「描写が細か過ぎてコスプレイヤー以外の一般的モーニング読者層に今イチ伝わってなさそうで勿体ないから、レイヤー視点から勝手に解説」、GW前まで3週分!

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【45話】
 渚・葉山・綾・志保の4人は公園での花見に出掛ける。
 すっかり酔っぱらってしまった綾は一人になりたくないとダダをこね始め、部屋に送る。
 しかし綾のアパートの部屋で、クローゼットの隅に隠してあったウルルの衣装を発見した葉山は、酩酊する綾にこれを着せて、渚に見せてしまう。

■「こういうところで撮りたいわねぇ。和装で」
 葉山さん(少しだけ痩せました?)の希望した、「桜ロケ」と呼ばれるアレ。

http://www.cosp.jp/news_image.aspx?id=290&no=3364
 興味深いデータとして、コスプレイヤーズアーカイブの投稿数で、銀魂・薄桜鬼などの和装キャラは、春にかけて投稿数が増える。和装での雪ロケ・桜ロケは需要が高いのである。
 関係無いですが一連のシーン、葉山さんは酔うと、同性に対して、もたれかかったり脱がせたりする癖があるようです。

■COSPLAY MODEに載る事
 ファッション誌におけるストリートスナップ的な感覚で、イベント会場内で取材したレイヤーの写真を多く載せている。このページをパラパラっとめくれば、その時期のコスプレのトレンドが分かる。
 コス雑誌に乗せてもらう事は、若いレイヤーにとって一つの目標やステータスにもなっている。自分も2,3回載せてもらってて、やっぱり嬉しかったですハイ。
 なおコスプレ村のヒエラルキーにおいて、イベント取材ページよりも上位は、メイクページや公式衣装ページのモデルであり、中でも最高位はグラビアページや表紙への登場なのである。
(予選出ておいて言うのもなんだが、「コスプレサミット日本代表」は対外マスコミ的なアピール度は高いが、コスプレ村の中ではそんなに高位に認められている称号では無いのである)
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■「カメコさん」
 志保がこう呼んでる。
 本来は「カメラ小僧」という蔑称から始まっている言葉が愛称と化して、さらに「さん」付けになる不思議な現象。
 さらに上は「カメコ様募集」みたいな。

■「やっぱり衣装はたまには着てあげないとね!」
 以前はサマになっていなかった綾のウルル姿が、まさにイメージ通りになっていた事に衝撃を受けた渚が、怒る志保を制して、場の空気を乱さないために満面の笑みで放った一言…。
 このショックから新展開を迎える。
(葉山は、渚が綾に対して抱いていた、自分よりもウルルのイメージ通りである事へのコンプレックスを知らない)

■ラストシーン
 とうとう、発作的に自分のウルル衣装を解体し始めてしまった渚。
 布切りバサミでぶった切るのではなく、糸切りバサミで糸を切ってバラバラにする辺り、見切りをつけたようでもどこかで衣装を切り裂く事にはためらう、微妙な心理ですな。

 “糸を切る”という、ただそれだけの行為をこのようにドラマチックに描いたのは、本作以外では「蜘蛛の糸」でお釈迦様がカンダタを見放すシーンくらいしか無いでしょう…。

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【46話】
 ウルルの衣装を解体し、志保たちからの誘いも断り、コスプレの無い生活を始めた渚。
 しかし、気がつけば自然と足が向いていたのは新宿南口、ユザワヤの看板が目に入る…。
 「やっぱり…やめられないや…」

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■ユザワヤ
 第1話以来の登場。
 新宿は東口に老舗のオカダヤという生地店も有るのだが、駅近で東急ハンズも並んでいるという意味ではユザワヤは便利である。
 つまり、少年漫画にありがちな、“戦いから遠ざかった主人公の前に、死んでいったライバルの幻が現れ、再び戦う事を誓う”みたいな存在が、コスプレ漫画においてはユザワヤの看板だったのである!
 おそらく、日本の漫画史上で最も劇的に描かれたユザワヤだと思われる。
(余所の漫画であんまりユザワヤ出ないけどね…)

