[アバンタイトル]
 夏の名古屋の奇祭、世界コスプレサミット
 2003年のテレビ愛知の特番としてスタートしてから12年目。
 2005年の愛知万博に併せて国対抗戦のチャンピオンシップをスタートさせてから10年目。
 今年はついに22カ国の代表チーム参加による優勝決定戦と相成りました!
 …「コスプレの世界一」「日本一」?
 ンなもん、厳密にある訳無いじゃん?
 コスプレサミット優勝チーム=コスプレ世界一だなんて、誰も思ってないよ?
 コスプレを審査競技化した独自ルールで勝手に優勝を決めてるだけですよ?
 だってそーゆー、「尾張名古屋は世界一!」っていう地域のお祭りだもの。

 さて!
 海外勢のおもてなしに注力する一方、自国の代表を選ぶ日本予選については昔からブン投げ続けていたWCS事務局。
 既に名物とも言えるグダグダ運営と利権と理想、色んなものが交錯しつつ、昨年2013年から日本予選の管轄権=オーガナイザーの任をウッカリ拾ってしまったのは、イベント団体COSSAN(代表・柴田昭氏。
株式会社ミネルバ
 今年は2年目とあってそろそろ大丈夫かと思いきや、よもや!予選期間中に団体分裂、スタッフの大量離脱に至るとは…。

 運営団体たるCOSSANの混乱は、日本予選の運営にも若干(?)の影を落とす。しかし捨てる神あれば拾う神も、また。
 窮地を前に、前任の日本予選オーガナイザーが乗り出して来たり、スタッフ不足を救うためにライバル団体が協力に参上して来たり、特捜最前線ばりの愛と死と憎悪の渦巻くメカニカルタウンを舞台に、さながら少年マンガの様なゴタゴタとドキドキの中で迎えた、泣いても笑っても今年の日本代表を決める最終決戦!

 6/29(日)東京タワー周辺を使った広範囲のイベント内で、スターライズタワー(旧・東京タワースタジオ。テレビ東京「ヤンヤン歌うスタジオ」)で、世界コスプレサミット2014日本代表選考会は、地区代表5チーム集結の末、その最終選考となる国内決勝大会をようやっと、迎えたのでありました。
 遅くなったけど、スターライズタワー内特設ステージから、その熱戦の模様をお伝えしようじゃないか。

× × × × × × × × 
 
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 朝一、東京タワー下のスタジオに集合した5チームはまず、決勝や衣装審査のステージ出場順をくじ引き。番号の貼られた5つのボールから引き立てたのは…1番!
 他のチームなら嫌がる順番だろうが、ウチにとっては最高の順番。着ぐるみで長時間待機はキツいし、さっさと終えて他チームの演技も見られるからである。

 午前中は衣装審査。今年からステージ審査とは別に衣装のみの審査が出来ました。
 衣装審査員は5名。合同会社ぷれこすから2名(COSSANを5月で退社して別会社起業)、2013代表チームから万鯉子さんFRANさん(全身のバランスを見て自作してない衣装は一瞬で見抜くのが特技)、そして先代の日本予選オーガナイザーにしてWCS最高顧問のジャッキー道齋氏。
 これは…衣装審査員の人選、やっぱ揉めたんだろうなー…。
 ぷれこすの2名は地区予選で衣装審査員してたけど退社後の動きを見るにCOSSANとはこの時点ではトラブッてただろうし、万鯉子さんFRANさんはステージ審査員もやるから裁量が大きくなり過ぎるので衣装審査は本来なら兼ねるべきじゃないだろうし、道齋氏は…おそらくは、揉めまくった衣装審査員の人選に対して、各方面の利害調整のためにWCS最高顧問権限で乗り出して来た…が正解だろうか。
 衣装審査は密室性が高く、ここに特定の利害関係が発生したりすると問題なので、複数名が睨みあうのは良い事なのかもしれない。
 開始時刻の遅れも、時々漏れてた怒声(?)も、その辺が理由でしょうねー。
 そして個室内に衣装審査員5名+出場者2名=計7名は、狭いわ!
 あ、来年も同じルールだとしたら、ステージ審査以外に、この衣装審査でのプレゼンも重要視されるから、製作中の写真とか用意したりしてアピールの準備しといた方が良いですよ。出場を検討してる次の世代の皆さんへ。

