プロレス界、そして同人界に大激震が走った。

 新日本プロレスと親会社のブシロードは下半期へ向けた経営戦略の会見を行い、その席上で木谷会長自ら、今夏のコミックマーケット82への出展および、コミックマーケット(以下コミケ)との全面対抗戦を発表。
 まさに青天の霹靂。ここに国内最大規模のプロレス団体と、国内最大規模の同人誌即売会との、血で血を洗う仁義なき対抗戦が電撃開戦した。

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■ 新日選手は既に臨戦態勢

 詳細なカード発表は次回に持ち越されるが、会見の席上に立った選手達は、次々にコミケとの対抗戦へ向け、怪気炎を上げた。

永田裕志: 「どんな戦いの場であっても、新日本プロレスに永田あり!オタクの皆さんに“ナガタ”の名前を脳内に刻んでいただきます。1、2、3、ゼィヤァッッ!(白目)」
中西 学: 「おい!コミッケアート…ちゃう?コミコット…コミット?いや、ちゃうな…もう何でもええ!呼びにくい名前つけんなアホンダラ!ガー!」
棚橋弘至: 「コミケキターーー!!腐女子の皆さーん、愛してまーす!!日曜の朝に早起きするのは大事ですが、土曜の深夜は新日本プロレスの番組を見てください!そこに俺がいます!…さぁ、お前のカップリングを数えろ…!」
中邑真輔: 「叩き潰す。それだけだ」
天山広吉: 「オイ!ざっけんなコラ、エー!?コミケット?どんな団体だか知らねぇけど、俺らコンビでブッつぶしてやんよ!なぁコジ!(小島を向く)」
小島 聡: 「…えー…よく分かりませんが、とりあえずやる以上は、勝ちに行きたいと思います」
獣神サンダー・ライガー: 「ぶっちゃけ、アウェイ! ワンフェスならよく行ってるんだけどな(笑)まァ、やる以上はコミケを潰すつもりで。俺はナイフを抜く」

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■ 対戦形式・ルールについては紛糾必至

 この新日本プロレス最強の布陣に対して、受けて立つコミックマーケット側の選手詳細、そして試合形式はまだ発表されておらず、「仮に6人タッグ戦になった場合、現在の共同代表3人はチームワークにやや不安を残す」(業界関係者)という指摘がされている一方、コミケ当日は準備会だけでも約2000人のスタッフが有志で活動している中、「特に混雑対応スタッフは数百キロの肉の塊による突進を鉄壁のディフェンスで弾き返すと言われ、“まだ見ぬ強豪”として相当の猛者が存在する事は疑いようが無い」(同関係者)という見方がされている。

 企業ブースへの参加である以上、試合リングはビッグサイト西ホール4階に設置されるか、広さを重視して西地区駐車場の第二コスプレ広場を使用する公算が高い。
 ルールは未定ながらプロレスにはつきものの反則・凶器攻撃についても、想像を絶するシーンが連発しそうだ。
 昨年夏よりコミケではコスプレ用の武器規定が見直され、材質や形状によるが最大2mまでの小道具が持ち込める事から、観客席から奪ったロンギヌスの槍と烈火大斬刀による凶器合戦も起こりうる。
 しかし選手同士がエキサイトして派手な場外乱闘に発展した場合、会場内には安全のために一方通行となっている箇所が点在し、猛烈な人の濁流が発生している事から、場外乱闘に出た選手たちは二度とリングに戻れなくなってしまうのでは?といった懸念も広がっている。

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 またプロレスファンにはおなじみ、永田による試合中の白目剥きアピールも、「同人作家は締切前には例外なく白目を剥いているので、さしてインパクトは無いだろう」(前述の関係者)とされる一方、コミケには男性同士の同性愛に興味を持つ“腐女子”と呼ばれる女性層が多数参加しており、屈強な肉体の男同士が 組み合って苦悶の表情を浮かべる姿には、別の意味での熱狂も呼びそうだ。

