空の青さの深さより、もっと深い愛があると伝えてやります。(挨拶)
  突然ですが、「地球戦隊ファイブマン」(1990年)の話をしてしまおうと思います。

  ちょっと戦隊をかじった事のある人ならば、この作品がいかに戦隊史上の汚点をいくつも残してしまった作品であるか、そして戦隊ファンからも嘲りの対象となった作品であるかはご存知と思います。
  しかし、駄チワワさんはこの作品への評価と愛着はとても高いのです。
  なぜならこれは、いわば“子供の手の届くスペースオペラ”として優れた物語であると思っているからです。


【基本ストーリー】
  惑星シドンに滞在しながらの研究中、銀帝軍ゾーンに襲撃された星川博士は、5人の子供たちだけを地球へ帰還させた。  時は流れ、地球に銀帝軍ゾーンの魔手が迫った時、5人の兄妹は強化スーツに身を包み、地球戦隊ファイブマンとして立ち上がる~。


  ハッキリ言って、マイナス要素はそれこそ数え切れません。ざっと挙げただけでも、
・  「地球戦隊ファイブマン」というタイトル自体、内容と関係が薄く、捻りも無い。
・  アクションパターンやミニチュアワーク、特殊効果などが“いつもの”パターン過ぎて既視感が拭えない。
・  初期ロボットやスーツ、悪役のデザインもどこか野暮ったい。斬新さに欠ける。
・  前作ターボレンジャーが5人の高校生だったのに対し、5人兄妹で小学校教師…という設定は高年齢の視聴者にとっては感情移入しづらい。
・  ギャグが多すぎて緊迫感が無い。
・  第一話から登場してる基地(マックスマグマ)がロボットに変型しそうなデザインだと思ってたら、やっぱり後半でロボに変型。しかし大型玩具(シリーズ最高額の¥16800!)が全く売れず、バブル崩壊も相まって全国各地のオモチャ屋に盛大に投売り在庫の山を築き、伝説となる。
・  初期~中期まであらゆる部分でマンネリ感。
・  第26話「九州だョン」が視聴率4.3%という、当時のシリーズ最低視聴率。
・  そもそも裏番組の「らんま」見てる。

  …と、これ位次々出てくるのですから、途中で見るのを挫折した人、あるいは次作「ジェットマン」から戦隊を見始めたor復帰した人にとっては、比較論を持ち出したりする為には格好のスケープゴートであったと思います。
(実際この作品を悪く言う人は、少なくとも全編を通しては見てない人が多いと感じる)

  しかし、中盤以降、この作品は化けます。
  相次ぐテコ入れ(失敗含む)から怒涛のクライマックスへと移行していく様は、当時惰性で見ていた自分にとっても大変な驚きでした。
  じゃあ、ここから「ファイブマン」のここが良かったという部分をつらつらと。
  未見の方には少々ネタバレになります。
【戦隊シリーズ最後のスペースオペラ】
  戦隊で宇宙規模の壮大な展開を見せた作品といえば、チェンジマン・フラッシュマンと本作ぐらいです。(デカレンジャーは宇宙規模の設定であっても、ストー リーは地球署管轄内なのでちょっとちがうかな)
  舞台設定は人類が他惑星の開発に乗り出している近未来。次々と現れる宇宙からの来訪者と多彩なエピソードの魅力を忘れてはなりません。特に、翌年ジェットマンのメーンライターに抜擢される井上敏樹執筆の、銀河剣士ビリオン主演エピソード・39話『愛をください』は秀逸。水野美紀主演だし。
  個人的には、名作と言われる「チェンジマン」は、OPから迷彩服着てる職業軍人だったり、デザイン・演出がグロかったりしたので、子供心になじめませんでした。むしろ「ファイブマン」のがとっつき易かったのは事実。

【スーパーファイブロボの奇跡的な格好良さ!】
  88年のライブマンで始まった、1号ロボ+2号ロボの“スーパー合体”パターンは、ターボレンジャーを挟んで3例目。
  しかしライブロボ・ターボロボは、あくまで最初に1号ロボありき、2号ロボは継ぎ足しパターンでした。端正なイメージのターボロボが、スーパーターボロボになると途端に胴長短足になってしまう姿は、当時戦隊ファンの失笑を買ったものです。
  しかしファイブロボは当初からスターファイブとの合体を考慮したデザインの為、スーパーファイブロボになっても格好イイのです。ファイブロボの地味なデザインも、このスーパー合体を念頭に置いていた為だったんですね。
  もっとも、あんまり売れてはいないようでしたが…。
(この辺の商業的失敗は、この時期、連続幼女誘拐殺人事件のM容疑者が特撮オタクだった事が、イメージを悪くしてたような気もしますが)

