予告から遅くなりましたが、先の冬コミで発行した「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2017」よりダイジェスト。
 2017年の一年間にネット上を駆け巡った〝学級会〟から個人的に気になった主要14議題を選出、俺マナー/疑似著作権/伝言ゲーム、に分類しつつ振り返ります。
 同人誌版は全部で1万8000文字くらいあるので、ブログ版は2/3くらいに削って前後編に分けております。
表紙_見開き

※ 賛否が議論になったものが対象なので、一方的な晒し目的や、犯罪行為を発端とする単純な〝炎上〟は除外しています。
※ 刀剣乱舞の界隈は学級会のための学級会を延々と繰り返しているので除外しています。

俺マナー班/1月の部
「コスプレイヤーのネームボードを奴隷札と呼ぶ議題」
 冬コミ後、コスプレエリアでレイヤーが用意しているネームボードを個人的に「奴隷札」と呼んでいるというカメラマン氏のツイートが発端。
 コミケなどの大型イベントでは一握りのコスプレイヤーに対して撮影を希望するカメラマンの数が膨大になりがちなので、行列を作って一対一の撮影ではなく、集団で同時に撮れるように囲み撮影をするケースが多いです。
 しかしその際、各自に名刺を配ったりするのは面倒だし誰から貰ったか忘れやすいので、レイヤーは足元にスケッチブックを置いて自分の名前やSNSのアカウントを書いておく事で、名前や連絡先を同時に写真に収めてもらう方法が普及しつつあります。

 元はこれ、えっちなコスプレROMなど作ってるサークルのモデルが告知のために行っていたので、半裸の恰好で自分の名前を書いたボードを見せている姿がエロゲーやエロ漫画における〝奴隷市場〟の描写に似ていたので、当てはまってしまった感もあり。
 …が、やっぱり怒るレイヤーも…。


俺マナー班/1月の部
「いい歳した女がキャンメイクとか使うのはどうなの議題」
 オタク女性の身なりに厳しいアカウントの人によるツイートが発端。
 オシャレと年齢に関する話題はある種のイデオロギー闘争のようなもので、喧々諤々の騒動になりやすいです。
 が、途中から自分のオススメチープコスメを宣伝する方向へ。

・ちふれ化粧品、プッシュを受ける
→ 便乗おススメされていたブランドではちふれが人気でした。なお、ちふれ化粧品と関係の深い東京都地域婦人団体連盟は2010年の東京都青少年健全育成条例に反対声明を出しているので応援するべきという一部からの声が。
 実は、ちふれ=地婦連、に由来するブランド名らしい。組織としてはまったく別であるものの、前身の東京実業(株)時代に地婦連の協力を得て全国へと販路を拡大した事をきっかけに(株)ちふれ化粧品に改称したとか。へ~


俺マナー班/1月の部
「うたプリ同担拒否ではないけど、昭和生まれの人は年齢拒否議題」
 「同担拒否」というのは、3次元のアイドルファン層に一定の割合で存在している、自分と同じアイドルを追っかけてる人とは仲良くできないという独占欲の強いタイプのファン。脳内で疑似恋愛をしている〝夢女子〟タイプに多いといわれますが。
 最近は2次元アイドル界隈でもこの「同担拒否」が度々話題に上がり、同じ(架空の)アイドルのファン同士であっても押しが被る人とは仲良くできない・地雷だという人もいるので、プロフにその旨を書いておく人も増えてます。
 しかし当該の人物は同担拒否ではないものの、「プリンスたちの年齢を10歳以上も上回っている30代40代のファンに対しては正直、気持ち悪い」という旨をプロフに書いていたため、いわば「年齢拒否」として第三者によって晒されてしまいました。
 そのキャプチャ画像で出回ったものがNEVERまとめや各種まとめサイトにも転載され拡散。
 やはり年齢に関する話題は議論が沸騰しやすいです。

