一年間…いや国によってはそれ以上の期間をかけて選出された、20ヵ国の代表チームが集結し今年度の優勝を決める、世界コスプレサミット目玉の決勝大会、8/3(土)「世界コスプレチャンピオンシップ」。決戦の時は来たれり。



 …最初に書いちゃいますよ。今までにも書いてるけど初見の方もいるでしょうから。
 コスプレに世界一もへったくれもねーよ!
 世界コスプレサミット優勝=コスプレ世界一、という認識は少なくとも日本のコスプレイヤーの間では定義づけられてないです。ウン。

 TV局や自治体や省庁が後援して旗を振ってますけれども、しかし肝心の日本のコスプレ界には横断的な業界団体や協会は特に存在せず。コスプレ業界からの合意を得て発行される称号ではありません。
 元々コスサミって、2003年に始まったTV愛知の番組企画で、当初は海外イベントを紹介したり(容姿端麗な女性の)海外コスプレイヤーを招待して交流会を行って番組として放送していたのが、2005年に愛知万博に併せて開催した7ヵ国代表参加のコンテスト「チャンピオンシップ」がヒット企画となり、以降はこの形式をメインに。んで、かなり後になってから一部コスプレ界隈の人達が(利権を求めて)運営に関わっていきました。

 しかしコスプレって、作品愛ありきのファン同士のコミュニケーションツール…かつ壮大な自己満足…“大人のゴッコ遊び”なので、他者の視点で優劣を付けたとしても、それで「世界一」なんて定義できる訳が無いんです。
 だって、見る側の原作への知識・愛着の差で、再現シーンや小ネタへの反応が全く変わっちゃうんだから…。
 かと言って美人コンテストのままではいけない。コスサミはそこに何かの価値判断をつけるため、TV的な発想で、“パフォーマンス”重視の特殊なコンテストに特化していった訳です。日本のコスプレイベントでは安全上の理由から動的なパフォーマンス禁止が多かった事情など、運営側は詳しく知らなかったでしょう。
 最近は盛んに「コスプレ世界一決定戦」としてアピールするようになりましたが…正直、マスコミのチカラでこれを喧伝する度、日本のレイヤー層からは疑問と反感も買ってしまってるのも事実。

 よって本稿でも、コスプレサミット優勝をコスプレ世界一とは扱っていません。
 あくまで、海を越えて集まって来た道楽者たちの、暑苦しい祭典として、泥臭い青春群像として、その熱を、闘いを伝えるべく、書いて、残すのです。

 …名古屋発、世界的コスプレの祭典。2013年、決勝!!
 速報性が無い分、情報量で勝負!


【 ルール&審査員 】

・ 古谷徹(声優。2004年以来コスサミでおなじみ)
・ 池ノ谷賢(アニメイトコスプレブランドACOSプロデューサー)
・ 乾 たつみ(コスプレサイトCure管理人。2011年より登場)
・ 岸田メル(イラストレーター)
・ 杉田智和(銀魂のTシャツを着た中年)

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古谷 「このちゃんちゃんこ、還暦祝いにバンダイさんが贈ってくれたんですよ。フツー、還暦祝いって赤ですけど、僕が赤を着る訳にいかないじゃないですか!」(シャアの色だから)

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 日本の漫画・アニメ・ゲーム・特撮キャラによる、二人一組で2分30秒のパフォーマンスを披露。
 今回から
パフォーマンス10点/コスチューム15点/リスペクト5点」

・ 昨年までコスチューム10点だったので、衣装の差が得点を分ける可能性が高まった。また昨年の観客ポイント制は無くなった。
 (観客が若い女性多めなので、女性人気の高い作品が有利になりがちだったのである)
・ 観客への説明は省かれたがその他に、大道具は一辺210cm以内で3個まで、衣装+大道具の合計で総重量40kg以内、舞台を汚す演出は不可、など細かいルールが存在している。
・ 開始は19時。今年から1時間遅く日没後になったお陰で、前半に出場するチームのLED発光が観客に見えないというハンデが無くなった。(エキシビションのCCCが前倒しに)
・ 外国人の日本語セリフが聞き取り難かったのが、後方のビジョンにテロップが挿入されて伝わりやすくなった。
・ また今回より演技終了後のインタビューが省かれ、進行のテンポが良くなった半面、外国人がマイクを通じて、日本のアニメへの思いや、自国のオタク事情を語る…っていう文化交流の要素が削られたのが惜しまれる。

