービスを拡充させていったのも04年であった…。

 04年頃だと自分用のパソコンとデジカメを揃えるには女子高生にはまだ難しいけれども、携帯電話ならどうにかなるでしょ?
 渚と公子のように、雑誌やネットで何となく見かけたコスプレの存在に興味を抱く→一人じゃ怖いので友達誘ってコミケに行く(あるいは別のイベント)→異世界に衝撃を受ける→自分もやりたい!…は典型的パターンだと思う。ついでに誘った方がさっさと卒業して、誘われた方が(売れ)残るのも、よくある。よくある。

 女子の場合は実際のコスプレイヤーを初めて見た際、二次元の代用のようにアイドル視してしまう子も多いのだけど、中身は君らと変わらん只のオタクである。変に憧れを抱くべきではないし、コスプレイヤーの側も褒められて勘違いしないように…。
(逆に、この辺のアイドル扱い&アイドル気取りの振る舞いが、初見でコスプレを嫌いになる動機になるケースも…)

◆「人がゴミの様だ…」
 元はラピュタの王となられたムスカ大尉の言葉ですが、コミケの混雑を指す言葉として頻用されます。

◆10年前の夏コミ
 二人が私服で初参加する劇中のシーン、ホール天井の形が平たいので、おそらく西1,2ホールのサークルブースから、外の西駐車場コスプレ広場へ向かってたのかな?
 漫画としての演出なので全く問題ないけれども、でもね重箱の隅を突くと…
 96年にコミケがビッグサイトに移行して以来、コスプレ広場は長らく西4Fの屋上のみだったので、サークルブースからは遠く離れて見えなかったんですね!

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 そこはまるでコミケ内に別のコスプレイベントが入ってるみたいな感覚だった。
 屋上に広がる青い空と、絶え間なく海から吹き抜ける潮風が、我らの青春だった。
 それこそ渚みたいに、キラキラした異世界に足を踏み入れたような錯覚に陥るのも非常に理解できる。
 しかし!その後、ここぞとばかり限定グッズを投入しまくる西4F企業ブースの行列が延びに延びまくって、コスプレ広場は屋上を追われてしまう…。
 そして流転が始まった。
 08年に庭園+西駐車場(最終日のみ西屋上も可)の二ヵ所に分かれる。
 12年から西エントランス(逆三角形の下)にも広場が出来る。
 13年からは広場ではなく「コスプレエリア」と改称され、東ホール外周など各地に増える…と同時に、会場内の各地に点在するようになったコスプレエリアの管轄が、コミケ準備会の中で更衣室担当から各地区担当に移る。

 渚が回想が2004年の夏コミC66なら、コスプレイヤーは男2305/女12704の合計約15000人。
 一年ズレて2005年の夏コミC68だとしても、コスプレイヤーは男2550/女12200の合計約15000人。
 2014冬コミC87で合計27000人なので、コスプレイヤーは男7515/女19855の合計約27000人。
 どちらにしろ10年前のコミケでのレイヤーは今の5-6割程度の規模だった事になる。
http://www.comiket.co.jp/archives/Chronology.html#year_2000

 たびたび余談ながら、10年の間に、女性1,5倍に対して、男性3倍
 この数字の謎を追うと行き着くのが…「東方」ブーム+男の娘ブーム。
 00年代後半にかけて男性による女装レイヤーの人口爆発が起きた事と、他イベントの女装禁止率の高さから、行き場の無かった彼らが自由を求めて積極的にコミケ参加した事による男性増…と思う。
 対して女性は冷暖房完備の「となりでコスプレ博」へと流れていったのであった。

◆「わたしにも出来るかな?…コスプレ」
 きたー!!片浦渚、高校二年生の決心でした。

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【35話】
 自分もやりたい!と決意した渚。公子と一緒に自宅で作戦会議。
 そして、冬コミ。人生初のコスプレに挑戦した二人。
 どうしたら良いのか戸惑う二人に気づき、たまたま居合わせた女性レイヤーは「楽しまないと損だよ」と言った。