 しかしこの話で最も重要なのは、話の発端は若いオタク女子のプロフとそのキャプ画像なのですが、火を着けたのはこれらを転載したNEVERまとめによるところが大きかったです。
 実はこの前後してオタク界隈(に限らず)個人レベルのささいなイザコザをとにかく早急に雑なまとめ方と針小棒大な煽りタイトル付きで拡散する輩が出没してらっしゃいまして、当まとめもその人物によるもののひとつ。
 NEVERまとめのPVに応じて発生するささいな広告料収入目当ての煽りに、みなさん乗っかってしまったよね…。


俺マナー班/2月の部
「中池袋公園が野生のアニメイト化議題」
  2016年頃より問題化していたもの。アニメイト池袋本店前の中池袋公園が週末ごとに限定グッズや一番くじ景品などの譲渡・交換会と化してしまって、多数のオタク女子が露天商のようにお店を広げてしまった問題。
 物々交換が基本であるものの、金銭との交換(売買)もある。自然発生的に起きた現象なので誰か仕切り役となる代表者や団体は存在せず、フリーマーケットのように見えるが公園の使用許可なども取っていない状態。
 これらがネットでは「野生のアニメイト」と表現されました。
 年が明けて2017年に入るとついに「公園内・周辺路上での無許可の販売・営業行為はできません。発見した場合、警察に通報します」という看板が設置されてしまったのでした。

・そもそも公式グッズの売り方の問題があるのでは
→ 中身が見えなかったり、くじ的な販売方法だと一個の推しキャラを当てるまでに不要なキャラのグッズを大量にタブらせる事になってしまうので、この無駄を減らすために女子たちが編み出した対抗策がオフラインで集まっての譲渡会です。コンプリートさせるまでにいらない商品を大量に購入させるこすっからい商法が続く以上、消えないでしょう。
 看板設置やネットニュースで騒がれた後、規模は縮小しましたがまだ残っております。


俺マナー班/2月の部
「東山動植物園コスプレフレンズ議題」
サーバル=けものフレンズのキャラクター名/サーバルキャット=展示されてる動物の種名、
 …の意味で表記を変えています。

 愛知県の東山動植物園でサーバルのコスプレで観覧していたフレンズ男性が、コスプレイベントではない動物園でのコスプレをめぐって、いつものように「公共の場所でのコスプレはマナー違反!」といった批判の対象となりました。
 これだけだったら数限りなく繰り返されてきた、コスプレ村の長年の因習と、その外側の者との不毛な摩擦にしかならなかったでしょうが…。

 が、後日に現地民のブロガー・猫ウルフ氏が園の広聴担当S氏に取材を敢行。
 コスプレでの来援は特に禁止ではなく、動物の反応を見るための目的はやめてほしいが、警察に怒られるレベルでなければ許容する…というコメントを引き出した事で、かつてのオタクバッシング時代には考えられないほどに世の中の〝コスプレ〟に対する認識が変わりつつある事、それでも大昔から続くイベント以外でのコスプレ不可という認識がコスプレ村の人間にとっては根強い事の対比など、色々な事を考えさせられた趣深い一件になりました。

 なお発端となったツイートは檻の中のサーバルキャットにコスプレ姿で威嚇されている写真ですが、この写真ツイート自体は本人によるものではなく、また現地民によればこのサーバルキャットは割と誰にでも威嚇する癖のある子なのでコスプレだから怒っていた訳でもないらしい。
(この発端ツイートがいかにも炎上を煽ってしまった感はあるものの)