 ちなみに今回、コスサミ11回目、チャンピオンシップ9回目にして初めて、観客席が完売したのである!
 ベンチ数百+立見で3000人~くらいかな?主催者発表の1万8000人というのは開放されていた敷地内で遊んでいた人を含むオアシス21全体の動員で、観覧者の総数では無いだろう。と余計な一言。

※ 演目のタイトルにリンク貼ってあるのは、YOUTUBEで動画が見られます。探すの大変だったぜ…。

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■ アメリカ「ハートの国のアリス」 
 乙女ゲームでエントリー。
 アリスの開いた本の中から出てきたビバルディ女王が、とまどうアリスを操り、そして本の中へと誘い込んでいくちょっと怖い話。
 衣装の早変えギミックは多々あれど、これは帯クルクルの要領でアリスの衣装をはぎ取っていくという、過程の面白さも見せてくれた。

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■ ロシア「トリニティ・ブラッド」 
 大道具なし。剣舞からワルツへ?すっごく優雅です。
 羽根をガバッと開いたアベルが「エステル様、いつまでも貴女をお守りします…」と抱きしめながらEND。

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■ ニュージーランド「ダージュオブケルベロス」
 ヴィンセントvsネロ。光る光る!セリフ一切なしの着ぐるみ対決。

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■ ンガポール「ファイナルファンタジー11」
 サムライvsコルセアの剣劇。
 「二本の剣を手に入れたぞ!」

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■ インドネシア「キングダムハーツ バースバイスリープ」
 ヴェントゥスvsヴェニタスの着ぐるみ対決→脱ぎ捨てて剣劇へ。
 武器と鎧がLEDで光るとか、背景の壁が斬撃で割れるとか、テンコ盛りでした。

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■ ドイツ「ヴァンパイア騎士」 
 衣装デザインの装飾の多さと資料の少なさから、人気漫画でありながら一時はコスプレイヤーの最難関とまで言われた作品である。(その後アニメ化で正式な全身資料が公開された)
 主人公・優姫の、人間/吸血鬼覚醒ver.同士で戦う内容。
 静かな流れから入って会話劇で進み、そしてロッドvs大鎌(これも「狩りの女神」という同一武器が覚醒前後で形を変えた設定)の中二展開アクションへ。
 「これから私の夜が始まる…」


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■ タイ「メタルギアライジング」
 
何者かの気配を察した雷電が、背景の壁をバサーッと切って、そこにはモンスーンが!
 見栄の切り方とか、もう、千両役者!って感じでね。
 原作知らないけど、沢山あった剣劇チームの中では最もレベル高いチームだと思う。
(昨年タイは「サイバーボッツ」で審査員得点1位だったが、観客ポイント付加で逆転を許し無冠になってしまった)


【 プレ参加国エキシビション 】

 本年の参加国は昨年同数の20ヵ国であるが、諸般の事情で参加待機国が24ヵ国もあり、その内4つの国と地域が登場。
 正式参加国と同様に予選を経て選出されたチームが、チャンピオンシップの審査対象にはならないが、演技を披露した。ちなみに台湾は昨年から続けてプレ参加の扱い。
 正規の参加国として迎えられるよう、WCS事務局の奮起が期待されるところ。

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■(準参加国1) 台湾「Fate/ZERO」

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(準参加国2) 香港「マクロスF」
 ランカとシェリルの「ライオン」から、シェリル衣装チェンジで…リン・ミンメイ
 会場内のオッサン達が「おおぉぉーっ!!」と大歓声を上げる中、ランカとミンメイの新旧歌姫が「おぼえていますか」を合唱。

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■(準参加国3) フィリピン「モンスターハンター」

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■(準参加国4) ベトナム「戦国BASARA」
 濃姫とお市、艶やかな女性キャラ対決でした。

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 この間に過去の海外代表チームがゲストでステージに登場して挨拶。

※ 演目のタイトルにリンク貼ってあるのは動画見られるっつてんだろ!

