【その1】 データから見るコスプレイヤー減少傾向
【その2】 露出への新ルール運用は意外と歓迎だった気が
【その3】 アイテム類にも部分的に制限が入りました
【その4】 終了時間帯に防災公園から更衣室へ戻る導線が大変な事に
【その5】 メディアはコスプレをどう伝えたか…コミケ特集がプロコスプレイヤーの売り出しに利用された例
ここまで続いていた規制緩和路線から、会場側の要請での制限が追加されたり、コスプレに対する内側と外側との認知の溝などを、個人で見る事ができた範囲で勝手に考えてみます。
9000文字。
【その2】 露出への新ルール運用は意外と歓迎だった気が
【その3】 アイテム類にも部分的に制限が入りました
【その4】 終了時間帯に防災公園から更衣室へ戻る導線が大変な事に
【その5】 メディアはコスプレをどう伝えたか…コミケ特集がプロコスプレイヤーの売り出しに利用された例
【まとめ】 公共と世間と…
2017年12月の冬コミc93から早半年。そろそろ夏コミc94が近づいて参りました。
c93アフターレポートが6月中旬に本文部分が公開されていたので、読み直した上でコスプレに関して起きていた新ルールやらメディアの虚実を振り返るという、私がやっておきたいだけで世の中的には割とどうでもいい試みです。ここまで続いていた規制緩和路線から、会場側の要請での制限が追加されたり、コスプレに対する内側と外側との認知の溝などを、個人で見る事ができた範囲で勝手に考えてみます。
9000文字。
・コミックマーケット93アフターレポート
http://www.comiket.co.jp/info-a/C93/C93AfterReport.html
http://www.comiket.co.jp/info-a/C93/C93AfterReport.html
【その1】 データから見るコスプレイヤー減少傾向

2017年冬(c93)、更衣室登録者数は…
三日間で2万5662人
男性7670人/女性1万7992人
参考までに5年前、2012年冬(c83)は…
三日間合計2万2066人
男性6261人/女性1万5805人
また近年で最も多かった2015年冬(c89)は…
三日間合計2万9380人
男性8025人/女性2万1355人
2011年以来の規制緩和路線で増加傾向にあったコミケのコスプレイヤー登録数は、2015年冬を頂点として2016年以降は減少に転じ、2017年冬までの2年間で12%くらい減っている計算になります。
おそ松さんブームでお手軽コスプレが流行った2015年冬は総数がインフレしてた事もあるでしょうが、それにしても後の減少傾向は否定できません。
また減り幅は男性よりも女性において大きいです。
この減少傾向、実はコミケだけじゃありません!
一部のテーマパーク系や街おこし系のような大規模コスプレイベントに参加者が集中する一方、他の小規模コスプレイベントやコスプレ撮影スタジオは淘汰が始まっています。
イベンターの方々などに聞くと、日本国内のコスプレイヤー総数は大きく変わらなくても、一人が年間でコスプレイベントに参加する回数が減っているのではないか?…などと言われています。
〝すそ野は広がった。けれど薄くなった。〟ではないでしょうか。
コミケでもそれ以外でもレイヤー減少には複合的な理由があるでしょう。いわゆる公式での2.5次元ビジネス(ミュージカルや声優ライブなど)が一気に増加してそっちを追いかけるためにコスプレする頻度が減った…とも見る事ができます。
これを前提として覚えておいていただきたいと思います。
【その2】 露出への新ルール運用は意外と歓迎だった気が
〇水着・レオタード等は公道の移動時(東西間の横断歩道や防災公園との間)は上着・マント等を着用
〇下着に思われる可能性がある衣装(例:ビキニスタイルの水着等)は庭園・エントランスでは不可
上記がc93から(会場側の東京ビッグサイトからの要請で)追加されたルールですが、大きな混乱は無かった模様。
エントランスや庭園や横断歩道はコミケ参加者以外も使用する公共の場所ですから。
あくまで場所を変えれば対応できる話なので、当日知ったとしても余程ゴネない限りはどうにかできますし。
9月に幕張メッセでの東京ゲームショウ2017でもコスプレエリアに監視台が置かれるなどしており、他のイベント会場でも露出に関しては規制の方向へ動きつつあります。
しかしコミケでの露出制限に関しては、ネット上では実はコスプレイヤーからも概ね歓迎の声が大きかったと思います。
これは、露出の多い衣装でカメラマンを集める事で写真集の宣伝したり自身をモデルとして売り出そうとするいわゆる〝露出系レイヤー〟とその取り巻きが、絶対数が少ない割に長年に渡って問題を起こしてコスプレへのイメージを損なってきた背景があって、露出コスに対する嫌悪の感情がコスプレイヤー層の中にもあったからです。
実際には純粋にセクシーなキャラが好きだからやってる人もいれば、愛情表現の暴走としてのエロパロもありますし、本気でエロを追及したいという人もいますから十把一絡げにするべきではありませんが。
ハイ、ちょっとそこで気になる件を。
好き嫌いと、良い悪いって、別に考えるべきなんです。
正直、自分の嫌いな表現が規制されたら嬉しいですが。
でも、その表現は誰かにとっては嫌いじゃない表現だし、その次にはさらに自分の大好きな表現が規制される可能性だってある訳です。
今回、準備会ではなく東京ビッグサイトからの要請で露出への制限がかかった訳ですが、これを前例として、あくまで例えばですが…(コミケ以外の屋外大型イベントでは規制が入る事の多い)暴力やグロテスクなコスプレ、軍隊を連想させるコスプレ、男性の女装…といった表現に、もしかしたら(コミケ準備会以外の都合で)規制が入る未来だって想像できなくはありません。その意識は持ってた方が良いんじゃないかと。
表現は多様であるべきです。
