2017年の冬コミで発行した「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2017」よりダイジェスト。
 当初は上半期・下半期で記事を分けるつもりでしたが、更新の間が開いてしまったので一年分を一緒にまとめて、改めて新記事としてアップします。
 一年間にネット上を駆け巡った〝学級会〟から個人的に気になった主要14議題を選出、法律論・歴史的経緯・伝言ゲームの元情報から考えてみます。
疑似著作権/俺マナー/伝言ゲームとして分類
 同人誌版は全部で1万8000文字くらいあるので、ブログ版は2/3くらいに削っております。
表紙_見開き

※ 賛否が議論になったものが対象なので、一方的な晒し目的や、犯罪行為を発端とする単純な〝炎上〟は除外しています。
※ 刀剣乱舞の界隈は学級会のための学級会を延々と繰り返しているので除外しています。

目次:
「コスプレイヤーのネームボードを奴隷札と呼ぶ議題」
「いい歳した女がキャンメイクとか使うのはどうなの議題」
「うたプリ同担拒否ではないけど、昭和生まれの人は年齢拒否議題」
「中池袋公園が野生のアニメイト化議題」
「東山動植物園コスプレフレンズ議題」
「売り子が確保できない混雑サークルは参加を自粛すべきか議題」
「ハイキューの舞台レポ本を芸能ジャンルではなくハイキュージャンルで売ったら大変なことになる議題」
「無料配布した同人誌にクレームしてきた相手に菓子折を持って謝罪に行くべきか議題」
「目トレスってトレパクですか?議題」
「有名女優のサークル参加とクラウドファウンディングでの 同人誌製作費調達をどう見るか議題」
「無許可リツイートはマナー違反!議題」
「とら婚、オタク婚活市場でもオタ趣味だけじゃ価値が低い議題」
「オーダーメイドでコスプレ衣装を請負ったら罪になるか議題」
「ウィッグつけないとコスプレじゃないのか議題」
 
俺マナー班/1月の部
「コスプレイヤーのネームボードを奴隷札と呼ぶ議題」
 冬コミ後、コスプレエリアでレイヤーが用意しているネームボードを個人的に「奴隷札」と呼んでいるというカメラマン氏のツイートが発端。
 コミケなどの大型イベントでは一握りのコスプレイヤーに対して撮影を希望するカメラマンの数が膨大になりがちなので、行列を作って一対一の撮影ではなく、集団で同時に撮れるように囲み撮影をするケースが多いです。
 しかしその際、各自に名刺を配ったりするのは面倒だし誰から貰ったか忘れやすいので、レイヤーは足元にスケッチブックを置いて自分の名前やSNSのアカウントを書いておく事で、名前や連絡先を同時に写真に収めてもらう方法が普及しつつあります。

 元はこれ、えっちなコスプレROMなど作ってるサークルのモデルが告知のために行っていたので、半裸の恰好で自分の名前を書いたボードを見せている姿がエロゲーやエロ漫画における〝奴隷市場〟の描写に似ていたので、当てはまってしまった感もあり。
 …が、やっぱり怒るレイヤーも…。


俺マナー班/1月の部
「いい歳した女がキャンメイクとか使うのはどうなの議題」
 オタク女性の身なりに厳しいアカウントの人によるツイートが発端。
 オシャレと年齢に関する話題はある種のイデオロギー闘争のようなもので、喧々諤々の騒動になりやすいです。
 が、途中から自分のオススメチープコスメを宣伝する方向へ。

・ちふれ化粧品、プッシュを受ける
→ 便乗おススメされていたブランドではちふれが人気でした。なお、ちふれ化粧品と関係の深い東京都地域婦人団体連盟は2010年の東京都青少年健全育成条例に反対声明を出しているので応援するべきという一部からの声が。
 ちふれ=地婦連、に由来するブランド名らしい。組織としてはまったく別であるものの、前身の東京実業(株)時代に地婦連の協力を得て全国へと販路を拡大した事をきっかけに(株)ちふれ化粧品に改称したとか。へ~