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■ 韓国「ロックマンゼロ」 
 歴代の韓国代表チームは、テコンドーが凄いか、LEDが凄いかのどちらかであったが…両方やっちゃったよ!
 ゼロvsコピーXが高速で格闘アクションを披露。安いカメラじゃ追い切れない。回し蹴りがシュルンシュルン決まるのだわ。
 しかし韓国チームは男性だとアクション重視過ぎて衣装が簡略化される傾向があるので、衣装点で取り難そう。
(2011「セーラームーン」セレニティの直径3mドレス、2012「ケロロ軍曹」ゴッドケロンなど大型路線が続いてたが)


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■ ブラジル「ファイナルファンタジー14」 
 2006「爆裂天使」、2011「FF13」でブラジル代表を務めて、その二回ともチャンピオンシップ優勝したおなじみ兄妹コンビ、三たび日本へ!
 召喚士vsガルーダ(※妹です)、相変わらず3m級のデカブツを突っ込んできやがる…。
 パウダーを使用した爆発オチでガルーダ勝利の咆哮。狂気ですよ狂気。
 この二人は2006年の初来日時に優勝したのだが、この時に競って準優勝した日本代表「ベルサイユのばら」チーム(当時日本代表は3チームありWEB予選代表)の片方が、本年再び日本代表を射止めた万鯉子さんである。この兄弟の方も互いに覚えていて、7年ぶりの再開と再戦を果たす格好になったとか…。

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■ メキシコ「ゼノサーガ」 
 (フィギュアの邪神モッコス事件でおなじみ)コスモスvsテロス。
 女性アンドロイド同士の格闘戦から始まり、ガトリングガン(F・G・SHOT)の爆発エフェクト、倒れた背中からプシューっとガスが噴出するなど、メカニカルな演出にこだわりましたねー!
 ガンアクション(?)というのはステージパフォーマンスでは難しく、実際に弾丸は撃てないし火薬も使用不可なので、見せ場づくりがキッツイのである。
 ガトリングの巨大感と、銀紙を散布する演出で見せてくれました。


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■ フランス「魔法少女まどか☆マギカ」 
 事前のパレードなどで「スイートプリキュア」のコスプレで登場していた美少女コンビが、決勝では「まどマギ」とゆー、お前ら分かり過ぎてるだろ!と突っ込まれたチーム。
(歴代フランス代表は、日本では映像化に至らないマイナーな漫画…2007「アリキーノ」、2011「グレンツェン・テューア」、2012「人形宮廷楽団」みたいに、アート性の高い作品を選ぶ傾向がある。そしてフリルが多い)
 マミさんの後ろでシャルロッテ第一形態が飛びまわってる時点で、そりゃー…マミマミされますわな。(動名詞なんだろうか…)
 魔法少女まどかが宇宙の法則を変え、まどかは消えてしまうけど、マミさんは蘇る…という本編的なEND。
 気づいたけどフランス人の長身スタイルって、スイプリだと非常に上手くハマってたんだけど、まどマギって小さめのキャラ設定なので、スラッとし過ぎていて逆にイメージと遠くなるのだ。どっちも14歳設定の魔法少女なんだけどね。


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■ イタリア「マジンカイザー 死闘!暗黒代将軍」 
 自己紹介VTRの私服姿がおかしい。(1組目)
 本国予選ではグレンダイザー&グレートマジンガー、外務省への表敬訪問では「グレンラガン」のジョーガン&バリンボー、パレードでは「ヤッターマン」のボヤッキー&トンズラーで登場していた、40&39歳オッサンコンビ参上!
(何故だかイタリア代表は男性コンビが選出される係数が高い。2010「ゼルダの伝説」で総合優勝、2012「エヴァンゲリオン」初号機vs弐号機)
 螺旋状のLED発光させたドリルスマッシャーパンチ、目からレーザーポインタによる光子力ビーム発射、巨大なマジンガーブレードを暗黒大将軍の胸部の顔(ここに素面の口が露出していて、見え難いけどセリフ時には動いてる)に突き刺す…。
 パフォーマンスとしては動きがたどたどしいんだけど、それどころじゃない圧倒的な物量戦で攻めてきたね!
 中の人はエンジニアで、LED満載なこの着ぐるみの製作には4年かけたとか…。これは造型やってる人なら分かると思うけど、一旦完成した後に色々と改修を加えて、現在の形になるまで4年かけた、の意味だと思う。


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■ イギリス「ディシディアファイナルファンタジー」
 ケフカの「ボクのステージ、オモチャで遊びましょ!」のセリフで背景の幕が開き、奥には吊るされたティナが…。操られているのが、しかし自我を取り戻してケフカに戦いを挑んでいく展開。
 片手剣で背景の柱をぶった斬るとか、ティナが鬼のように強い…。
 このマインドコントロールを外す設定も、ティナの金髪や衣装も、実際はディシディアというよりFF6版(天野原画の)に近いかな?

