ちょっと昔は公式コスプレイヤーといえば、大ヒット中のゲームやアニメ、あるいはそういう人気コンテンツを持つメーカーだけが設定できる輝かしい称号だった筈ですが、コスプレイヤーの“安く使えるタレントが進む中、いつの間にやら乱発され、誰も知らない作品の公式コスプレイヤーがワンサカ出現するに至りました。
 聞いた事も無いゲームの公式コスプレイヤーをプロフに記してる人とか、よく見ますね。

 イベントでのチラシ配りバイトを“公式コスプレイヤー”と称して、安くレイヤーをコキ使ってる企業は、ブラックだと思います。
 イベントでのチラシ配りバイトしただけで、“公式コスプレイヤー”を勝手に名乗ってるレイヤーは、嘘つきだと思います。

 さて、興味深い例では、現在進行形ですとソニーミュージックがチカラを入れてる「真空管ドールズ」は、ゲーム配信前から有名コスプレイヤー約20人と公式レイヤー契約してニコニコ超会議他で大キャンペーンを打ったものの、本来のゲームアプリとしてはまったく話題にならず。
 公式サイトオープン半年でピクシブへのイラスト投稿たった31枚。
 コスプレイヤーズアーカイブへのコスプレ写真投稿0枚。
 公式レイヤーだけど7月の配信開始前に産休に入っちゃったのが1名。
 …もうこれ、ゲームじゃなくって水着コスプレ撮影会(5000円のグッズ買うと参加可)のタイトルだと思われてる節があります。

 というように、今は「公式コスプレイヤー制度がコンテンツの人気UPに寄与してない」ケースが増えたんじゃないかって仮説をお話しする事にしました。
 だって、見た目麗しい公式レイヤーに惹かれてカメラ抱えてやってくるようなファンって、元のコンテンツにはお金を落とさないもの。

■売り込むのはコンテンツではなく“自分”
 公式コスプレイヤー制度って多分、90年代に格闘ゲームメーカーから始まってて、既に人気の出たコンテンツをより盛り上げるべく、メーカーがファン感謝祭的なノリで公式コスプレコンテストやって、上位入賞者への副賞的に与えられるパターンが主だったので、これには意味がありました。
 コスプレイヤー人口が今よりずっと少なかったので、コンテストをやれるくらいレイヤーが集められるのは、それだけで超人気ゲームの証だったからです。
 その熱狂的ファンに贈られる称号みたいなイメージ。

  ところが昨今の公式コスプレイヤーって、アニメ放送前・ゲーム発売前からプロモーションのために集めてる事が多くて、請負うレイヤーの方も当然ながらファ ンというよりタレント活動の一環だったり、自分のPRや肩書きとして利用する人達が多くなったので、コンテンツを盛り上げる意思は希薄な人が多いんです ね。
 同時期に複数の公式レイヤー契約(それだけ乱発されてるって事ですが)してる人もいますね。
 ファン活動っていうよりも、大人の事情が透けて見えちゃうんです。

 よく考えたら、イベントのブースでチラシ配ったり撮影会やってる公式レイヤーが、美人だセクシーだイケメンだからって、元のゲームやアニメに興味と金を落とすオタは少数でしょ?
 そのレイヤーが副業で売ってる写真集に課金されるだけでしょ?
 結果、公式レイヤーを使ってもコンテンツ側の人気UPに繋がってないんです。
(冒頭の真空管ドールズは、まさにこれです。売れたのはゲームではなく彼女らの個人で出してる写真集ROMだった)

  そういえば、この数年で大ヒットしたような、タイバニ・まどマギ・進撃の巨人・ガルパン・艦これ・刀剣乱舞・おそ松…どれも明確な公式コスプレイヤーなん て置いてない訳で。(一時コンパニオンしただけで公式レイヤー名乗ってる虚言は除く)
 この制度はもう作品のヒットには無関係な気がします。

 さらに言うと、リアルタイムで大ヒットしてるコンテンツを持ってる企業にはお金がありますから、もうコスプレイヤーなんて使わずに、プロの有名タレントをPR大使に任命したり、あるいは舞台ミュージカル版のキャストをイベントに呼んで出演させたりします。

 元々はヒットした人気コンテンツの熱狂的ファンに与えられていた称号が、時を経る中で、承認欲求をこじらせた素人を“安く使えるタレント”として利用するための肩書きとして乱発され、陳腐化していった。
 今はもう、公式コスプレイヤーを使いたがる=オタクに媚びた安易なプロモーションの象徴みたいになっちゃったというのが、私の仮説です。

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特に関係の無い画像ですが、
この辺で記事の真ん中です

■プロとか、職業レイヤーとかの、虚像
 彼女たちの中には
メディアから“プロのコスプレイヤー”と持ち上げられて、公式レイヤー活動のギャラや、あるいは有料個人撮影会や写真集を売って生活してる(という設定のフリーターな)方々も出現してますが、ハッキリ言ってウリになってるのはキャラの雰囲気ではなく、ご本人の顔と身体です。
 コスプレと称していますが、いわばネットアイドル的な、性の商品化です。
 別に悪い事ではありません。しかしこれは加齢とともに確実に商品価値が減っていきます。
 半年後にはもっと美人で、もっとセクシーな子がドンドン上京してきます。