 未知数な部分の多さに対し、電話取材に応じたコミケ準備会の広報スタッフは「まだ詳細を詰めている段階で一方的に公表された事を遺憾に感じる」と不快感を表明しつつも、「とりあえず獣神サンダー・ライガー選手の姿はコスプレとして対応する事になると思うので、時間内に男子更衣室を使用してチェックを受け、視界を妨げるマスクなどは移動中に外してもらう事になると思う」と冷静に語った。
 
 しかし、こういった一部での先行した盛り上がり方に対し、とある事情通は「木谷社長はブロッコリー時代にJリーグチームをスポンサードしてアッサリと引き上げている過去があるので、異業種に進出するのは構わないが、そこにいた昔からのファンの気持ちも大切にしてほしい。そんな事より私は鏡音レンきゅんを後ろからぎゅっと抱きしめてクンクン匂いを嗅ぎたいのに、二次元への扉はいつになったら開くのだろう」と不安な心情を吐露した。

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■ 決着は大晦日決戦か!?

 この対抗戦の行先について、この一回で単発に終わると見ている関係者は少ない。
 むしろ今夏の初戦はデモンストレーション的に位置づけられると予想され、そこから本格的な全面対抗戦へと発展、そして一部の間でささやかれるのが、大晦日に新日プロvsコミケ決戦をTV局が生放送するのではないか?という仰天プランだ。
 それを裏付けるように、次回コミックマーケット83日程は12/29-31、大晦日を含んでいる。(毎度ながら)
 数年前まで人気を誇った大晦日の格闘技中継も現在は凋落しており、しかし新日本プロレスとコミケという二大ブランドの激突ならば相応の視聴率が期待できる事から、既に水面下では複数のTV局やスポンサーとの交渉が始まっているという情報も駆け巡っている。
 有力視されるのは新日プロの親会社であるブシロード社がスポンサー枠を持っているTOKYO MXだが、これは大晦日にはミルキィホームズ特番を優先する可能性もあり、他局との接触の可能性もささやかれる。

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[新日本プロレスとは]
 1972年、日本プロレスをクーデター未遂により追放されたアントニオ猪木が興した、プロレス団体の老舗であり最大手。
 “キング・オブ・スポーツ”“ストロングスタイル”を標榜し、肉体と技術をぶつけあうファイトスタイルを売り物にする一方、軍団抗争や遺恨決着といった、凄惨かつスキャンダラスな負の部分を公開してファンをヒートさせる事も多い。
 2000年代以降は当時オーナーだった猪木の現場介入により選手離脱が相次ぎ、一時はファン離れを起こしたが、近年は息を吹き返した。ゲーム会社のユークス傘下を経て、現在はカードゲーム会社のブシロード傘下。主要王座はIWGPヘビー級。

[コミックマーケットとは]
 1975年から続く、自費出版の漫画・小説・音楽CD等を扱う、同人誌即売会の老舗であり最大手。
 運営は有志スタッフによるコミックマーケット準備会で、夏冬に3日間ずつ東京ビッグサイトで開催されるのが恒例。
 近年は同人サークルとは別に企業ブースへの出展も増加し、またコスプレイヤーの参加数においても国内最大規模であり、同人誌即売会から発展してアニメ・ 漫画ファンによる複合型のイベントに変化しつつある一方、一日で最大20万人に達する混雑の過酷さから、マーケットではなく“戦場”と表現される事も多 い。

[ブシロードとは]
 かつて90年代に同人誌即売会コミックキャッスルやコスプレダンスパーティのコスパを主催し、その後はオタク向けショップのゲーマーズを全国展開していたブロッコリー社の会長・木谷高明氏が、再独立して2007年に起業。
 主にトレーディングカードの製造販売を主幹事業としつつ、昨年5月には長島☆自演乙☆雄一郎をプロレス転向させた“ブシロードレスリング”を開催するなど、異業種とも積極的にコラボしている。
 今年1月より新日本プロレスの株式をユークスから取得し、新日本プロレスを100%子会社化している。
 ちなみに木谷氏がブロッコリー時代に関わっていたコミックキャッスルが1998年に終了後、その会場の日程を引き継いだのが、コミッククリエイション→サンシャインクリエイションである。