・公共の場で無許可コスプレするなんて!
→ 大元は80年代末にコミケが導入した「イベントに参加する際はコスプレのまま来場禁止」というローカルルールが他の小規模イベントにも広まり、いつしかコスプレ全体への「許可取った場所以外でコスプレしちゃダメ」という認識へと拡大解釈されていったという経緯があります。折しも90年代に入ってから吹き荒れたオタクバッシングやオウム事件(異様な格好した集団への社会不安)が背景にあり、オタク趣味は、コスプレ趣味は世間から隠さなくてはならないという認識の共有につながりました。
 他のテーマパークなどでコスプレ姿での使用が禁止になった例もあり、「無許可でのコスプレはNG」という啓蒙が必要な時代は、確かにあったのです。が、近年のアニメを使った町おこしイベントやハロウィンブームとの混同などで、世間の〝コスプレ〟への偏見が薄らいでいってるのも事実です。
 法的に考えると、日本の著作権法(より正確には著作財産権における複製権・翻案権など)は非営利での私的利用に関してはかなり広く認めており、かつ親告罪なので権利者が問題視しない限りは罪にならない。
 また他の法律や条例でもコスプレそのものに関する記述などは存在せず、銃刀法(武器など)や軽犯罪法・迷惑防止条例(主に露出や騒音)のような特定の法に反しない限り、コスプレそのものは規制されていない。
 ただし動物園のような私有地の場合、所有者や管理者の意向によりコスプレでの使用を断られる可能性は当然ありますから、事前に問い合わせておいた方が、後のこういった摩擦を避ける意味でも確実に無難ではあります。

・他のコスイベ団体のHPに「東山動植物園ではイベント以外ではコスプレ禁止」と書いてあったが
→ これは園側ではなく、あくまでこのイベンター側が昔に作ったローカルルールが残っていたようです。昔はコスプレは隠すべき論が強く、イベント以外でのコスプレなんて考えられない!という時代があった事を考えれば、自社の主催イベント以外で個人でコスプレして入園する人がいたら園側に迷惑がかかるかも…という前提があったので注意事項として書いたままになっていたのも無理はありません。
 しかしながら現在では園の方でも(イベント開催時以外の)軽度なコスプレでの入園は許容しているのが現状なので、この団体のローカルルールは死文化しています。

 もっとも園側(広聴担当S氏)の寛大な方針もまた、社是のように固まったものではなく、あくまで現在の担当者の方針では(警察に止められたり他のお客に迷惑かけたり動物を刺激するためのものでない程度なら)OK…というのに過ぎないでしょうから、この方針を継続して行ってもらうためにも、余計なトラブルなど起こさず務めたいものではあります。

● 東山コスプレ問題について東山動植物園さんに聞いてみた。-名古屋オタ情報局
http://nagoyaota.blog.fc2.com/blog-entry-456.html
  非常に良い資料なのでぜひ読んでいただきたい。


伝言ゲーム班/3月の部
「売り子が確保できない混雑サークルは参加を自粛すべきか議題」
 即売会の後、伝聞として「売り子が確保できないならサークル参加するなという話を聞いた」というツイートが発端。
 当然ながら「そんな義務は無い」という擁護の意見の方が多かったですが、どうも元々は「(特定の混雑サークルが毎回、売り子を用意せずに行列を延ばしてしまい、周りのサークルに迷惑がかかってるので)売り子が確保できないならサークル参加するな」というのが本当の話なのではないか?という説があり。
 大元の状況を確認できないので明確には分からないものの、だとすれば話の辻褄は合うので。


疑似著作権班/4月の部
「ハイキューの舞台レポ本を芸能ジャンルではなくハイキュージャンルで売ったら大変なことになる議題」
  ハイキューの2.5次元舞台を観劇したファンが、その内容と感想とレポ本にまとめて同人誌として発行しようとしていたところ、pixivやツイッターでこのサンプルを見たユーザーの中から複数の注意を受け、発行を中止した旨を報告ツイートした事が発端。
 執拗な批判を続けるごく少数の人がいた一方で、「どこが問題なのかかよく分からない」「レポ本自体はよくあるものでは」といった擁護する声が多かった。

 客観的に見ると、自分の嫌いな表現を潰したい少数の人間によっていわゆる〝俺マナー〟〝疑似著作権〟がコンボで沸騰した非常に悪い例となりました。

・原作のジャンルで申し込まれたサークルでミュージカル版のレポ本を置くのはマナー違反?
→ 同人誌即売会の申し込みジャンルはあくまで目安に過ぎないのです。他ジャンルの本を置く事もあれば、逆カップリングのBL本なのに友人サークル同士で委託し合う事もあります。
 もちろん舞台版の本である事は分かりやすく表記しておいた方が親切なのでしょうが、あくまで売り方や並べ方の話であって発行そのものを止めさせるのはおかしい。(1回目)