■みゃこ
 撮影旅行編や親バレ編でも登場している、無愛想だが渚にだけ懐いている、木登り上手な家猫。
 しかし単行本3巻のオマケで、渚の高身長を“木”のように認識していた事が判明した。
 「みや」ではなく「みゃ」と発音しよう。

■秋葉原駅
 電気街口改札を出て左、ゲーマーズやヤマダ電機がある方向ですね。
 昔は駅近の中小企業振興公社で盛んにイベント開催されていたものの、2012年以降は無い。ちょっと末広町の方まで歩くと秋葉原 通運会館がある。劇中シーンの天井の低さからして、後者だろう。

■コスプレROM即売会
 これまで登場のコスプレイベントや同人誌即売会とはまた別のタイプ。
 近年、自力で撮影・編集・プレスしてROM媒体での写真集が作れるようになった事から出現してきた即売会。代表的なものはコスホリックやROMけっと。
 アート的なもの、アニパロ的なものも当然あるが、こういったオンリー形態のROM即売会で最も多いのはズバリ、エロ系。
 これはコスプレROM…と称しつつ、実際はコスチューム部分が殆ど存在せず、ウィッグ以外はほぼ本人の肢体なので、文字通りハダカが売り。
 特定作品のファン活動と言うよりは、“性の商品化”と考えると分かりやすいかと。
(ただし同人誌と同様、元キャラがほぼ関係無くなってるものもあれば、原作ファンの妄想が暴走したエロパロもあるので、一概にレッテル貼りすべきではない。また、原作愛に根ざしたものでなくとも“フェチズムの追求”などもあるから、趣旨が異なると言っても無価値とも思わない)

 ROM系即売会の特徴として、年齢制限によるゾーニングが挙げられる。
 会場内の18禁エリアは外から見えないよう隔離、もしくはイベント入場そのものを18禁とし、身分証を確認して入る。会場内は半裸のレイヤー(なのか?)が歩き回ったり呼び込みしているので、まるで異国の風俗街みたいなイメージがある。
 ROMを購入すると、サービスとして会場内で個人撮影できる券が貰えたりするサークルも多いんですってば。

 警察によるワイセツ図画の取り締まり基準は当然、2次元より実写の方が厳しいので、販売物はスタッフが内容をチェックし、性器の修正が甘い場合は販売停止処分が下る。
 ワイセツ図画の販売ほう助罪は、サークルだけでなくイベント主催者や会場や印刷会社にまで及ぶので、自己責任の問題では済まないのである。
 …という事を考え(られ)ない人が一定の割合で存在するので、モロ出し・薄消し・食い込みを含むROMをコッソリ売ろうとすると、トラブルになる。

■露出系レイヤーの体型
 モブでROM売ってるコの尻のたるみというか、やや寸胴っぷりがね…細かいよね…。
 エロコスROM出してるレイヤーだって必ずしもプロのAV女優やモデル程の体型じゃないから!
 素人っぽい体型でも、それが良い!って人がROM買ってくから!!
(中にはプロのAV女優やグラビアモデルが、同人ルートで写真集出してるサークルも有りますが)

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【47話】
 引き続きコスROM即売会。
 「わたしはコスプレの何が好きなのか」
 今まで見なかった世界を知るために、売るためのコスプレ、18禁コスプレの世界にも触れてみる。

■「見てくれる人の数に差がある…」
 同人誌と同じです。
 エロ無しのアニパロは、原作を知るファンが主に買って行きます。
 エロ要素が多いと、原作を知らない人もオナニー目的で買って行きます。
 ハッキリ言って、「エロはエロという独立ジャンル」なのです。

■「誰得だ…」
 自分がエロ系の写真を撮る事をあんまり想像できない渚。
 でもさぁ、高身長の男装レイヤーが何かの拍子に露出系のキャラやってるの見ると、ドキッてするよね!

