“風雲昇り龍”天龍源一郎61歳のメモリアル興行。
世が世なら、あるいはプロレスにもうちょっと余力があれば、両国国技館で行われるべき大会です。
・90年代インディープロレスの系譜2:SWS編
(天龍が全日本プロレスを離脱し、SWSへの移籍やWAR旗揚げに関しては、この昨年の記事を参照)
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◆ 第1試合 6人タッグマッチ 30本1本勝負
百田光雄 グレート小鹿(大日本プロレス) X(天龍源一郎)
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泉田純(フリー) 菊地毅(フリー) 志賀賢太郎(フリー)
Xの正体はメーンにも出場する天龍自身だった。
両チームとも日本テレビスポーツ中継のテーマ曲で入場。全員が全日本プロレス出身であり、客席からも「ゼンニッポン」コールが発生。
開始前、百田は敵の3人に握手を求める。
2009年の三沢の死後、百田は副社長を務めていたノアを去り、その後に3人もノアを解雇されていたので、久しぶりの再会という事だろう。
小鹿も握手…と見せかけて手を引っ叩くという、訳の分からない闘志をアピール。
スタートから百田は雄叫びを上げ、シャカリキになってチョップやヘッドバットを連打!健在をアピール。
小鹿もヘッドロックやチョップで気勢を上げる!しかし天龍のチョップを誤爆され悶絶。
3人掛かりで天龍をボコる…が、天龍は次々とチョップでお返し!泉田にだけ顔面パンチ!
百田、3人を串刺しチョップ連打!(効果あるんか?)
そして百田が志賀をサムソンクラッチで押さえ込んで勝利。
この辺の身のこなしは見事!
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◆ 第2試合 DRAGON GATE提供マッチ 30分1本勝負
ドン・フジイ 新井健一郎
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横須賀享 K-ness.
しばらくドラゴンゲートを見ていないので、「クネスってダークネスドラゴンに似てるなー。…あ!同じ選手が名前を簡略化しただけか!」などと、試合中に気付いた。
ハイスピードの攻防と、お約束の展開。
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◆ 第3試合 ミックスドマッチ 30分1本勝負
ウルティモ・ドラゴン(闘龍門MEXICO) 神取忍(LLPW)
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ザ・グレート・サスケ(みちのくプロレス) 井上京子(ディアナ)
神取は12年前に日本マット界初の男女シングルマッチで天龍と戦い、グーパンチで顔面が変形するまで殴られまくった事がある。東スポ一面を「神取お岩」の見出しで飾ったその凄惨な試合は、しかし神取にとっては「天龍さんは、女だからって手加減せずに戦ってくれた」という感謝の対象であった。
ウルティモ(タイガーマスクのタテガミ付きドラゴンマスクで登場)は、かつて天龍の興したWARに参戦後、メキシコで闘龍門を興し、そこでの教え子達が日本へ逆上陸して、現在では(袂を分かって)ドラゴンゲートになっているのである。
左・元国会議員。中央・元岩手県議。
サスケ師匠、倒れたウルティモを前に、コーナー上から長ったらしいアピールを続けた後…
自爆芸!やってくれた!
シュールな光景。
この後、ウルティモは京子に急所蹴りを放つが、当然、効果なし。
体重の減る事を知らない井上京子、Wラリアット!
試合はウルティモが京子を丸め込んで決めたが、腰をやっちゃわないか心配になった。
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◆ 第4試合 タッグマッチ 30分1本勝負
折原昌夫(メビウス) 土方隆司(フリー)
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大谷晋二郎(ZERO1) 横山佳和(ZERO1)
全日本で天龍同盟の若手の一員だった折原は、SWS・WARへと天龍の後を追った。しかしケガを理由にしてWARを離脱しておきながら、マスクマン月光としてFMWに移籍していたという過去を持つ。天龍にもWAR武井社長にも迷惑をかける形であった。
しかし、巡り巡って天龍35周年に花を添えるのだから、ドラマだなぁ…。
大谷の顔面ウォッシュが折原の流血を加速させる。
土方も市議に当選して以降、リングから遠ざかっているが、久々に鋭いキックやフィッシャーマンを連発して、バトラーツ出身らしいバチバチファイト。
大谷が土方をドラゴンスープレックスで仕留めるが、折原がマイクを持つ。
ゼロワンへ土方とのコンビで乗り込む事を宣言…だけでなく、延々と客席に向かって祝辞マイクアピール。
「天龍さん、始めからあなたについてきました。プロレスだけで35周年。相撲も含めると、人生そのものが格闘技。そんな天龍源一郎が折原昌夫は大好きです。今日、オレと土方で勝利を祝いたかったけど、こんな結果になってしまいました。でも、天龍プロジェクトはこれからです。天龍さん、35周年おめでとう!」
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◆ 第5試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
ザ・グレート・カブキ TAJIRI(SMASH) THE KABUKI(天龍プロジェクト)
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金村キンタロー(アパッチプロレス) 邪道(新日本プロレス) 外道(新日本プロレス)
ブリーフブラザーズのダンスで入場するのかと思ったら…違う曲?あ、これは…
3人の兄貴分だった、“理不尽大王”冬木弘道(2003年没)のテーマだ!