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 13:30-東京タワー展望台~フットタウンをミニパレード。不安定な天候の一日でしたが、この時は晴天。
 ノッポンを先頭に、エキシビションとして披露したレイヤーの皆さんと一緒に、出場チームが東京タワー一般客の前を歩いて回ったのである。一部体調不良などで欠席あり。着ぐるみ的にはバリアフリー対策を考えて頂きたいが。
 だいたい9:30集合で決勝本番が17:00開始、ピリピリムードのまま間延びしちゃうので、ここで子供達から声援もらったりできて、良い気分転換になりました。

 スタジオ内のステージでは14:30-カラオケコンテストDAM☆とも杯をやっていて、この終了後にバタバタとリハーサル。そして本番へ。
 
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× × × × × × × × 

■ 日本代表選考会・決勝ステージ開戦!

 二人一組、2分30秒まで。
 アニメ・漫画・ゲーム・特撮の、日本産コンテンツである事。
 衣装と小道具は手づくりである事。家族や友人の手伝いは可。
 大道具は長辺210cm以内を3個まで。衣装+小道具+大道具の合計は40kgまで。
 ステージに上がれるのは出場者2名のみ、設営は舞台スタッフが行う。
(何で細かいルールまでわざわざ書いてるのかというと、最近堂々と違反されてるからである)

 各審査員、パフォーマンス10/衣装5/原作リスペクト5点まで付加。
 なお今年から衣装点は、ステージ審査員の5点とは別に、衣装審査員で5点を持っているそう。

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[審査員] 右から
・ 万鯉子(2013日本代表チーム沙久)
・ FRAN(2013日本代表チーム沙久)
・ 乾たつみ(コスプレサイトCure管理人)
・ 吉田創(コスプレイヤーズアーカイブ代表)
・ 山本麻子(COSPLAY MODE副編集長)←旧コスモードがファミマからリニューアル復刊
・ 池ノ谷賢(アニメイトコスプレブランドACOSプロデューサー)←すいません写真見切れてます

 MCはアムロ芸人の若井おさむさん。6/1新宿のアニメ座公演、見に行きました!…って本人に言えば良かった。
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○ WEB予選代表 チーム大連立(駄チワワ/寅) 「昭和vs平成 仮面ライダー大戦」
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 超会議と刈谷予選の敗戦から、WEB予選枠で復活!
 ディフォルメ形態の鎧武&ディケイド登場、日曜の朝8時に予定を変更して始まった「昭和の特撮ファンに平成ライダーを認めさせるための緊急特番」
 しかし番組そっちのけで映画とオモチャの宣伝を始めた平成ライダーを前に、天から響き渡る一喝…。
 「認めん!平成ライダーなど、ライダーとして認めん!!」
 1号2号のダブルライダーキックを受けてバンダイの看板ごと破壊され、最後は昭和と平成ライダー一緒に8:30からのハピネスチャージ!プリキュアを箱キャラで宣伝して終了。
 WEB予選の性質上、既に分かってた観客が多いせいか、最初の方から笑いと手拍子を起こせたのだった。

FRAN審査員 「このパフォーマンス見るの2回目ですけど、ホントに可愛くて(笑)」

○ 大阪予選代表 愛ぉ菓子(なぎさとう/アキラ) 「鬼灯の冷徹」
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 芸能ゴシップ記者の小判を訪ねてきた鬼灯。
 ステージ上を四つ足で走り回る小判に対し、ネコジャラシや棍棒を駆使してキレの良いドタバタを繰り広げた挙句、健康診断の案内を渡して去っていく。
 鬼灯の声は引き続き男性が当ててます。低音の良い声です。
 予選での白澤は小判に変更して、鬼vs猫というアクションの面白さを狙ったか。
 舞妓さん用の白塗りで猫になっていた小判のアキラさんは、終了後も四つ足のままで「ニャ~」とコメントしたり、舞台を降りてもこの座り方だったり、なりきりを超えて楽しそうだった(笑)
 振り回してた棍棒、中身は小型バットに綿を巻いているので、意外に軽いんですって。

池ノ谷審査員 「棍棒、軽いんですか!?重いものを軽そうに扱ってたるのかと思ったので…」
 (↑アニメイトのコスプレ部門の人なので、武器や小道具の出来を見てるかな?)

