※長いのでcosnap!記事と前後編に分けました。こちらの前編を先に読んでおいてくださいまし。
で、レイヤーの友人♀から以前、「意外にコスプレ雑誌なんて読んでるんですね」、なんて言われた事がありますが、ええ、一応、読んでるんですよ。これでも。
こういった雑誌の内容は、主にウィッグのカットの仕方だとか、男装メイクのコツだとか、おすすめロケーションとか、およそ自分に関係の無い記事ばかりなんですけどね!
それでも、ひとつのムーブメントというか文化史というか社会学というか、その記録として資料として、買って読んでおります。
…我々の住む社会はどうやって作られて、動いているのだろう?
どんな人達が、どんな欲望を抱いて、どうやって動いて、どうやって発散させているのか。そういった仕組みと流れに、最大の興味がある…という答えでいかがでせう。
私が他にも同人誌即売会やプロレス団体の離合集散、あと永田町の政局なんかにも興味を持ってちょこちょこ調べてるのと、似たようなロジックでございます。
同人誌の世界でこういった資料系・考察系のサイトやブログは沢山あるけど、コスプレ系にそれは殆ど、無いじゃん。
故に、自分でやってみたい、書いてみたいというのがありまして。
大概のコスプレ系サイトやブログは写真メインで、文字は少ないんだよ(笑)
× × × × ×
◆ コスプレ雑誌の15年史
「コスプレ関連の本は大抵、2号で終わる」
というのは、CS「コスコスプレプレ」内で、最大級のコスプレSNS・cure管理人の乾たつみ氏の言葉でした。
確かに、cureが編集したコスプレ雑誌「CosCure」も2号で終わっていた筈。
元々、そこまでパイの大きい世界ではないし。
この世界の人々はどうしても色眼鏡で見られやすい趣味を持ってる訳だから、外の世界からの目に対して警戒心が強くなりがちです。 敵か味方…とはいかないまでも、理解者か無理解なのかぐらいは、すぐに見分けるでしょう。
だから、単に「コスプレが見たい」(ぶっちゃけ、エロい格好した人達が見たい)という外側からの興味本位な取材や、そういった編集方針に基づく雑誌書籍の類は、長くは続かないんだな。一発当てよう的なムックならまだしも、定期刊行物では無理。
・ - COSPコスプレ雑誌を探せ! -
1990年代
2000~07年
2008年~
衣装・メイク関連
上記サイト様の歴代コスプレ専門誌まとめページが分かり易い。
90年代の書籍は表紙からして男性向けで、完全に「コスプレを見たい」(したい、ではない)男性読者向けであった。 実際に後述する「コスプレ天国」なんて、書店では風俗誌やアイドル雑誌のコーナーに置かれていたものですよ。
ま、仮にレイヤー向けに本を作ろうにも、レイヤー人口が今と全然違うからね…。
この時期に短期的ですが人気を獲得したレイヤーの内、アイドル的なユニット組んで公式のゲームイベントに出演したり、CD出したり、ぶっちゃけ、さらにごく一部は後に脱いじゃった人もいますしね。
1995年、キャロット出版の「コスプレイヤー大集合」と、リイド社の「コスプレ天国」1,2のヒットで口火を切って、こういったコスプレイヤーを使った写真集が多数発売されます。「コスプレ天国」の方は1,2合わせて5万部を売ったといいますから、売上的には大したものです。
が、あくまでイロモノ。物珍しさで売れていた部分が大きくて、このテの写真集を継続して3号以上出した出版社もありません。
このリイド社の雑誌「GAME遊II」はそれ以前の早くから、ゲームだけでなくその派生ムーブメント=コスプレ特集に力を入れていたのだけど、そのレイヤーを見世物的に扱っている様な編集は、当時は一部レイヤーから顰蹙を買っておりました。
さて、このターニングポイントとなった95年が、どういった年かというと…
…いよいよ本格突入した平成大不況、阪神大震災とオウム事件で旧来の価値観が急速に崩壊し、刹那的ムードで社会全体が萎縮していく中、オタク文化だけが元気、ストIIやセラムンの残り火に、ガンダムWとエヴァンゲリオンがの波が重なっていった年、なのだよ!
