映画館で見てきました。
一言でいうと、ヲタ恋を見に行ったら、電車男を見て帰って来た感じ…?
良い所・悪い所を箇条書きにしようかと思ってたのですが、それ以前に良し悪しとは別の部分で、オタク描写のディティールが甘いなーと感じる箇所が多々あったので、先にそっちを書いてしまいます。別に「オタクをバカにしやがって!オタク差別だ!!」などと怒っている訳ではありません。
自分は原作を1巻だけ買って読んであんまりストーリー性が無かったので2巻以降は読んでおらず、アニメ版で全話視聴したくらいで、そんなに熱心なヲタ恋ファンではないと思います。原作とアニメと実写映画は別物であるという考えも持っています。
ただ、原作の再現は求めてないけれど、大部分がオタクの世界を描いているハズの作品なのに、オタクが見ると要所で「ちょっと違うよなー…」って部分が散見されるのが気になりました。
以降、核心部分のネタバレは避けて書きますが、事前情報を一切入れたくない人は読まない方が良いでしょう。
【ヲタ恋映画のオタク描写が甘いポイント】
●コミケシーン(C94=2018夏コミ)において、全体的に参加者が軽装かつ荷物が小さい。赤ブー主催のコミックシティではなくコミックマーケット準備会主催の本家コミケの映像を部分的に使いながら、即売会シーンは皆エキストラなので不自然。
●宏嵩に売り子を任せるシーン。周囲の女性参加者から「長身のイケメン男子が売り子してる」と噂になった後、成海のサークルに女子の行列ができるが、売り子がイケメンという理由だけでBL二次創作サークルに列ができるほど甘くない。原作では売り子が噂になって変な客に絡まれるシーンはあるが、映画では映像的に行列形成まで盛ってしまったために不自然。
●コミケ終了後に成海が「次のイベントはもっと規模がデカいぞ!」というセリフ。当然ながらコミケよりも規模の大きい即売会は存在しない。実は原作にも同様のセリフがあるのだが、宏嵩からのデートの誘いをはぐらかす意図かな?と解釈していたものの、なまじ本家コミケの実写映像を使ってしまったために不自然さが強くなっている。なんでこんな所だけ原作準拠するのか…。
●成海が仕事の打ち合わせで会社のメンバーと食事してる店内で、イベント中のコスプレイヤーと遭遇するシーン。当然ながらイベントは土日祝に行われるので、成海らは全員で休日出勤してる事になってしまう。ここは成海のオタバレピンチを演出するシーンなので必要なのだが。
●ニコニコ動画っぽくコメントが画面を流れるシーンが何度かあるが、古い。今現在のオタクにとって既にニコ動は、オワコンではないものの過去のメディアである。
●小柳が樺倉に自分のコスプレ姿を「似合ってるか?」と聞くセリフ。ベテラン男装レイヤーならば(自分の容姿に)似合ってるかよりも、(元のキャラに)「似てるか?」「見えるか?」と聞いた方がそれらしくなっただろう。細かい所なのだがレイヤー視点では気になった。
●内田真礼出演のライブシーン。ホール一杯に親衛隊的なファンが動き回ってオタ芸を披露しているが、おそらくアイドル声優(劇中では声優アイドルと呼称)とインディーズアイドルを混同している。
本来オタ芸はインディーズアイドルのライブ会場(デビュー時点では無名なのでガラガラ)で盛り上がるために行われるのであって、声優のライブ会場(既に人気が出てから歌手活動が行われる)でこれを行うと他の観客に迷惑がられる。
以上、重箱の隅を突きましたが、然るべきオタクの監修や考証役を置く手順を踏んでおけば回避できるだろう部分で、映画製作上の費用やスケジュールで考えたら無理な事だったとは思えません。細かい部分ですが、「神は細部に宿る」という言葉のように、小さいウソを重ねちゃうと大きなウソを支えられなくなっちゃうんですよ。
監督は異なるけど同じような体制でつくられた「翔んで埼玉」が良かったのは、とんでもない超虚構的世界を描いてるのに細部のディティールが妙にリアルなので割と受け入れられるのであって、本作は逆にリアルな世界を描いてしまったがために細かいウソが目立ってしまい、オタク視点で見ると非常に気になってしまう訳です。
なんか、オタクの世界を描いてる割に中途半端なんですよね。部分的にいまだに00年代の古臭いオタクイメージを引きずってると言いましょうか…。
随所でのオタクのキモさをネタにして笑いを取る手法って、同じくフジテレビのドラマ版「電車男」時代のままで、むしろ懐かしくもあります。もう15年も前ですが。