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■ 日本「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」
 セットの奥で主人公の母親が十字架にかけられるシーンからスタート。
 人間への憎悪に燃える父・ドラキュラ伯爵を止めるために、主人公アルカードがステンドグラスを割って登場!
 レイピアでの剣劇から、アルカードが伯爵を刺し貫き、そして抱きしめると…マントを残して伯爵の肉体は消えていた。そしてコウモリが笑いながら飛び去るEND。
 名古屋予選・日本決勝戦・そしてチャンピオンシップの3パターン全部見ている者として、ギミック満載なのに、ステンドグラスを割るシーンはカメラが追えず、消えるシーンではカメラが寄り過ぎてよく見えず。全体的に衣装も暗いトーンなので、背景の黒パネルと同化して見え難い…と、せっかくの凝った部分が伝わりきらなかったのが残念!
 コスサミはステージのリハにカメラまでは無いらしく、工夫点を伝えられないチームが多々存在する。
 なおこのチームはアクションしながら型が崩れないコートや、チラッと見える裏地など、コスプレの基本との言える衣装へのこだわりが非常に強い。(観客には伝わらない部分なのだが)

 審査員の一言を告げるコーナー。

メル 「総合芸術ですね…。早々に点数がカウンターストップしちゃって、やべ!他を削らなきゃ!みたいな…」

 次に話を振られた杉田氏が裏声で「そーですねー」としゃべり出すと、ニコ生ユーザーのコメントがビジョンを埋めた。
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杉田 「お前らの草で見えない!お前らの草で見えない!」


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■ 中国「モンスターハンター3G」 
 ベリオ装備とシルバーソル装備による演舞である。
 二人がこんがり肉や旗の小道具を次々と使って、幻想的な演舞を披露する。
 後述するように中国の演技は毎年この傾向で固まっているのだが、今年は特に他が剣劇が多かったので、それに行かない(いつもの)中国はインパクトがあった。

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■ マレーシア「真・三國無双7」 
 自己紹介VTRではFFのテーマをフルート演奏で披露。
 船の上で文鴦が笛を吹いているシーンからスタートし、王異と槍と剣で戦う。
 この甲冑の見事さ、写真で伝わりますか?

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■ フィンランド「クイーンズゲイト スパイラルカオス」 
 自己紹介VTRの私服姿がおかしい。(2組目)
 クイーンズブレイドのシステムに他社版権のキャラを登場させたゲームブックシリーズの、さらにPSPゲーム版(つまりキャラ競演のスパロボ的な脱衣ゲーム)が原作。
 天狐vsルーナで、ダメージを追うごとに衣装が外れていく…という、まんまな展開で、勝ったけどポロリしてしまい「キャーッ!」と叫んで走り去っていくEND。
 クイブレ自体は年齢制限は無いが、こーゆーアダルト系のネタに走るのって新鮮だ…本国じゃ一体どーゆー選考会だったのかしら?
 …いま動画見たいって思ったでしょ?

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■ オーストラリア「魔法少女まどか☆マギカ」 
 二組目のまどマギ。こちらは、まどかとほむほむが魔女・ワルプルギスの夜に立ち向かう展開。ほむほむが手榴弾なげてるよ!
 衣装早変えしたアルティメットまどかの一撃を受け、魔女がガタンッと崩れる。

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■ スペイン「ファイナルファンタジー9」 
 ブラネ王に囚われてしまったガーネット姫の元へ、ジタン参上!
 セリフ無しのサイレント劇、衣装チェンジ2回、背景の城の窓から見上げる描写など、パフォーマンスというより演劇的な要素を感じる。
 コスサミは照明のコントロールが出来ないので、2分半の中で暗転を挟まずに場面転換を行うには、工夫がいるのである。
 毎年必ずいるカップル参加チームのキスENDで、観客を沸騰させました。

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■ デンマーク「スレイヤーズ」 
 一応ファンタジー作品なのに、魔法エフェクトなど一切無く、リナとナーガがひたすらドツキ合い、最終的には馬乗りになったリナが石でナーガを殴打して勝利、喜びながら去るという、ある意味で分かり過ぎてる内容。
 しかもこの衣装、スレイヤーズすぺしゃる「魔法の老女プリンシア」!?人気シリーズだが映像化されてないライトノベルを、外国人がコスプレしてるのか…感慨深いですなぁ…。