金村は、冬木の紫ガウンで入場…そう、かつては皆で“冬木軍”として活動してたんだものね…。
そして客席後方から現れたグレートカブキ!ヌンチャクを披露。
くせ者3人。
有り体に申しまして、カブキ息子の方は全く良い所無しでしたが、タジリのハイスピードなムーブと、カブキ父の往年の地獄突きアクション等で盛り上がった後、タジリとカブキ父の毒霧2色ブレンドで目を潰された金村が、カブキ息子のトラースキックで破れました。
キンちゃんは個人的に大好きなレスラーなんだけどなぁ。セクハラ事件以降、どうも勝たせてもらえない。
冬木弘道と彼ら弟分達は、天龍に食って掛かる事で、WARの(早過ぎた)エンタメ路線の立役者だったので、メモリアル興行では勝利で飾ってほしかったぜ。
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◆ セミファイナル 45分1本勝負
嵐(フリー) × 曙(フリー)
天龍は角界出身。前頭筆頭。
横綱から転身した曙と、十両だった嵐がセミでぶつかる。
とにかくデカイ。重い。そしてもっさりしてる(笑)
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◆ 第7試合 三冠王者プレミアムマッチ 無制限1本勝負
天龍源一郎(天龍プロジェクト/2代、26代、29代)
鈴木みのる(パンクラスMISSION/35代、42代)
諏訪魔(全日本プロレス/37代、43代)
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佐々木健介(健介オフィス/36代)
小島聡(新日本プロレス/33代、40代)
太陽ケア(全日本プロレス/34代)
すげえよ…!
それぞれ初対決の組み合わせでは無いのに、注目の顔合わせが一杯あるよ!
入場はまず先陣を切って、最年少の諏訪魔。
次にケア、次に小島…がリングインした瞬間、諏訪魔が2歩くらい前に出た!そうだよ、こういうのが見たかったんだよ。
小島は昨春、全日本プロレスを退団し、新日本へUターンしている。当時は武藤も手術で欠場中で、全日が大変な時期であった。残った諏訪魔は、小島への不満をツイッター等でぶちまけている。諏訪魔は大舞台では一度も小島をシングルで破った事が無いのだ。
その諏訪魔のグツグツした思いを汲んでか、このマッチメイクとは…天龍め!
のぼりがはためく中、天龍源一郎入場!
先発は天龍と健介!メンチ切り!
チョップ合戦!計50発以上のラリー。後ろの和田京平レフェリーの表情を見よ。
プロレスに必ずしも大技連発は必要無い!熱いチョップだけで、会場は沸き返るのであった。
天龍、グーパンチで顔面殴打してチョップ合戦を打ち切り、割って入った小島とケアもチョップで迎撃。
そして交代したみのるとケアが、流れる様な高度な攻防。この二人は組んで良し、戦って良しなのである。
そして、みのるは諏訪魔にタッチ。
客席からは小島コール。みんな、分かってるんだね…!
諏訪魔…いい表情だ!
しかしここから大荒れ。諏訪魔はエルボーを連打して、小島の髪をつかんで殴りつける。
京平さんが間に割り込んでも止まらない。
場外へ出て椅子でブン殴り、リングへ戻ってサッカーボールキックとヒザ蹴り。
しかも小島がダウンしても交代しようとしない。
ここで動いたのは、鈴木みのるだった!
