
ご存知、1976年に韓国で公開された初のロボットアニメ映画であり、マジンガーZまんまのデザインに度肝を抜かれた人も多かったでしょう。
(最近ではハンナラ党のイメージキャラクターに使われてしまった事で、余計な政治色が着いてしまいましたが…)
自分が最初にテコンVを知ったのは15年前、「B-CLUB」で見かけたのがきっかけでした。明らかにマジンガーZな風貌に、ある種すがすがしさを感じて。
故・米澤嘉博氏は言います。「芸術の世界だと『亜流』で片付けられちゃうんだけど、大衆文化ってのは模倣や亜流を含めて、一つの流れになってるんです」
だから、そのデザインを見て「マジンガーZじゃん!」という感想はごもっとも。
しかし、それを言うのであらば日本国内にもマジンガーZそっくりのロボットは存在したし(ガイキングやゴーバリアン)、内容に関しても模倣の域を出ない作品だって幾つも有った筈。
かの「ウルトラQ」だって、45年前のアメリカ人から見たら「トワイライト・ゾーンじゃん!」と言われていたに違いない。
ついでに説明しときますと韓国では90年代に日本文化解放運動というのが起こり、98年に解禁されるまでは公の場での日本語の映画や歌謡曲が禁止されておりました。
どうせ正規に輸入しても公開や放送が出来ないのだから、堂々とパクッても誰も分からない…そんな論法がまかり通っていたわけです。昔の日本の人気ドラマが、無許可で韓国版が存在するのもそーゆー理由です。
…さて!そんな「テコンV」デジタルリマスター版が日本国内でも一般向けに単館上映されると知り、この機会を逃してなるものかと、上映最終日直前に渋谷シアターN(最近では「ザ・コーヴ」上映中止騒動で有名になりました)まで行って参りました!
以下、若干ネタバレを含みつつ、ストーリーや見どころをまとめたり、突っ込んだりしてみます。
□ 公式サイト(日本公開用の)
http://www.taekwon-v.com/
日刊サイゾーでの紹介記事が濃くて良いので、最初に読むべき。
http://www.cyzo.com/2010/08/post_5165.html
× × × ×
● OPのBGMがいきなり日本のOVA「流星機ガクセイバー」(作曲はマジンガーと同じ渡辺宙明)から流用。
(音声が紛失してたので、新録音されたらしいけど…許可取ってるのか?)
● 冒頭は主人公フンが、手刀で岩を砕く特訓シーンから。でもテコンドーは別名“足のボクシング”のハズ。
● テコンドー世界大会。フンが準決勝で破ったのは日本の池田。歯が出てる。
● 決勝戦ではアメリカのジェームスを破り、フンは韓国に5年ぶりのテコンドー世界一の座を取り戻す。決め技は勿論キックだった。何のために手刀の特訓してたんだフン。
(テコンドーって世界的にはメジャースポーツじゃないと思うんだが…)
● フンの父のキム博士は密かに、世界平和のために巨大ロボットを建造しており、フンにそのパイロットを任せようと考えていた。
(親子の絆の描写が多いのは、儒教の発想なのかなぁ…)
● そんな折、各地で世界2位の有名スポーツ選手が巨大ロボットに誘拐される事件が相次ぎ、犯行グループは「赤色帝国(あかいろていこく)」を名乗る。
● 赤色帝国の紋章は★。…赤くて★マークって…北の…
● キム博士はこの事件を、物理学者だった旧友のカープ博士の仕業と推測する。彼は自分の容姿(ポスター右下参照)に異常なコンプレックスを持っていて、世界会議の席でその低い身長と巨大な頭を笑い者にされた事から、全世界への復讐を誓って姿を消していた。
● カープ博士の生き別れの娘、メリーがフンとキム博士を訪ねてくる。しかし彼女の正体はアンドロイドだった。セキュリティ装置に触れてしまい、いきなり片腕 がもげる。フンとキム博士は彼女を修理し、犯罪回路を除去するが、彼女は自分の使命に忠実であろうとする。アンドロイドと人間の心の間で、揺れるメリーは 脱走する。
● ヒロインのヨンヒは、そんなフンとメリーの仲に疑心暗鬼。面倒なヒロインだな。
● フンとヨンヒが森の中でデートしてるシーンで、手に乗ってるリスがチップとデール。
● ヨンヒの父のユン博士(ヒロインの父というポジションも、そして外見も弓教授まんま)は、「ジャパニウムから光子力エネルギーの抽出に成功」してしまう…。お、おいぃぃっっ!!!