○ 刈谷予選代表 Seeker(NaGi/ウサコ) 「メタルギアソリッド4」
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 超会議とアニメイト予選の敗戦から、刈谷予選で復活!
 予選でのドラゴンボールから作品自体を変更。おそらくは日本予選史上の最大規模のセットを組む。
 キャラの解説をナレーションで入れてたり、専任スタッフ(?)が大道具を用意してたり、コスプレというよりプロモーションビデオを作ってる撮影現場のような雰囲気であった事が、良き意味でも悪い意味でもその特徴。
 後半アクションの見せ場(ウサコさんバク宙!etc)はドラゴンボールでのアクロバット要素を引き継いでいるものの、一見すると全く別の演目に変更されている。
 今回のアクションの練習は3月から初めていたそう。
MC若井 「何やってる人なんですか?」
NaGi  「メンズナックルでモデルやってます」
ウサコ 「オイオイ」

吉田審査員 「予選から作品を変えるという事で注目してました。素晴らしい!」

○ ニコニコ超会議予選代表 今日も元気に今日も元気に狩りに行き隊(山葵/紅乃) 「モンスターハンター」
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 朝、寝てる男性ハンターが叩き起こされて、女性ハンターからせかされながらジンオウガ装備に着替えるという掛け合いのコント。
 YES/NO枕を使った「夜のソロプレイヤー」、間違えてワイルドタイガーのメットをかぶる「ワイルドに吠えるぜ!」「あんたハンターじゃなくってレイヤーじゃないの?」などなど、モンハンというよりレイヤーあるある的な展開で笑いを誘う。
 一瞬だけどジンオウガ装備の肩アーマーのカクッとした展開・固定ギミックなど、さりげなく技術アピールがスゲエ。
 終了後にホワイトボードを使ってネタに走るなど、審査以外の部分でも仕込んでやがりました。

紅乃 「素材は主にビバホームで集めました!」
万鯉子審査員 「鎧の裏面までちゃんと作り込んでいて、もしもジンオウガが本当にいたら、こんなんかな?って思いました」
 (↑この人が衣装の件で褒める際は、本当に凄いって事)

○ アニメイト予選代表 チーム婆娑羅(amini/媛次あずま) 「戦国BASARA」

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 長宗我部元親vs毛利元就の船上対決!
 2.7m5.5kgの巨大な碇槍と、輪刀から分割して双剣とをブン回しながらゴスゴス激突させる展開に、客席から見上げてしまう。
 BASARA未プレイの人間から見ても「このポーズ知ってる!このシーン見た事ある!」なポイントを押さえていて、メイト予選段階では動きの間が空いたりしてたどたどしかったた部分も、大道具で隠したり表情を作ったりして、うまく流れの中で魅せる工夫をしていた。
 終了後に「全部出し切れた」「こんな舞台に立たせていただいて…」と、照れつつ殊勝なコメント。やっぱり練習場所は天井が低くて大変だったとか…。

吉田審査員  「やっぱり武器ですね!」
山本審査員  「メイト予選より改善されていて、家紋とか背景も作りこんでますよね」
 (↑コスモードの編集なので、背景の美術に反応する傾向)
池ノ谷審査員 「(メイト予選と比べて)広い会場、フルに生かしてましたね!」
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 エキシビションで昨年2013代表チーム沙久「悪魔城ドラキュラX」
 一年前の2013代表選出時と比べても、たたずまいとゆーか、踏んだ場数が出てる。女性社会人コンビがこの一年間、各国での公演に引っ張られて演技していた内に大きくなったんだなー…。
 ってゆーかさー…もう、今年の出場者を食っちゃってるんじゃねー…!?
 昨年2013決勝大会では、前年2012代表だったチーム士魂の霜月縁さんがマイクで「今年はレベル高い…僕等も今年の中に入ったら、勝てるか分からないです」と、粋なバトンタッチを図っていたのですけどね!
 万鯉子さんの方は来年以降、また別チーム組んで出場者として出たいそうなので、各チーム、迎え撃つように。
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[審査発表]
 ウィッグ賞は「メタルギアソリッド」Seeker。
 そして優勝の日本代表チームは…

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 「戦国BASARA」チーム婆娑羅!
 ヲヲヲヲ…!
 初挑戦の若いチームが選出され、感涙する二人を囲んで、周りも自分の気持ちをグッと抑えつつ祝福する、恒例のエンディング。

