まず最初に断っておきますが、経済成長を前提とした社会では値上げは必然であり、それを批判する意図はありません。
あくまで何がどう値上げしているかという記録であり、資料として記します。
[比較条件]
・2020年2月に政府からイベント自粛要請が発せられる以前、つまりコロナ禍前の最後の開催分(多くは2019年)と、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが2類相当→5類へと引き下げられ、政府による新型コロナウイルス対策ガイドラインが撤廃された2023年5月8日以降の最初の開催分を比較。このためニコニコ超会議2023がギリギリでガイドライン存在中の開催だったため2024を基準にしたが、この2回では料金が同じだった。
・一般的な入場者が午前中から入れる入場券の前売券一日分を比較。アーリー入場や午後入場や二日通し券は対象外とする。
・入場券とは別に、コスプレする際の更衣室料金も同様に、前売り一日分を比較。アーリー入場は対象外とする。なおコスサミと池ハロとストフェスは更衣室券=入場券でもある。
・イベント期間中の来場者数も記しているが、商店街やショッピングモールを使う大型コスプレイベントではコスプレイヤーとカメラマンの有料登録者以外にも周辺の見物人や買い物客などを加味して発表される。これは参加費を払った人以外に、後援する自治体にとっては地域への交通や飲食での波及効果も重要であるから…というような理由が挙げられるが、割とインフレ気味の数字が出やすいので注意。
【コミックマーケット】
c97(2019年12月)[4日間75万人]
入場550円/更衣室1000円
c102(2023年8月)[2日間26万人]
午前入場1210円/更衣室500円
(午後入場は前売で440円)
【ニコニコ超会議】
2019[2日間16万8248人]
入場料1800円/更衣室1500円
2024[2日間12万人以上]
入場料3500円/更衣室2000円
【東京ゲームショウ】
2019[4日間26万2076人]
入場料1500円/更衣室1000円
2023[4日間24万3238人]
入場券2300円/更衣室2000円
【東京コミコン】
2019[3日間6万9731人]
入場料3200円/更衣室1000円(日によっては入場料3500円)
2023[3日間8万5000人]
入場料4400円/更衣室1500円
【世界コスプレサミット】
2019[3日間30万人]
更衣室2500円
(更衣室の場所によっては遠方だと2000円。更衣室無し参加券は1500円)
2023[3日間22万6000人]
更衣室3200円
(更衣室無し参加券2700円)
【池袋ハロウィンコスプレフェス】
2019[2日間12万3000人、うちコスプレ参加者2万1000人]
更衣室2000円
2023[2日間14万1000人]
更衣室2500円
【日本橋ストリートフェスタ】
2019(1日25万人)
更衣室2000円
2024(1日21万人)
更衣室3000円
■各個のイベント状況メモ
○コミックマーケット
東京五輪の準備でビッグサイトの東ホールが使用できない変則運用が始まった2019年夏に、一般参加者への入場料500円を初めて設定。
2020年5月c98以降の中止を経て、2021年12月から縮小で再開。2023年12月から入場料は1210円、しかし午後入場であれば前売440円で入れるので、一般参加するだけなら負担感は高くないだろう。ただし朝一で入れるアーリー入場だと5000円もする。
更衣室はテーブル設置のサービス拡充と同時に1000円→500円に値下げ。こちらも更衣室先行入場だと3000円するが、サークル参加者以外が朝一でコスプレする必然性は低め。