俺マナー班/1月の部
「うたプリ同担拒否ではないけど、昭和生まれの人は年齢拒否議題」
 「同担拒否」というのは、3次元のアイドルファン層に一定の割合で存在している、自分と同じアイドルを追っかけてる人とは仲良くできないという独占欲の強いタイプのファン。脳内で疑似恋愛をしている〝夢女子〟タイプに多いといわれますが。
 最近は2次元アイドル界隈でもこの「同担拒否」が度々話題に上がり、同じ(架空の)アイドルのファン同士であっても押しが被る人とは仲良くできない・地雷だという人もいるので、プロフにその旨を書いておく人も増えてます。
 しかし当該の人物は同担拒否ではないものの、「プリンスたちの年齢を10歳以上も上回っている30代40代のファンに対しては正直、気持ち悪い」という旨をプロフに書いていたため、いわば「年齢拒否」として第三者によって晒されてしまいました。
 そのキャプチャ画像で出回ったものがNEVERまとめや各種まとめサイトにも転載され拡散。
 やはり年齢に関する話題は議論が沸騰しやすいです。

 しかしこの話で最も重要なのは、話の発端は若いオタク女子のプロフとそのキャプ画像なのですが、火を着けたのはこれらを転載したNEVERまとめによるところが大きかったです。
 実はこの前後してオタク界隈(に限らず)個人レベルのささいなイザコザをとにかく早急に雑なまとめ方と針小棒大な煽りタイトル付きで拡散する輩が出没してらっしゃいまして、当まとめもその人物によるもののひとつ。
 NEVERまとめのPVに応じて発生するささいな広告料収入目当ての煽りに、みなさん乗っかってしまったよね…。


俺マナー班/2月の部
「中池袋公園が野生のアニメイト化議題」
  2016年頃より問題化していたもの。アニメイト池袋本店前の中池袋公園が週末ごとに限定グッズや一番くじ景品などの譲渡・交換会と化してしまって、多数のオタク女子が露天商のようにお店を広げてしまった問題。
 物々交換が基本であるものの、金銭との交換(売買)もある。自然発生的に起きた現象なので誰か仕切り役となる代表者や団体は存在せず、フリーマーケットのように見えるが公園の使用許可なども取っていない状態。
 これらがネットでは「野生のアニメイト」と表現されました。
 年が明けて2017年に入るとついに「公園内・周辺路上での無許可の販売・営業行為はできません。発見した場合、警察に通報します」という看板が設置されてしまったのでした。

・そもそも公式グッズの売り方の問題があるのでは
→ 中身が見えなかったり、くじ的な販売方法だと一個の推しキャラを当てるまでに不要なキャラのグッズを大量にタブらせる事になってしまうので、この無駄を減らすために女子たちが編み出した対抗策がオフラインで集まっての譲渡会です。コンプリートさせるまでにいらない商品を大量に購入させるこすっからい商法が続く以上、消えないでしょう。
 看板設置やネットニュースで騒がれた後、規模は縮小しましたがまだ残っております。


俺マナー班/2月の部
「東山動植物園コスプレフレンズ議題」
サーバル=けものフレンズのキャラクター名
 サーバルキャット=展示されてる動物の種名、
 …の意味で表記を変えています。

 愛知県の東山動植物園でサーバルのコスプレで観覧していたフレンズ男性が、コスプレイベントではない動物園でのコスプレをめぐって、いつものように「公共の場所でのコスプレはマナー違反!」といった批判の対象となりました。
 これだけだったら数限りなく繰り返されてきた、コスプレ村の長年の因習と、その外側の者との不毛な摩擦にしかならなかったでしょうが…。

 が、後日に現地民のブロガー・猫ウルフ氏が園の広聴担当S氏に取材を敢行。
 「コスプレでの来援は特に禁止ではなく、動物の反応を見るための目的はやめてほしいが、警察に怒られるレベルでなければ許容する」…というコメントを引き出した事で、かつてのオタクバッシング時代には考えられないほどに世の中の〝コスプレ〟に対する認識が変わりつつある事、それでも大昔から続くイベント以外でのコスプレ不可という認識がコスプレ村の人間にとっては根強い事の対比など、色々な事を考えさせられた趣深い一件になりました。

 なお発端となったツイートは檻の中のサーバルキャットにコスプレ姿で威嚇されている写真ですが、この写真ツイート自体は本人によるものではなく、また現地民によればこのサーバルキャットは割と誰にでも威嚇する癖のある子なのでコスプレだから怒っていた訳でもないらしい。
(この発端ツイートがいかにも炎上を煽ってしまった感はあるものの)

