私は熟女マニアではありません!
 何故なら、“美熟女”マニアだからです!

 …さて現在では同じ様な意味で使われる事も多い“熟女”“美熟女”ですが、性風俗、ことさらAVの世界では、この二つは大きく意味が異なる言葉なのです。
 今日は主にAV界における、熟女の歴史を軽ーく、説明したり、考察したりしてみましょう。

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90年代まで、AVにおける“熟女”モノというのは、たるんだ体型の汚いオバサンが出てくる、キワモノ作品を主に指していました。当然、実用性は無いに等しく、あくまで「恐いもの見たさ」にマニアが借りる(買う、ではない)程度の存在でしかなかったのです。
 仮に30歳以上でそこそこ美人の女優が存在していたとしても、年齢を誤摩化して無理矢理若作りして、熟女モノ以外に出演するのが常でした。だって熟女モノ=キワモノでしかなかったんですから。


 しかし90年代後半から2000年頃にかけて、AV界に地殻変動が発生します。
 この時期、プレステ2の発売に前後してDVDプレーヤーの普及率が飛躍的に伸びました。DVDソフトは製造・運搬コストが低く、画質も劣化しません。よって今までのレンタル店の他に、ユーザーに直接DVDソフトを販売する店舗が一気に増えていったのです。
(余談ですが、昔のAVが1本1万円以上したのは、80年代初頭に「制作費300万円で、300本売れればペイできる」前提で設定した価格帯だからです)

 つまりAV界のビジネスモデル自体が、
『ビデ倫の審査を受けた大手メーカーが、レンタル店(全国で約1万店)相手に1万円のVHSを売る』
   ↓
『ビデ倫の審査を受けないインディーズメーカーが、個人(成人男性なら全国で約5000万人)を相手に3000円のDVDを売る』
へ、シフトした訳です。
 ここ、AV界の歴史を語る上で非常に重要です!テストに出るんで赤ペン引いて下さい!(モニタ上に)


 こうなると一気にマーケットの拡大したインディーズメーカーは雨後のタケノコの如く大小様々、群雄割拠の時代を迎えちゃいます。
 そしてこの流れの中にあっては、万人受けを狙うよりも、マニアックな内容でコアユーザーを狙った方が、固定客を見込めるのですよ。(レンタル店ではやっぱ、万人受けするソフト以外は置き難いのよ)

 そこで今迄はあまり表に出てこなかった…例えば“熟女”“痴女”“手コキ”“ぶっかけ”といったマニアックな…言わばフェチ的要素にも、スポットが当たる様になって行きました。
 また、90年前半までに美少女AVに出演して引退していた女優達が、諸般の事情でカムバックしてくる例も多く、元が美少女ですからそこら辺のオバサンとはやっぱりモノが違う訳です。


 こうした背景の中で、特に重要な出来事を、とりあえず二点。
 一つ、熟女専門メーカー“マドンナ”が発足し、凝ったストーリーやシュチュエーション、多数の素人熟女をも発掘、ビジネスとして成功を収め、一大ジャンルとして成立させた事。
 もう一つ、桃太郎映像ムーディーズなど、数々のインディーズメーカーで辣腕を振るった溜池ゴロー監督が、ハメ撮りやイメージシーンの多用など、従来ならアイドル女優に使った手法をそのまま熟女優に生かし、ついには独立して自名を冠したメーカーまで発足させます。

 そして、主にこの溜池監督が関わったメーカーで、これらを旧来的なキワモノ的“熟女”モノと区別する為に用いられ、定着していったのが・・・【美熟女】というキャッチコピーであり、キーワードなのです。

 もうお分かりですね?

 “美熟女”とは、“熟女”に対するアンチテーゼとして使用される言葉なのです。
 これを迂闊に混同してしまう事は、先人達の努力に対しても、また古くからの熱心なユーザーに対しても、ちょっと認識が甘いと言わざるを得ないのではないでしょうか?
 

 逆に最近は、少女ではないにしろまだ若い女優が、無理矢理に美熟女モノに出演しているケースもあり、これはこれで問題な気がします。まだ熟してねーじゃん!みたいな。(特に桃太郎映像に多い!)

 また、ジャンルとして認知・確立すると、美熟女モノで活躍する女優が活発にサイン会などアイドル的な扱いのイベントをこなすケースも増え、彼女達は“熟ドル”なる言葉でも呼称されています。
 いまだ日本人の価値観では、男性が年長の女性を性的対象として見る事に偏見が有るのも事実ですが、AV界においては既に“美熟女”は確固たる地位を築いている、と言えるでしょう。

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 「糞尿を語れば哲学。愛液を語れば純文学。」
 AVを含む性風俗の歴史は人類の営みの歴史でもあるのに、いまだそれらを体系的に研究し、まとめようとした資料は決して多くはありません。このままでは記憶や資料が散逸してしまうのではないかと心配です。