(さすがに意訳したスタッフの遊びじゃないの?「光子力」なんて訳せないだろうし)
(※その後、コメントでの指摘を頂き、意訳ではなく本当にこの「ジャパニウムから光子力エネルギーを抽出」した設定らしいです)
● キム博士は赤色帝国に殺害され、死に際でフンに巨大ロボット・テコンVの存在を伝える。フンは格納庫でテコンVを見上げ、その大きな姿に父の面影を見る。
(父はすぐ背後で死んでるんだが)
● テコンVはユン博士の研究所が引き取り、娘のヨンヒがフンと一緒に乗り込む事になる。
● テコンVの操縦は、メインをフン、サポートをヨンヒが行う。2人は小型ホバー機のツバメ号(言うまでもなくホバーパイルダー)に乗り込むと、テコンVの頭部にドッキング。(言うまでもなくパイルダーオン)
● 訓練シーンのラスト、格納庫の扉がテコンVより小さい。
● ソウル市内で暴れ回る赤色帝国ロボット軍団を倒すため、テコンVが初出動。テコンドー技で次々と敵ロボを蹴り倒していく。ここで使われるのが「ロケットキック!」、足が飛び出して敵を討つ。
● メリーの乗っていた敵ロボは、メリーそっくりのポニーテールを延ばして攻撃する。
● 数体のロボを失った赤色帝国の幹部達は、テコンVの光子力ビーム対策を練る。が、そもそも初回の戦闘シーンで光子力ビームは使われていない。
(フィルムが劣化してたらしいので、所々カットされてる可能性も有り)
● しかしテコンVが出動してる隙に、ユン博士が拉致られてしまう。
● 赤色帝国の本拠地がエジプトのサハラ砂漠地下にある事が判明。いそげテコンV!そして世界中の国から軍艦や戦闘機が加勢し、駆けつける。大空を密集状態で飛ぶ戦闘機の絵面が素敵。
● メリーは赤色帝国を裏切り、自ら犠牲となってユン博士を脱走させてしまう。ユン博士は素手で兵士達や幹部をなぎ倒す。つよい。
(じゃあなんで捕まったんだ)
● 基地周辺を囲んだ軍の司令官は、いきなり小型核ミサイルを発射しようとして、ユン博士に止められる。結局はテコンVにまかせる事に。
● 基地から3体、剣道ロボ・レスラーロボ・テコンドーロボ(冒頭のジェームスが乗る)が出現。世界2位、つまり1位になれなかったスポーツ選手達の怨念を利用し、洗脳して戦わせる作戦。
● 剣道ロボは何故か片手剣。
● しかしテコンVのキックで次々爆発。
● ここで光子力ビーム発射!敵の基地ごと破壊する。ただし本家マジンガーの様に目から発射するのでは無く、胸から。(言うまでもなくブレストファイヤー)
● 脱出しようとした総統を追いつめるが、それもアンドロイドだった。隠れていたカープ博士が操っていたのだ。命乞いをするカープ博士だったが、崖から転落して死亡。あわれ…
● 爆発した基地の残骸から、フンはメリーの心臓部(ハート型)を拾った。これさえあれば、メリーは再生できるかもしれない…。
× × × ×
意外というか何というか、ストーリーはちゃんとオリジナルで、“活劇”になってるんですよ。
一個ずつのシーンは既視感の有る内容ではあるんだけど、それは我々があまりにも多くのアニメを見過ぎているから思うのであって。 とにかく全編通じて、これでもか!これでもか!とばかりに、アクションもギャグもタップリ詰め込んでくれてます。
それは整合性や完成度に拘るとおかしくなっちゃうんだけど、1シーン毎にひたすら客を飽きさせない、次々と飛び出す超展開…ここまで娯楽に徹してるんだから、今見ると新鮮。楽しい作品と言って間違いない。
もちろんそれは“古典”として見るべきだし、現代の作品にそのまま置き換えて通用しないとは思うんですけど。
少なくとも「パクリ」の一言だけで片付けられるべきでは無い。
× × × ×
そしてテコンV公開の76年、日本のアニメはどうだったのかを考えてみる。
その何年か前に虫プロが倒産し、小規模の制作会社や作画スタジオが増えていった頃。その中の一つが創映社(=後のサンライズ)で、75年に「勇者ライディーン」でロボットアニメに参入。
折しも76年当時、日本では創映社の「コンバトラーV」が大ヒットしていて、ロボットアニメの本流が、それまでのダイナミックプロ原作&東映動画制作から、サンライズのオリジナル作品に移っていく過程だった。(翌77年がボルテスV、ザンボット3)
マジンガーZだって既に、(再放送されながらも)過去の作品となっていたわけです。
× × × ×
面白いのが、公式サイト内「フィルム復元の流れ」。
http://www.taekwon-v.com/intro/index.html
大ヒット作品でありながらもマスターが現存しておらず、2003年に倉庫から発見された複製ネガを、2年がかりの大プロジェクトで復元したそうな。
しかし音声は消失していたため、結局は新録音、しかし古すぎる音楽でも新しすぎる音楽でも違和感があるからと、80年代の水準で表現してるとか…。
この復元へのドキュメントだけで番組作ってくれないかなぁ(笑)
× × × ×
□韓国内のテコンVアレンジコンテスト。
http://www.thetaekwonvlab.co.kr/67
http://www.thetaekwonvlab.co.kr/68
やっぱみんな、「脱マジンガー」がコンセプトなんだろうな…
そんなわけで、にわかにテコンV熱が高まってしまったので、コスプレ用の着ぐるみ作って友人知人とスパロボ合わせでもやりたいんですけど、やったらやったで頭悪い人達に叩かれそうなんで、きっとやらない。
(音声が紛失してたので、新録音されたらしいけど…許可取ってるのか?)