・公共の場で無許可コスプレするなんて!
→ 大元は80年代末にコミケが導入した「イベントに参加する際はコスプレのまま来場禁止」というローカルルールが他の小規模イベントにも広まり、いつしかコスプレ全体への「許可取った場所以外でコスプレしちゃダメ」という認識へと拡大解釈されていったという経緯があります。折しも90年代に入ってから吹き荒れたオタクバッシングやオウム事件(異様な格好した集団への社会不安)が背景にあり、オタク趣味は、コスプレ趣味は世間から隠さなくてはならないという認識の共有につながりました。
 他のテーマパークなどでコスプレ姿での使用が禁止になった例もあり、「無許可でのコスプレはNG」という啓蒙が必要な時代は、確かにあったのです。が、近年のアニメを使った町おこしイベントやハロウィンブームとの混同などで、世間の〝コスプレ〟への偏見が薄らいでいってるのも事実です。
 法的に考えると、日本の著作権法(より正確には著作財産権における複製権・翻案権など)は非営利での私的利用に関してはかなり広く認めており、かつ親告罪なので権利者が問題視しない限りは罪にならない。
 また他の法律や条例でもコスプレそのものに関する記述などは存在せず、銃刀法(武器など)や軽犯罪法・迷惑防止条例(主に露出や騒音)のような特定の法に反しない限り、コスプレそのものは規制されていない。
 ただし動物園のような私有地の場合、所有者や管理者の意向によりコスプレでの使用を断られる可能性は当然ありますから、事前に問い合わせておいた方が、後のこういった摩擦を避ける意味でも確実に無難ではあります。

・他のコスイベ団体のHPに「東山動植物園ではイベント以外ではコスプレ禁止」と書いてあったが
→ これは園側ではなく、あくまでこのイベンター側が昔に作ったローカルルールが残っていたようです。昔はコスプレは隠すべき論が強く、イベント以外でのコスプレなんて考えられない!という時代があった事を考えれば、自社の主催イベント以外で個人でコスプレして入園する人がいたら園側に迷惑がかかるかも…という前提があったので注意事項として書いたままになっていたのも無理はありません。

 もっとも園側(広聴担当S氏)の寛大な方針もまた、社是のように固まったものではなく、あくまで現在の担当者の方針では(警察に止められたり他のお客に迷惑かけたり動物を刺激するためのものでない程度なら)OK…というのに過ぎないでしょうから、この方針を継続して行ってもらうためにも、余計なトラブルなど起こさず務めたいものではあります。

● 東山コスプレ問題について東山動植物園さんに聞いてみた。-名古屋オタ情報局
http://nagoyaota.blog.fc2.com/blog-entry-456.html
  非常に良い資料なのでぜひ読んでいただきたい。


伝言ゲーム班/3月の部
「売り子が確保できない混雑サークルは参加を自粛すべきか議題」
 即売会の後、伝聞として「売り子が確保できないならサークル参加するなという話を聞いた」というツイートが発端。
 当然ながら「そんな義務は無い」という擁護の意見の方が多かったですが、どうも元々は「(特定の混雑サークルが毎回、売り子を用意せずに行列を延ばしてしまい、周りのサークルに迷惑がかかってるので)売り子が確保できないならサークル参加するな」というのが本当の話なのではないか?という説があり。
 大元の状況を確認できないので明確には分からないものの、だとすれば話の辻褄は合うので。


疑似著作権班/4月の部
「ハイキューの舞台レポ本を芸能ジャンルではなくハイキュージャンルで売ったら大変なことになる議題」
  ハイキューの2.5次元舞台を観劇したファンが、その内容と感想とレポ本にまとめて同人誌として発行しようとしていたところ、pixivやツイッターでこのサンプルを見たユーザーの中から複数の注意を受け、発行を中止した旨を報告ツイートした事が発端。
 執拗な批判を続けるごく少数の人がいた一方で、「どこが問題なのかかよく分からない」「レポ本自体はよくあるものでは」といった擁護する声が多かったです。