【どうしようも無いコメディ】
  寒いネタから伝説のギャグまで、本来ならシリアスなストーリーながらギャグ満載。
  特に銀帝軍ゾーンが定期的に迎えるらしい「逆さまデー」は、いつも下っ端のバツラー兵が偉くなり、大幹部のガロア艦長がコキ使われるというインパクト抜群のエピソード。(実はこの回が前述した最低視聴率の回)
  さらにガロア艦長は後半、初代艦長シュバリエの復帰により失脚。一気に戦艦バルガイヤー内の清掃員の身分に落とされます。これは多くのヘタレ中年スキーを獲得しました。(実はこの清掃中に謎の棺を発見してしまう事が、後の伏線になるのですが)
  ほか、銀河闘士を巨大化させるために走ってきた巨大ゴルリン12号が、戦う前に転んで頭打って絶命するとか、宇宙生物に母親と間違われた銀河博士ドルドラ(♀)が「私はまだ独身よッ!」と絶叫するシーンとか、忘れちゃいけない「銀河戦隊ギンガマン」とか(星獣戦隊とは別。悪の戦隊)、もう、やり過ぎな位に。

【全ては超獣バルガイヤーの狂愛から始まった!】
  銀帝軍ゾーンは基本的に戦艦バルガイヤーに乗船しており、銀河皇帝メドーだけがその外側から命令を下す…というビジュアルは当初、まんま「チェンジマン」 の大星団ゴズマと星王バズーの既視感でした。しかしここからが違います。真の支配者は戦艦…に擬態していた宇宙怪獣バルガイヤーであり、メドーは部下を支配するために作った幻だったのです。

  かつてバルガイヤーは、一人の少女・メドーに恋をします。
  しかし少女はバルガイヤーを恐れ、崖から足を踏み外して死んでしまうのです。
  悲しみに暮れたバルガイヤーは、メドーの遺体と魂を自らの胎内に閉じ込め、戦艦の姿に化け、銀河皇帝メドーの幻を使って部下の宇宙人を集め、星を滅ぼす旅に出ます。1000個の星を滅ぼせばバルガイヤーは神となり、メドーを生き返らせることも出来るのです。
  バルガイヤーの正体が明らかになったところで、騙されていた銀帝軍ゾーンは内部崩壊してしまいます。複数幹部が発狂してるし。
  しかしこのバルガイヤーの唯一の弱点は、5人の父・星川博士が惑星シドンで研究していた“シドンの花”であり、5兄妹が地球へ持ち帰って、ニュータウン小学校の生徒達が育てていた花なのでした…。
  いかんのよ。こーゆー「ほんの小さな出来事が、壮大な悲劇へと繋がっていく」パターン。弱いんですわ。


  ね?
  少しは面白そうに思えてきたでしょ?
  実際中盤以降で視聴率は急上昇し、金曜五時半台の戦隊シリーズでは最高の13.3%を記録したり、第三クール以降の平均視聴率が7.8%(「戦うトレンディドラマ」として大ブレイクした「ジェットマン」の年間平均より上)だったりするのですよ。ウン。
  ついでに最低視聴率記録も、後に「カーレンジャー」の4.3%に破られます。
  ビデオにもDVDにもならず、再放送もされず、次作「ジェットマン」が伝説的人気作となってしまった為に、なかなか正当な評価をされにくい作品ではありますが、いちファンとしてはいつか再評価される時代が来て欲しいものだと思っているわけですね。


  蛇足。
  最近のCSの番組で、ファイブブルー・星川健役の
信達谷圭氏が「最初、自分(ブルー)だけ本当の兄弟じゃないっていう設定を聞かされてたんで、5人の中でちょっと違うイメージで演じてたら、その設定が劇中で描かれなかった」と語っておりました。
  …裏ではやっぱり紆余曲折あったのだろうなぁ。





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