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 個人的な記憶で、僕が彼女達を最初に見たのは昨年2013年の7月。あの日のアニメイト池袋店ステージで行われたCureの選考会に勝ち抜いて、9月の東京ゲームショウ2013のコスプレレコレクションナイトに出演。両方見たので覚えてます!
 いつだって、自分達で挑戦してきた若人達です。
 夏の名古屋、8/2のチャンピオンシップや8/3大須コスプレパレードに、22ヵ国代表チームの一角として登場するでしょうから、色んな国の人達と一緒にまとめて応援しちゃえば良いと思います。

(ちなみにお二人、2009年代表だったBASARAチーム、YURIE(Yuri/Rie)の事を知っていて意識していたそうですが…あのチーム既に解散してるとはさすがに言えなかった…)

世界コスプレサミット2014年日本代表が決定-アーカイブニュース

× × × × × × × × 

■ いち観客として“読む”、5チームの勝敗を分けたのはどこだッ!?

 あ、長いんで読み飛ばしても良いです。

 さて、結果に対しては毎年色々と賛否が出るのですが、コスサミの審査スタイルを知っていると納得できると思います。
 思い出してみると自分は2011年以来、全部の国内予選ステージを地区予選~国内決勝まで見ていました。
 2011年は10組10演目、2012年は14組21演目、2013年は15組21演目、2014年は14組22演目。
(WEB予選除いたステージ審査のみの総数。2012年から地区予選+国内決勝の形式になったので、1チームが複数回演技している。そして全然出場者が増えていない…)
 合計で4年で74演目を見てるので、何となく審査の基準は分かってきました。
 ここから先は、主として一観客としての視点(になってない所もあるけど)で、若干プロレスライクに語ります。

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 自分の事は棚の上!

× × × × × × × × 

 まず肝心な事は日本代表選考会で優勝するためには入試試験と同じで、一科目で満点取っても、他の科目が0点じゃダメです!平均点の高さ、総合得点の高さが決勝において重要だと思います。
 審査員ごとに「パフォーマンス10/衣装10/原作リスペクト5」ですから。
(今年から衣装点は衣装審査員とステージ審査員で5点ずつで、計10点)

 2014代表に選出された戦国BASARAのチーム婆娑羅ですが、パフォーマンス点だけならば鬼灯とメタルギアも同じかそれ以上に取っていたと思います。しかしこの2チームは衣装点でバサラより伸びず、メタルギアはリスペクト点も低かったと推測します。

 周りに感想を聞くと、特に本格的に殺陣やったりするパフォーマー系の人は、当初はこのバサラチームを高評価はしていませんでした。
 アニメイト予選の段階では動きが止まったりたどたどしかったりで、パフォーマンスの完成度としては評価が厳しかったでしょう。もしかするとアニメイト予選は衣装点での一点突破だったかもしれません。
 しかし彼女達、決勝においてはかなりジャンプして来ました。
 うまーく大道具を使って部分部分を隠したり、間の空いてしまう部分では客席に背を向けずに表情で芝居をしたり…地区予選からのブラッシュアップって言うのはこういう事だと、敵ながら思い知らされました。
 また、この巨大武器はステージの空間を上下にも有効に使って、観客の視線を動かす事にも成功しました。
 ステージ上で左右と奥行きだけでなく“高さ”の概念を(結果的にですが)使ったのは、バサラとメタルギアだけです。
 もちろんアクションとしてはたどたどしいですけれども、バックライトに照らされてあの巨大武器と両雄のシルエットが浮かび上がる光景は、非常に絵になった!
 具体的に言うと、客席からカメラ構えてると分かるんですけど「演技中どこでシャッターを切ってもベストショットになる」んです。これ。…アクションは少ないけど絵面として決まってるってのは、極端に例えるなら…「歌舞伎」っぽいイメージって言ったら理解されやすいかな。