 客観的に見ると、自分の嫌いな表現を潰したい少数の人間によっていわゆる〝俺マナー〟〝疑似著作権〟がコンボで沸騰した非常に悪い例となりました。

・原作のジャンルで申し込まれたサークルでミュージカル版のレポ本を置くのはマナー違反?
→ 同人誌即売会の申し込みジャンルはあくまで目安に過ぎないのです。他ジャンルの本を置く事もあれば、逆カップリングのBL本なのに友人サークル同士で委託し合う事もあります。
 もちろん舞台版の本である事は分かりやすく表記しておいた方が親切なのでしょうが、あくまで売り方や並べ方の話であって発行そのものを止めさせるのはおかしい。(1回目)

・ナマモノ同人はヤバイ
→ そのヤバさを論理的に説明できた人が今回(も)いないんですよね。元はナマモノ=芸能ジャンルを指す用語であり「俳優や歌手を扱った同人誌を本人や事務所に送っちゃダメ」だったのが、拡大解釈されて「実在の俳優が演じる半ナマ=2.5次元の同人誌も売っちゃダメ」みたいな先鋭化した事を言い出す人もいるのですが。
 俳優や歌手そのものを追っかける芸能ジャンルと、俳優によって演じられる架空のキャラを愛でる2.5次元ジャンルって、分けて考えるべきだと個人的には思います。今回のサークルは別に俳優さんに同人誌を送ろうとかしてませんし。 

・舞台は権利関係が複雑だから有料の同人誌にしてはいけない?
→ 確かに原作漫画に比べて複数の企業や絡んだりして権利が複雑になる場合が多いのですが、それはアニメ化でも同じ事です。特に最近主流の〝◯◯製作委員会〟方式では多数の出資者がアニメ版の著作権を保有している訳で、アニメ化にしろ舞台化にしろ実写映画化にしろ、多メディア展開したら権利関係は複雑化します。
 でも、同人誌って公認取って作る訳じゃないでしょ? 有料っていっても印刷代やサークル費用の原価がかかってしまう訳で、それを作るコストは同好の志たちと一緒に負担し合いましょう…というのが同人誌における金銭授受の意味ですからね。
(中には儲け主義に走る人もいますが)
 もちろん読者によっては未見の舞台のネタバレを含んでしまう訳ですからそこは明示しておいた方が親切でしょうが、あくまで売り方や並べ方の話であって発行そのものを止めさせるのはおかしい。(2回目)

・古参勢、物申す
→ 普段は学級会に対して無関心もしくは傍観しているベテラン同人作家(テニミュ世代とか)から、一言いわせろ的な動きがあったように思います。そこには、曖昧な法知識やマナー論で一つのジャンルの表現を潰そうとする人(あるいはそれによく分からないまま従ってしまった当事者)への不満や不信があったやもしれませぬ。

 舞台レポ本というジャンルは小さいながらも古くは後楽園ゆうえんち野外劇場の戦隊ショウ、90年代はセーラームーンミュージカル、00年代からはテニプリミュージカルから続くジャンプ作品などの人気沸騰を受け、近年は〝2.5次元〟ジャンルとして確立してきたものです。
 二次創作ではなくファンの語らいや情報交換を旨とした、これも一種の同人誌の形です。

 嫌いな表現を潰すために曖昧な議事著作権や俺マナー論で攻撃を繰り返す人がいれば、それに対してちゃんとした法律論やマナー論を持ち出して擁護や注意をしていく人もいるという、いろんな意味でツイッター時代の学級会の見本のような一件だったのではないでしょうか。


俺マナー班/5月の部
「無料配布した同人誌にクレームしてきた相手に菓子折を持って謝罪に行くべきか議題」
 売れ残った同人誌を、希望するフォロワーに郵送して読んでもらっていた人が、本の内容に苦情が来た際には申し訳ないので送料を返金したりお詫びの手紙と菓子折りを送っていたけど、人様の話を聞いていると色々あるんだなと思った…という独白ツイートが発端。
 むしろタダで読めるもの読んで苦情出す人がいる(事実関係の情報が間違ってるとかじゃなくて、二次創作の内容で)という方に驚く人、多数。

× × × × × × × 

~ここから下半期~
 当初は上半期と下半期で別記事にする予定でしたが、同じ記事にまとめて新記事としてアップし直しています。
 更新が大変遅くなりました。応援(?)メールくださった方、ありがとうございます。

