コスモードですよコスモード。
 正確には2014年8月より編集部そのままで発行元が(インフォレスト社の倒産により)ファミマドットコム社に移った際に「COSPLAY MODE」にタイトル変更されたのですが、コスプレイモードって発音しにくいし内容もほぼ継続してるので、便宜上コスモードのままで表記します。

 個人的にコスモードの長年のリスペクト点として「レイヤー個人にはスポットを当てず、レイヤーのタレント・アイドル扱いを絶対やらなかった」というのがありました。
 グラビアも表紙も、あくまで2次元の世界観を2.5次元として表現するためのものであって、登場するレイヤーも芸能活動をしてる人もいれば全くしていない人も様々で、雰囲気写真の中ではレイヤーの顔がほとんど映っていないような扱いだってありました。
「レイヤー本人をモデルとして見せたいんじゃないんだ!レイヤーはあくまで2.5次元の世界観を表現するための素材の一つに過ぎない!!」
…というのはいささか誇張であっても、そんなストイックでギンギンに尖った硬派なコスプレ表現は…いわゆる完コス派レイヤーは元より、ユルユルな友達交流派レイヤーや、非レイヤー層の読者をも獲得してきたのです。
 ハッキリ言って私の個人的なコスプレ観とは異なったものの、敵ながらアッパレみたいな敬意を持ってほぼ毎号購入しておりました。

 それが、ですよ。
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「特集:人気者になるための4メソッド」ですって?

 身も蓋も無ぇなぁ…。
 これまでレイヤー個人の人気争い的な部分には一切触れてこなかったコスモードが?
 よその雑誌では頻繁にやってしまう(そして雑誌の寿命を縮めてしまう)「人気コスプレイヤー◯◯さんインタビュー!」みたいな企画を絶対にやろうとしなかったコスモードが?
 グラビア登場レイヤーですら名前もコメントも小さくしか載せず、タレント扱いは絶対しなかったコスモードが?
 今さら。手を。出すのか。そこに。

 まず冒頭ページに“「人気者になりたい!」「有名になりたい!」でコスプレ始めたってイイジャナイ?”と前置きした上で(この発想自体には割と同感なのですが)、「似合うキャラを見極めよう」ですから。
 確かにコスプレイヤーにとっては、好きなキャラ(自分の容姿にあってない)vs似合うキャラ(思い入れは少ない)論争っていう永遠のテーマみたいなのはずっとあるのですが…。持って生まれた容姿の方向性みたいなのって絶対あるからね。

 でも、コスモードの路線って今までどっちかって言ったら… 
「自分じゃこのキャラ似合わないだぁ?
 テメェ!好きなキャラに近づくための努力を惜しむんじゃねーよ!
 言い訳すんな。痩せろ!筋トレしろ!
 彫深い顔が欲しけりゃメイクで塗りつぶしてから陰影を描け!
 弛んだアゴはテーピングで引っ張れ!
 身長が足りなきゃ厚底を履け!
 それでも届かない部分はフォトショで加工しろ!!
 テメェの素の容姿なんざ残す必要無ェんじゃ!!」

…くらいの硬派かつストイックなコスプレ論だったような気が…(極論ですが)
 だからコスモードのグラビアページって、フィギュアやジオラマに近いクオリティのイメージがありました。

 いや、断っておきますけど、僕は常々「好き嫌い/良い悪い、は別!」って言ってる人間ですので。
 ファン活動とか友達との交流以外に、チヤホヤされたいとか芸能活動のステップとして“コスプレ”に関わる方々は昔からいらっしゃいますし、それが悪いとも言えません。自分だって着ぐるみレイヤーですしきっと目立ちたがりです。
 
 けれども天下のコスモードが、そういった「コスプレで人気者になりたーい♪」って層に向けた特集を組む時代になったとは…正直、驚いたぜ。
 もしかしたら壮大なツッコミ待ちのネタ企画なのではっ?