 衣装点とリスペクト点の高さは、言うに及ばずでしょう。あの2.7mの槍、納得いくまで10本作ってるそうですから!肌色タイツに腹筋描いてるしね。
 今年は特に審査員に複数の女性が入ってるので、「好き」の気持ちを…感情的な部分を読み取るアンテナが強いのか、“コスプレイヤーが思うコスプレイヤー”像に高評価が与えられてる傾向があった気がします。
 そうです。コスプレサミット予選は、パフォーマーの大会じゃなくって、コスプレイヤーの大会だったんです!プロの完成度より、趣味と道楽で作ったものの方が評価されるんです。忘れられがちだけどね。
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 惜しいのは…愛ぉ菓子の、鬼灯の冷徹!
 5チーム全部終わった後、個人的にはここかバサラが1位を争うイメージでした。ぶっちゃけ地区予選終了時の個人的な下馬評では本命チームでした。
 時の運と言い切るのは違うかもですが、大阪予選の小さなステージでは映えたドタバタアクションが、この天井の高い巨大ステージでは、小さく見えてしまったんです。
 ひょっとしたら、昨年の池袋西口公園ステージだったら…屋外なので照明効果が無く、左右に柱があってスペースが限られたあのステージだったら…もしかしたら、印象は違ったのかもしれない。
 運営からはステージのサイズは教えられるけど、天井サイズや照明のセッティングまではフタを開けないと分からないので、どうしようもないです。

 そしてキャラクターを大阪予選から白澤→小判に変更したのですけども、どうなんでしょう?
 アクションとしては猫っぽい四つ足で走り回るのは面白かったのですけど、小判って本編で鬼灯との対立軸があんまり無いんですよね…。
 メジャー作品の場合、説明しなくてもキャラの設定や関係性が観客・審査員に分かってる強みがある筈なので、やっぱ鬼白のままで行った方が対立軸がハッキリするし、特定の嗜好の女子の皆さんが荒ぶって大変な事になったかもしれません。ホントなら小判とバトルするなら、ピーチ・マキなのかな?
 あと、小判の半纏を忘れてきたそうで、有り体の衣装で間に合わせたという…本当に気の毒なんですけど(衣装審査時に申告したそう)それはもう仕方無いです。そして全体的には軽装なので、衣装としてはちゃんと作られてるけど、衣装点では甲冑系のバサラに届かなかったのだと思います。…残念。
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 シーカーに関しては、色々あるけど、まず予選からドラゴンボール→メタルギアへの変更は裏目に出たと見ます。それとごく基本ルールだけど、衣装の大部分を「手作り」してないよね。大勢の大人達の手が入り過ぎていて、相対的にこの二人が自分で作ってる部分というのが、小さくなってしまってる印象。
 「手作り」ルールと言っても、友人家族の手伝いは可だし、綿花栽培や石油製材の買い付けからって訳じゃ無いんで曖昧ですけども。「キャラの衣装作りのためにどれだけ手をかけたか」が基準になると思います…が。
  一ヵ月半前に青年トランクスのズボンが作れずツナギになってた人が、いきなりこんな細かいモールドや半透明素材の強化外骨格をフル自作できる訳が無いですよね…そりゃ審査員だって気づくでしょう。6人の審査員みんな地区予選で彼らのドラゴンボールの演技と衣装を見てるんだから。
 過去に既製品衣装で出場したチームのようにコメント時に自己申告すればまだしも、「自分で作りました」と言い切ってしまって、でも他チームみたいに「何処をどう工夫して作ったか」の話は出て来ないのだから。
 ぶっちゃけ、地区予選開始前の段階で、ナギ君の所属してる事務所が雷電の衣装を発注できる業者を探している件は噂で流れてました。舞台衣装の会社ではなくコスプレ用の小さな業者を当たったので、造型師のネットワークで漏れたのだと思います。
(昨年のFF7クラウド衣装もおそらく自作ではないけど、当時の審査員が見抜けなかったので、今年はもっと堂々とやったんだろうな)
 だから、後でメタルギアの衣装と音楽に変更する前提で、地区予選は軽装のドラゴンボールで出ていた…って事は想像できちゃう訳で、各パートを専門家に分業したそれは“ショウ”としては非常に見栄えのする内容でしたが、“コスプレ”として見るなら衣装点、そしてリスペクト点も伸びなかったと見ます。
 部分的には手作りもあったのも分かります。だって当日朝に控室で鋲を打ったりボンドを使っていたので溶剤の匂いが籠って、その影響でウチの寅さんも体調不良を起こしてたもの。年長者だから。