あくまで今回は全面禁止ではなく、庭園・エントランス・公道…での露出制限なので、ここに拡大とオープン化を続けたコミケ(におけるコスプレ)が、いわば〝公共〟との衝突が避けられなくなっている事が伺えるのですが。
【その3】 アイテム類にも部分的に制限が入りました
〇自転車、キックスケーター、ローラースケート等の使用。
〇公共の場所を通行する一般の方が、卑わいに感じるような言葉を掲示したり大きな音で発することは庭園・エントランスでは禁止。
前者は「物ではなく行動を制限する」方針なので、アイテムとして持っているだけならば禁止ではないが乗り回すな!という意味で納得。キックボードはともかく自転車って個人的には見た事がありませんけど。
後者は…夏コミにいたネタコス絡みの話であって、やっちゃったのは露出系レイヤーではありませんから、と補足。
さすがにネタで「5%の確率で性器を露出する~」ってボードに書いてエントランス(正面玄関ね)で掲示してたのはマズかったんじゃないかな…。
それを準備会のスタッフではなく東京ビッグサイトの人に注意された件をまたボードに書いてネタにしてたのもマズかったんじゃないかな…。
東京ビッグサイト側にしてみたら身内ノリなんて通じないですし、だいたいビッグサイトは会場を貸してるだけでオタクの身内じゃないし。
準備会としては表現の自由は可能な限り尊重するけど、しかし場の存続を最優先する以上、会場や警察からの要請は無視できない。
http://www.comiket.co.jp/info-a/C93/C93AfterReport.html
>こうしたコスプレを禁止するわけではありませんが、先鋭的な表現は、時に社会との軋轢を生むことがあります。
繰り返しとなりますが、コミケットとしては表現を制約するようなルールは最小限に留めたいと考えていますが、場に応じた制限事項を作らざるを得ないこともあります。
なぜこうしたルールが設けられているのか? について、コスプレイヤーの皆さんもご理解いただき、工夫をしてコスプレを楽しんでもらえればと思います。
【その4】 終了時間帯に防災公園から更衣室へ戻る導線が大変な事に

防災公園は地面の舗装の甘さと、コスプレイヤーはいるけどカメラマンが少ない牧歌的な光景が、どこか晴海時代の〝古のコミケ〟の空気を醸し出しております。
アフターレポート本文で「交差点付近が一時的に混雑の厳しい時間帯もあったため、この夏に向けて対策を検討しているところです。」と書かれてますね。
冬コミでは初日は仕事納めの人が多く、大晦日は公園を使えなくなるので、間の二日目12/30に特にレイヤーが防災公園に集中しちゃったんですね。
んで、終了前には会議棟or東8ホールの更衣室まで帰らなくちゃいけないのですが、他の一般参加者の帰宅時間帯と重なるのでビッグサイトへ入る列と出る列がぶつかってしまい、横断歩道が半分以下の幅しか使えなくなってしまったと。
現場での目算ですが16時頃に会議棟側の交差点が100m、東8ホール側の交差点が数十mの長さになってしまいました。
解決策としてはもう防災公園に帰り時間帯のみの簡易更衣室でも作っちゃえば解決しやすいですが、無理でしょうねー。
だって防災公園ってコミケ会場ではなく、コミケと提携してる献血イベントの会場ですから。厳密には管轄が異なってるそうです。
2018夏コミではどう対策が取られるのでしょうか。
いや、レイヤー側もまず早め早めの行動を心がけるべきです。
~ ここまで半分。あと5000字 ~
【その5】 メディアはコスプレをどう伝えたか…コミケ特集が営業コスプレイヤーの売り出しに利用された例
ここはアフターレポートは関係ありませんが、コミケにまつわる話ではあります。
近年はネットメディアだと旧来のまんたんweb・ねとらぼ・GIGAZINなどのサブカル系ニュースサイトの他に、新興のオリコンニュース・ウォーカープラスといった芸能系ニュースサイトが取材に来て「美人(セクシー)コスプレイヤー大集合!」みたいな記事を配信してます。
これは大きなイベントでコスプレを取材して記事にすれば、モデル料を払わずにそこそこのPVを稼げる記事が作れてしまうという錬金術に、各社が気付いてしまったからです。少し前までまとめサイトがやっていた事を、商業媒体がやってる訳です。
彼らは正確にはコスプレを取材したいのではなく、カワイイ・エロイ女の子の写真を大量に撮っていく事が目当てですから。潔いほどに男性レイヤーや、女性レイヤーであっても甲冑や男装なんぞはガン無視です。
TVですと、毎回コミケ時期は朝夕のニュース番組でコミックマーケット開催のニュースが流れ、映像的なインパクトを重視しちゃうので同人誌よりもコスプレが紹介されやすいのが通例です。
もう盆と年末の風物詩といった感じで、そこに昔のような悪意はありません。
代わって、オタクを叩かないけど、なまじ持ち上げようとしてナナメ方向に飛ぶ…というのが近年見かける悪癖です。
以降、4カ月前に書いた記事とも被りますが、少しクールダウンしてマイルドに書きます。
年明け2018/1/10放送の日本テレビ「ナカイの窓」では〝オタクな人たちpart2〟として何人かのオタクが登場、その中でコスプレイヤー席にいた五木あきら嬢、MCの中居くんに「エロじゃん」とツッコまれてましたが、まーこれはコミケにはあまり関係ない番組の一コマでした。
問題アリと思うのは2/23放送TBS「有吉ジャポン」およびその映像を一部流用した3/4「サンデー・ジャポン」です。
「有吉ジャポン」の良い部分として、これまでにもコミケ内の評論・情報系ジャンルのサークルにスポットを当て、1サークル1ジャンルの本を何度か紹介してくれてます。またコスプレジャンルのROMサークルではエロイ恰好でちょっと変な人たちを主に紹介しますが、ここのエロ系のROMの部分ではナレーションに「コスプレ」という単語を避けて、漫然と「写真集」と表現している事には一定の配慮をしてくれてるのだろうと感じます。
