「描写が細か過ぎてコスプレイヤー以外の一般的モーニング読者層に今イチ伝わってなさそうで勿体ないから、レイヤー視点から勝手に解説」、3月末から3週分まとめ。

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【42話】
 結婚を控え、コスプレイヤーを辞めてカメラに専念する公子は、しばらくイベントに上京できない。
 渚は綾と志保と一緒に、葉山がスタッフをしている池袋のマチナカ系イベントへ参加する事に。

■1コマ目の風景
 アニメイト池袋本店すぐ近くの歩道。フラワーロード。
 渚は氷川台在住だから、有楽町線で池袋駅まで出て待ち合わせて、サンシャイン方面へ向かったのかな?
 4/29には同所でコスプレパレード開催予定。

■2コマ目の風景
 サンシャイン60の屋外の大階段から、道路の方を見ている構図。
 奥にチラッと見えるアニメイトの看板は旧池袋店ビルで、現在はアニメイトのコスプレブランド“ACOS”など、悪の組織が入居している。
(昨年末にコンプレックスエイジフェアを行っていた店ですね)
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 今回のイベントの元ネタは池袋で月イチ開催されているアコスタ!だと思う。37話でも志保のセリフに出てきてるので。
 一般人と混在するという意味ではハロウィンで出ていた遊園地イベントにも近いが、より規模が大きい。
 明確なコスプレ可否の区域の境目が曖昧、コスプレのままカラオケや飲食店なども入れる、一般人に絡まれやすい、自治体や行政機関の協力で「町おこし」の性格を持つ…など特徴。
 この辺のマチナカ系イベントに関してはコスプレイヤーズアーカイブニュース内で連載してる「駄犬の切り貼り実験ノート第4回」も読んでね!!

■サンシャイン60
 悪魔超人の精鋭、悪魔六騎士の一人。
 呪いのローラーでジェロニモや初代キン肉マングレートを血祭りに上げた。
 …という超人のデザインの元ネタになった巨大建造物である。
 敷地内のワールドインポートマートと文化会館ではサンシャインクリエイションが定期開催。なぜ乙女ロード前にありながら男性向け即売会が多いのかと言うと、90年代の有害コミック規制運動の際、会場側が比較的エロ表現に寛容な姿勢を見せた事から、元は女性向けメインの即売会であったコミックレヴォリューションに(コミックシティを見限って)男性向けサークルがなだれ込んだのが発端。

■胸つぶし
 男装時の必須。さすがに詳しくはないので勉強になりました。
 なお、巨乳女子が「胸が上手くつぶせなくて…」といった風にボヤくと、間違いなく貧乳女子から「なにそれイヤミ?当てつけ?」などと言い返されるので、他人に相談しにくいそうです。

■池袋
 山手線北西に位置し、主要産業は乙女ロードと危険ドラッグ。
 埼玉県により実行支配されており、東京都が行政権を行使できない状況が続いている。
 日本創成会議という民間団体の試算では、東京23区で唯一の消滅可能性自治体(20-30代の出産可能な女性が減り、いずれ人口減少で自治体が維持できなくなる)である豊島区の中心部。
 消滅の危機感もあってか、うっかり(?)乙女ロードを牛耳るアニメイト(本店は池袋だが本社は板橋区)や、ドワンゴ(ニコニコ本社という名のイベントブースは池袋だがドワンゴ本来の本社は銀座)にすがり、これまでは主に地方都市で行われていた「アニメ/マンガで町おこし」に手を出してしまい、順調に生き血をすすられている。

 ハッキリ言うと、本当に自治体が人口減を食い止めたいのであらば、大切なのはオタクショップやコスプレイベントを誘致する事ではなく、住居・出産・教育・労働など、若年層の抱える問題と向き合うべきである。

■男装
 厳密な統計は無いが、女性レイヤーの80%くらいが多少なりとも経験していると言われる。ざっくりとしたコスプレイヤー層の分布(男性/女性、女装/男装)でも、「女性による男装」こそコスプレイヤー層の中では最多ボリュームゾーンなのである。
 …の割に、あんまりその実感が、レイヤー以外の読者には伝わらないと思う。
 何故ならカメラマン諸氏は圧倒的に男性なので、女性の男装コス姿を撮りたがらない。
 カメラマンのサイトやネットニュース記事などに取り上げられるのは、圧倒的にフリフリ衣装や尻出し衣装の女性レイヤーなのであって、女性による男装レイヤーは絶対数が多い割に、それが認識されにくいのだった。
 カメラマンに食指を動かされないので男装女子は自分達で一眼レフを買い、撮影スキルを磨くという、前々回「カメ娘」の成り立ちにも関係している。