コミケ準備会が製作に協力し、世界コスプレサミット事務局とコスモードが宣伝に協力してこれかぁ…みたいな気分にはなりますが、中身の部分にはタッチしてないでしょうからそこは責めません。
んじゃ、他に良いところ悪いところレビュー。
【ヲタ恋映画、良かったポイント】
●佐藤二郎が佐藤二郎感たっぷりに佐藤二郎を演じている佐藤二郎映画なのでヨシ。
●高畑充希の顔芸が最高。コロコロ変わる表情のアップと早口でまくし立てる演技は、この人いくつ引き出し持ってるんだろう的な驚き。
(実写化といえばテレ東の「忘却のサチコ」も演じてましたね。無表情の超キャリアウーマンで、食事シーンだけ早口ナレーションになる)
●ミュージカルシーンが豊富。ストーリー上で心情を吐露するため歌いだすシーンもあれば、必然性なく唐突に歌って踊りだすシーンもあるが、ミュージカルに整合性は求めない。展開上は全く必要のない渋谷交差点でのラブライブ風ダンスシーンもイメージPVとしては非常に面白い。
●新キャラの坂元がキモ濃ゆい。本作で一番の強烈な印象を残したであろうキャラクター。
【ヲタ恋映画、悪かったポイント】
●佐藤二郎が佐藤二郎感たっぷりに佐藤二郎を演じている佐藤二郎映画なのでダメ。
●小柳と樺倉に関してはもう同姓同名の別キャラと思った方が良い。一部宣材写真では4人とも主人公のように掲載されてるが、実際の2人の出番は少なく恋人らしい描写も皆無に近い。また宏嵩とは別部署でほぼ面識がない設定なので、原作とアニメ版で人気の高いお泊りエピソードなどは存在しません。
●後半に行くにしたがってストーリーが強引。宏嵩の行動原理が不自然。これは原作がオタク同士の恋愛の難しさを描いてないので、しかし恋愛映画である以上はピンチを描かない訳にいかず、強引な理由で二人をすれ違いさせてしまってるせい。
(クライマックスでピンチを無理やり演出するために主人公らを唐突にマイナス思考にさせるのはグレートマジンガーやゴーオンジャーの展開に近い…)
●最後まで見ても、あれ?さっきの話どうなったの?みたいな部分が残る。ストーリーが釈然としないまま終わる。
■原作とは違う!のは構わないけど…
んー…。
本作に限らずですが、人気漫画やアニメを実写化した際の「原作とは別物として見るべき」「だったら原作のブランドを使うな」という対立はどちらも正論です。
とにかく人気俳優キャスティング前提で恋愛映画を作りたがったフジテレビやホリプロの都合があって、フジのノイタミナ枠で人気だった「ヲタクに恋は難しい」という漫画を使う事になって、そこに日本版「ラ・ラ・ランド」を撮りたかった福田監督の意図が入って、どこ向いてるか分からないけど少なくともオタクの世界を描きながらオタクの方には向いてない作品が出来上がってしまったという…。
福田監督が佐藤二郎を愛しすぎてるように、オタクも同人誌やコスプレや声優ライブを愛してるのです。
この色んな意味でのオタクに対する至らなさは、「翔んで埼玉」から埼玉愛をマイナスしてしまったような…。
点数評価するとメッチャ低くなると思いますが!
だってストーリーが後半よく分からないし、ミュージカルは多い割に不要な部分もあるし、オタク描写が古いし。
でも映画館で見てる間は笑ってたし、ダンスシーンは頭カラッポで見たら楽しい。
だから、完成度は低いしイラッとさせるけど決してツマラナイ訳ではないという、捉えどころのない作品だなぁ…とも思います。
来年辺りこれが地上波放送された際にはオタクの皆さんによる共感性羞恥の阿鼻叫喚が想像できてしまうので、そこはある意味最大の楽しみでもありますが。
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【オマケ、終演後に】
●近くで見ていたフツーのカップルが「(彼氏が)山崎健人に似てる!」と言い合ってて極めて不快だったので、青少年健全育成条例で取り締まってほしい。
こういう人たちが見るための映画かぁ…。
●後ろで見ていたフツーの女子二人組が「高畑充希って大っ嫌いなんだよね。ウチが好きになった俳優、全部とってくから」と理不尽に怒っていた。
こういう人たちが見るための映画かぁ…。
●コミケシーン(C94=2018夏コミ)において、全体的に参加者が軽装かつ荷物が小さい。赤ブー主催のコミックシティではなくコミックマーケット準備会主催の本家コミケの映像を部分的に使いながら、即売会シーンは皆エキストラなので不自然。