しかし同番組の後半、コスプレエリアで囲まれる(プロコスプレイヤーとして売出し中の)えなこ嬢の特集部分において「日本一のコスプレイヤー」「えなこに憧れるコスプレイヤー急増中」は、ハッキリ言って誇大広告であり、ウソです。
偏るのは自由。でも、ウソはダメ。
えなこ嬢の経歴に、何かしら権威あるコスプレコンテストへの入賞歴などはありません。コスプレ雑誌など(内側のメディア)が積極的に彼女を取り上げてきた例もありません。ってゆーかコスプレイヤー側から見ると彼女はあんまり良い方向では話題になった事がありません。
あくまで集英社ヤングジャンプでのグラビア掲載時に「日本一かわいすぎるコスプレイヤー」というキャッチフレーズで掲載されたのが商業媒体だと初出で、これがオリコンニュースなどのネットメディアで「日本一かわいい」に変わっていったのが経緯です。

「有吉ジャポン」のコスプレエリアでの映像をよく見ると、えなこ嬢を囲んだ人混みって殆どが私服の男性カメラマンです。その中に数名だけいたレイヤーの女子にコメント取って「えなこに憧れるコスプレイヤー急増中」って、そりゃー0人から数人になったら増えてはいるけれど、冒頭に書いた通り彼女を筆頭に〝プロコスプレイヤー〟ブームが仕掛けられたこの2年間、コミケの内外でコスプレイヤー参加数は減少している中で(彼女個人のせいではなく複合的な理由だが)、そこまで言ったら誇大広告が過ぎるでしょう。
コメントしたレイヤーの子は悪くない!個人が思った事を言っただけ。自分の好きなものを好きと言っただけ。
えなこ嬢も(あんまり)悪くない!発端は彼女のウソではなく、周りがついたウソ。新人グラビアアイドルが売り出し方を自分でコントロールするのは無理。
[ポイント]
・内側の価値観 ←原作のキャラに似ている・衣装や造形がスゴイ…みたいな、レイヤーや原作ファンの間でのみ通じる価値観。
・外側の価値観 ←顔がカワイイ・格好がエロい…みたいな、原作を知らない層でも伝わる価値観。
えなこ嬢、〝外側〟の需要に特化してずっと活動してきた人なので、〝内側〟の価値観で活動するコスプレヤー側にとっては無名、もしくは悪名なんですね。
コスプレという記号を使ってるけど、キャラを再現する方向ではやってない。原作を読み込んでアレンジするタイプでもない。かといって自分で世界観を練ったオリジナルという訳でもない。
あくまで自身の容姿のアピール手段としてコスプレをしてきた人で、昔でいうネットアイドルですね。短期間ですがソニーミュージックからアイドル歌手グループとして活動していた時期もありますから、早くから芸能志向はあったようですね(芸能スキルの有無は別として…)。
それは悪くないです。担保されるべき自由と多様性です。コスプレは免許制でもないので目的や形の決まりは無いですから。私だって目立ちたがり屋の着ぐるみレイヤーです。
ただ、「日本一のコスプレイヤー」だの「憧れるコスプレイヤー急増中」は番組上のウソ。
他の人達が下に見られてしまう。
根本的に特にコミケでは表現物を、売れる・売れないで価値判断してません。理念として「参加者全員はすべて対等です」と掲げています。あくまでコミケの1シーンとしてのコスプレイヤーを取材するなら、番組側もそこは気をつけてほしかった。せっかく番組の良かった部分まで霞んでしまう。
「有吉ジャポン」コミケ特集の内、えなこ嬢に関する部分はほぼそのまま同TBSで3/4「サンデー・ジャポン」にも使用されました。前者は深夜バラエティですが、後者は一応は日曜朝の報道番組の扱いです。正確にはTBS内で報道番組をパロディにしてるバラエティ番組ですが。だから面白いのは知ってる。
(この出演時、暴走中年である筈の爆笑問題・太田光がどうしてか彼女に対しては全くイジらなかったので、この出演が何らかの大人の事情によるものであるのは察せます。後日TBSオールスター感謝祭にも出演)
おそらく一般的なコスプレイヤーの感覚にしてみたら、美人だしセクシーだけど特にコスプレ的なスキルが高い訳ではない人が「日本一のコスプレイヤー」というキャッチフレーズでTV出演し、「彼女に憧れるコスプレイヤー急増中」と持ち上げられる。
でも本人は特にコスプレに関する深い話なんてできないので、「コスプレの素晴らしさを伝えたい」などと言いつつ結局お金の話をメインに繰り返している光景が全国に流れていくって、まさに地獄じゃないですかねェ…。
コスプレの価値って、顔だったのか。身体だったのか。金だったのか。
バカバカしくもなりますわ。そりゃ。
冒頭に挙げたコミケその他イベントでのコスプレイヤー参加者数の減少傾向、その複合的な理由の、あくまで一端はここに(も)ある気がするのですが。
それが歴代で上手くいかない構造的な問題は余所でも書いてきましたが、コスプレイヤーが芸能活動する事自体は何ら否定するもんじゃありません。
えなこ嬢がフォロワーが多い・ROMの売上が高い・有料撮影会でお客を集めている・企業の公式モデルを務めてる…というのは事実ですし結構な事ですが、それが〝コスプレ〟というものの本質的な価値か?といえば違うでしょう。元来は体を使ったファンアートやオリジナル表現としての価値だった筈。
カワイイ・エロイってのがコスプレを知らない層にも伝わりやすい価値で需要があるのは当然ですし、需要があるから多く供給されてる訳ですし、あまりにも多様で広大なコミケやコスプレの中で一部に着目して伝える行為もメディアの自由です。
が、そこを「日本一のコスプレイヤー」として持ち上げるのは、ウソでしょ。
他の人達が彼女より劣っている訳ではない。
偏るのは自由だけど、ウソはダメ。
これはえなこ嬢ではなく、持ち上げる(仕掛ける)メディア側の問題です。
(もっとも、じゃあ正直に「日本一フォロワーが多い」とか「日本一稼いでるコスプレイヤー」なんて具体的なキャッチフレーズで売り出そうとしたら、上に叶姉妹というグレイトな比較対象が存在しちゃうけどどうなの?と困った事になる訳ですが)
[寄り道1:コスプレ界隈にはウソへの自浄作用が乏しいのか?]