 人生の一瞬、容姿で稼ぐ事はできても、その収入を長期に渡って保ち、税金や社会保険をクリアした上で、本当の意味でコスプレイヤーを職業化できた人間は、存在しません
 過去にコスプレから本格的な芸能の道へ行って成功できた人は、俳優でもお笑いでも、コスプレに頼らずに芸を磨いた人だけです。
 過去にも多数存在した“プロのコスプレイヤー
と持ち上げられた人達の多くは行き詰まって、脱いでいきました。
(コスプレという建前のポルノは沢山あるけれど、それはコスプレのプロとか職業化とは、違うでしょう。納得してやってるなら構わないけど、覚悟を決められないまま流されて脱いでしまうと、つらいよ)

■公式コスプレコンテストと公式コスプレイヤーの違いは
 先のように90年代に始まった初期は、公式コスプレコンテスト(ネットなんて無い時代だから、格闘ゲーム大会みたいなイベントのステージ企画)を公募で行って、その受賞者が作品名やメーカー名を冠した公式レイヤーに任命されるケースが多かったのでした。ファン感謝祭みたいな。
 が、これはこれで素人ですから、素行不良やいつの間にかAV出てるとかトラブルも起こりました。
 やがて格ゲーブーム自体も終焉し、2000年代に入る頃にはこのパターンは沈静化します。

 00年代中盤以降はネットが発達し、今度はネット投票での公式コスプレコンテストが主流になりました。
 しかし、公式のコンテストであっても、あえて受賞者に公式レイヤーの称号は与えないパターンが主流になりました。素行不良やAV出演されても困りますし。

 近年では、地下アイドルやニコ生主とか、素人でもタレント活動してるレイヤーが増えたので、ある程度は物わかりというか、コントロールは利きます。
 というか、コスプレイヤーという建前だけど、やってる事はキャラではなく自分のPRだったり、かつてはネットアイドルと言われていた活動との混同が進んでるのですが。
 で、企業からのそれっぽい肩書き付与と引き換えに、アニメジャパンやニコニコ超会議などの企業イベントで彼・彼女らを安く使うために、“公式コスプレイヤー”が乱発されてるのが実態でしょうか。

 今はもう、熱狂的ファンに与えられる称号なんかじゃありません。
 ゲーム発売前やアニメ放送前のプロモーション時点で、事務所や代理店コネクションでの紹介・仲介や、知名度(=ツイッターのフォロワー数)を基準に…つまり“大人の事情”で公式レイヤーを選んで依頼するパターンが主流ですね。

 でも旧来のイベントステージ型の公式コスプレコンテストも残ってて…
 東京ゲームショウ2011-2015までコーエーテクモが自社ブースで行っておりました。今年は無いみたいですが。
 GWにビッグサイトでやってた見本市「キャラクター1」内ではグラブルが公式コスプレコンテストを行っていました。
 しかしいずれも、受賞者に公式レイヤーの称号は与えられていなかった。

 企業としては、まぁ、分けて考えてるのでしょう。
[公式コスプレコンテスト]… 誰でも参加できるファンサービスの一環。
[公式コスプレイヤー]… 特定のコスプレイヤーを使ったプロモーション。

  だとすると、サイバーエージェント&モバゲー系である「グランブルーファンタジー」が公式コスプレコンテスト(ファンサービス)を行い、セガ系である 「チェインクロニクル」が公式コスプレイヤーを設けてる(プロモーション)のは、両者の向いてる方向の違いが見える気がします。

■くり返しますが
 「企業から見たコスプレイヤーは安く使えるタレント」という表現を度々用いておりますが、だからヤメロとは言ってません。
 自覚した上で関わるのが大事だと考えてます。
 一方的に利用するのもされるのも、良くないのです。

 そして結論ですが。
 企業側はコスプレイヤーをモデルやタレント代わりに安く利用して、レイヤー側は作品ではなく自身のタレント活動の肩書きやPRのために利用し合った結果が…
 今の「公式コスプレイヤー制度がコンテンツの人気UPに寄与してない」状況なので…

 なるべくして、こうなったのでしょう。

× × × × × 

 …ただ、公式コスプレイヤーが、もうまったく無意味か?と問えば、そうでもなく。
 企業イベントでの出展ブースやステージを飾る“華”としての意味ならば、あると思います。
 花を店先に飾ってもそれは直接の利益にはなりませんが、訪れた人の目を潤わせる事はできます。
 が、本来の商品よりも、花を集めて飾り付ける事にお金と労力を使うのは、店としては本末転倒なんです。
 

 結局、元のコンテンツに魅力が無かったら、公式コスプレイヤーを立ててプロモーション打っても、意味無いんだよ!



余談1:
昔から公式レイヤーをタレント的に大掛かりに売り出しては失敗するのはセガの伝統芸で、ドリキャス売らずに専務を売り出して結果的にどっちもダメにする悪癖から、いいかげんに脱却せいよ。
せっかくミクダヨーという大スターを生んだというのに…。

余談2:
90年代に企業が公式コスプレコンテストの類をやりまくった裏の理由は、女性レイヤー=お持ち帰り要員…だったという証言が古参レイヤーから複数寄せられているものの、当時の証拠などは無いので何とも言えない。ただ、色んな方面からも聞く話ではある。
今現在もそうなのかは…さぁ?



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