●宏嵩に売り子を任せるシーン。周囲の女性参加者から「長身のイケメン男子が売り子してる」と噂になった後、成海のサークルに女子の行列ができるが、売り子がイケメンという理由だけでBL二次創作サークルに列ができるほど甘くない。原作では売り子が噂になって変な客に絡まれるシーンはあるが、映画では映像的に行列形成まで盛ってしまったために不自然。
●コミケ終了後に成海が「次のイベントはもっと規模がデカいぞ!」というセリフ。当然ながらコミケよりも規模の大きい即売会は存在しない。実は原作にも同様のセリフがあるのだが、宏嵩からのデートの誘いをはぐらかす意図かな?と解釈していたものの、なまじ本家コミケの実写映像を使ってしまったために不自然さが強くなっている。なんでこんな所だけ原作準拠するのか…。
●成海が仕事の打ち合わせで会社のメンバーと食事してる店内で、イベント中のコスプレイヤーと遭遇するシーン。当然ながらイベントは土日祝に行われるので、成海らは全員で休日出勤してる事になってしまう。ここは成海のオタバレピンチを演出するシーンなので必要なのだが。
●ニコニコ動画っぽくコメントが画面を流れるシーンが何度かあるが、古い。今現在のオタクにとって既にニコ動は、オワコンではないものの過去のメディアである。
●小柳先輩が披露する燭台切のコスプレ。おそらくアコス製オーダーメイドなのだが全体のバランスが悪い。衣装と菜々緒の体型が異なってるのと、ウィッグやメイクがコスプレ用のそれになっていない。
自分の容姿を見せるためのコスプレと、キャラに近づこうとするコスプレでは方法論が異なり、小柳は後者で有名コスプレイヤーという設定なので(週刊誌のグラビアで下着姿を披露する意味での有名レイヤーではなく、コスプレ専門誌のグラビアでコスプレ姿を披露するという意味での有名レイヤーね)、ここはもっと本気のコスプレしてほしかった。せっかくの菜々緒という素材なのに勿体ない…。
なお菜々緒はCOSPLAY MODE3月号誌上にも宣伝のために登場している。●小柳が樺倉に自分のコスプレ姿を「似合ってるか?」と聞くセリフ。ベテラン男装レイヤーならば(自分の容姿に)似合ってるかよりも、(元のキャラに)「似てるか?」「見えるか?」と聞いた方がそれらしくなっただろう。細かい所なのだがレイヤー視点では気になった。
●内田真礼出演のライブシーン。ホール一杯に親衛隊的なファンが動き回ってオタ芸を披露しているが、おそらくアイドル声優(劇中では声優アイドルと呼称)とインディーズアイドルを混同している。
本来オタ芸はインディーズアイドルのライブ会場(デビュー時点では無名なのでガラガラ)で盛り上がるために行われるのであって、声優のライブ会場(既に人気が出てから歌手活動が行われる)でこれを行うと他の観客に迷惑がられる。
なお自分は最近の声優やアイドルに疎いので検索したら、アイドルのライブ会場でも見かけない描写になってるらしい。
●ついでにフジテレビでのPR活動で出演者らが「禿同ー!」と叫んだりする事がありましたが、今だと「わかりみ深い」とかなので、ネット用語が若干古い気がする。
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以上、重箱の隅を突きましたが、然るべきオタクの監修や考証役を置く手順を踏んでおけば回避できるだろう部分で、映画製作上の費用やスケジュールで考えたら無理な事だったとは思えません。細かい部分ですが、「神は細部に宿る」という言葉のように、小さいウソを重ねちゃうと大きなウソを支えられなくなっちゃうんですよ。
監督は異なるけど同じような体制でつくられた「翔んで埼玉」が良かったのは、とんでもない超虚構的世界を描いてるのに細部のディティールが妙にリアルなので割と受け入れられるのであって、本作は逆にリアルな世界を描いてしまったがために細かいウソが目立ってしまい、オタク視点で見ると非常に気になってしまう訳です。
なんか、オタクの世界を描いてる割に中途半端なんですよね。部分的にいまだに00年代の古臭いオタクイメージを引きずってると言いましょうか…。
随所でのオタクのキモさをネタにして笑いを取る手法って、同じくフジテレビのドラマ版「電車男」時代のままで、むしろ懐かしくもあります。もう15年も前ですが。
コミケ準備会が製作に協力し、世界コスプレサミット事務局とコスモードが宣伝に協力してこれかぁ…みたいな気分にはなりますが、中身の部分にはタッチしてないでしょうからそこは責めません。
んじゃ、他に良いところ悪いところレビュー。
【ヲタ恋映画、良かったポイント】
●佐藤二郎が佐藤二郎感たっぷりに佐藤二郎を演じている佐藤二郎映画なのでヨシ。