コスプレって色んなメディアから注目されてる割に、ちゃんと機能してる協会や業界団体は存在しないので、変な肩書が使われてもあまり咎められずにまかり通っちゃうんですね。
もし何かのアスリートとか伝統芸能の人が根拠の薄い「日本一の~」って名乗ったり放送されたりしたら、関連の協会や業界団体が即座に抗議するでしょうが、コスプレにはそれがありません。
コミケ準備会だって「コミケの歴史」については公式情報として管理できるけど、「コスプレの歴史」って単位では管轄してないですから。
[寄り道2:認知の差はどこから起こる?]
あと特にTV局みたいなマスコミって、コスプレをファッション文化の中で捉えてる節があって、主役とかオピニオンリーダーを探しちゃうんですね。
例えとしては古いかもだけど、渋谷系ファッション=益若つばさ!原宿系ファッション=きゃりーぱみゅぱみゅ!…みたいに、コスプレ界の中にも誰もが憧れる象徴的存在がいるはず!みたいな。
いないんですよ。誰も。
だってコスプレイヤーって他のレイヤーの誰々さんに憧れて始めるんじゃなくって、架空のキャラクターに憧れて始めるんですから。個々ジャンルに小さなスターはいても、全体で誰もが知ってて憧れる人なんて、いないのです。
そこを認知できないので溝ができちゃうんだよなぁ…。
オタクを叩かないけど、なまじ持ち上げようとしてナナメ方向に飛ぶ…というのはこういう事です。
ここら辺はむしろ(体質が古いと言われてる)新聞各社とかNHKの方が、場合によってはちゃんとコスプレという趣味の世界に向き合ってくれてる気がするので、民放も見習ってほしい所。
確かに、えなこ嬢←に憧れる御伽ねこむ嬢(産休)←に憧れる肉球あやと嬢(引退)…みたいな、ファンアートではなく自分の芸能活動の手段としてコスプレする層ってのは今はごく少数ながら系譜を作ってるんですけど、絶対数としてやっぱり少ないんですよ。
大半は同人誌と一緒で、ファンアートとしての活動なんで。同人誌のサークルに「日本一」って無いでしょ?
でも、こういう誇大広告での売り出し方されちゃうのは芸能界じゃ仕方ないのかなーと最近は思う節もあって、擁護じゃないですけど。
短期的には仕事あるけど、長期的な視点で見てるとコスプレイヤーそのもののプロ=職業化ってやっぱり難しくて、やってる事は実質的には既存のコンパニオンやグラビアアイドル業を代替えした存在です。
グラビアアイドルは容姿を売る以上、その賞味期限は短く、短期間で売り出すためにはどうしても、目を引く誇大広告を並べる必要がある。
そのために「有吉ジャポン」ではコミケ特集の枠の一部が、彼女を売り出すための広告枠として使われてしまった。
でもそんな都合でコスプレの認知(コミケもだ)が歪められていく事に黙って従う理由なんぞこちら側には無いので、ウソはウソと言っておきます。
あとはもう、消費者(情報の受け手)の側が賢くなるのが必要でしょ。
芸能系のネットメディア…オリコンニュース・ウォーカープラスその他がコスプレ記事に乗り出した時期とも併せて、この2年くらい続いてる一連の〝プロコスプレイヤー〟ブームってのは同人・コスプレ業界ではなく、芸能界主導で仕掛けられてたんだろうなーという事が伺えますが。
実質的には〝営業コスプレイヤー〟なんですけどね。
ぶっちゃけこのブームを煽ってる一翼はDMM.comグループだろうなーと私は推測してるんですけど、あの会社はエロ以外にも手広く商売するのは結構だが、一時期はちま起稿の運営権を買ってたりして、全体的に企業モラルが低い。
[寄り道3:アレとは違う…]
などと書いてると数年前にコミケ準備会との間で数々の問題を起こしてきた例の…うしじまいい肉嬢を連想される方が多いと思うので、補足。
えなこ嬢は商業媒体以外ではあそこまでの過激な露出はしておらず、あそこまでの炎上商法もしておりません。
商業媒体での衣裳は業者製ですが、イベント参加時の制服系の衣装などは自作できるスキルは持っておられます。
別に私が批判してるのは彼女個人ではないので。
ただひたすら…彼女の売り出し方とその周辺にはメディアの持ち上げ方やウィキペディアの出演歴記述なども含めて、ウソが多いという話。
× × × × × ×
【まとめ】 公共と世間と…
最後コミケから少し離れちゃいましたが、コミケで起きた2011年以降のコスプレ規制緩和路線と、公共との軋轢ってのは興味深いテーマです。
東京五輪を前に、国際的な目線まで含め、果てしなく拡大していく〝公共〟の概念。
オープン化する事で場を確保してきたコミケ(とコスプレ)は、会場や警察から突きつけられる〝公共〟を無視できない。
そしてメディアの扱いに関しては、公共を〝世間〟に言い換えると分かりやすいかな。
オープン化された先で繋がってしまう世間の感覚でコスプレの価値は、キャラに似てるとか衣装スゴイではなく、常にカワイイ・エロイです。仕方ありません。でも、だからといってそのままで良いとも思いません。
これは昔からある問題で、「コスプレイヤーを職業に!」というのは数年おきに盛り上がっては、結局エロ方面に人材供給して、鎮火して、しばらくすると別の誰かがまた持ち上げられて、延々と繰り返していくのですが…。
最近は特に盛大にやってますね。
パンパンに膨らんだ風船、広げまくった大風呂敷。後片付けは大変そうです。
外側の人間を「わかっちゃいねぇ!」と切り捨てるのは簡単お気楽だけど、でも単に拒絶し続けるよりかは間に落とし所を見つけて互いに利用しあった方が利口かもしれない。
さて、勝手な事ばかり書いてるついでに、こんな時代だからこそ、若人達には好きな作品のコスプレをしてほしいと思います。
金にはならない。芸能活動にも繋がらない。でも自分たちは楽しい。それでいい。
ゆっくり歩く人間が、一番遠くまで行けるんです。
逆に、好きでやってる事を、外側の人達の干渉によって冷めてしまうのは勿体ないよ、と。
・ 表現は多様であるべき。
・ 好き嫌いと、良い悪いは別。
・ 偏るのは自由だけど、ウソはダメ。

2017年冬(c93)、更衣室登録者数は…
三日間で2万5662人
男性7670人/女性1万7992人
参考までに5年前、2012年冬(c83)は…
三日間合計2万2066人
男性6261人/女性1万5805人
また近年で最も多かった2015年冬(c89)は…
三日間合計2万9380人
男性8025人/女性2万1355人
2011年以来の規制緩和路線で増加傾向にあったコミケのコスプレイヤー登録数は、2015年冬を頂点として2016年以降は減少に転じ、2017年冬までの2年間で12%くらい減っている計算になります。
おそ松さんブームでお手軽コスプレが流行った2015年冬は総数がインフレしてた事もあるでしょうが、それにしても後の減少傾向は否定できません。
また減り幅は男性よりも女性において大きいです。
この減少傾向、実はコミケだけじゃありません!