● 冒頭は主人公フンが、手刀で岩を砕く特訓シーンから。でもテコンドーは別名“足のボクシング”のハズ。
● テコンドー世界大会。フンが準決勝で破ったのは日本の池田。歯が出てる。
● 決勝戦ではアメリカのジェームスを破り、フンは韓国に5年ぶりのテコンドー世界一の座を取り戻す。決め技は勿論キックだった。何のために手刀の特訓してたんだフン。
(テコンドーって世界的にはメジャースポーツじゃないと思うんだが…)
● フンの父のキム博士は密かに、世界平和のために巨大ロボットを建造しており、フンにそのパイロットを任せようと考えていた。
(親子の絆の描写が多いのは、儒教の発想なのかなぁ…)
● そんな折、各地で世界2位の有名スポーツ選手が巨大ロボットに誘拐される事件が相次ぎ、犯行グループは「赤色帝国(あかいろていこく)」を名乗る。
● 赤色帝国の紋章は★。…赤くて★マークって…北の…
● キム博士はこの事件を、物理学者だった旧友のカープ博士の仕業と推測する。彼は自分の容姿(ポスター右下参照)に異常なコンプレックスを持っていて、世界会議の席でその低い身長と巨大な頭を笑い者にされた事から、全世界への復讐を誓って姿を消していた。
● カープ博士の生き別れの娘、メリーがフンとキム博士を訪ねてくる。しかし彼女の正体はアンドロイドだった。セキュリティ装置に触れてしまい、いきなり片腕 がもげる。フンとキム博士は彼女を修理し、犯罪回路を除去するが、彼女は自分の使命に忠実であろうとする。アンドロイドと人間の心の間で、揺れるメリーは 脱走する。
● ヒロインのヨンヒは、そんなフンとメリーの仲に疑心暗鬼。面倒なヒロインだな。
● フンとヨンヒが森の中でデートしてるシーンで、手に乗ってるリスがチップとデール。
● ヨンヒの父のユン博士(ヒロインの父というポジションも、そして外見も弓教授まんま)は、「ジャパニウムから光子力エネルギーの抽出に成功」してしまう…。お、おいぃぃっっ!!!