●高畑充希の顔芸が最高。コロコロ変わる表情のアップと早口でまくし立てる演技は、この人いくつ引き出し持ってるんだろう的な驚き。
(実写化といえばテレ東の「忘却のサチコ」も演じてましたね。無表情の超キャリアウーマンで、食事シーンだけ早口ナレーションになる)
●ミュージカルシーンが豊富。ストーリー上で心情を吐露するため歌いだすシーンもあれば、必然性なく唐突に歌って踊りだすシーンもあるが、ミュージカルに整合性は求めない。展開上は全く必要のない渋谷交差点でのラブライブ風ダンスシーンもイメージPVとしては非常に面白い。
●新キャラの坂元がキモ濃ゆい。本作で一番の強烈な印象を残したであろうキャラクター。
【ヲタ恋映画、悪かったポイント】
●佐藤二郎が佐藤二郎感たっぷりに佐藤二郎を演じている佐藤二郎映画なのでダメ。
●小柳と樺倉に関してはもう同姓同名の別キャラと思った方が良い。一部宣材写真では4人とも主人公のように掲載されてるが、実際の2人の出番は少なく恋人らしい描写も皆無に近い。また宏嵩とは別部署でほぼ面識がない設定なので、原作とアニメ版で人気の高いお泊りエピソードなどは存在しません。
●後半に行くにしたがってストーリーが強引。宏嵩の行動原理が不自然。これは原作がオタク同士の恋愛の難しさを描いてないので、しかし恋愛映画である以上はピンチを描かない訳にいかず、強引な理由で二人をすれ違いさせてしまってるせい。
(クライマックスでピンチを無理やり演出するために主人公らを唐突にマイナス思考にさせるのはグレートマジンガーやゴーオンジャーの展開に近い…)
●最後まで見ても、あれ?さっきの話どうなったの?みたいな部分が残る。ストーリーが釈然としないまま終わる。
■原作とは違う!のは構わないけど…
んー…。
本作に限らずですが、人気漫画やアニメを実写化した際の「原作とは別物として見るべき」「だったら原作のブランドを使うな」という対立はどちらも正論です。
原作ファンから不評ってのは、とどのつまりは「原作とは違うけどこれはこれで面白い!」と言わせられなかったのがいけないんです。
いまだオタクをキモいと考える人がいても構わないし実際キモい人も多いんだけど、そこを描いてもこの「ヲタクに恋は難しい」の元々のファン層とは特に合わなかったでしょう。
オタクを美化してキラキラしたものとして描いていた原作の作風と、オタクをイジって笑いを取ろうとする福田監督の作風とが、水と油の関係なんですね。
福田監督はこれが「銀魂」だとピタリとハマッていた訳ですが、本作とは相容れなかったかと。
福田監督はこれが「銀魂」だとピタリとハマッていた訳ですが、本作とは相容れなかったかと。
とにかく人気俳優キャスティング前提で恋愛映画を作りたがったフジテレビやホリプロの都合があって、フジのノイタミナ枠で人気だった「ヲタクに恋は難しい」という漫画を使う事になって、そこに日本版「ラ・ラ・ランド」を撮りたかった福田監督の意図が入って、どこ向いてるか分からないけど少なくともオタクの世界を描きながらオタクの方には向いてない作品が出来上がってしまったという…。
福田監督が佐藤二郎を愛しすぎてるように、オタクも同人誌やコスプレや声優ライブを愛してるのです。
この色んな意味でのオタクに対する至らなさは、「翔んで埼玉」から埼玉愛をマイナスしてしまったような…。
…。
とは言え、自分は実際のところ意外と楽しめました。点数評価するとメッチャ低くなると思いますが!
だってストーリーが後半よく分からないし、ミュージカルは多い割に不要な部分もあるし、オタク描写が古いし。
でも映画館で見てる間は笑ってたし、ダンスシーンは頭カラッポで見たら楽しい。
だから、完成度は低いしイラッとさせるけど決してツマラナイ訳ではないという、捉えどころのない作品だなぁ…とも思います。
来年辺りこれが地上波放送された際にはオタクの皆さんによる共感性羞恥の阿鼻叫喚が想像できてしまうので、そこはある意味最大の楽しみでもありますが。
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【オマケ、終演後に】
●近くで見ていたフツーのカップルが「(彼氏が)山崎健人に似てる!」と言い合ってて極めて不快だったので、青少年健全育成条例で取り締まってほしい。
こういう人たちが見るための映画かぁ…。
●後ろで見ていたフツーの女子二人組が「高畑充希って大っ嫌いなんだよね。ウチが好きになった俳優、全部とってくから」と理不尽に怒っていた。
こういう人たちが見るための映画かぁ…。