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 そして毎年恒例の高橋洋子ミニライブが、審査集計してる間に始まった!
 昨年はTV愛知で生放送だった都合上、中継開始前の中盤に行っていたのだが、今回は終盤に。
 「残酷な天使のテーゼ」を歌うステージ前で、各国代表チームズラッと並んで拳を振り上げる。
 もう、国も人種も関係無く、全てがキャラのシルエットになって浮かび上がる…。
 個人的に今年のコスサミ最高の名シーン。
 いつか自分も、あのシルエットの一つに紛れてみたいなー…というのが、予選落ちした人間の本音ですよ…。

× × × × × × × × 

■ 審査結果発表

 ニコ生からの投票による「ニコニコ賞」は、得票率75%の大差でイタリア「マジンカイザー」
 ウィッグの美しさに贈られる「シペラス賞」は、長髪ウェーブの日本「悪魔城ドラキュラX」
 音響の完成度に贈られる「ジョイサウンド賞」は、演舞路線の中国「モンスターハンター3G」
 衣装の最高得点に与えられる「ブラザー賞」は、アメリカ「ハートの国のアリス」
 パフォーマンスの最高得点に与えられる「あにスタ賞」は、韓国「ロックマンゼロ」

 3位=ブシロード賞は、タイ「メタルギアライジング」
 2位=LIVE DAM賞は、アメリカ「ハートの国のアリス」(二冠)
 総合優勝=ANA賞/外務大臣賞は、イタリア「マジンカイザー」(二冠)

 なんと!パフォーマーでもないフツーのオッサンたちが、電気&自動車エンジニアのスキルを駆使した巨大ロボットで優勝してしまうとゆー…WCS2013はある意味でのシンデレラストーリーで幕を閉じたのであった。


 よくよく考えれば剣劇が続いていたので、そこに行かなかったイタリアとアメリカがインパクトを残した格好か…。
 ちなみに今年は各国の細かい得点と総合順位は発表されませんでした。上位半分だけでも発表してほしかったなぁ…。全部出せば下位チームにはメンツの問題があるし、出さなければ疑われるし…。
 日本は今年はウィッグ賞だったけど、2回以上の日本代表経験者って計5人おりますが(キキワン/時雨直輝/コノミアキラ/愛華しぐま)、2回とも入賞したのは今回の万鯉子さんが初だそう。2006年に準優勝したベルばらチームの一人だったから。
 
 最後に古谷徹氏が実行委員会の宣言を代読。抜粋。
「今回出場した20ヵ国の他、参加を希望する国は24ヵ国あります。障害となっている様々な問題を取り除き、数年先には50ヵ国、オリンピックのような場を目指します!」


24ヵ国のコスプレイヤーが熱演! 世界一コスプレの栄光はどの国に!?-ASCII.jp
「世界コスプレサミット2013」チャンピオンシップ にいってきました!-2IS(つーいず)
世界コスプレサミット : イタリアが3年ぶり3度目の世界一に-まんたんWEB

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 「あぁ、世界って本当は平和なんじゃないか…?」
 …そんな錯覚がこの空間にはあります。
 どんだけ不満タラタラでも、僕がこのイベントに参加して、このステージを観に行く理由です。

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 戦い終わった夜の名古屋オアシス21…。
 スタッフもコスプレイヤーも、皆々様、おつかれさまでした…。