■レイヤーの事務所
 これ本当にあるんですよ。SNSでも、たまにオーディションとか広告バナー出てたりするけど。
 最近は芸能関係の事務所が、レイヤーを積極的に集めたり、所属タレントにコスプレ趣味をアピールさせるんですよ。
 深夜番組のサブカル番組でゲスト出演とか、何かしらのイベントでコンパニオンやMCしてるコスプレイヤーの類って、もちろん趣味でコスプレ始めたのだけど、事務所にも所属して何らかの芸能活動してる人が結構多いんです。
(もちろん個人でやってる人もいますが)

 サブカルだクールジャパンだで、「レイヤーをタレントとして使いたい」って番組やイベントは最近すごく増えたけど、でもホントに素性の分からない素人って使いにくいじゃん?なのでこういった紹介や斡旋ビジネス的な需要があるそうなのですよ。
(テレ東はホントに素人ばっか使うけどな)

 んで私、日頃の言動がアレだけど、別に芸能レイヤー自体を嫌ってる訳では無いのです。
 これまでお会いした例だと、ちゃんとした事務所に所属してレッスンや教育を受けてる人は、少なくともご本人はちゃんとした人達でした。
 ホントに危険なのは、「愛でやってます」フリをして商売っ気が丸出しの人や、「有名になりたい。あわよくばタレントになりたい」をこじらせてしまった、ド素人です!
(このタイプの人が行き詰まった時こそ、“脱ぐ”選択肢が前面に出てきちゃうんですよ?)

■テープで衣装を直す
 え?衣装をガムテや両面で応急処置するのは基本ッスよ?by着ぐるみレイヤー
 渚、通りすがりに購入派レイヤーの衣装破れを直してあげた事で、自分に出来る事を一つ見つけました。

■購入派vs自作派
 これ、実はコスプレ界隈で世代を超えて延々と続く戦争なんですよ…。
 自作派はどうしても「衣装も作れないヤツには愛が無い」って見下してしまいがちだし、購入派は「衣装作りが目的じゃなくってキャラになりたい」って気持ちだし。
 最近は公式ライセンスの衣装も多く出回ってるので、キャラクターグッズのコレクションとして好きなキャラの制服を揃えたり、数名で合わせする際は衣装の質感を揃えるために既製品を買ったりする人が増えて、以前よりは混在が進んでいる。
 渚は完全に自作派で、しかも他人の衣装の悪い所が目についてしまう、面倒くさいタイプ…だったハズが。丸くなってる…?

■ヂャゴォ ヂャゴ
 漫画において極めて珍しい、布切りバサミで繊維を裁断する擬音。これ好き。

■「あたしはこの時間が好きだったんだなー…」
 帰宅後、前回で発作的に解体してしまったウルル衣装を修復しながら、限られた時間で、こうして衣装を作りながら、誰と何処へ行って、どんな写真を撮って、どんな画になるか想像してる時間が一番好き…。
 あえて違う世界を見てみた事で、自分の本当に「楽しい」事に気づいた渚。
 直ったウルルの衣装を、元のトルソーではなく、綺麗に畳んで押入れに仕舞う事で、気持ちに区切りをつけるのだった。

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 いやー。
 「行き詰まったからって、なんでそっち行くの!?」という感想も多かった前後編ですが、“迷走”の描き方としては最高だ!
 エロコスROMも、芸能(指向)レイヤーも、掘り下げるとそれだけで別の漫画になってしまう位には奥深いとゆーか闇が深い世界ですが、サラッと概要だけで流して、渚のモチベーション復活に繋がりましたね。
(どっち方面にも、えげつないマネしちゃう人だって、少数ながら存在してだね…)

 ついに覚醒した渚。
 そろそろ連載一周年ですが、ストーリー的にはクライマックスを迎えつつあるか…?

 4巻は5/22発売。
 公子がコスプレ卒業を打ち明ける33話まで収録。
 週刊モーニングは来週はお休みです。

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 電子書籍サイトのRenta!でも読めるけど他作と混じって広告が闇。


コスモ昨年号にはウルル型紙付属。