疑似著作権班/8月の部
「目トレスってトレパクですか?議題」
 「トレパク」とは、トレス+パクリの造語。元々は商業漫画において、既存の他の漫画や写真集など〝他人の作品〟から輪郭をトレスして使う事を検証し糾弾する際に使われるようになった言葉であります。
 …が、特にpixivの普及後は素人の無料公開イラストであっても〝検証〟の対象となってしまい、イラスト内において主体的ではない小道具類まで、例えばネット画像検索で出てくる画像からのトレスなのでは!?と病的なまでの追及を受けて攻撃されるケースが多いです。
 「目トレス」とはとどのつまり「模写」なのですが、最近はこれも糾弾する人がいらっしゃる。
 ユーリ!!!の絵を描くためにスケートの写真を(トレスではなく目で見ながら)参考にした絵師が、匿名アカウントにより「そういうの目トレって言うんですよ」と攻撃されたという報告が発端。そこまで些細な事を攻撃せんでも…という反応が多かったです。
 だいたい著作権法違反は親告罪なので、権利者だって誰それの作品内にそのまま使われた訳ではなく参考にされた程度では訴えませんが。


俺マナー班/8月の部
「有名女優のサークル参加とクラウドファウンディングでの 同人誌製作費調達をどう見るか議題」
 夏コミ終了後、(おさわがせ)女優・真木よう子さんが冬コミへのサークル参加申し込みと写真集の発行を告知。コミケにはこれまでも小林幸子・TMR・叶姉妹といった全国的な知名度を持つ芸能人がサークル参加した経緯があり、これだけではさして騒ぎにならなかったかもしれない。
 しかし発行に関する費用をクラウドファウンディングで募集しようとした辺りから完全に逆風に。
 サークル当落に関して事前に取り決められているのでは?芸能人が資金集めのためにやっているのでは?と様々な憶測による炎上の結果、真木さんは申し込んだサークル参加を辞退。
 また真木さんのアドバイザー的存在として、近年のコミケ内で「鈴木心写真館」という特設ブースで出展していたプロ写真家・鈴木心さんにも飛び火。2年ほど続けてきた写真館ブース出展をc93冬コミ(この本が出てる頃)では一旦休止するに至りました。

 参加者の多くが拒絶反応を示す中、しかし準備会やそれに近いポジションの人からは試みの一つとして擁護する発言が多かったですね。大衆の心理が論理よりも感情によって動き、制動が効かなくなる事の恐ろしさを久々に垣間見えた、後味の悪い形になってしまったと。
 c93冬コミカタログにおいては1138ページからの共同代表3名による座談会にもこの件は大きく取り上げられているので、読まれたし。

・クラウドファウンディングで同人誌の費用を捻出するのはおかしい
→ 同人活動ならば自分の資金力の範囲内でやるべき…という考えに一定の説得力はあります。しかし現在のような低価格の軽オフセット印刷が普及する以前、大昔は事前会費制で同人誌印刷代を捻出するサークルというのは珍しくなかったそうで、クラウドファウンディング自体は形を変えた事前会費制同人誌と言えるかもしれません。
 ただし当落どころか申込直後にこれを発表しているのはおかしな話で(確かに11月に当落発表があってから写真集作ったらスケジュールがカツカツになってしまうのですが)、当落に関して「もしやコミケの抽選には芸能人枠があるのか?」といった憶測を呼んでしまったのは悪手でした。

・コミケやオタクに対するリスペクトが足りない
→ これはそう見られても仕方ないかもしれない。でも誰だって最初は素人なんですが…私も高校の先輩の勧めで友人と一緒に何も分からないまま晴海時代の夏コミに参加したのが初めてでしたから…。
 ただ、サークル参加するならば先に叶姉妹がそうしていたように、まず一度は一般参加してみてコミケの空気を感じてもらってから判断した方が、周囲の拒絶反応も少なかったろうとは思います。これこそルールではなくマナー論なのですが。


なるべくオープンに、常に新しい血を入れていきたいのが準備会の理屈。
なるべくクローズドに、分かってる人種だけでやりたいのがオタクの心情。

 不勉強であったものの真木さんの件は一個ずつ見るとそこまで悪い事でもなく、ルール違反でもないのですが、ちょっと色々と突飛なやり方を盛りすぎだったやもしれません。
 説明不足な面を全部、悪い方に解釈されて叩かれてしまったのではないでしょうか。無名の人だったら問題にならなかった事が、逆に知名度があるために反感を買ってしまった。
 私個人の意見としては反省の上、改めてコミケに一度来場して参加してみて、その上で「もう一回!」と挑戦してほしい気がします。