一部のテーマパーク系や街おこし系のような大規模コスプレイベントに参加者が集中する一方、他の小規模コスプレイベントやコスプレ撮影スタジオは淘汰が始まっています。
イベンターの方々などに聞くと、日本国内のコスプレイヤー総数は大きく変わらなくても、一人が年間でコスプレイベントに参加する回数が減っているのではないか?…などと言われています。
〝すそ野は広がった。けれど薄くなった。〟ではないでしょうか。
コミケでもそれ以外でもレイヤー減少には複合的な理由があるでしょう。いわゆる公式での2.5次元ビジネス(ミュージカルや声優ライブなど)が一気に増加してそっちを追いかけるためにコスプレする頻度が減った…とも見る事ができます。
また、この減少に転じた2年間は、大小様々なメディアが〝プロコスプレイヤー〟ブームを煽ってきた時期とも重なっているというのは、興味深い傾向です。
相関関係or因果関係なのかは議論の余地がありますが、2016年から「マツコ会議」「ニュースな2人」「ナカイの窓」など深夜番組を中心にコスプレというよりも容姿の優れた人の商業活動を、コスプレの〝プロ〟として取り上げるなどした時期以降に、確かにコミケ他でもコスプレイベントの参加人数が減っているのです。
(実際には営業コスプレイヤーですが…)これを前提として覚えておいていただきたいと思います。
【その2】 露出への新ルール運用は意外と歓迎だった気が
〇水着・レオタード等は公道の移動時(東西間の横断歩道や防災公園との間)は上着・マント等を着用
〇下着に思われる可能性がある衣装(例:ビキニスタイルの水着等)は庭園・エントランスでは不可
上記がc93から(会場側の東京ビッグサイトからの要請で)追加されたルールですが、大きな混乱は無かった模様。
エントランスや庭園や横断歩道はコミケ参加者以外も使用する公共の場所ですから。
あくまで場所を変えれば対応できる話なので、当日知ったとしても余程ゴネない限りはどうにかできますし。
9月に幕張メッセでの東京ゲームショウ2017でもコスプレエリアに監視台が置かれるなどしており、他のイベント会場でも露出に関しては規制の方向へ動きつつあります。
しかしコミケでの露出制限に関しては、ネット上では実はコスプレイヤーからも概ね歓迎の声が大きかったと思います。
これは、露出の多い衣装でカメラマンを集める事で写真集の宣伝したり自身をモデルとして売り出そうとするいわゆる〝露出系レイヤー〟とその取り巻きが、絶対数が少ない割に長年に渡って問題を起こしてコスプレへのイメージを損なってきた背景があって、露出コスに対する嫌悪の感情がコスプレイヤー層の中にもあったからです。
実際には純粋にセクシーなキャラが好きだからやってる人もいれば、愛情表現の暴走としてのエロパロもありますし、本気でエロを追及したいという人もいますから十把一絡げにするべきではありませんが。
ハイ、ちょっとそこで気になる件を。
好き嫌いと、良い悪いって、別に考えるべきなんです。
正直、自分の嫌いな表現が規制されたら嬉しいですが。
でも、その表現は誰かにとっては嫌いじゃない表現だし、その次にはさらに自分の大好きな表現が規制される可能性だってある訳です。
今回、準備会ではなく東京ビッグサイトからの要請で露出への制限がかかった訳ですが、これを前例として、あくまで例えばですが…(コミケ以外の屋外大型イベントでは規制が入る事の多い)暴力やグロテスクなコスプレ、軍隊を連想させるコスプレ、男性の女装…といった表現に、もしかしたら(コミケ準備会以外の都合で)規制が入る未来だって想像できなくはありません。その意識は持ってた方が良いんじゃないかと。
表現は多様であるべきです。
あくまで今回は全面禁止ではなく、庭園・エントランス・公道…での露出制限なので、ここに拡大とオープン化を続けたコミケ(におけるコスプレ)が、いわば〝公共〟との衝突が避けられなくなっている事が伺えるのですが。
【その3】 アイテム類にも部分的に制限が入りました
〇自転車、キックスケーター、ローラースケート等の使用。
〇公共の場所を通行する一般の方が、卑わいに感じるような言葉を掲示したり大きな音で発することは庭園・エントランスでは禁止。
前者は「物ではなく行動を制限する」方針なので、アイテムとして持っているだけならば禁止ではないが乗り回すな!という意味で納得。キックボードはともかく自転車って個人的には見た事がありませんけど。
後者は…夏コミにいたネタコス絡みの話であって、やっちゃったのは露出系レイヤーではありませんから、と補足。
さすがにネタで「5%の確率で性器を露出する~」ってボードに書いてエントランス(正面玄関ね)で掲示してたのはマズかったんじゃないかな…。
それを準備会のスタッフではなく東京ビッグサイトの人に注意された件をまたボードに書いてネタにしてたのもマズかったんじゃないかな…。
東京ビッグサイト側にしてみたら身内ノリなんて通じないですし、だいたいビッグサイトは会場を貸してるだけでオタクの身内じゃないし。
準備会としては表現の自由は可能な限り尊重するけど、しかし場の存続を最優先する以上、会場や警察からの要請は無視できない。
http://www.comiket.co.jp/info-a/C93/C93AfterReport.html
>こうしたコスプレを禁止するわけではありませんが、先鋭的な表現は、時に社会との軋轢を生むことがあります。