× × × × × × × × 

【歴代日本代表チーム一覧】
 ※カッコ内は改名分
2005―――――
 東日本個人: はるか(まりあ) 「美少女戦士セーラームーン」
 東日本団体:[チーム・わんわん] 奥棲たくみ/玲羽詩音(悠羽司恩) 「犬夜叉」
 中部個人 : サイラ 「ファイナルファンジー4」
 中部団体 :[中村藩] 藩主/奥方/若/ぷち若 「ルパンIII世」
 西日本個人: Sou 「聖闘士星矢」
 西日本団体: 藤間あゆみ/ミヤピン/ナマリ 「トップをねらえ!2」
 ネット個人: 優奈 「これが私のご主人様」
 ネット団体:[BK ムーン] バービー月野/多田カイエ/ライター設楽「美少女戦士セーラームーン」
2006―――――
 東京 : 葵朔夜/ゴルディ 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」
 WEB :[婆薔薇(バーバラ)] 万鯉子/蝶子 「ベルサイユのばら」
 名古屋:[どんぼシスターズ] 伽羅/ ray ya 「ふたりはプリキュア」
2007―――――
 大阪 :[アキラとしぐま] 隼しぐま(愛華しぐま)/蒼一輝(コノミアキラ) 「ドラゴンボール」
 東京 :[チームはっせ] キキワン/時雨直輝(なおきち) 「デスノート」
 名古屋:[にゃこニックフロント]たかそう(たかそうゆさき)/ダークナイト 「コードギアス 反逆のルルーシュ」
2008―――――
 東京:[チームはっせ] キキワン/時雨直輝(なおきち) 「風の谷のナウシカ」
 大阪:[唯×実] ユイ(雅南ユイ)/みの(朶恵みのり) 「コードギアス 反逆のルルーシュ」
2009―――――
 [YURIE] YuRi(因幡優里)/ RiE 「戦国BASARA」
2010―――――
 [アキラとしぐま] 愛華しぐま/コノミアキラ 「忍者ハットリくん」
2011―――――
 [三振] 竹取物語/榊葉こお 「スーパーマリオブラザーズ」
2012―――――
 [士魂-SHIKON-] 霜月紫/海都~kaito~ 「薄桜鬼」
2013―――――
 [沙久] 真鯉子/FRAN 「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」

× × × × × × × × 

 長ったらしい話をまとめておくので、裏の方に興味ない方は読み飛ばしても構いません。

【 “勝つ”ためのコスプレという迷路 】
 初期は交流メインで、チャンピオンシップ形式というのも各国代表が記念的にステージで演技を披露して、特に素晴らしいレイヤーを表彰…という感覚だったものが、回を重ねるうちに最近では「コスプレ世界一決定戦!」とバンバン喧伝されるようになりました。
 文化交流を忘れた訳では無いですが、それよりも、国別対抗戦・世界一決定戦…。ハッタリかました方が、視聴者の興味を引きやすいし、マスコミも食いつきやすいし、協賛企業も集め易い…TV的な発想でそういう風に行くのは、仕方なかったかもしれません。

 しかし、くり返してしまいますが、ファンが作品やキャラへの思い入れを体現した“コスプレ”というジャンルに、総合的な「世界一」なんて厳密に決められる訳が無いのです。「世界一」という虚像を決めるための戦いは、巨大化と引き換えに、ひずみも生んでいます。
 「自分のやりたい」と同等以上に「勝つ」目的でのコスプレをしなくてはならないので、だからメジャー作品で、ハデで、分かり易くて…っていうパターンを模索していくのですが…。
 ファン活動としての疑問は元より。実はショウビジネスとして見た時にも、マイナス面が出てきちゃいました。
 つまり明確な審査基準が無い世界で「勝つ」パターンを模索すると、前年の優勝チームのパターンに引っ張られ、全世界から集まった筈のチームが、結局は各年ごとに同じような内容をしてしまうのです。

 2011年は大道具の重量とサイズ制限導入で各チームが軽量化に行く中、ルールの隙を突いて巨大着ぐるみ(衣装にはサイズ制限が無い)を披露したブラジル優勝。
 2012年は各国が着ぐるみで大艦巨砲主義を連発する中で、スピーディな剣劇を披露した日本優勝。
 2013年は剣劇ばっかり続いた中で、着ぐるみで巨大ロボバトルを展開したイタリア優勝。
 ↑それぞれ前年の優勝チームに倣ったパターンが連発されました。そしてどちらにしろバトル系の展開です。歴代優勝チームにはコントやダンス系は存在せず、全てバトル系でしたから。
 後ろの席から見てると、分かっちゃうんですよ。剣劇が続いていくうちに、観客が飽きちゃうってのが…「あぁ~また武器出して睨み合ってる」みたいな。

 だからと言って「前年の優勝パターンを意識せず、バラエティに富んだ内容をやってくれ」なんて言ったって、聞く訳アリマセン。
 だって「世界一を決める!」と喧伝されたステージに一国の代表として出場する以上は、どうしたって上位入賞して故郷に錦を飾りたいんですから。過去の優勝パターンを意識して「いかに審査員から加点を引き出して、勝つか」って発想に行くのは止められないです。
 ここに、コスプレを楽しむ事/コスプレの優劣を決める事/それをショウビジネス化する事…の、それぞれの矛盾が出てくる訳です。

