※映画重要部分のネタバレは避けますが、まったく事前情報を入れたくない人は避けてください。

 面白かった!
 久しぶりに映画を公開初日に見てしまいました。シン・ゴジラ以来です。

 原作も読んでおりましたが3話で打ち切られてるので、ストーリー的には映画前半の部分までしかありません。埼玉県の風土病に感染する辺りまでですね。主要キャラの名前や設定もちょっと改変されてます。
 そして原作では〝東京に虐げられる埼玉〟といういわば縦軸の構造に絞って描かれてましたが、映画では武内監督が千葉県出身という事もあって、〝埼玉と千葉との対立〟も横軸としてたっぶり描かれています。
 東京を取り巻く近圏の立場と思惑を多重構造として描く事で作品全体の厚みを増し、この映画を社会派ドキュメント大作たらしめている部分である…と言っても過言でしょう。

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 「東京に迎合し、東京と名のつくもの(東京ドイツ村・東京ディズニーランド・新東京国際空港(成田空港)etc)を沢山作った」と自虐される千葉県…まさにその通りです。
 東京への一極集中の時代の中で千葉県としてのアイデンティティをかなぐり捨て、あるいはベッドタウンとして、東京にすり寄って生きるしかなかったのです。
 主人公・壇ノ浦百美(二階堂ふみ)の家で執事として仕える阿久津(伊勢谷友介)は千葉県民という設定で、千葉県の地位(と野望)のために東京都知事一家に尽くし、埼玉解放戦線を徹底的にいたぶる仇役として登場します。GACKT怪演の麻実麗を拘束して全身の穴にピーナッツを詰め込もうとする拷問シーンとか、いちいち耽美でよろしい。

 CMでよく流れる埼玉vs千葉の軍団による江戸川を挟んだ対決シーンはまさに「茶番」という言葉がふさわしいものに仕上がっていて、劇場の大画面で見て感動しました。そしてこの対決はクライマックスへの伏線となっていくのです。
 ってゆーか、出身県の有名人自慢って田舎モンのやる事だから!人口の多い地域の人は、有名人が同じ学校だったとかは自慢するけど、出身県が同じってだけじゃ自慢しないから!

 いやはや、原作3話しかないカルト漫画をよくぞここまで膨らませて描いたなぁ…。
 武内監督が公開直前になって「決して埼玉をディスるのがテーマではなく、江戸川を挟んで千葉と埼玉、どっちが上かという壮大なスペクタクルを描きたかった。」などと火にガソリンを注ぎまくっているので、心して見るべし。
(→映画.comニュース

 アカデミー賞の長編ドキュメント部門へのノミネートが確実視されます。
 
■聖地巡礼?
 さてさて、マンガ原作映画には付き物の聖地巡礼ですが… 
 ハッキリ言ってこの映画、100分かけて「埼玉には何も無い!」って主張してるような作品なので、埼玉県への聖地巡礼や観光振興効果ってあんまり大きくないと思うんですよね。
 埼玉県内で描かれるシーンがほぼほぼホラ穴と山林ですから。

 むしろ一番美しいのって、全身の穴にピーナッツを詰められて千葉県の九十九里浜で地引網の強制労働させられそうになるシーン
 砂浜に押し寄せる波が陽光にキラキラ輝いて、それを背景にGACKTと二階堂ふみがバイクに2ケツしながら颯爽と走り抜ける…本当に美しいんだ!これが!
 海のない埼玉県への挑発感MAXの名シーンです!
 ぜひ皆様、千葉県にお越しください。
 どうでもいいけど九十九里浜の南端にある一宮海岸には、小・中学生が林間学校でよく使う「一宮少年自然の家」という施設があります。

九十九里浜町観光協会HP
 
■結論
埼玉県は千葉県をライバル視。
千葉県は神奈川県をライバル視。
神奈川県は東京都をライバル視。
東京都の大半は実は地方出身者。
これが現実。