◆東急ハンズ
 近くにマツモトキヨシがあるので、池袋サンシャイン通りのハンズだと思われる。
 パーティグッズのコーナーで買ったセーラー服を改造してコスプレしようとしたんでしょうね。
 公子はメイド服の袋も持っているが、04年頃だとすると、電車男ブーム(TVドラマ化は翌年)からのアキバ系カルチャーが世間的に注目された時期であり、メイド喫茶ブームが最盛期を迎えつつあった時期でもある。

◆写ルンです
 公子の購入物の中に入っている。
 86年に富士フイルムから発売された「レンズ付きフィルム」。カメラというよりも、フィルムにレンズ(とフラッシュ)をくっつけただけの簡素かつ安価な作りで、本格的なカメラを買えない若年層に大ヒットした。
 コスプレにおいても、カメラを持ってない人はとりあえず写ルンですを持ってイベント会場へ行くのが主流であった。
 01年に年間出荷台数1億本という最盛期を迎えた後は、急速なデジカメの普及と、カメラ付きケータイやスマホの高機能化によりシェアを奪われ、近年富士フイルムでは化粧品などへの業態転換も行っている。
(追記:ただし写ルンですは近年でも年間3000万本を出荷しており、スマホに圧されてもっとも凋落しているのはコンパクトデジカメ部門との事)

 04年頃だとコンパクトデジカメも一般へ普及し始めで高価なので、女子高生がこれを買うのはまだ難しく、かといってケータイ写メでは画質が低く、コスプレ界隈で「カッコイイ写真を撮る」風潮もまだ未成熟であった時期なので、初コスの二人が写ルンですを用意したのは妥当。

 撮影一回ごとにフィルムを巻く必要があるので、ウッカリ巻き忘れるとシャッターボタンが押せずに微妙な空気になる。
「あ、一枚撮らせてくださーい」
『はーい』
「…?」
『…?』
「すいません、巻いてませんでした…(大急ぎでフィルム巻き巻き)」

◆10年前の冬コミ
 丸い柱、逆三角形、入口との位置関係で、エントランスのコスプレ広場だと思う。
 が、さっきも書いたように当時のコスプレ広場は西屋上のみである。
 としまえんやTDCイベントのシーンと見比べると、参加レイヤーのモブまで、制服系や女児向けアニメっぽいコスプレが多くて、すっごい2000年代前半な感じが描かれてる気が…
(ハガレン・マリみて・ガンダムSEEDブームの頃か…)

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 劇中で渚たちが写真撮ったのは、この画面左側の辺りだと思われる。

◆「楽しめなかった?」
 ただ同じようなカッコするだけじゃダメだ!完敗だ!本格的にやってみよう…という、前向きかつ意識高い公子に引っ張られるように、渚もまた深みにハマってゆくのでした…。

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 この前後編は高校二年生の夏~冬にかけての回想で、だとすると16~17歳かな。
 以前書いたけどコスモード33号(2010年4月)のアンケート結果で、コスプレイベント初参加年齢で最も多いのは、「16歳」であった。
http://zubunuretiwawa.ldblog.jp/archives/662604.html

「コスイベ初参加は何歳?」
13歳 16%
14歳 11%
15歳 15%
16歳 18%
17歳 13%
18歳 8%
19歳 8%
20歳 6%

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 ずっと一緒だった相方を失うかもしれない…親友・公子の結婚報告を笑顔で祝福できない自分に気づいてしまう、26歳派遣社員の渚でした。
 この回想編は、読んでて自分の初コス経験を思い出して、遠い目をしてしまった人も多かったご様子。
 コスプレイヤーにとっては青春ドラマ回だったと思います。


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 ワンフェス2015冬、女子造形部さんで展示販売されたウルル&ミズリ!
(ついさっき幕張メッセにて撮影)



コスモ昨年号にはウルル型紙付属。3巻は2/23発売だよ!