あらゆる情報がインターネットを介して瞬時に駆け巡っていく時代、それでも一定数存在するアナログ人間は、このイレギュラーな緊急事態の情報をどう得るのか?得られないのか?
 別に批判ではなく、可能性の話として考えてみると、いかに今の情報がネットを介してのやりとり前提になっているのか見えて面白いと思います。

 そもそも何でこんな話を書いてみようと思ったのかというと、昨年秋に明治大学講堂で開催された「明治大学米澤嘉博記念図書館 コミケ紙モノ展トークイベント」で、市川共同代表らの話の中で「今はもう殆どがオンライン申込だけど1割くらいアナログ(郵送)申込が残ってる」というのがありまして、その場の参加者数十名に向けた「メールアドレスを持ってない人ー?」という質問にもごくごく僅かながら挙手した人がいたのです。
 参加者の年齢層の広すぎるコミケであるからこそ、申込サークルの中にも未だアナログ申込で普段メールしてない・あるいはネット環境そのものが無い人は、やはり存在するでしょう。
 私自身もアナログ申込をしていて、当落発表前に受付番号をオンラインでの紐付け設定をしているため当落結果はメールで来るのですが、でも完全アナログ派の人は一体このコミケ中止という大事件をどこのタイミングで、最悪どこまで遅いタイミングで知るのだろうか?と。
 なお自分はツイッターで知りましたが、何故か当落メールは来てたのにコミケ中止のお知らせメールは来てません。迷惑メールフォルダにも入ってないので、エラーが起きてるのでしょうけど。

 3/11(水)サークル当落発表後、週末の3/15(日)に準備会公式サイトとツイッターで「コミックマーケット98の開催見通しについて」という声明が出されており、この時点で中止または延期の可能性が既に示唆されています。
 また公式発表の前日に企業ブース関係者から洩れていたようですが、これは確証がないので考えません。
 思考の条件としては「わざわざ教えてくれるような親切な友人なんぞいない」と仮定しておきます。
 
ビッグサイト夜正面
第一報:発表当日にツイッターでの速報
 ツイッターをやっている人にとっては、3/27(金)夕方、準備会のツイートと公式サイトの「コミックマーケット98の開催中止について」が正式な中止の第一報だと思います。
 ただし問題としてツイッターは初期設定の「ホーム」モードだとフォロワーのイイネや無関係な話題のツイートが真っ先に表示されてしまい大変うざいのでありまして、かといって「最新」モードにしてしまうと時間軸に沿った表示になるものの、準備会からの発表後のタイミングでツイッターにログインしていなかった人は見逃してしまう可能性が高いと思います。
 同じころに準備会からの中止メールが出たそうですが、オンライン申込派はともかくアナログ申込派はこの時点では情報を得られない人がいます。ウチみたいにアナログ申込をオンラインに紐付けしておいたのに、当選メールは来ても中止メールの来なかった場合もあるでしょう。
 個人的には公式発表後しばらくしてからツイッターにログインして、フォローしてる人たちが大騒ぎしていたので知りました。

第二報:ネットニュースや新聞の記事
 ほどなくしてネットニュースが記事化していたので、準備会アカウントをフォローしていなかったり見逃していても、こちらで情報を得たという人も多いでしょう。
 読売新聞や朝日新聞のような全国紙でも小さいながら記事化されているので、翌日の3/28(土)に新聞で知った人もいるかもしれません。
 これもネット環境が無かったり新聞雑誌なども読む習慣が無い人は見逃してしまうでしょう。
 だからこれは親切に教えてくれる友人がいない仮定なのである。

第三報:コミケカタログ取扱い書店
 4/11(土)が発売日ですので、書店に買いに行くとそこにはカタログの山とともに「コミックマーケット98は中止になりました」という張り紙がありました。
 今回はリストバンドを当日購入すると高くなってしまうので、リストバンドの付属している冊子版のカタログを買う予定だった人も多いでしょうから、ここでネット環境の無い人でもさすがに気づくでしょう。 
 ただし!
 世の中にはサークル参加してるのにコミケカタログを買わなかったり、当日買って朝の開会前にチェックしているというのんびり屋さんも存在しますから、このタイミングでもまだ情報を得られない人も中にはいるかもしれません。
 また、カタログ発売日の4日前に政府から7つの都府県に緊急事態宣言が発令されており、秋葉原の書店でもZINやメロンブックスや虎の穴は開いている一方、アニメイトやゲーマーズは臨時休業でしたから、カタログは入手できなかったという人がいる可能性もあります。
 だからこれは親切に教えてくれる友人がいない仮定なのである。

第四報:中止と返金案内の郵便物
 4/26(日)に公式サイトで
コミックマーケット98中止に伴う対応の現状についてが公開され、返金案内のメール配信と郵送物が投函されたそうです。公式に中止に関する郵送物が出るのはこれが最初。
 なおウチは中止メールも来てないので返金案内メールもまだ来てません。当落メールは来てたのに…エラーか…?
 さて、郵送物ですが…これもコロナウイルス騒動で社会のインフラが軒並み混乱しておりまして、そんな簡単には届きません。
 検索すると都内在住者はおおむね4/29(水祝)までには届いてる人が多いものの、郵便事情の悪い地域はそうは行きません。
 私の場合は結局、ツイッターで逐次最新情報はチェックしていたので支障は無いものの、準備会からの案内メールがエラーなのか来ないままで、郵便物もこれを書いている5/1(金)時点でまだ届いておりません。
 既に開催前日なので、メールも郵便物も準備会からの正式な中止連絡は届かないまま当日を迎える事になります。

結論:
 アナログ申込でオンライン上での紐付けもせず(もしくは受信エラー)ネット環境が無く新聞雑誌も読まずカタログも事前購入せず親切な友人もいない場合、最悪のケースとしては開催当日に現地でコミケ中止を知るという可能性は、理論上あり得る。
 
 そしてサークル参加ではなく買い専・撮り専などの場合も同様。

× × × × × 

 後で考えたら、ですが…。
 公式発表の前日に企業ブース関係者から開催中止情報が洩れていて炎上状態だったのですが、いつもなら不確かな情報に対しては苦言を呈するような準備会スタッフのアカウントが、この件に関しては不思議と沈黙していたんですよね…。
 もし勘のいい人だったら、この時点で察していたのかもしれません。

 以上、新型コロナウイルスのパンデミックというあまりにもイレギュラーな事態であるため、別に準備会を批判するつもりもなく、思考実験として捉えていただくと面白いかと。
 そして自分自身は義務教育中でまだコミケの存在も知らない頃、ネットの無い時代に同じような事をやってしまった1991年の「コミケ幕張メッセ追放事件」(ウィキペディアでこのブログが資料としてリンクされている項目)がいかに存続の危機だったかという事に、今更ながら思いを馳せてみます。

2019冬c97サークルカット
c98で出す筈だった新刊「同人・コスプレ学級会 傾向と対策2019」の予告サークルカット。