 「がんばった選手にメダルを贈る」のか?「メダルのために頑張る」のか…?
 それは、オリンピックが歩んだ、『参加する事に意義がある祭典』から、スポンサーやTVを巻き込んだ『国別対抗戦』への変貌と、同じかもしれません。

【 プロ、の是非 】
 「他国はプロの格闘技選手やパフォーマーが出ている。それに対抗するにはこちらもプロの技術を習得するしか無い」と、国内予選に出ていたコは言いました。
 僕もその通りだと思います。写真派のレイヤーだって、綺麗なコスプレ写真を撮るためにプロ用のスタジオや機材を用意する行為と、大差ありません

 でも実際、現状でコスサミの代表になるためには、他のコスプレイベントに参加する時間を惜しんで、アクションやダンスを学ぶとか、巨大な大道具を建造するとか、凝った音響をPCで作り込むとか、WEB予選の場合は動画編集のノウハウも必要です…つまり、日本のコスプレイヤーがおおよそ持っていない・他イベントでは使わないであろうスキルを習得して競わないといけなくなっています。

 ステージに上がるのは2人だけでも、場合によっては裏方で複数名が分業しているというチームも多いです。
 そこまで出来るのはごく限られた環境にあるレイヤーだけでしょう。
 コスプレが趣味であるとすれば、本末転倒と言われるかもしれません。
 これがコスプレの本質や本道とは絶対に思えません。
 しかしそうまで努力する人達の、いわば青春群像は、熱く、泥臭く、ドラマティックだと思います。

 後日のTVでは、日本代表の女性社会人コンビが仕事前に公園で練習する姿が映りました。
 彼女達はベテランの世代ですが、「もう、プロに学べる事はプロに学ばなければ、素人の技では通用しない」を悟り、今年はコスサミ予選のために殺陣師から型を学んだそうです。
(あくまで学んだのは剣劇の型だけで、演目の内容を考えて作ったのは二人である、と強調。ちなみに昨年代表が通っていた潮見組とは別の所だよ)
 こんな強敵ぞろいの中に入って、どう考えてもタレント的なプッシュとは無縁であろう年長の女性社会人コンビが時間削って剣術習ってコツコツ練習して衣装つくってギミック考えて、んで代表になって決勝で入賞しちゃうところに、今年の日本代表コンビの面白さがあった!…ってまとめは、どうですかね?

 あ、そして優勝したイタリアはアクションやダンスじゃなくって、電気と自動車エンジニアのプロだったというのがオチ(笑)

 かく言う自分も会社員ですが、広告業務の中でスチロールボードにポスターを張り込んだり、紙見本帳が揃ってたりするので、紙のプロ、なんかな?

【 選考過程の権益化? 】
 国によって“色”が出る場合があるのですが、それが特に強いのが中国です。
 セリフを使わず2人並んで小道具を次々と駆使した幻想的な演舞…という内容は近年の中国代表がほぼ踏襲しており、剣劇や着ぐるみに行かない事で、ある意味で印象を残しているのですが…しかし。
 「衣装と小道具を入れ換えたら、前年の作品でも成立するのでは?」とも言われます。
 中国では各都市で地区予選+最終選考が年10回も行われるそうですが、こうして大々的に選ばれたチームの演目なのに、良くも悪くも、毎年似てしまってるのです。
 何故かというと、中国の選考会が特定グループの既得権益化し、審査基準が硬直してしまっているので、彼らの求めるパターンに沿うとどうしても似ちゃうとか…。

 これはこれで厄介な話だと思います。
 海外勢でも公募による予選会は2005年からですが、数年を経る中、代表を選ぶ過程がやはり国によっては既得権益を生み出しているのです。権益自体は悪くありませんが…特定団体による利権化してしまったら、必ず腐敗します。
 一定期間ごとにオーガナイザー(その国の選考会を統括する立場。多いのはイベント団体関係者)を交代させるとか、いずれ規定が必要になるかも。

 海外では一部ですが「コスプレイヤー」は職業名です。アニメの格好で歌ったり写真集出したりで相応の収入を得る、プロのコスプレイヤーというものが存在するそうです。
(日本でもコスプレ“芸人”とかコスプレ“占い師”とかおりますが、コスプレ活動メインでの収入ではないですし、エロ系のROM写真集を売っている人はポルノとしての需要なので別)
 コスサミで上位入賞という勲章を得て、本国に帰った後、芸能活動のステップに…という例は実際にあります。
 それは文化の違いですから何も悪い事ではないですけど、まぁ、さっきも言ったように、コスプレ=ファン活動という本質とは離れちゃうかもしれませんが。