(今の日本と、どことなく被るかもなぁ…)
× × × × ×
これら上記の(男性向けな)コスプレ写真集の流れは、90年代末期には下火になり、途絶えました。
しかし90年代までのコスプレイベントってのは撮影目的ではなく、ディスコやダンスホールでのダンスパーティがメインだったから(だから当時は「コスプ レしないカメラマン入場禁止」というのが多かった)、レイヤー同士であっても、写真をたくさん撮り合う習慣ってのは、あんまり無かった気がする。デジカメ まだ普及してなかったし。
六本木ヴェルファーレとか神楽坂ツインスターとか芝浦GOLDとか、あと小さい所では新宿「絵夢」とか、コスプレダンパやってましたねぇ。自分は行った事ないけど。関節曲がらないし。
この辺は1998年発行「別冊宝島358 私をコミケにつれてって!」が詳しい。
おっと脱線。
で、2002年からの「コスモード」と2003年からの「電撃レイヤーズ」が時間をかけながらも共に軌道に乗ったのは、こちらはひたすら「コスプレをしたい」という内側からの視点に徹した編集方針が大きいと思う。
ちゃんと“コスプレイヤー向けのコスプレ雑誌”ってのは、実は近年まで無かった訳だよ。
いや、もちろんそういった編集方針であっても必ずしも成功する訳ではなかったというのは、やはり2号で終わったCosCure、、レイヤーズアーカイブと協力して発行した筈なのに1冊目で終わった「COS・A」、そして昨夏の電撃レイヤーズの事実上の休刊などが証明してると思うけれども。
1995年 → 2011年。
風俗誌 → ファッション誌へ。
エロス → ポップ&キュートへ。
男性向け(見たい側) → 女性向け(したい側)へ。
並べると、いかにコスプレ専門誌の在り方が変わったか一発で分かる、かな?
別にどちらかを否定してる訳では無いぞ。念のため。
× × × × ×
ちなみに、その後2000年代以降で、コスプレイヤーが数万人の単位で増加した(できた)理由というのを考えてみると…
1. 業者が積極的に参入。制服系コスやウィッグなんかを競合して大量生産→安価に流通させた事で、自作せずとも気軽に始められる様になった。
(参照記事:中国とコスプレ)
2. デジカメとインターネットが普及。情報インフラが進み、誰でもブログやSNS(最近だとニコ動)を通じて自分達の作品を見せ合ったり、同志たちとメイクや衣装制作のノウハウを情報交換できる様になった。
(例えば、V系ロックバンドのブームと交錯して、アニメ系コスプレにもV系メイクやカラコンのノウハウが持ち込まれたりした様に思う)
上記の2点が大きいのではないかなぁ。
もちろん、多くの人に「コスプレやってみたい!」と動機付けするには、それを牽引する人気作品の存在こそ不可欠なのですが。
ここ3年くらいは、従来のWJ作品やアニメを追い越し、ボカロ・ヘタリアが2強ジャンルですね。
この「3~4年前(2007-8)に特にレイヤー人口が増加してる」というのは、前編で引用したコスナップの記事にありましたから、重要ポイントです。
これらボカロやヘタリアの共通項は、明確な公式設定や映像が少なく、ネット(pixivやニコ動)を中心とした二次創作によって盛り上がっている事でしょうね。自分達なりの解釈と肉付けをくり返して、自分達でムーブメントを作っていく…そんな感覚があります。
ちょいと話が戻って、これらの環境の変化に沿う形で、背景にこだわった雰囲気写真を撮るレイヤーが増え、全国各地の不振テーマパークでのコスプレイベン ト開催(一般客が少なく、背景はキレイ)、そして観光資源に乏しい自治体の町おこし、あげくコスプレサミットなど行政による文化輸出の一翼にまで発展しつつある…という、いつ の間にやら拡大を見せているのであった。
もちろん数万人という単位が、社会に何らかの影響を与えていく事は、何ら不思議でもありません。
裏の部分として、商業主義化=“お客様”意識の増長、低年齢化=マナーの悪化、そして一部会場からの使用不可通告など、己の首を絞める事象も発生しているのだけど。
(大勢で不便な状況を共有する事で、相互扶助=横のつながりや助け合いの文化が生まれる。しかし便利になりすぎる事で、全体のつながりが希薄になり、マナー違反者に矯正が働かなくなる。これはどこの世界でも一緒です)
× × × × ×
自分もすべてを知ってる訳では、もちろんありませんので、間違いや不見識があるかもしれません。そういった部分があれば教えて頂きたいです。
この辺のコスプレに関する文化史は非常に面白いものなので、本当はもっとちゃんと書きたいのだけど、さらに膨大な資料を押入れから引っ張り出さないといけないので、今回はここまで。
続きはまたの機会があれば。
こういった雑誌の内容は、主にウィッグのカットの仕方だとか、男装メイクのコツだとか、おすすめロケーションとか、およそ自分に関係の無い記事ばかりなんですけどね!