 じゃあ以下、COSPYAY MODE 2017年7月号より著作権を侵害しない程度の「感想・批評のための引用」しながら…

■1:SNSで人気もの
あると便利なスキル
 ☆自作の技術
 ☆宅コス環境
 ☆マメな写真UP
 (→男装レイヤーと思わしきイラスト)
■2:クチコミで人気もの
あると便利なスキル
 ☆お金と時間の余裕
 ☆客観的な視点
 ☆適度なナリキリ
 (→血まみれデブキャラのイラスト)
■3:メディアで人気もの
あると便利なスキル
 ☆取材陣発見能力
 ☆会話術と押し
 ☆人脈キープ力
 (→半裸の女性レイヤーのイラスト)
■4:友達が多い人気もの
あると便利なスキル
 ☆企画力と行動力
 ☆マメで丁寧な対応
 ☆気づかいと優しさ
 (→ジャージ姿のスポーツものっぽいレイヤーのイラスト)

[引用ここまで]

は加工バリバリで完成度の高い雰囲気写真を上げてる男装レイヤー、
はインパクト優先で着ぐるみやお笑い路線に走るいわゆるネタ系レイヤー、
はスポーツやグループヒーローの多人数あわせ主催する交流派レイヤー、
 んで、
はいわゆる露出系レイヤーやタレント志望者だよなぁ… コスモードはこれまでの歴史の中で、あえて無視してきた存在ですわね。
 ただし週刊誌やネット記事や深夜番組などのメディア登場率はパターン(顔がカワイイ/恰好がエロイ)がズバ抜けて高いので、非レイヤー層にとってはここが“コスプレイヤー”のイメージになってしまうという残念な傾向がありましてな。
 旧来のファン活動としての“コスプレ”以外に、自分を商品化するためのパッケージとして“コスプレ”する人たちもやはり増えてるんですよね。昔から存在したけど、ネット時代になって特に。
 タイプ別Yes,No診断ページでもに関しては「子供の頃の夢は芸能人やモデルなど」「軽いセクハラ言動されても適当に受け流せる」など。正直だなぁ。

 人気が欲しい・有名になりたい…それを悪いとも言えないし言わないけど、コスモードとしては今まで十数年来そこをあえてスルーしてたであろう経緯がありましてな。
 有名になりたいならとりあえず脱げ、も事実なのですが。
 やはり違和感ありますわな。
(なお、露出多いけど「セクシーなキャラが好きだから表現したい!」「愛情表現の暴走としてエロパロしたい!」人もいるので、全部一緒くたにはしちゃダメである)

結論1: 「人気者になりたい」「有名になりたい」人のための方法論としては正しい。
結論2: ただしコスモードが「人気者になりたい」人のための特集を組むようになったのは、ちょっと切ない。

 外側のメディアからの評価が、ファン活動としてよりも顔や身体での評価に偏っていくのはもう仕方ないと思います。余所は余所、ウチはウチなので。
 だからこそ内側のメディア代表格であるコスモードには硬派に、尖ったままでいてほしいのであって。

■発行元とともに変わりゆくコスモード
 実はコスモードの発行元は何度か代わっていて、昨年2016年4月に編集部ごとファミマドットコム社からシムサムメディア社へ移行しています。
 シムサムメディアは本業は高級腕時計の輸入カタログなど発行している会社で、その少し前にいわば社長の鶴の一声で「コスプレチャンネル」という新雑誌を創刊していたものの波に乗り切れず休刊。つまり自社の媒体を育てるよりも、既にブランド力のあったコスモードを、編集部ごとファミマドットコムから買い取った形でありました。
 ファミマが簡単にコスモードを手放してしまった事も少々ショックでしたが。
 正直、シムサムメディアが新しいコスプレ雑誌を作ろうとした時は私も応援しましたが、それを早々に諦めて既存のコスモードを買い取った件に関しては好意的には見ていません。

 内部には事情が絡んでいるのでしょうし私なんぞにゃ知る由もありませんが、発行元がシムサムメディアに移り、生みの親でもある大門太郎総括ら主要なスタッフは継続しているものの一部は編集から離れて(名物だった鬼の副編集長殿の名前も奥付表記にはもうありません)、これを境に少しずつ雰囲気が変わっていったように見えます。
 全体的にファッション雑誌化がより進んだというか、ホラ、読者モデルをファッションリーダーとして持ち上げるストリートファッション誌の作りに近くなってる気がします。
 良い部分もあれば、悪い部分もありますが。