[対抗戦とは]
 異なる理念を持った2つのプロレス団体同士、もしくはプロレス団体と格闘技道場等がルールを調整し、それぞれの代表選手を出し合って威信を賭けた対抗試合を行う事。
 看板選手が複数参戦している場合は「全面対抗戦」、若手や中堅同士の激突や越境タッグ等を中心にする場合は「交流戦」とも呼ばれる。
 両団体のファン同士が会場に押し寄せて応戦合戦を行うので盛り上がり、チケットの購買に繋がる。半面、看板選手が敗戦した側はイメージダウンに繋がる諸刃の剣でもある。
 これまで新日本プロレスは多くの団体と対抗戦を行ってきたが、UWFインターナショナルやWARなどはその後、看板選手の敗戦により求心力を失い、崩壊に追い込まれている。

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~ 週刊ファイト元編集長・井上義啓の喫茶店トーク ~

 君ら、漫然と眺めていてはダメだ!(机をバンッと叩きつつ)
 これが単にプロレス団体がコミケに出展するという類の話題作りに終わるのか否か、考えなくては。私ならこれだけで原稿用紙60ページは書ける(笑)

 今の時代の主要客層となった若いファンを、私はかつて“平成のデルフィンたち”と称した。(編注:デルフィン=イルカの意味)
 デルフィンたちはこだわりが無い。それでいて貪欲で、面白そうなものにはこぞって飛びつき、興味が無ければソッポ、となる。
 プロレスファンと言いつつ、特定の団体には依存しない。ケータイ片手に試合のダイジェスト動画を見て、興味のある試合だけをダウンロード、たまにチケットを買う。今日はプロレスと思えば、明日は格闘技だコンサートだ、広大な海で波間を飛び回る。
 コミケだってそうだ。カタログなんて買わない。ピクシブで好みの絵柄の作家とサークルを探し出し、会場図の入ったスマホ片手にビッグサイトを早足で歩き 回り、買い物が終わったらコスプレ広場を眺めて帰る。大行列に並ぶくらいなら帰宅後にオークションやDLサイトで、欲しいものだけをカンタンに手に入れる。
 そんなのはもはや時代のスウ勢なんだ。惜しんだって仕方無い。

 私が注目するのは、そんな“平成のデルフィンたち”がこの戦いに何を求めているか…?
 単にショウとしてのプロレスに終始してみろ。デルフィンたちは「なァんだ、この程度か」となる。そんな事は小学生だって分かる事だ。
 求められるのは予定調和に沿った“コップの中の嵐”などではない。そこに二つの異なるイデオロギー同士、本当の“殺し”があるのか否か?その一点につきる。

 言っただろう?プロレスもコミケも、“底が丸見えの底なし沼”だ。

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※ 当然ながらコメント含めてウソ記事です。
 (新日プロのコミケ出展ニュースや各説明項目だけ本当)
※ 週刊ファイト(休刊)の井上義啓=I.Y編集長(故人)の記事は露骨にA猪木と新日プロを持ち上げてきたので、全日本プロレス派のファンからしたら 大ッ嫌いだったんですけど、プロレスが凋落した昨今、あーでもないこーでもないと語り続けていたあの時代を、とてもとても懐かしく思い出します。合掌。
※ ってゆーかコミケ参加者でこんなコアなプロレスネタが分かる人って、どんだけいるんや!


【元ネタ】
新日本プロレスが夏コミ、東京ゲームショウに参戦 -スポーツナビ
8月10~12日、あの『コミックマーケット82』に新日本が参戦!!東京ゲームショウにも出店!! -新日本プロレス
“イケメンが多い新日本プロレスをもっと知ってほしい” 新日本プロレスのコミケ参加の真相を木谷会長に独占インタビュー! -電撃オンライン

【関連の話題】
AIDE新聞(第36号)同人誌即売会コミックキャッスルが終わる! -共信印刷
(98年、ブロッコリー社長時代の木谷氏のインタビュー。同人誌即売会をビジネスとして捉える、かなり興味深い内容)

【嘘だけじゃなくて本当な記事も書いてます】
コミケの中の「コスプレ」小史.コミケとコスプレの分化編 
資料: 91年,コミケ幕張メッセ追放事件 
復興支援コスプレ委員会(観光庁後援?),まるで復興支援していない件