また上の図表には入っていないが、サークル参加費が2023年12月の冬コミ分から1000円値下げして7000円になっており、一般参加者からの入場料徴取を他に還元して負担を平準化しているように見える。
2025年夏以降はビッグサイト東ホールが半分ずつ改修工事に入るため、代替えとなるTFTビルの使用権をめぐって「となりでコスプレ博」との血生臭い抗争の再燃が懸念されている。
○ニコニコ超会議
もっとも入場料の値上げ幅の金額が大きいイベント。1800→3500円でほぼ倍。
元々スタートした2012年はニコニコ動画の黄金期であり、入場料は前売1000円。運営するドワンゴは六本木に配信対応のイベント会場としてニコファーレをオープンするなど、この時期はわざと赤字をアピールするような事をしており、ニコ超・池ハロ・ニコファーレといった赤字イベント関連事業は「儲かりすぎてしまったドワンゴによる税金対策」という説が出る。
しかし2016年には256万人に達したニコニコ動画の有料会員数はそこから減少に転じ、2023年時点では128万人まで半減している。
またドワンゴ本体もKADOKAWAグループ入り(経営統合による合併)した当初は、グループ内で旧角川出版と兄弟会社のポジションだったものの、その後の再編で旧角川出版の子会社ポジションの一つとなり、資本金を106億円から1億円まで減資。法律上は中小企業の扱いになった。
昔のような大赤字前提の大盤振る舞いはできなくなっているだろう。
最近はニコニコ動画の他にゲームアプリやVチューバー関連事業も行っており、ニコニコ超会議2023にはニコニコ動画をあまり見ていないであろう10代20代の若い観客も多く来ていた。
ニコニコ動画というより、バーチャル世界全体を俯瞰するようなイベントになった一方、企業出展ブースが減った(企業団体の出展数は増えているが使うブースが小さくなっている)代わりに個人クリエイターの出展を呼び込んでおり、しぶとく、たくましく生き残る。
このテキスト打ってる時点でKADOKAWAグループシステム障害からの、過去の人気ニコニコ動画のみ視聴可能な仮サイトが立ち上がってインターネット老人会祭りが発生中。
○東京ゲームショウ
入場券の値上げ幅は1500→2300円で800円程度だが、更衣室が1000→2000円と倍増。なおゲムショはワンフェス同様、更衣室とコスプレエリア業務はCOSPA系のコスパティオに委託されている。
1996年の第1回から当時の企業出展メインのイベントとしては珍しくコスプレイヤー1000人パレードなど行ってコスプレを歓迎しており、かつて08年のリーマンショック後の不況下ではコスプレイヤー向けの公式企画や早期更衣室入場などを多く打ち出して集客を図ったが、現在はeスポーツという大金脈を発見してしまい、そちらに力が入っている模様。
中夜祭みたいにやってた「CosplayCollectionNight@TGS」、観るの大好きだったのに。
追記:2024年は入場料3000円で、一気に700円上がった。
中夜祭みたいにやってた「CosplayCollectionNight@TGS」、観るの大好きだったのに。
追記:2024年は入場料3000円で、一気に700円上がった。
○東京コミコン
コロナ禍を経て1200円値上げして3200円になっているが、元々スタート時の2016年の入場料は日毎に1500~1800円であり、第2回の2017年に一気に倍増していた。この期間の為替は特に円安には動いていないので、2016年は初回のみサービス価格だったのだろう。
ちなみに米国サンディエゴの本家コミコンとは運営母体が別。
ちなみに米国サンディエゴの本家コミコンとは運営母体が別。
米国から海を渡って展示物やゲストを呼んでいるため、コストがかかっているであろうイベント。ゲストのサイン会などは別途高額な追加チケットが必要であり、正しく資本主義の姿。2024年はさらに急速な円安傾向でどうなる?