コスプレチャンネル2号表紙
4号で休刊したコスプレチャンネル(発行:シムサムメディア)。
現在のコスモードはこの路線に若干寄りつつあると思われる。


・40名超の美女コスプレイヤーからアイドルを発掘!生テレが「COSPLAY MODE」出演オーディションを5月11日よりスタート
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000816.000001227.html

 上記は簡単に言うと動画配信サービス「生テレ」でファンの支持を最も集めたアイドルorコスプレイヤーが、コスモードのグラビアページに登場する権利が与えられるという…その名も「第一次コスプレ大戦」。
 長年のコスモード読者にしてみれば、クラクラするような企画かもしれませんが。

 レイヤー個人にはスポットを当てずに2.5次元世界の表現に力を尽くしてきたコスモードのグラビアページに、アイドルオーディションの優勝者がグラビア掲載って…水と油でしょう。
 これ、例えるならホビージャパンのジオラマページに並んで、いきなりイケメンモデラー紹介ページ作っちゃうようなモンでしょ。読者層が変わっちゃう。
(メイン読者層の同性をタレントとして持ち上げる行為、という意味)

 ここ読んで『え~最近コスモード買ってなかったけどそんな風になってたんだー』と思ってるそこのアナタ。
 それが原因じゃ!!
 綺麗事ばっかり言ってても仕方ないんですよ。出版ってのは、本が売れるかスポンサーの広告を集めるかしないと続けられないんですから。
 コスモードは実売部数が公表されてないので詳細な部数は分かりませんが、コスプレイヤーの情報収集だってネット検索に移行してる出版不況な昨今、旧来の誌面づくりのままでは売れないと判断されたから変えていった結果がこれでしょう。
 この辺はコスプレイヤーズアーカイブがリゼカップやって炎上した件と構造的には似てるかもしれません。

 今までの路線では売れない。
 だから変えた。
 コスプレイヤー個人をタレントやアイドル的に扱う、禁じ手“も”使うようになった。
 でもその結果、旧来のファン活動や交流手段としてのコスプレイヤーにとっては違和感がぬぐえないであろう。
 失うものと得るもの、どちらが多いのかは、いずれ歴史が証明する筈。

■実際の誌面を読むススメ



COSPLAY MODE (コスプレイモード) 2017年 07月号 [雑誌]
COSPLAY MODE (コスプレイモード) 2017年 07月号 [雑誌]

 興味でた人は買って読んでみていただきたい。(Amazonの方はアフィ入りリンク)
 もう自分もコスモード(いや、シムサムメディア社か…)の想定するメイン読者層ではないだろうから、ズレてる可能性もありますわ。
 実際に読んでみたら「大して違和感ない」「他のページだって意外と変わってないじゃないか」って思うかもしれないので。
 とりあえず久々に読むという人は「なんでこんなにレイヤーのコスネーム表記が大きくなってるの?」って感じるんじゃないでしょうか。
 ちゃんと買って読んで、意見や感想を送るのが一番ですよ。そして買い支える。

 なお掲載されている人達には何の文句も批判もありません。あくまで編集方針に対して感じる事を書いたので、間違えないでね。


 希望としてはどなたか、「コスプレして有名になりたい…人気者になりたい…」って思ってる子の前に、喪黒福造のコスプレ姿で
「ホーホッホ!お悩みのようですねぇ~…」って声をかけてあげてほしいですね。


[関連記事]
謎の新雑誌?コスプレチャンネル03号を読む!-コスプレイヤーズアーカイブニュース 2016.4
 シムサムメディア社が以前発行していた「コスプレチャンネル」編集長にインタビューした記事。
 この時点ではまだコスモードの方はファミマドットコム社発行だったが、すでに水面下ではシムサムメディアへの移行が決まっていた時期だと思われる。
 今読み直すとどことなく不穏な空気があるのですが、コスモードとは別視点のコスプレ雑誌が生まれるのであらば応援したいというのが、当時の自分の考え方でありました。と正直に書いておこう。