それでも、ひとつのムーブメントというか文化史というか社会学というか、その記録として資料として、買って読んでおります。
…我々の住む社会はどうやって作られて、動いているのだろう?
どんな人達が、どんな欲望を抱いて、どうやって動いて、どうやって発散させているのか。そういった仕組みと流れに、最大の興味がある…という答えでいかがでせう。
私が他にも同人誌即売会やプロレス団体の離合集散、あと永田町の政局なんかにも興味を持ってちょこちょこ調べてるのと、似たようなロジックでございます。
同人誌の世界でこういった資料系・考察系のサイトやブログは沢山あるけど、コスプレ系にそれは殆ど、無いじゃん。
故に、自分でやってみたい、書いてみたいというのがありまして。
大概のコスプレ系サイトやブログは写真メインで、文字は少ないんだよ(笑)
× × × × ×
◆ コスプレ雑誌の15年史
「コスプレ関連の本は大抵、2号で終わる」
というのは、CS「コスコスプレプレ」内で、最大級のコスプレSNS・cure管理人の乾たつみ氏の言葉でした。
確かに、cureが編集したコスプレ雑誌「CosCure」も2号で終わっていた筈。
元々、そこまでパイの大きい世界ではないし。
この世界の人々はどうしても色眼鏡で見られやすい趣味を持ってる訳だから、外の世界からの目に対して警戒心が強くなりがちです。 敵か味方…とはいかないまでも、理解者か無理解なのかぐらいは、すぐに見分けるでしょう。
だから、単に「コスプレが見たい」(ぶっちゃけ、エロい格好した人達が見たい)という外側からの興味本位な取材や、そういった編集方針に基づく雑誌書籍の類は、長くは続かないんだな。一発当てよう的なムックならまだしも、定期刊行物では無理。
・ - COSPコスプレ雑誌を探せ! -
1990年代
2000~07年
2008年~
衣装・メイク関連
上記サイト様の歴代コスプレ専門誌まとめページが分かり易い。
90年代の書籍は表紙からして男性向けで、完全に「コスプレを見たい」(したい、ではない)男性読者向けであった。 実際に後述する「コスプレ天国」なんて、書店では風俗誌やアイドル雑誌のコーナーに置かれていたものですよ。
ま、仮にレイヤー向けに本を作ろうにも、レイヤー人口が今と全然違うからね…。
この時期に短期的ですが人気を獲得したレイヤーの内、アイドル的なユニット組んで公式のゲームイベントに出演したり、CD出したり、ぶっちゃけ、さらにごく一部は後に脱いじゃった人もいますしね。
1995年、キャロット出版の「コスプレイヤー大集合」と、リイド社の「コスプレ天国」1,2のヒットで口火を切って、こういったコスプレイヤーを使った写真集が多数発売されます。「コスプレ天国」の方は1,2合わせて5万部を売ったといいますから、売上的には大したものです。
が、あくまでイロモノ。物珍しさで売れていた部分が大きくて、このテの写真集を継続して3号以上出した出版社もありません。
このリイド社の雑誌「GAME遊II」はそれ以前の早くから、ゲームだけでなくその派生ムーブメント=コスプレ特集に力を入れていたのだけど、そのレイヤーを見世物的に扱っている様な編集は、当時は一部レイヤーから顰蹙を買っておりました。
さて、このターニングポイントとなった95年が、どういった年かというと…
…いよいよ本格突入した平成大不況、阪神大震災とオウム事件で旧来の価値観が急速に崩壊し、刹那的ムードで社会全体が萎縮していく中、オタク文化だけが元気、ストIIやセラムンの残り火に、ガンダムWとエヴァンゲリオンがの波が重なっていった年、なのだよ!