(さすがに意訳したスタッフの遊びじゃないの?「光子力」なんて訳せないだろうし)
(※その後、コメントでの指摘を頂き、意訳ではなく本当にこの「ジャパニウムから光子力エネルギーを抽出」した設定らしいです)
● キム博士は赤色帝国に殺害され、死に際でフンに巨大ロボット・テコンVの存在を伝える。フンは格納庫でテコンVを見上げ、その大きな姿に父の面影を見る。
(父はすぐ背後で死んでるんだが)
● テコンVはユン博士の研究所が引き取り、娘のヨンヒがフンと一緒に乗り込む事になる。
● テコンVの操縦は、メインをフン、サポートをヨンヒが行う。2人は小型ホバー機のツバメ号(言うまでもなくホバーパイルダー)に乗り込むと、テコンVの頭部にドッキング。(言うまでもなくパイルダーオン)
● 訓練シーンのラスト、格納庫の扉がテコンVより小さい。
● ソウル市内で暴れ回る赤色帝国ロボット軍団を倒すため、テコンVが初出動。テコンドー技で次々と敵ロボを蹴り倒していく。ここで使われるのが「ロケットキック!」、足が飛び出して敵を討つ。
● メリーの乗っていた敵ロボは、メリーそっくりのポニーテールを延ばして攻撃する。
● 数体のロボを失った赤色帝国の幹部達は、テコンVの光子力ビーム対策を練る。が、そもそも初回の戦闘シーンで光子力ビームは使われていない。
(フィルムが劣化してたらしいので、所々カットされてる可能性も有り)
● しかしテコンVが出動してる隙に、ユン博士が拉致られてしまう。
● 赤色帝国の本拠地がエジプトのサハラ砂漠地下にある事が判明。いそげテコンV!そして世界中の国から軍艦や戦闘機が加勢し、駆けつける。大空を密集状態で飛ぶ戦闘機の絵面が素敵。
● メリーは赤色帝国を裏切り、自ら犠牲となってユン博士を脱走させてしまう。ユン博士は素手で兵士達や幹部をなぎ倒す。つよい。
(じゃあなんで捕まったんだ)
● 基地周辺を囲んだ軍の司令官は、いきなり小型核ミサイルを発射しようとして、ユン博士に止められる。結局はテコンVにまかせる事に。
● 基地から3体、剣道ロボ・レスラーロボ・テコンドーロボ(冒頭のジェームスが乗る)が出現。世界2位、つまり1位になれなかったスポーツ選手達の怨念を利用し、洗脳して戦わせる作戦。
● 剣道ロボは何故か片手剣。
● しかしテコンVのキックで次々爆発。
● ここで光子力ビーム発射!敵の基地ごと破壊する。ただし本家マジンガーの様に目から発射するのでは無く、胸から。(言うまでもなくブレストファイヤー)
● 脱出しようとした総統を追いつめるが、それもアンドロイドだった。隠れていたカープ博士が操っていたのだ。命乞いをするカープ博士だったが、崖から転落して死亡。あわれ…
● 爆発した基地の残骸から、フンはメリーの心臓部(ハート型)を拾った。これさえあれば、メリーは再生できるかもしれない…。
× × × ×
意外というか何というか、ストーリーはちゃんとオリジナルで、“活劇”になってるんですよ。
一個ずつのシーンは既視感の有る内容ではあるんだけど、それは我々があまりにも多くのアニメを見過ぎているから思うのであって。 とにかく全編通じて、これでもか!これでもか!とばかりに、アクションもギャグもタップリ詰め込んでくれてます。
それは整合性や完成度に拘るとおかしくなっちゃうんだけど、1シーン毎にひたすら客を飽きさせない、次々と飛び出す超展開…ここまで娯楽に徹してるんだから、今見ると新鮮。楽しい作品と言って間違いない。
もちろんそれは“古典”として見るべきだし、現代の作品にそのまま置き換えて通用しないとは思うんですけど。
少なくとも「パクリ」の一言だけで片付けられるべきでは無い。
× × × ×
そしてテコンV公開の76年、日本のアニメはどうだったのかを考えてみる。
その何年か前に虫プロが倒産し、小規模の制作会社や作画スタジオが増えていった頃。その中の一つが創映社(=後のサンライズ)で、75年に「勇者ライディーン」でロボットアニメに参入。
折しも76年当時、日本では創映社の「コンバトラーV」が大ヒットしていて、ロボットアニメの本流が、それまでのダイナミックプロ原作&東映動画制作から、サンライズのオリジナル作品に移っていく過程だった。(翌77年がボルテスV、ザンボット3)
マジンガーZだって既に、(再放送されながらも)過去の作品となっていたわけです。
× × × ×
面白いのが、公式サイト内「フィルム復元の流れ」。
http://www.taekwon-v.com/intro/index.html
大ヒット作品でありながらもマスターが現存しておらず、2003年に倉庫から発見された複製ネガを、2年がかりの大プロジェクトで復元したそうな。
しかし音声は消失していたため、結局は新録音、しかし古すぎる音楽でも新しすぎる音楽でも違和感があるからと、80年代の水準で表現してるとか…。
この復元へのドキュメントだけで番組作ってくれないかなぁ(笑)
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□韓国内のテコンVアレンジコンテスト。
http://www.thetaekwonvlab.co.kr/67
http://www.thetaekwonvlab.co.kr/68
やっぱみんな、「脱マジンガー」がコンセプトなんだろうな…
そんなわけで、にわかにテコンV熱が高まってしまったので、コスプレ用の着ぐるみ作って友人知人とスパロボ合わせでもやりたいんですけど、やったらやったで頭悪い人達に叩かれそうなんで、きっとやらない。
情報ありがとうございます。
そうだったのですか…日本のアニメが海賊版で放送されてるのは知っておりましたが、そこから堂々と続編と言うかスピンオフの様な流れになっていたのですね。
ここはもう、恩讐を越えてリマスター版の日本版DVD化が望まれる所です。