繰り返しとなりますが、コミケットとしては表現を制約するようなルールは最小限に留めたいと考えていますが、場に応じた制限事項を作らざるを得ないこともあります。
なぜこうしたルールが設けられているのか? について、コスプレイヤーの皆さんもご理解いただき、工夫をしてコスプレを楽しんでもらえればと思います。
【その4】 終了時間帯に防災公園から更衣室へ戻る導線が大変な事に

防災公園は地面の舗装の甘さと、コスプレイヤーはいるけどカメラマンが少ない牧歌的な光景が、どこか晴海時代の〝古のコミケ〟の空気を醸し出しております。
アフターレポート本文で「交差点付近が一時的に混雑の厳しい時間帯もあったため、この夏に向けて対策を検討しているところです。」と書かれてますね。
冬コミでは初日は仕事納めの人が多く、大晦日は公園を使えなくなるので、間の二日目12/30に特にレイヤーが防災公園に集中しちゃったんですね。
んで、終了前には会議棟or東8ホールの更衣室まで帰らなくちゃいけないのですが、他の一般参加者の帰宅時間帯と重なるのでビッグサイトへ入る列と出る列がぶつかってしまい、横断歩道が半分以下の幅しか使えなくなってしまったと。
現場での目算ですが16時頃に会議棟側の交差点が100m、東8ホール側の交差点が数十mの長さになってしまいました。
解決策としてはもう防災公園に帰り時間帯のみの簡易更衣室でも作っちゃえば解決しやすいですが、無理でしょうねー。
だって防災公園ってコミケ会場ではなく、コミケと提携してる献血イベントの会場ですから。厳密には管轄が異なってるそうです。
2018夏コミではどう対策が取られるのでしょうか。
いや、レイヤー側もまず早め早めの行動を心がけるべきです。
~ ここまで半分。あと5000字 ~
【その5】 メディアはコスプレをどう伝えたか…コミケ特集が営業コスプレイヤーの売り出しに利用された例
ここはアフターレポートは関係ありませんが、コミケにまつわる話ではあります。
近年はネットメディアだと旧来のまんたんweb・ねとらぼ・GIGAZINなどのサブカル系ニュースサイトの他に、新興のオリコンニュース・ウォーカープラスといった芸能系ニュースサイトが取材に来て「美人(セクシー)コスプレイヤー大集合!」みたいな記事を配信してます。
これは大きなイベントでコスプレを取材して記事にすれば、モデル料を払わずにそこそこのPVを稼げる記事が作れてしまうという錬金術に、各社が気付いてしまったからです。少し前までまとめサイトがやっていた事を、商業媒体がやってる訳です。
彼らは正確にはコスプレを取材したいのではなく、カワイイ・エロイ女の子の写真を大量に撮っていく事が目当てですから。潔いほどに男性レイヤーや、女性レイヤーであっても甲冑や男装なんぞはガン無視です。
TVですと、毎回コミケ時期は朝夕のニュース番組でコミックマーケット開催のニュースが流れ、映像的なインパクトを重視しちゃうので同人誌よりもコスプレが紹介されやすいのが通例です。
もう盆と年末の風物詩といった感じで、そこに昔のような悪意はありません。
代わって、オタクを叩かないけど、なまじ持ち上げようとしてナナメ方向に飛ぶ…というのが近年見かける悪癖です。
以降、4カ月前に書いた記事とも被りますが、少しクールダウンしてマイルドに書きます。
年明け2018/1/10放送の日本テレビ「ナカイの窓」では〝オタクな人たちpart2〟として何人かのオタクが登場、その中でコスプレイヤー席にいた五木あきら嬢、MCの中居くんに「エロじゃん」とツッコまれてましたが、まーこれはコミケにはあまり関係ない番組の一コマでした。
問題アリと思うのは2/23放送TBS「有吉ジャポン」およびその映像を一部流用した3/4「サンデー・ジャポン」です。
「有吉ジャポン」の良い部分として、これまでにもコミケ内の評論・情報系ジャンルのサークルにスポットを当て、1サークル1ジャンルの本を何度か紹介してくれてます。またコスプレジャンルのROMサークルではエロイ恰好でちょっと変な人たちを主に紹介しますが、ここのエロ系のROMの部分ではナレーションに「コスプレ」という単語を避けて、漫然と「写真集」と表現している事には一定の配慮をしてくれてるのだろうと感じます。
しかし同番組の後半、コスプレエリアで囲まれる(プロコスプレイヤーとして売出し中の)えなこ嬢の特集部分において「日本一のコスプレイヤー」「えなこに憧れるコスプレイヤー急増中」は、ハッキリ言って誇大広告であり、ウソです。
偏るのは自由。でも、ウソはダメ。
えなこ嬢の経歴に、何かしら権威あるコスプレコンテストへの入賞歴などはありません。コスプレ雑誌など(内側のメディア)が積極的に彼女を取り上げてきた例もありません。ってゆーかコスプレイヤー側から見ると彼女はあんまり良い方向では話題になった事がありません。
あくまで集英社ヤングジャンプでのグラビア掲載時に「日本一かわいすぎるコスプレイヤー」というキャッチフレーズで掲載されたのが商業媒体だと初出で、これがオリコンニュースなどのネットメディアで「日本一かわいい」に変わっていったのが経緯です。
(集英社はこれより前にホリプロと組んで、アキバ系男子へのアンケートで1位になった御伽ねこむ嬢を「日本一かわいいコスプレイヤー」として売り出して頓挫していたので、少し言葉を変えたのか)
(えなこ嬢のTV出演は2016年夏の「ニュースな2人」「ナカイの窓」から)