■「しほちゃん大丈夫?」
 渚の男装姿に対して、いつにない表情を見せる志保…。
 アニメキャラって、特に男性キャラは、中性的に描かれてるじゃないですか。
 だから男性よりも女性レイヤーが演じた方がイメージ通りになりやすいのね。
 で、ましてや渚みたいな高身長の女性レイヤーが演じた男性キャラって、容姿も言動も本当に「オタク女子にとっての理想男子」そのものなので、そんな素敵な男装レイヤー(♀)に対して、ポーッとしてしまう女子が居るのも不思議ではない…というかよくある、よくある…宝塚的な。

■腕章
 業務中の葉山の左腕、イベントスタッフは目印に腕章を着けてる場合が多いのです。
 大きくて予算のあるイベントだと、スタッフ専用ジャンパーなど支給されます。

 ちなみに…池袋アコスタの場合、主催はアニメイト&ハコスタジアムですが、更衣室やコスプレイベント部分の運営は、他のコスイベ団体に外注されています。
 アニメイトはpixivとの資本関係…つまり子会社であるコスプレサイトCureとも強い関係を持ってますから、もう、コスプレ業界全体を傘下に収めたいという野心が透けて見えますねー!
(と言っても男性レイヤーは、全くと言って良い程、客層にされてないのだけど)

■今週のnyao猫のロゴ
 渚の飲んでるマグカップにNYAOロゴ入りで登場。NYAOは元恋人・千田君の勤め先だった。
 スマホアプリからマグカップまで…おそらくはこの世界を牛耳る巨大グループのマスコットキャラなのだろう。
(単に千田君から貰ったグッズなのかもしれんけど)

 理想と現実の剥離に悩んでいた渚。
 しかし友人たちとの出会いの中で、このまま「楽しい」を続ける事も出来るのでは…。
 モヤモヤした渚の気持ちを汲んだ母・佐和子は、かつて一緒にゴスロリ趣味に興じてそのままの道を歩んだ、古い友人を紹介しようと…。
 「会ってみる?今のあなたに何かヒントをくれるかもよ?」

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【43話】
 …渚の前に現れたのは、母・佐和子の旧友、和ゴス…つまりゴシックモチーフの和服に身を包んだ淑女・ノリだった。
 葛藤を抱えつつも自分の趣味を追い、形にしてきたノリは、渚を自分の経営する店へ連れて行く。
 「私の趣味の行き着いた先を見せてあげるわ」

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【44話】
 ノリに連れられて辿り着いたのは下北沢のアンティークショップ。
 それは彼女が、理想を具現化するために、好きなものと一緒に居続けるために、自ら作った世界だった。
 「渚…あなたの“好き”はどれ位?」
 自分にとってのコスプレとは何か。帰り道で再び、自問する渚…。

■下北沢
 サブカル墓場。
 小規模劇団の芝居小屋や、個人経営の服飾・雑貨屋などがひしめく、オシャレでカオスな、サブカルクソ女の集団生息地。
 駅周辺をぐるっと回れば、青春とは何か、人生とは何か、若さとは、愛とは、夢とは、現実とは…色んなものを自分自身に問いかける事ができる。
 なので行くと疲れます。

[あるあるパターン]
コスプレにハマる
 ↓
メイク参考用にKERAとか買い始める
 ↓
奇抜ファッションに目覚めて原宿デビュー
 ↓
いずれ流行についていけなくなり「本当の自分」を探し出す
 ↓
アート・サブカル・古着リメイクや手づくりアクセサリーに傾倒
 ↓
数年後、サブカル墓場・下北沢に没す

 …。

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 43,44話のノリとの邂逅は、コスプレネタは殆ど出てきませんが、やはり“抉る”話でした。
 1巻の読切で主人公だった母・佐和子はゴスロリ趣味を捨て、主婦として母親として平凡に生きた訳だけど、それに対する友人・ノリは女としての焦りを感じつつ、佐和子がいなくなった空洞を、より趣味に没頭する事で埋めようとする。そして結婚も出産もしなかったけど、大好きなものと在り続ける選択をしていた訳です。
(佐和子を失ったノリと、公子を失うかもしれない渚が相似形として描かれている…)
 単に女性が我が道を行くだけではなく、その理由の一端に、女性間のコンプレックスを交えながら描く辺りが、実に本作らしいと言いましょうか…

 で、次の45話はまた続き物なので、おそらくGW前にまとめると思うのでありました。


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