(今の日本と、どことなく被るかもなぁ…)
× × × × ×
これら上記の(男性向けな)コスプレ写真集の流れは、90年代末期には下火になり、途絶えました。
しかし90年代までのコスプレイベントってのは撮影目的ではなく、ディスコやダンスホールでのダンスパーティがメインだったから(だから当時は「コスプ レしないカメラマン入場禁止」というのが多かった)、レイヤー同士であっても、写真をたくさん撮り合う習慣ってのは、あんまり無かった気がする。デジカメ まだ普及してなかったし。
六本木ヴェルファーレとか神楽坂ツインスターとか芝浦GOLDとか、あと小さい所では新宿「絵夢」とか、コスプレダンパやってましたねぇ。自分は行った事ないけど。関節曲がらないし。
この辺は1998年発行「別冊宝島358 私をコミケにつれてって!」が詳しい。
おっと脱線。
で、2002年からの「コスモード」と2003年からの「電撃レイヤーズ」が時間をかけながらも共に軌道に乗ったのは、こちらはひたすら「コスプレをしたい」という内側からの視点に徹した編集方針が大きいと思う。
ちゃんと“コスプレイヤー向けのコスプレ雑誌”ってのは、実は近年まで無かった訳だよ。
いや、もちろんそういった編集方針であっても必ずしも成功する訳ではなかったというのは、やはり2号で終わったCosCure、、レイヤーズアーカイブと協力して発行した筈なのに1冊目で終わった「COS・A」、そして昨夏の電撃レイヤーズの事実上の休刊などが証明してると思うけれども。
1995年 → 2011年。
風俗誌 → ファッション誌へ。
エロス → ポップ&キュートへ。
男性向け(見たい側) → 女性向け(したい側)へ。
並べると、いかにコスプレ専門誌の在り方が変わったか一発で分かる、かな?
別にどちらかを否定してる訳では無いぞ。念のため。
× × × × ×
ちなみに、その後2000年代以降で、コスプレイヤーが数万人の単位で増加した(できた)理由というのを考えてみると…
1. 業者が積極的に参入。制服系コスやウィッグなんかを競合して大量生産→安価に流通させた事で、自作せずとも気軽に始められる様になった。
(参照記事:中国とコスプレ)
2. デジカメとインターネットが普及。情報インフラが進み、誰でもブログやSNS(最近だとニコ動)を通じて自分達の作品を見せ合ったり、同志たちとメイクや衣装制作のノウハウを情報交換できる様になった。
(例えば、V系ロックバンドのブームと交錯して、アニメ系コスプレにもV系メイクやカラコンのノウハウが持ち込まれたりした様に思う)
上記の2点が大きいのではないかなぁ。
もちろん、多くの人に「コスプレやってみたい!」と動機付けするには、それを牽引する人気作品の存在こそ不可欠なのですが。
ここ3年くらいは、従来のWJ作品やアニメを追い越し、ボカロ・ヘタリアが2強ジャンルですね。
この「3~4年前(2007-8)に特にレイヤー人口が増加してる」というのは、前編で引用したコスナップの記事にありましたから、重要ポイントです。
これらボカロやヘタリアの共通項は、明確な公式設定や映像が少なく、ネット(pixivやニコ動)を中心とした二次創作によって盛り上がっている事でしょうね。自分達なりの解釈と肉付けをくり返して、自分達でムーブメントを作っていく…そんな感覚があります。
ちょいと話が戻って、これらの環境の変化に沿う形で、背景にこだわった雰囲気写真を撮るレイヤーが増え、全国各地の不振テーマパークでのコスプレイベン ト開催(一般客が少なく、背景はキレイ)、そして観光資源に乏しい自治体の町おこし、あげくコスプレサミットなど行政による文化輸出の一翼にまで発展しつつある…という、いつ の間にやら拡大を見せているのであった。
もちろん数万人という単位が、社会に何らかの影響を与えていく事は、何ら不思議でもありません。
裏の部分として、商業主義化=“お客様”意識の増長、低年齢化=マナーの悪化、そして一部会場からの使用不可通告など、己の首を絞める事象も発生しているのだけど。
(大勢で不便な状況を共有する事で、相互扶助=横のつながりや助け合いの文化が生まれる。しかし便利になりすぎる事で、全体のつながりが希薄になり、マナー違反者に矯正が働かなくなる。これはどこの世界でも一緒です)
× × × × ×
自分もすべてを知ってる訳では、もちろんありませんので、間違いや不見識があるかもしれません。そういった部分があれば教えて頂きたいです。
この辺のコスプレに関する文化史は非常に面白いものなので、本当はもっとちゃんと書きたいのだけど、さらに膨大な資料を押入れから引っ張り出さないといけないので、今回はここまで。
続きはまたの機会があれば。