約2年間のコミケ中止延期期間を経て、再開を迎えた2021冬c99は上限規制により2日間で全体の入場11万人。コスプレ更衣室登録数は男性753:女性2066:合計2819人。
 その8ヵ月後の若干制限が緩和された2022夏c100は2日間で全体の入場17万人。更衣室は男性1149:女性3210:合計4359人。
 で、コスプレイヤー=更衣室登録数の最盛期だった2015冬c89と比較すると、c99で更衣室登録数10%程度。c100で同15%程度。
 少しずつ戻しつつあるのですが、どうしてもまだ耐える時期が続いています。

 まず、この夏コミックマーケットが無事に100回目を迎えられた事、そのために尽力された方々に感謝と敬意を表します。
 そしてc99からc100で増えた6万人は殆どが一般入場の枠で、サークル参加している者の視点だとc100は一般で買いに回って来てくれる人が前回よりは増えたので、お祭り感も戻ってきたような気がしています。が、あくまで本項ではコスプレ視点で語ります。
 
[更衣室登録数の推移]
コミケ_コスプレ推移2022夏gi

コミケ_コスプレ一覧2022夏

 グラフに入れると哀しい線になるのですが、統計データとして公式発表のコスプレイヤー=更衣室登録数の推移を見える化しておきます。
 今回は準備会公式のc100アフターレポートでデータ部分が公開されたので、主に更衣室のデータな話を書いてみます。特に面白い話は無いです。
 実地編は後日ちゃんと書きますので。

・c100アフターレポート コミックマーケット準備会(この時点では8/23データ部分のみ公開)
https://www.comiket.co.jp/info-a/C100/C100AfterReport.html
・コミックマーケット年表
https://www.comiket.co.jp/archives/Chronology.html


[夏コミ参加者(入場者)におけるコスプレイヤー(更衣室登録)比率]
2014夏 3.7%
2015夏 4.1%
2016夏 3.9%
2017夏 4.1%
2018夏 3.4%(ここまで3日間)
2019夏 2.3%(4日間)
2022夏 2.5%(2日間)
※冬コミは年末の曜日によって全体の参加者数が大きく違うため、夏コミのみで比較。

[男女比に関して]
 コロナ禍での第7波の中、更衣室チケットが取れてもc100直前で参加辞退したレイヤーも居たと思いますが、ほぼ完売に近かったであろう更衣室の男女比、再開後はだいたい男女1:3(10分割だと2.5:7.5)くらいの割合で用意されていた事が分かります。
 元々コスプレイベントの男女比は1:5とかで場所によっては1:9の時もあって、でもコミケの場合は日によって1:2くらいの割合になりますから、他よりも男性レイヤーの割合が圧倒的に高かったイベントがコミケなのです(それでも約2/3は女性レイヤーでしたが)。

[コロナ前で4日間開催/2日間開催時との比較]
 コロナ前の2019冬c97で全体の入場75万人、更衣室登録数2万5133人。2019年だけ夏冬とも4日間開催なので比較しづらいですが一応。
 コロナ直前c97との比較では再開後コミケの規模は、c99で全体の入場15%(コスプレは11%)。c100で全体の入場23%(コスプレは17%)。4日間開催だったので、2日に換算すると実際はこの倍くらいでしょうか。

 じゃ、開催日数が同じ程度の昔のコミケとの比較だったら?

 最後の2日間開催コミケだった2005冬c69と比較してみます。2日間開催って約17年前だったんですね。プリキュアがマックスハートだった頃…仮面ライダーが響鬼だった頃…。
 c69が全体の入場35万人。この時の更衣室登録数1万887人。これを基準に考えてみると…?
 まだ2日間開催だったc69との比較では再開後コミケの規模は、c99で全体の入場30%(コスプレは25%)。c100で全体の入場50%(コスプレは40%)に若干増えました。

 どのみち、こうして見ると感染症対策での人数上限規制によるコミケの規模縮小と、特にコスプレに参加枠を振れなくなった状況が見えると思います。
 いや知ってたと思うけど、改めてデータで見るとね。

[更衣室争奪戦に男女不均衡はあった?]
 2022夏c100の話に戻ります。
 サークル更衣室は各45分×2枠(1枠と2枠)。1830円。
 一般更衣室は各45分×3枠(E,H,J枠)。3830円。
 
 まず、開場前の時間帯で使えるサークル向け更衣室の時間枠では、特に初日分の一次抽選で、ツイッター検索では女性レイヤーから多くの抽選漏れの声が上がりました。
 これはサークル参加者でコスプレする割合は圧倒的に女性の方が多く、コスプレ写真集を売るサークルだけでなく、アニメやゲームジャンルでも売り子や描き手がコスプレして参加する係数が高いからです。