熱くなっている諏訪魔の背中を引っ叩いてタッチ代わりにしたみのる、小島へ向かっておちょくる様なグーパンチ&逆水平チョップ連発(天龍のマネ)から、天龍にタッチして、本家のグーパンチ&逆水平チョップ連発へ。
その天龍は捕まってしまい、防戦一方でダウン。しかし味方のみのるが天龍を蹴っ飛ばして「起きろ!」と喝を入れた。
ってゆーか今回、みのるが最もしっかりしてた気がする…。
後半ではまた熱くなってしまった諏訪魔を制し、みのる&諏訪魔で合体ビッグブーツ&Wドロップキックまで披露してるし。みのる先生、いつの間にこんなにプロレス巧者に…。
天龍と諏訪魔のサンドイッチ式ラリアット!
そこから乱戦の中で次々と大技が飛び出したが、小島に対するブーイングが。やはり新日本へUターンした小島は、天龍ファンや全日ファンには悪印象なんだな…。
よく見るとチョップの打ち方に違いが出てて面白い。
腕力だけで打ってるけど重いのが諏訪間。チョップだけで本当にヘビー級選手を吹っ飛ばせる。
腰が入ってて美しいフォームのチョップがケア。ムーブ全体の美しさでは一番だと思う。
鋭くて胸板に食い込むように命中するのが健介。だから最初のチョップ合戦では、天龍の胸板は一か所しか赤くなっていなかった。健介はピンポイントで同じ個所を打ってるから。
天龍はチョップと張り手の中間ぽい形で、命中箇所がブレてるんだけど、それが相手の喉元近くにヒットしたりしてキツそう。
そしてチョップ合戦の続き…両者の胸板が真っ赤っか。
フィニッシュは健介のブレーンバスター!
天龍、3カウントを献上し、メモリアル興行で敗北…。
(この辺でカメラの電池が切れた。なんというバッドタイミング…しかも予備カメラ用のスマホまで、椅子の隙間に落ちてしまって拾えず)
そして健介はマイクを握った。
「天龍さん、このバケモノ! 今日、思いっきり、熱いチョップ、ありがとうございました。まだまだ寝転がってる場合じゃないよ。立ってくれ、天龍さん」
よろめきつつ立ち上がった天龍も、マイクを握らされる。
「歴代の三冠チャンピオンのすごさを、最初の頃のチャンピオンの1人として、しっかりと植えつけてもらった。ありがとうございました。これからも、もっともっと、一生懸命応援してほしい。そして、来ていただいた皆様、35周年に集まっていただき、本当にありがとうございます。最近はマットの掃除ばかりしてるけど、今日は一生懸命応援してくれて、本当に心から頑張ります。今日はどうも、ありがとうございました」
ラストシーンは、全選手がリング上に集結して「エイ、エイ、オー!」の合唱。
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プロレスとは、“ものを見るチカラ”を消費するジャンルである。(byターザン山本)
プロレスは底が丸見えの底なし沼。ただ漫然と眺めていてはダメなんだ。(by井上義啓)
じゃあ自分も、この謎かけを読み解いてみようではないか。
自分のメモリアル興行だというのに敗れた天龍は、自分が勝ってイイ格好するよりも、その自分の歴史を受け継ぐ下の世代を立てたという事か…?
荒れる諏訪魔の攻撃を、小島が一方的に受けたのは、ひょっとしたら、贖罪の意味かもしれない。
(窮地の全日本を去る事に、小島だって後ろめたさを感じなかった訳では無いだろうし)
諏訪魔が感情をぶつけていったのに対して、しかし小島は、あくまでプロレスで返していた。それが小島としての答えなのだろう。
そしてこの日のカードのどこかに、天龍は本当なら川田利明の名前を入れたかったに違いない。
天龍は全日本を辞めてからも、事あるごとに川田の名前を出していたから。
だが川田はもう、引退試合すら行わずにプロレスから遠ざかってしまったからな…。
試合後のコメント見てると、諏訪魔は本当に天龍をリスペクトしてるなーと。
三冠ヘビー級ベルトって、初代王者のジャンボ鶴田以降、殆どの選手は力道山由来のインターナショナル王座を腰に巻いて、PWFとUNを手に持ちます。
しかし天龍は、若手の頃に奪い合ったUN王座を腰に巻くのがパターンなのです。
諏訪魔はその天龍を意識してるので、UN王座を腰に巻いている事が多いのです。
もちろん天龍源一郎のメモリアル興行なんだけど、単純なお祭りや予定調和を超えた部分での、プロレスの奥深さを堪能しました。
サンダーストームのバラード版が流れる中、会場を後に。
(スマホ拾って撮影)
・スポーツナビによる大会の詳報
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/live/2011/2011111002/index.html