誇大広告の初出はヤングジャンプのキャッチコピーである。
ヤンジャンはその後もコスプレイヤーをハダカ要員として積極的に活用している。
「有吉ジャポン」のコスプレエリアでの映像をよく見ると、えなこ嬢を囲んだ人混みって殆どが私服の男性カメラマンです。その中に数名だけいたレイヤーの女子にコメント取って「えなこに憧れるコスプレイヤー急増中」って、そりゃー0人から数人になったら増えてはいるけれど、冒頭に書いた通り彼女を筆頭に〝プロコスプレイヤー〟ブームが仕掛けられたこの2年間、コミケの内外でコスプレイヤー参加数は減少している中で(彼女個人のせいではなく複合的な理由だが)、そこまで言ったら誇大広告が過ぎるでしょう。
コメントしたレイヤーの子は悪くない!個人が思った事を言っただけ。自分の好きなものを好きと言っただけ。
えなこ嬢も(あんまり)悪くない!発端は彼女のウソではなく、周りがついたウソ。新人グラビアアイドルが売り出し方を自分でコントロールするのは無理。
[ポイント]
・内側の価値観 ←原作のキャラに似ている・衣装や造形がスゴイ…みたいな、レイヤーや原作ファンの間でのみ通じる価値観。
・外側の価値観 ←顔がカワイイ・格好がエロい…みたいな、原作を知らない層でも伝わる価値観。
えなこ嬢、〝外側〟の需要に特化してずっと活動してきた人なので、〝内側〟の価値観で活動するコスプレヤー側にとっては無名、もしくは悪名なんですね。
コスプレという記号を使ってるけど、キャラを再現する方向ではやってない。原作を読み込んでアレンジするタイプでもない。かといって自分で世界観を練ったオリジナルという訳でもない。
あくまで自身の容姿のアピール手段としてコスプレをしてきた人で、昔でいうネットアイドルですね。短期間ですがソニーミュージックからアイドル歌手グループとして活動していた時期もありますから、早くから芸能志向はあったようですね(芸能スキルの有無は別として…)。
それは悪くないです。担保されるべき自由と多様性です。コスプレは免許制でもないので目的や形の決まりは無いですから。私だって目立ちたがり屋の着ぐるみレイヤーです。
ただ、「日本一のコスプレイヤー」だの「憧れるコスプレイヤー急増中」は番組上のウソ。
他の人達が下に見られてしまう。
根本的に特にコミケでは表現物を、売れる・売れないで価値判断してません。理念として「参加者全員はすべて対等です」と掲げています。あくまでコミケの1シーンとしてのコスプレイヤーを取材するなら、番組側もそこは気をつけてほしかった。せっかく番組の良かった部分まで霞んでしまう。
「有吉ジャポン」コミケ特集の内、えなこ嬢に関する部分はほぼそのまま同TBSで3/4「サンデー・ジャポン」にも使用されました。前者は深夜バラエティですが、後者は一応は日曜朝の報道番組の扱いです。正確にはTBS内で報道番組をパロディにしてるバラエティ番組ですが。だから面白いのは知ってる。
(この出演時、暴走中年である筈の爆笑問題・太田光がどうしてか彼女に対しては全くイジらなかったので、この出演が何らかの大人の事情によるものであるのは察せます。後日TBSオールスター感謝祭にも出演)
おそらく一般的なコスプレイヤーの感覚にしてみたら、美人だしセクシーだけど特にコスプレ的なスキルが高い訳ではない人が「日本一のコスプレイヤー」というキャッチフレーズでTV出演し、「彼女に憧れるコスプレイヤー急増中」と持ち上げられる。
でも本人は特にコスプレに関する深い話なんてできないので、「コスプレの素晴らしさを伝えたい」などと言いつつ結局お金の話をメインに繰り返している光景が全国に流れていくって、まさに地獄じゃないですかねェ…。
コスプレの価値って、顔だったのか。身体だったのか。金だったのか。
バカバカしくもなりますわ。そりゃ。
冒頭に挙げたコミケその他イベントでのコスプレイヤー参加者数の減少傾向、その複合的な理由の、あくまで一端はここに(も)ある気がするのですが。
別にコスプレを芸能活動の手段とする事は悪くありません。稼ぐのも自由。
表現は多様であるべき。
好き嫌いと、良い悪いは別。それが歴代で上手くいかない構造的な問題は余所でも書いてきましたが、コスプレイヤーが芸能活動する事自体は何ら否定するもんじゃありません。
えなこ嬢がフォロワーが多い・ROMの売上が高い・有料撮影会でお客を集めている・企業の公式モデルを務めてる…というのは事実ですし結構な事ですが、それが〝コスプレ〟というものの本質的な価値か?といえば違うでしょう。元来は体を使ったファンアートやオリジナル表現としての価値だった筈。
カワイイ・エロイってのがコスプレを知らない層にも伝わりやすい価値で需要があるのは当然ですし、需要があるから多く供給されてる訳ですし、あまりにも多様で広大なコミケやコスプレの中で一部に着目して伝える行為もメディアの自由です。
が、そこを「日本一のコスプレイヤー」として持ち上げるのは、ウソでしょ。
他の人達が彼女より劣っている訳ではない。
偏るのは自由だけど、ウソはダメ。
これはえなこ嬢ではなく、持ち上げる(仕掛ける)メディア側の問題です。
(もっとも、じゃあ正直に「日本一フォロワーが多い」とか「日本一稼いでるコスプレイヤー」なんて具体的なキャッチフレーズで売り出そうとしたら、上に叶姉妹というグレイトな比較対象が存在しちゃうけどどうなの?と困った事になる訳ですが)
[寄り道1:コスプレ界隈にはウソへの自浄作用が乏しいのか?]