 しかし、一般入場向け更衣室の時間枠が一次抽選・二次先着販売が始まると逆の現象が発生します。
 一般入場向けでは男子更衣室が盛大な抽選漏れ報告が相次ぎ、キャンセル分の二次先着販売でも13時受付開始から数分で両日とも完売しています。女子更衣室は東西にこだわらなければ一般入場向け二次販売分は8/11の販売終了直前まで完売していませんでした。
(もしかしたら終了直前に完売したのかもしれませんが、半日前にはまだ残っていた)

 以上から考えるに更衣室チケットは、サークル向けは女子更衣室が不足一般入場向けは男子更衣室が不足したのです。
 一般入場向け更衣室チケットは3830円ですから、この金額を払ってもコミケでコスプレしたい人がまだそんなに居る訳です。他のコスプレイベントが値上がりしても現在だいたい2500円~3000円です。コミケではサークル参加費が9000円です。
 それを考えたら、イベント内での金銭授受を伴わない筈のコスプレイヤーが、それだけ払っても参加を希望していたのですからやはりコミケってまだまだ〝熱〟のあったイベントだと思います。

[首都圏における男性レイヤーの居場所を求めて]
 コミケ以外に目を向けると、地方ならともかく首都圏では遊園地や商店街イベントがほぼ全滅し、男女混合ではない単独参加の男性レイヤーが堂々と参加できるイベントが極めて限られている現状があります。他のコスイベだと男女比がどうしても女性ばかりになってしまうので、男性レイヤーにはどうしても疎外感がある訳です。
 男性は子供の喜ぶようなヒーローやロボットのコスプレしている係数が高いですが、遊園地も商店街イベントも地方都市では再開していても、逆に人口密集している首都圏では再開の足が鈍いのです。

 そしてそんな居場所を失っている男性レイヤーが、熱を持って積極的に申込していたであろうコミケなのですが…。
 コロナ前でさえコミケにおけるレイヤーの参加者は男女比1:2だったのに、再開後でも更衣室を男女比1:3位(たぶんコミケ前から殆ど変っていない)で用意しているので、どうしても一般入場向け更衣室チケットでは男性レイヤーの落選率が高まるのですが、これ単純な男女比だけで図れない事情もあって…。
 男性って大概、イベント終わったら着替えて顔と体を拭いて完了じゃないですか。でも女性って、イベント終了後の更衣室でも帰りの身支度に時間かかる人が多めなんですよ。
 そういう手間まで考えると実際の男女比以上に、女子更衣室を大きめに取らないと回らなくなってしまう現実があります。密を回避する前提だと特に。

 かといって、現行コミケにおいて男女とも更衣室全体を増やすのは簡単ではないと思われます。
 上記は数字の話ですが、実際に現地を見てみると分かります。ビッグサイト内のあらゆる箇所をギッチギチに詰めて運用しており、例えば東7ホールのコスプレエリアは参加者が捌ける終了近くの時間帯では、サークル用の宅配便受付所になります。
 パズルのように入り組んで運用されているので、どこか増やすとか簡単にはできないんですね。
 コミケは申込書のアピールで記している定義として「同人誌を中心としてすべての表現者を受け入れ、継続することを目的とした表現の可能性を拡げる為の『場』である」とあるので、表現物としては同等であっても、あくまで一義的には同人誌が中心のイベントでしょう。その同人誌を売るためのサークル配置だってなかなか増やせない状況ですし。
 
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2019年12月31日、コロナ前最後のコミケとなったc97の終了時間帯の光景を写ルンです撮影。
「来年は五輪で日程ずれるから、次はGWコミケで」みたいな会話をしながら帰路につく参加者の皆さん。
誰もこの後に起きる世界的パンデミックの事など、まだ知る由も無い。
 
 一方、一般入場向けの女子更衣室に関しては上で書いたように、東8ホールか会議棟かという場所にこだわらなければ販売最終日まで残っていたので、「東8ホール更衣室じゃなきゃコスプレ参加しない!」みたいな人でなければ取りやすかった筈です。
 一般向けの女子更衣室に関しては今回、需要と供給の差が少なかったと言えるでしょう。
 そしてこの女性レイヤーのコミケ参加需要の減少傾向は、c100終了後から主にサークル参加者の間で盛んに議論されている「女性作家や女性向けサークルのコミケ撤退問題」(コミケを避けて赤ブーやコミティアへの移行)とも符合します。
 もちろん今後の世の中の風潮やコロナ経口薬の普及次第では、またコミケでの女性レイヤーも増えていくとは思いますが、コロナ前の人数近くまで戻るとは考えにくいです。
 