 衣装以外に大道具も。確かに大道具は直接の審査対象じゃないからグレーと言えばグレーだけど…。2名+サポート1名までルールなので、マネージャーが横に付いてる所まではでOKだけども、でも大道具の納品に来た業者1名がステージ脇でずっと組み立て作業してて、本来は出場者と固定の設営スタッフしか触れない筈のセッティング時間にもこの業者さん、堂々と一緒に上がってて…運営はコレを止めないのか?
 終了後に挨拶回りまでしてたからね?自分も観劇したY本興業系の業者さんだったよ!工作の話で仲良くしちゃった…でもコスプレコンテストですよね、これ。
 だってもう、個人の資金とは考えにくいので、企業が予算使ってますよね。所属モデルの出るコスプレ大会に。
 ルールの隙を突くのは各自やってるけども、他のチームがイエローカード1枚出るかどうかならば、ここ3枚くらい出ます。正直、事務所の都合やルール違反をこうも隠さないってのは過去に無いケースで、演目の内容が高くても、それってコスプレサミットっていうイベントに対して、敬意や配慮を欠いている。
 誰がそれをやらせてしまったのか。

 で、もう一つ遡る。
 コスサミは国別対抗戦のチャンピオンシップでは権利上の問題で集英社作品が不可で、その予選なのにドラゴンボールで出てた時点で不自然でしたけど、それでも国内予選は全部ドラゴンボールで通した方が“自分達で作った”ってのが伝わった分、コスプレとしては評価高かったと思うんですよ。
 超会議予選での演技はナギ君のトランクスをカッコ良く引き立てる路線が強過ぎたけど、それがメイト予選を経てウサコさんの17号の比重がグッと上がっていって、刈谷予選で二人並び立つバランスになっていたイメージ。温度差はあったかもしんないけど。
 自分が記憶にあるシーカーは、この、地区予選で2連敗してもあきらめずに、刈谷まで二人だけで遠征して勝ち抜いて、そして最後に負けた僕らの前へ来てくれたウサコさんが「自分ら、WEB予選に出たら勝てるの分かってます。でも、ステージで評価されて勝ちたかったんですよ!」って言い切った、あの日の、シーカーなんですよ。この日はまるで別のチームみたいに見えました。どっちが本当かは知らないけど。
 技術的な高さとは別にドラゴンボールの時の方が絶対、見る人間の“心”に残った。
 周りの大人達の都合が見え過ぎて、本人達の努力まで吹き飛ばしてしまったんですよ。
 二人の力だけで戦った方が、彼らは絶対に強いです。
 ビジュアルと肉体とアクションを持ってて、あとちょっと、衣装や造型のスキルを身につけたら、他チームにとって本当の意味で最大の脅威になった筈です。
 …これ、エールのつもり。

(しかしルール違反が露骨だった事を「不正」と表現したのは言い過ぎと思ったので、当日のピリピリ空気と併せてこの表現に関しては謝る。ごめん)

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 モンハンの今日も元気に狩りに行き隊
 造型バリバリな得意のモンハンで、衣装点の高さを武器に先行逃げ切り作戦を展開した山葵さんのチームでしたが、逃げ切ってないよ!(笑)
 こちら、ニコニコ超会議予選で勝った時の内容から、殆ど変わってなかったんで、それがネックかと。
 何でかって言うと、地区予選と決勝、同じ事をやるとパフォーマンス点はきっと下がるんです。審査員から見ると他がブラッシュアップして上がっていくから、相対的には下げられてしまう。
 それと、この日はTVスタジオに作った特設ステージだから、空間が広いし照明も本格的で、ホント、小さく見えちゃったんですよね。動きの少ない着替えコントだったので。
 でも勝ち負けなんてどこ吹く風で飄々とした山葵さんのスタイルと、超会議予選の勝利からグッとテンション上げてきた紅乃さんの凸凹コントラスト、少し好きでした。
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 え、あー…あと何かありましたね?
 チーム大連立だっけ?仮面ライダーなの?アレで?
 自分の事って客観的には分からないよなー…まぁ、だからって触れないのも逃げたって言われそうだから書きます。
 特撮ジャンルにこだわったものの、公式のヒーローショウと被る内容を徹底的に避けようとして、袋小路だったかもね。
 2年前の戦隊ロボで出た2012国内決勝に敗れた後、言われてるんですよ。
「パフォーマンス点は高め、リスペクト点は最高、でも衣装点がダメ」…これが直ってないんです。
 ペーパークラフトで作ったディフォルメ着ぐるみってのは、褒められたとしても所詮「紙にしては」であって、コスプレ衣装として見たらブサイクなものでしかないんです。チープさを逆手に取れる所まで行ってない。思い知ったよ。
 いやー…相変わらず、手拍子と笑いが一番多かったのはウチですけど、でもそこから「ええー?」「おおっ!」みたいな感嘆や驚愕の声には繋がらなかったから、パフォーマンスとしても爆発力は無いよね。
 東映とバンダイの商法を皮肉った部分も、人によっては嫌悪感を抱く内容だったかもしれません。最後に出した箱プリキュア番宣ネタはTV放送時の繋ぎネタだけど、解釈によっては複数作品扱いでグレーですね。(事前提出書類に書いてあるけどね)