 …日本の予選は利権とかどうなのかって?
 んー…私、予選出てる立場だからなぁ…。
 横綱・白鵬が大相撲界の八百長問題について聞かれた時、こう言ってたじゃないですか?
 『無いとしか言えない!』って(大笑)

【 体制移行期の混乱 】
 昨年まではTV愛知の公式ページorプレスリリースでほぼ全ての情報はチェックできたのですが…。
 WCS事務局の業務がTV愛知から(株)WCSに移管されたり、国内予選の管轄がジャッキー道斎氏からCOSSANの柴田氏に移管されたり、色々と移行期だったので、「スケジュールが出て来なくて何やるか分かんない」「国内予選がどんなチームで進んでるのか分かんない」との声が。
 コスサミ公式サイトではギリギリまで情報が公開されないし、公式サイトで出てない情報がフェイスブックで出てたりするし…。どこをチェックすれば良いの?
 予選も決勝も情報戦術に関しては反省点が多過ぎて、とにかく早期の情報公開、プラスして情報発信もちゃんとやらないといけないと思う。
 …予選のレポートを出場者の個人ブログに任せないように…。

【 スッキリ!報道の件 】
 テリー伊藤氏曰く「学芸会レベル。後ろだってセットじゃなくて単に黒い背景でしょ。スポンサー集めたり行政が金出して、もっとちゃんとやるべきだよ」
 僕はマスコミを敵視しないオタクなので、この発言に半分は納得をしています。
 バブル世代のテレビマンが見たら、こんなの褒めないでしょう。ショウビジネスとして見たら足りないものだらけだと思います。
 背景が無いのは衣装+大道具の総重量40kgルールが理由ですが、結局は資金力や貨幣価値で不利になる国に合わせた制限ですから、金の問題です。
 しかしながら、個人が手作りで…“好き”でやってるところに、コスプレの本質的な意味と価値があります。
 スポンサーや行政が金を出して、その都合で動かされるコスプレになったら、クソ食らえです。

× × × × × × × × 

 んで終演後、(株)WCS小栗徳丸代表に、お話を伺う機会がありました。
 小栗氏は元TV愛知のディレクターでコスサミの初期に関わった後、しばらく離れたりしていましたが、昨年(株)WCSを立ち上げました。これは膨張するコスサミの業務をTV愛知WCS事務局から移行させる受け皿とも言える会社です。今年コスサミ関連の映像が他局でも多く使われるのは、TV愛知の制約が下がったのも理由です。
 内部の事情はさすがに置いておきますが…面白い事を言ってもらったので書いちゃえ。

「どんどん批判してください!何か言い合いになるって事は、それだけ、お互いに“心”があるという事なんです。他の誰が何と言おうと、コスプレサミット運営代表の僕が言ってるんだから、それで良いんです!僕は正直、コスプレもアニメも分からない。だから、ハッキリ言ってもらった方が良いんです!」

 ただネットに強くないらしいんで、ご意見の類はメールの方が目に留まりやすいかも。

 …。

 …後日談。
 猛暑と雨が襲った一週間後の東京、コミックマーケット84の会場に、そんな(株)WCSの一団が訪れていました。
 コミケに来るのは初めてではないでしょうが、もし、コスサミとコミケ準備会のコスプレ担当部署との間に何らかの接触があったりしたら…?
 と、今は空想して楽しむに留めておきましょ。




【 宣 伝 】
 そんなコスサミの10年史を表と裏からまとめてみた同人誌「世界コスプレサミット非公式読本」、まだまだ売れ残り中!
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COMIC ZIN様の通販 ・ 中野まんだらけ様の通販 よ、よろしく…。

【今年のコスサミ地方予選のレポ】
3/24 東京国際アニメフェア予選
4/14 名古屋予選
4/28 ニコニコ超会議予選
5/18 大阪予選
6/16 日本代表決定戦 

レイヤーが見た世界コスプレサミット2013杉田智和×岸田メルトークライブ~エキシビション編 

【昨年の分】
レイヤーが見た世界コスプレサミット2012決勝レポ 

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