[まとめ]
・コロナ前で最後の2日間開催だった2005冬c69と比較しても、c100の規模は入場者50%(コスプレ40%)程度に縮小開催だった。
・コミケは男女比1:3くらいの割合で男女の更衣室が設定されていた。
・それでもサークル参加者でコスプレするのは圧倒的に女性が多いので、サークル向け時間枠では主に初日の女性更衣室が不足した。
・しかし首都圏では男性レイヤーの参加しやすいコスプレイベントが激減していたため、彼らは積極的にコミケに申し込み、一般入場向け時間枠では両日とも男子更衣室が不足した。
・一度に更衣室に入れる人数や時間枠数の拡大が今後あっても、更衣室が一気に拡大するのは難しいと思われる。
・女性向サークル同様、女性レイヤーのコミケ参加需要もコロナ前より減っているかもしれない。


[ついでに…]
 買い専の方々でも一般入場(午前入場のね)の枠が不足しまくってる状態で言うのも何ですが、もしも仮に更衣室の不足に対して特効薬があるとしたら、コミケがゆりかもめ駅の反対側にあるTFT東京ファッションタウンビルを再び押さえてしまう事だと思います。仮にね。仮に。
 過去、コロナ直前の2019冬c97において一度コミケがTFTビルを更衣室として使用していますが、もう一度ここを更衣室や検温所に使用できれば、更衣室に限らず会場スペース的な問題(夏コミの場合は屋内に作らなくてはならない検温所問題、あるいは企業ブースやサークル配置)は緩和されるかもしれません。
 これをコミケ準備会側が想定してないとは考えにくい。
 実際、準備会の「コミックマーケット100とサークル申込について」内において、「C100に向け会場周辺で代替候補となる施設を探し、各種の調整やお願いを行ったものの不調に終わり、代替場所を確保することができませんでした。」と暗に〝何かの動きがあった事を書かれてますね(このページ、担当者からの艱難辛苦の言葉がつづられてるので見るべし)。
 でもそうなったら、TFTビルを長年使用してきた大いなる便乗イベントである所の〝となりでコスプレ博〟は追い出されます。
 となコスはとなコスで便乗しつつも20年も同所でやってるイベントですし、コミケのコスプレ広場が手狭だった00年代時期には事実上の受け皿として便利に機能していたイベントでもあります。面識のない不特定多数のカメラマンに囲まれたりするのを嫌がるガチのレイヤーはコミケよりとなコスに参加する係数が高いですから、コミケで本を買ってから帰りにとなコスでコスプレや撮影者登録する人も多いのです。

 だから私は、少なくとも今回、恐らくは忸怩たる想いを抱えつつもコミケと便乗イベントがともに生き残って、この形で収まってしまったのが正解なのだと思います。あくまで今回は、ですが。
 だって、大きなイベントの都合のために小さなイベントに犠牲を強いてしまえば、一見して効率的に見えます。が、それは東京五輪がコミケを含むビッグサイトや幕張メッセの諸処のイベントに対して行ってきた不条理と、一緒になってしまうからです。
 大きなイベントが四苦八苦してるとなりで、小さな便乗イベントが飄々と継続している。見る角度によっては不条理で、別の角度によっては安心感を得る人だって存在します。
 運営同士の感情的な対立は知らんですが。
(コミケととなコスの五輪前から続く因縁は、有明をナワバリにした反社会的組織同士の抗争だと見れば伝わりやすいかと)
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 以上、今回は再開後コミケのコスプレ事情をデータから書き記してみました。
 次回は準備会公式のc100アフターレポートのデータ以外の文章部分の更新を待って、実地編としていつものように実際に全コスプレエリア(東8外周、東7ホール、庭園、屋上、西4ホール)を歩き回って気づいた事などをまとめてみようと思います。
 そこいらのネットニュースよりかは実態に近い事が見えると思われます。


 この辺の他愛ない話が先日バズッてたので、経緯からして詳しく書いておいた方がいいでしょう。
 では、また。



※この記事はAIが作成しました。
 


[参考資料]
・c100アフターレポート コミックマーケット準備会(現時点で8/23データ部分のみ公開)
https://www.comiket.co.jp/info-a/C100/C100AfterReport.html
・コミックマーケット年表
https://www.comiket.co.jp/archives/Chronology.html
・コミックマーケット100とサークル申込について (2022年2月時点での割と大変なお話)
 
[関連(?)記事]
 (2019年夏コミ終了後の時点での内容)
 (2020年10月、コロナ禍での中止ドミノ進行中にて)
 
あと、同人誌「同人・コスプレ学級会 傾向と対策」最新号2019-2021春をBOOTHで販売しています。