俺マナー班/9月の部
「無許可リツイートはマナー違反!議題」
 他人のツイートを無許可でRTするのは常識ハズレだ…としたユーザーのツイートが発端。
 同じような話題は過去にも何度か話題にはなっていたものの、今回はトレンド1位になるなど大いに(否定的な意味で)語られたのでした。

・炎上目的のツイートだったのでは?
→ この人物はアカウント作成から一週間しか経っておらず、画像など個人情報への警戒が薄く、精神障害がある旨までプロフに書いており、そして炎上後に自宅住所と電話番号まで自ら晒していたという不自然さ。恐らく本人ではない誰かによるなりすましで、イヤガラセのためにこの人物の名前と個人情報を使って炎上させていたのでは…?


俺マナー班/9月の部
「とら婚、オタク婚活市場でもオタ趣味だけじゃ価値が低い議題」
 とらのあな関連企業として4月にオープンしたばかりのオタク向け婚活サービス〝とら婚〟の公式ツイッターで、
①オタク趣味しかない人
②オタク趣味を持つけど他にもいろいろやっている人
③オタク趣味を持つけどなんらかのスペックが高い人
 上記の内で選ばれるのは②か③であり、オタク趣味以外にも付加価値をつけるべき…という公式アカウントのツイートが発端。これは理屈としては正論に聞こえる部分が多かったものの、オタクの皆さんの結婚観やオタク向け婚活の存在意義にまで広がり、イデオロギー闘争の様相を呈してしまう。
 理論として正しくても、伝え方のまずさで悪い意味で曲解され、嫌悪されてしまった一例。

・オタク趣味を否定してるのでは?
→ あくまでとら婚サービス利用者(つまりオタク同士での結婚相手を探している人)に対しての発言です。確かに、オタク趣味だけの人よりも多趣味だったりスペックが高い人の方が、婚活市場においてはマッチングしやすく価値が高い…というのは現実でしょう。

・だったらオタク婚活の意味無いだろ
→ 利用者の立場では「オタク趣味しかないけど結婚したい!自分を変えるのは嫌だ」、マッチング者の立場では「オタク趣味だけでは結婚に結びつかない。誰かに望まれるように変わらなくては」。
 大前提としてオタク趣味を持ってるor相手のオタク趣味にも理解がある同士での婚活サービスではありますが、現実にはそれだけでは婚活は成功しづらいというのも頷ける話でありまして…
 一般的な婚活サービスにおいてはオタクである事自体がマイナス要素と受け取られやすいので、そこがマイナスにならないだけでもオタク向け婚活サービスの需要はあると思われます。
 〝「どうにかするのが我々の仕事」でなく、我々の仕事は「どうにかするための場と方策と情報を最大限提供する」ことにあります〟というツイッターでの発言も理屈としては理解できるのですが…

・自社の利用者であるオタクに対して失礼
→ これはその通り。何となく見下したような物言いが多く、オタクの神経を無駄に逆なでしてましたね。後日、もうちょっと物腰の柔らかい言い方に変わったのは、担当者が交代したのかな?
 秋葉原が拠点・とらのあな関連企業からの発信という事もあってやはりオタク男性からの反応が大きかったですが、オタク女性は一連の騒動をどう見たのでしょうか…?


疑似著作権班/9月の部
「オーダーメイドでコスプレ衣装を請負ったら罪になるか議題」
 とあるコスプレイヤーが、お金が無いので祖母のやっていた洋服屋の機材を使ってコスプレ衣装のオーダーメイドします、とツイートした事が発端。個人事業なのか会社登記してあったのかなど細かい部分は語られておらず。
 特に何の作品のキャラを作りますとは謳っていなかったものの、これが拡散される中で見つけた人たちが「無許可のコスプレ衣装を営利目的で製作しするのは著作権法違反」といつものように批判に。

 しかし、現実には町の仕立て屋さんから公式ライセンス品を製作しているメーカーに至るまで、オーダーメイドのコスプレ衣装製作というのは割と見かけるもので、基本的にはオーダーメイドというのは一点物なのでライセンスも取っていないのでありますが。
 衣裳は自作したけど、武器はオーダーメイドで作ってもらってるという人も多いのでは。
 批判する側が根拠としてあげていた例は確かに無版権コスプレ衣装の業者が訴えられて逮捕された刑事事件のものなのだが…一体どの辺に基準があって、法律の実際の運用はどうなっているのでしょう?