○世界コスプレサミット
一般的にコスプレイベント関連は同人誌即売会や企業展示会のイベントと比べ、事前のサークル配置事務や各ブース設営などのコストは低めとされる…が。
その中にあっては夏の名古屋の奇祭・コスサミはオアシス21特設ステージや芸術文化ホールの使用などコストが高めだと思われ、2023年には33の国と地域の代表チームが集合、その国内滞在や移動費用なども運営が負担している。
それでも一般参加するコスプレイヤーの更衣室付き参加券の値上げ幅は700円でそこまで大きくなく、パンフに多数記載されているスポンサー収入や地元企業や学生ボランティアの協力などで頑張っていると思われる。
そもそも名古屋市がコスプレホストタウン宣言をしている関係もあって更衣室の使用は義務ではなく、より安価な更衣室なし参加券もあるが、こちらは1500→2700円と値上げ幅が大きい。
なお後援に外務省・愛知県・名古屋市など公的機関が入っているが直接の公金は出ておらず、市長と知事のコスプレ対決もコスサミ側で衣装を用意しているそう。
○池袋ハロウィンコスプレフェス
こちらもコロナ前後での値上げ幅は500円程度で大きくはない…が、そもそも2014年のスタート時から2016年までは1日分の参加費500円であったものの、2017年に1000円になり、2019年は2000円。コロナ前から年々値上げが進んでいた事に留意。これはニコニコ超会議の項目で前述したドワンゴの事情もあると思われるが、それでも他の企業系コスプレイベントが3000円前後になっている中では、池ハロは母体でもあるアコスタ同様に比較的安価な方である。
なお名古屋の世界コスプレサミットが「世界最大級コスプレイベント」で、それより一回り小さい池ハロは「日本最大級コスプレイベント」というキャッチコピーを使用。ご都合的な相互関係が成立している。
毎年、区長や都知事がコスプレで登壇する。
近年はCLAP'Sとニコ生アプリを選考に使用したコスプレイヤー・オブ・ザ・イヤー(COTY)というコンテストの表彰式が池ハロステージ上であり、2023年は部門優勝がニコ生ポイント…ほぼ課金で決まるルールになったため炎上。10部門57人合計で1389万3650pt(毎日1ユーザー毎に10~30pt投げられる他、クレジットカードだと100円で101pt購入できる)、軽く見積もって1000万円以上が、エントリーした配信者ではなく運営側の収入となっていた。
○日本橋ストリートフェスタ
振り返れば2020年3月の開催予定だったのが、コロナ禍により大型イベント中止ドミノの最初になってしまった。
その後、他地域のイベントが続々復活してもなぜか再開できずにいたが、2024年になって大阪万博アピールも兼ねてついに復活。大阪市の横山英幸市長が自ら購入したという「銀魂」坂田銀時コスプレで挨拶した。
なお主催者発表の来場者数においてあからさまにインフレが激しいイベントであり、10時~17時の単日開催なのに参加者数が2019年は25万人、2024年は21万人という驚異的な(信憑性の低い)数字が出ている。もちろん更衣室とカメラマンの有料登録数でそこまで多い訳は無く、地元の無料見物人もカウントしている数字だろうが、それにしたって半日で熊谷市や西東京市の総人口レベルの人間が訪れている訳は…ツッコミ待ちとも思える、実に大阪商人(あきんど)なイベント。
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そんな訳でザッとまとめてみましたが、円安や国際情勢による燃料費高騰、物価高、増税、そしてニュースでは25ヵ月連続で実質賃金の減少…という経済状況の中で、イベンターの皆様におかれましては、よくやっていただいてるなぁという印象です。
「継続は力なり」、好評でも不評でもまず〝場〟を続けていく事が重要なので、値上げしていただいても構わないのです。
問題は労働者の所得が伸びない事なので、それは政治の仕事です。
あと、いち国民として望んでいるのは、政治家がコスプレ姿を披露する事よりも、誰でも安心してマンガ読んだりゲームしたりコスプレしたりできる社会をこれからも作っていただく事ではないでしょうか。
(都知事選の喧騒を眺めながら)
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そんな訳でザッとまとめてみましたが、円安や国際情勢による燃料費高騰、物価高、増税、そしてニュースでは25ヵ月連続で実質賃金の減少…という経済状況の中で、イベンターの皆様におかれましては、よくやっていただいてるなぁという印象です。
「継続は力なり」、好評でも不評でもまず〝場〟を続けていく事が重要なので、値上げしていただいても構わないのです。
問題は労働者の所得が伸びない事なので、それは政治の仕事です。
あと、いち国民として望んでいるのは、政治家がコスプレ姿を披露する事よりも、誰でも安心してマンガ読んだりゲームしたりコスプレしたりできる社会をこれからも作っていただく事ではないでしょうか。
(都知事選の喧騒を眺めながら)