・ナマモノ同人はヤバイ
→ そのヤバさを論理的に説明できた人が今回(も)いないんですよね。元はナマモノ=芸能ジャンルを指す用語であり「俳優や歌手を扱った同人誌を本人や事務所に送っちゃダメ」だったのが、拡大解釈されて「実在の俳優が演じる半ナマ=2.5次元の同人誌も売っちゃダメ」みたいな先鋭化した事を言い出す人もいるのですが。
 俳優や歌手そのものを追っかける芸能ジャンルと、俳優によって演じられる架空のキャラを愛でる2.5次元ジャンルって、分けて考えるべきだと個人的には思います。今回のサークルは別に俳優さんに同人誌を送ろうとかしてませんし。 

・舞台は権利関係が複雑だから有料の同人誌にしてはいけない?
→ 確かに原作漫画に比べて複数の企業や絡んだりして権利が複雑になる場合が多いのですが、それはアニメ化でも同じ事です。特に最近主流の〝◯◯製作委員会〟方式では多数の出資者がアニメ版の著作権を保有している訳で、アニメ化にしろ舞台化にしろ実写映画化にしろ、多メディア展開したら権利関係は複雑化します。
 でも、同人誌って公認取って作る訳じゃないでしょ? 有料っていっても印刷代やサークル費用の原価がかかってしまう訳で、それを作るコストは同好の志たちと一緒に負担し合いましょう…というのが同人誌における金銭授受の意味ですからね。
(中には儲け主義に走る人もいますが)
 もちろん読者によっては未見の舞台のネタバレを含んでしまう訳ですからそこは明示しておいた方が親切でしょうが、あくまで売り方や並べ方の話であって発行そのものを止めさせるのはおかしい。(2回目)

・古参勢、物申す
→ 普段は学級会に対して無関心もしくは傍観しているベテラン同人作家(テニミュ世代とか)から、一言いわせろ的な動きがあったように思います。そこには、曖昧な法知識やマナー論で一つのジャンルの表現を潰そうとする人(あるいはそれによく分からないまま従ってしまった当事者)への不満や不信があったやもしれませぬ。

 舞台レポ本というジャンルは小さいながらも古くは後楽園ゆうえんち野外劇場の戦隊ショウ、90年代はセーラームーンミュージカル、00年代からはテニプリミュージカルから続くジャンプ作品などの人気沸騰を受け、近年は〝2.5次元〟ジャンルとして確立してきたものです。
 二次創作ではなくファンの語らいや情報交換を旨とした、これも一種の同人誌の形です。

 嫌いな表現を潰すために曖昧な議事著作権や俺マナー論で攻撃を繰り返す人がいれば、それに対してちゃんとした法律論やマナー論を持ち出して擁護や注意をしていく人もいるという、いろんな意味でツイッター時代の学級会の見本のような一件だったのではないでしょうか。


俺マナー班/5月の部
「無料配布した同人誌にクレームしてきた相手に菓子折を持って謝罪に行くべきか議題」
 売れ残った同人誌を、希望するフォロワーに郵送して読んでもらっていた人が、本の内容に苦情が来た際には申し訳ないので送料を返金したりお詫びの手紙と菓子折りを送っていたけど、人様の話を聞いていると色々あるんだなと思った…という独白ツイートが発端。
 むしろタダで読めるもの読んで苦情出す人がいる(事実関係の情報が間違ってるとかじゃなくて、二次創作の内容で)という方に驚く人、多数。

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 ここまでで上半期。
 なんだか俺マナー班が目立ってますが、後日更新の下半期はもうちょっとだけバラけますので。

 さて、同人誌版の方はCOMIC ZINにて通販始まりました。
 このブログ版よりもうちょっと文章が多くて掘り下げてる箇所も若干あるので、紙で手元に置いておきたい方はお買い上げください。
 なお一連の学級会の発端となられた方々には一冊進呈いたしますので、ご連絡いただければ郵送もしくはイベントなどでお渡しします。
表紙_見開き
「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2017」
(A5判・16ページ・本体450円+税)
http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=35954