・無版権コスプレ衣装業者が逮捕に至った例
→ 2013年に九州の業者が販売していたスーパー戦隊の変身前衣装(ゴーカイジャケットなど)が東映に訴えられて著作権法違反に問われ、逮捕・有罪になった事件です。この事件のポイントは、この業者の売っていた衣装はバンダイから公式に商品化されていたものとソックリであり、著作財産権法における〝複製権〟違反となりました。既に公式品が存在する衣装を大量生産品として売っていた訳ですから、当然の判決だったでしょう。
(なお複製権は私的複製を認めているので、個人が非営利でコスプレ衣装を作ったりする事は違法にはなりません)
 これは東映とバンダイの関係が〝鉄のスクラム〟と呼ばれる程に強い関係である事も念頭に置くべきと思います。東映は2007年に、ヒーローショウ用のマスクから型抜きして複製販売していた茨城県の業者も訴えていますから。この2件は現在に至るまで、権利者がコスプレ衣装業者を訴えた唯二の判例です。
(2018年に東京地裁判決が出た「マリカー裁判」は、コスプレそのものではなくマリオカートを模したレンタルカート事業が問題になっているので)
 
・でもオーダーメイドってどこでもやってるのはどうして?
→ 基本的には営利であっても、大量生産ではなく一品物だから見逃されてる形でしょう。公式のライセンスを得るには監修が必要なので、一人一人の予算や体型に合わせて製作されるオーダーメイド衣装ではライセンスを取ろうにも、一個ずつ監修するコストなどかけられません。
 実際には「〇〇キャラ衣装を作ります!」って大々的に宣伝しちゃうと権利的に問題になるので、過去の作例としては展示しつつ、「ご相談ください」といった表現にとどめているケースが多いと思います。
 公式ライセンス品で最大手のコスパでも、実際はオーダーメイド品は無版権です(公式オーダーメイドは後述)。でも、それをいちいち権利者が訴えたりはしません。オーダーメイドはビジネスの規模が小さいですし、「何キャラを作ります」ってアピールしない限り、公式のビジネスの妨害にならないからではないでしょうか。
 だいたい何処の誰が何の衣装を発注したかなんて、当事者以外には分からないですから。

 なおコスパなどで「公式オーダーメイド衣装」として予約販売されている物は、正確には「セミオーダーメイド」というべき商品です。統一した材質や形状で権利者の監修を受けた上で、発注者の体型に合わせて微妙なサイズ調整を行って作る方法。数量限定の場合が多いです。

 で、法律論で言えば当然ながら営利目的でコスプレ衣装を作るのは著作権法違反になる可能性が高いのですが、一品物のオーダーメイドに関しては「何キャラを作ります」と明言しない限りは、権利者から捨て置かれている…というのが現状でしょうね。疑似著作権とまではちょっと言いきれないのですが、実際の法律の運用からして事件化される可能性はとても低い。
 この件で言えば最初に金欠=営利目的を出しちゃってるのが悪手なので、こういった場合では「色々あって洋服屋を継ぎますので、コスプレ衣装のオーダーメイドもご相談に乗ります」くらいだったら大きな問題にはならなかったかも…。

 あとユーザー側の意識の話として、既に公式衣装が商品化されている場合は、無版権の業者が売ってるものよりも公式衣装を買うべきだろうと個人的には強く思います。
 公式衣装の仕様に満足できなければ(あるいは商品化されていない衣装ならば)自作かオーダーメイドという手段になるでしょうが、やはり公式ライセンス商品=権利者の側に金銭で還元する機会、ですからね。


伝言ゲーム班/11月の部
「ウィッグつけないとコスプレじゃないのか議題」

 愛知県のんほいパークで行われたコスプレイベント後(運営は豊橋ぽぷかる)に、参加者の中から当日の報告として上がったツイートが発端。といっても詳細には殆ど触れられておらず。
 当然ながら地毛やマスクでするコスプレは多々ある訳で、ウィッグがコスプレの分かりやすいアイコンである事は事実だけど、コスプレ=ウィッグ必須、とは限らないですが。
 どちらかと言うとその後にツイッター上で起きた、「最近はウィッグなしだとコスプレと認められない風潮があるらしいですが自分の地毛コスプレ見て見て!」な大会で便乗して自分の写真をアップしている皆さんの逞しさの方が目についたかも(私もよく便乗アップします)。