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 さて。3年やってダメだったんで、チーム大連立としてのコスサミ挑戦も潮時かな、と。
 もう行き詰まってた時期ですし。また2,3年後は出てるかも分からんけど、とりあえず来年度はこのチームで出る意思は無いです。
 二人一組ルール上、どうしてもシリアスなバトル演技(特に剣劇)が多くなるし、それが得点パターンだってのは承知の上で、「他と同じ方に行ってたまるか!」って独自路線を通してきて、最近はそれを認めてくれる人も中には居てくれてありがたいけど、裏方含め全ての作業を一人で行うのは会社員には限界。ボーナスの査定を守れたのが奇跡。

(正確には僕等のコメディ路線は源流があって、何度も言ってるように2007年代表時のキキワンさん・時雨直輝さんチームが審査員を血祭りに上げていった「デスノート」ッスよ)
(あと今回珍しく若干のバトル要素(?)が入ったけど、二人並んで客席上空からの見えない敵と対峙する構成は2013大阪予選でのikemaさん・そーしさんチームが演じた「ソードアートオンライン」がヒントになりました…と正直に書いておきます)

 以上、こんな視点から、僕は今年のバサラ優勝には(も)納得しているという事でした。と言っても1位以外は順位も分からないんだけどね。
 悔しいのは悔しいに決まってるけど、認めざるを得ない強力な相手を前に、すがすがしい敗北感、って言うのかしら?
 全チーム全員に対してだけど、これやっぱりコスプレによる“競技”なので、戦い終わった時点でどっかでは仲間だと思ってるし、お互い競技者にしか分からない感情はあると思うよ。
 大変な事いっぱいあったけど、でも、最後にはやっぱり、楽しかったよ!

× × × × × × × × 

■ 反省会!予選のお祭り感を取り戻せ

 非常に残念だったのは、予想してたけど、このコスプレサミット日本代表選考会の決勝がまた、3年くらい前までの“誰も見てない”“いつ何処で決まってるか分からない”ものに若干、戻ってしまった事。
 ザッと目測で国内決勝ステージ観客動員、約80人。100人は越えてない。その中の20人程度は関係者。大阪チームなんて往復+宿泊で遠征費かかってるだろうに、この観客数。
 そしてメディア戦略的にも、アーカイブニュースだけが取り上げてくれてる状況は、かなり寂しい。同日同所で開催のコスプレカラオケコンテスト「DAM☆とも杯」よりもメディアでの露出が少ないのは出場者として悲しい。
 数ヶ月間の練習や造型の末に完成した演技を、観客の少ないステージで披露して、得点も順位も非公表で、優勝以外の負けたチームはハイさようなら…また、悪い状態に戻りつつありますねー…。
 昨年の池袋西口公園がオープンでお祭り的な環境で、杉田智和ゲスト目当てとはいえ300人くらい観覧してたのに比べたら、かなりクローズド化しちゃいましたね。昨年は直前に大雨降って屋外ステージが大変だったのは分かるけど。
(それでも2009-11年の、8月のチャンピオンシップ当日or前日夜に、観客30人くらいの小スタジオでバタバタと日本代表を決めてた頃よりかはずっと前に進んでるけど)