コスプレって色んなメディアから注目されてる割に、ちゃんと機能してる協会や業界団体は存在しないので、変な肩書が使われてもあまり咎められずにまかり通っちゃうんですね。
もし何かのアスリートとか伝統芸能の人が根拠の薄い「日本一の~」って名乗ったり放送されたりしたら、関連の協会や業界団体が即座に抗議するでしょうが、コスプレにはそれがありません。
コミケ準備会だって「コミケの歴史」については公式情報として管理できるけど、「コスプレの歴史」って単位では管轄してないですから。
[寄り道2:認知の差はどこから起こる?]
あと特にTV局みたいなマスコミって、コスプレをファッション文化の中で捉えてる節があって、主役とかオピニオンリーダーを探しちゃうんですね。
例えとしては古いかもだけど、渋谷系ファッション=益若つばさ!原宿系ファッション=きゃりーぱみゅぱみゅ!…みたいに、コスプレ界の中にも誰もが憧れる象徴的存在がいるはず!みたいな。
いないんですよ。誰も。
だってコスプレイヤーって他のレイヤーの誰々さんに憧れて始めるんじゃなくって、架空のキャラクターに憧れて始めるんですから。個々ジャンルに小さなスターはいても、全体で誰もが知ってて憧れる人なんて、いないのです。
そこを認知できないので溝ができちゃうんだよなぁ…。
オタクを叩かないけど、なまじ持ち上げようとしてナナメ方向に飛ぶ…というのはこういう事です。
ここら辺はむしろ(体質が古いと言われてる)新聞各社とかNHKの方が、場合によってはちゃんとコスプレという趣味の世界に向き合ってくれてる気がするので、民放も見習ってほしい所。
確かに、えなこ嬢←に憧れる御伽ねこむ嬢(産休)←に憧れる肉球あやと嬢(引退)…みたいな、ファンアートではなく自分の芸能活動の手段としてコスプレする層ってのは今はごく少数ながら系譜を作ってるんですけど、絶対数としてやっぱり少ないんですよ。
大半は同人誌と一緒で、ファンアートとしての活動なんで。同人誌のサークルに「日本一」って無いでしょ?
でも、こういう誇大広告での売り出し方されちゃうのは芸能界じゃ仕方ないのかなーと最近は思う節もあって、擁護じゃないですけど。
短期的には仕事あるけど、長期的な視点で見てるとコスプレイヤーそのもののプロ=職業化ってやっぱり難しくて、やってる事は実質的には既存のコンパニオンやグラビアアイドル業を代替えした存在です。
グラビアアイドルは容姿を売る以上、その賞味期限は短く、短期間で売り出すためにはどうしても、目を引く誇大広告を並べる必要がある。
そのために「有吉ジャポン」ではコミケ特集の枠の一部が、彼女を売り出すための広告枠として使われてしまった。
でもそんな都合でコスプレの認知(コミケもだ)が歪められていく事に黙って従う理由なんぞこちら側には無いので、ウソはウソと言っておきます。
あとはもう、消費者(情報の受け手)の側が賢くなるのが必要でしょ。
芸能系のネットメディア…オリコンニュース・ウォーカープラスその他がコスプレ記事に乗り出した時期とも併せて、この2年くらい続いてる一連の〝プロコスプレイヤー〟ブームってのは同人・コスプレ業界ではなく、芸能界主導で仕掛けられてたんだろうなーという事が伺えますが。
実質的には〝営業コスプレイヤー〟なんですけどね。
ぶっちゃけこのブームを煽ってる一翼はDMM.comグループだろうなーと私は推測してるんですけど、あの会社はエロ以外にも手広く商売するのは結構だが、一時期はちま起稿の運営権を買ってたりして、全体的に企業モラルが低い。
[寄り道3:アレとは違う…]
などと書いてると数年前にコミケ準備会との間で数々の問題を起こしてきた例の…うしじまいい肉嬢を連想される方が多いと思うので、補足。
えなこ嬢は商業媒体以外ではあそこまでの過激な露出はしておらず、あそこまでの炎上商法もしておりません。
商業媒体での衣裳は業者製ですが、イベント参加時の制服系の衣装などは自作できるスキルは持っておられます。
別に私が批判してるのは彼女個人ではないので。
ただひたすら…彼女の売り出し方とその周辺にはメディアの持ち上げ方やウィキペディアの出演歴記述なども含めて、ウソが多いという話。
× × × × × ×
【まとめ】 公共と世間と…
最後コミケから少し離れちゃいましたが、コミケで起きた2011年以降のコスプレ規制緩和路線と、公共との軋轢ってのは興味深いテーマです。
東京五輪を前に、国際的な目線まで含め、果てしなく拡大していく〝公共〟の概念。
オープン化する事で場を確保してきたコミケ(とコスプレ)は、会場や警察から突きつけられる〝公共〟を無視できない。
そしてメディアの扱いに関しては、公共を〝世間〟に言い換えると分かりやすいかな。
オープン化された先で繋がってしまう世間の感覚でコスプレの価値は、キャラに似てるとか衣装スゴイではなく、常にカワイイ・エロイです。仕方ありません。でも、だからといってそのままで良いとも思いません。
これは昔からある問題で、「コスプレイヤーを職業に!」というのは数年おきに盛り上がっては、結局エロ方面に人材供給して、鎮火して、しばらくすると別の誰かがまた持ち上げられて、延々と繰り返していくのですが…。
最近は特に盛大にやってますね。
パンパンに膨らんだ風船、広げまくった大風呂敷。後片付けは大変そうです。
外側の人間を「わかっちゃいねぇ!」と切り捨てるのは簡単お気楽だけど、でも単に拒絶し続けるよりかは間に落とし所を見つけて互いに利用しあった方が利口かもしれない。
さて、勝手な事ばかり書いてるついでに、こんな時代だからこそ、若人達には好きな作品のコスプレをしてほしいと思います。
金にはならない。芸能活動にも繋がらない。でも自分たちは楽しい。それでいい。
ゆっくり歩く人間が、一番遠くまで行けるんです。
逆に、好きでやってる事を、外側の人達の干渉によって冷めてしまうのは勿体ないよ、と。
・ 表現は多様であるべき。
・ 好き嫌いと、良い悪いは別。
・ 偏るのは自由だけど、ウソはダメ。
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