・元の状況は何だったの
→ のんほいパークのイベントに「艦これ」提督のコスプレで参加していたレイヤーが、気温が低かったので防寒のために上から私服のコートを羽織っていたところイベントスタッフから「それだと禁止事項の〝実在の軍装〟に見えてしまうのでやめてほしい。あるいは、一般客から見てコスプレだと分かるようにウィッグなどつけてほしい」という要望を受けたのが発端だそうです。
 これが伝言ゲームで重要な部分が外れて「ウィッグなしではコスプレとは認めないと言われた」として広まったと。なお、ご本人はこの件にツイッターなどでは殆ど触れておらず、あくまでご本人以外による発信が広まったのですが。
(コスプレしていたご本人より正確な状況を教えてもらったので、項目の末に追記しています)

・運営側による対応の是非
→ 提督コス自体はよく見かけるもので、ゲーム画面上には一切登場しないもののなぜか最近は公式衣装まで発売されているという不思議なキャラではあります。また提督コス自体がダメだったのではなく、上にコートを羽織った状態が「実在の軍装に見える」のでダメだっただけです。
 当日のんほいパークでコスイベを開催していた豊橋ぽぷかるさんの対応は、同系統の他イベントと比較しても少し過敏である気がします。ひょっとしたら初開催の会場で動物園という性格上、ちょっと過敏に対応していたのかもしれませんが。また軍装コスに関してはその地域ごとに戦争に関する歴史的経緯があり、住民感情が全然違ったりするので。

 蓋を開けてみると大層な事件でもなく、それぞれは善意での行動と発言なんですよね。
 「(実在の軍装に見えないよう)ウィッグつけてほしい」って部分だけ独り歩きしちゃった。伝言ゲームってそういうものかもしれません。

[ここはブログ版での追記]
 後日、提督コスをしていたご本人から、より詳細な状況を教えていただきました。
 イベント当日には提督の帽子を被っておらず、帽子なし地毛で提督コスの上にトレンチコートを羽織っていた恰好が、スタッフから「軍服に見られかねないのでウィッグをつけるか、コートを脱がないように」という注意があり、私服に着替えた…という事だそうです。これが会場に来ていた別の人たちに伝わって、上記のように広まった…と。


2018冬コミ新刊告知
 12/31、東1ホール I-53b 旅と怪獣 にて、「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2018」発行します。
 刀剣3周年に不参加絵師が非公式で記念イラスト議題/地方民は同人誌を違法DLサイトで見る議題/FF同人誌スクショ議題(序章)/通報でコミックシティに警察出動議題(終章)/公式グッズでサークル装飾議題(エピローグ)/魔女集会タグに逆シュチュやコス画像議題/コス界隈カメラマン不足議題/とうらぶ擬獣化二次創作を商業出版議題/コナン原作そっくり絵柄で同人誌議題/あべこべ仮面ライダー議題/クッパ姫議題etc…

 法律論・歴史的経緯・伝言ゲームの元情報などから考えてます。

※ 賛否が議論になったものが対象なので、一方的な晒し目的や、犯罪行為を発端とする単純な〝炎上〟は除外しています。
※ 昨年度版では「刀剣乱舞の界隈は学級会のための学級会を延々と繰り返しているので除外」としていましたが、「ジャンル差別ではないか」というご指摘を頂き、2018年度版より収録いたします。

2017年度版の通販
 さて、2017年度版の同人誌の方はCOMIC ZINにて通販始まってます。
 このブログ版よりもうちょっと文章が多くて掘り下げてる箇所も若干あるので、紙で手元に置いておきたい方はお買い上げください。…といっても在庫切れのまま連絡が無いので、別の通販手段を考えないといけないかも。
 なお一連の学級会の発端となられた方々には一冊進呈いたしますので、ご連絡いただければ郵送もしくはイベントなどでお渡しします。
表紙_見開き
「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2017」
(A5判・16ページ・本体450円+税)
http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=35954