 ハッキリ言って、関東圏で「世界コスプレサミット」の知名度なんて無いんです。一昨年までずっとテレビ愛知の管轄で、他局ではほぼ存在無視だったんだから。
 これまでだって国内予選に関しては、会場が入場フリーだったり、他イベントとコラボしたり、声優のトークや歌手のミニライブ目当てで集客してたのですから。
 そもそもスターライズタワーみたいな事前申込制2000円のスタジオイベントに来るのは、自分達の写真を撮りたいレイヤー層です。他人のステージにはあんまり興味ありません。
 時間的にも、18時までのイベントで決勝開始17時ってのは他の参加レイヤーは更衣室に戻る時間ですし、せっかく寄って来てくれた人達まで、たった50席しか用意されてなかった椅子席が埋まってるのを見て、何人か去って行きました。興味を持ってくれた人まで逃がしてしまったんです。

 時間かけて作った演目なら、なるべく大勢の観客の前で披露したいのが当然で、大いに盛り上がった上で、そこから今年のヒーローが飛び出す…って展開であってほしいのです。
 なぜ一回出たチームが翌年は殆ど出ないのか。
 情熱を傾けた人達ほど「もう2度と出ない」になってしまうのか。
 出場者が集まらず、運営からお願いして出てもらう状況に陥るのか。
 日々パフォーマンスの練習してる人達がコスサミよりもアニメイトパフォーマンスカーニバルやCureCosplayCollectionに流れてしまうのか。
 考えないとね。

 “お祭り”感って、重要なんだと思うのです。
 出場者にとって数ヶ月に及ぶ戦いは、苦しさを伴います。そこに苦しさ以上の(勝敗以外での)“楽しさ”を見出せなければ、悪循環は続きます。
 運営はもう少し、もう少しずつ、出場者の気持ちに寄り添っていただきたいと、強く願います。その為に必要な協力であらば、割と惜しまないつもり。

× × × × × × × × 

■ 同時開催:世界コスプレスタッフサミット!

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 こういったステージ企画を含むイベントって、ステージ部門とイベント部門の双方に労力を割かれるので、ただでさえ分裂したCOSSANが東京タワー周辺とスターライズタワーのスタジオまで広範囲を回すには、とてもスタッフの数が足りない。
 危機に駆けつけたのは関東圏の各イベントスタッフ、一説にはザッと判明してるだけで8団体。
 中にはCOSSANと提携団体もあれば、ライバル団体からも参加しているという、少年マンガ的展開!キン肉マンを助太刀に参じた正義超人軍団の様なもの?悪魔超人顔ばっかだけど!

 しかも、それだけ集まってもまだ足りてない。
 COSSANを辞めた人数よりも、この日足りてない人数の方が多かったのではないか?
 天候不順の中、東京タワーまでの広範囲を駆け抜けた義勇軍の皆さんは、自分達の方法論が余所では違う事に気づいたり、技術交流…と言うのも大袈裟かもしれませんが、横の繋がりも出来ていた様子。

 さて、昨年の池袋西口公園での国内決勝で、豊島区議をガードする自宅警備隊の一員としてサプライズ潜入し、終演後にマスクを脱いで身分を明かしたTける氏(TDCコスフェスやコミケ準備会の更衣室統括 で、いわばコスイベのエキスパート部隊を率いる。かつて第三者の起こしたトラブルからコスサミを離れざる得なかった牛島えっさい氏の片腕でもある)は、協力に参じたこの週末、なんとか無事に2日間を乗りきってから、こんな事をボヤいておりました。

 「イベントの体制のどこに穴があったとかいう話ではない。最初から巨大な穴の中で仕事していた」

 …。
 あ、それ、コスサミの予選出場者の気持ちと一緒だ。

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[本年2014日本代表選考会のレポ記事]
・ 
4/26ニコニコ超会議予選編 
・ 5/4大阪予選編 
・ 5/10アニメイト予選編 
・ 5/17刈谷予選編 

・ 同人誌・世界コスプレサミット非公式読本!のご案内
(2012年発行。公式サイトにも載ってない10年分のアレコレ書いてます。書店委託や通販アリ)
(名古屋では、伏見地下街の古書店ビブリオマニア様で委託、また鶴舞中央図書館では郷土資料コーナーで!閲覧できます)
 
・ 2012年_ポートメッセ名古屋での国内決勝レポ  
・ 2013年_池袋西口公園での国内決勝レポ 
 
[名古屋オタ情報局さんで期間限定コラム]
・ 【期間限定連載コラム】駄チワワのキグルミから観た風景 第1回 (06/15) 
・ 【期間限定連載コラム】駄チワワのキグルミから観た風景 第2回 (06/22)
(主に歴代の国内予選のアレコレを語ってます。見てね)